安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(8)、政権崩壊に至る支持率下落のメカニズム(3)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その185)

 

12月に入ってからは、調査主体によって傾向がはっきりと分かれるようになった。第1グループの読売調査(13~15日)、産経調査(14~15日)は、第2期の「内閣支持率は下がるが、自民支持率は(それほど)下がらない」段階にあるのに対して、第2グループの時事通信調査(12月6~9日)、共同通信調査(14~15日)、朝日調査(21~22日)は、第3期の「内閣支持率と不支持率が接近し(あるいは不支持率が支持率を上回り)、自民支持率も下がる」段階に移行した。明らかに安倍政権に対する世論の潮目が変わったのだ。

 

第1グループの内閣支持率は、読売48%(▲1ポイント)、産経43.2%(▲1.9ポイント)、不支持率は、読売40%(△4ポイント)、産経40.3%(△2.6ポイント)となった。読売の支持率が高いのは、内閣を支持するかどうかを聞く際、「支持」「不支持」を明確に答えなかった人に対し、「どちらかといえば支持しますか、支持しませんか」などと「重ね聞き」していることが影響している(最初の回答だけを集計すれば、支持率は数ポイント下る)。自民支持率の方は、読売37%(変わらず)、産経37.9%(△1.7ポイント)だった。産経は、内閣支持率の下落が小幅にとどまったとはいえ、女性の厳しい回答について次のように解説している。

「世論調査で、首相主催の『桜を見る会』への招待者選定をめぐる安倍晋三首相の説明について、『納得できない』との回答が74.9%に上った。国民の根強い不信感は安倍内閣の支持率や憲法改正の賛否にも影響しているとみられ、ボディブローのように政権の足元を脅かしつつある。(略)女性の方が安倍政権に厳しい傾向は、内閣の支持・不支持率にも表れている。女性では、40代を除く全ての年代で『支持しない』が『支持する』を上回った。50代では47.3%が『支持しない』と回答し、『支持する』37.8%を約10ポイント上回った」

 

第2グループの時事・共同・朝日の方はどうか。内閣支持率は、時事40.6%(▲7.9ポイント、共同42.7%(▲6.0ポイント)、朝日38%(▲6ポイント)、不支持率は、時事35.3%(△5.9ポイント)、共同43.0%(△4.9ポイント)、朝日42%(△6ポイント)とほぼ同様の傾向を示した。共同・朝日では遂に不支持率が支持率を上回り、不支持率と支持率の差は朝日が4ポイントで一番大きい。

 

内閣支持率の大幅下落とともに自民支持率もまた下落した。自民支持率は、時事23.0%(▲7.1ポイント)、共同36.0%(▲5.8ポイント)、朝日34%(▲2ポイント)となり、自民支持率が最も低い時事通信の水準は、森友学園の不正問題が国会で追及されていた2018年3月25.2%(▲3.3ポイント)よりも低い。与党総ぐるみで安倍首相の不正を隠し、野党の真相解明を妨げるために国会延長に応じず審議を拒否したことが、漸く国民から批判されるようになってきたのである。

 

しかしその一方、野党支持率の方は相変わらず低迷している。立憲・国民・共産・社民・れいわの全部を足しても、時事7.3%(△0.8ポイント)、共同20.6%(△4.4ポイント)、朝日12%(▲2ポイント)と、自民支持率の3分の1から2分の1程度の水準に過ぎない。これは「支持政党なし」が、時事61.1%(△5.6ポイント)、共同31.8%(△1.4ポイント)、朝日41%(△4ポイント)と自民を上回る水準に達しており、しかも増加しているためだ。つまり、自民離れ層が野党には流れず、「支持政党なし」に移行しているだけのことで、野党各党がこれから「政党支持なし」をどれだけ取り込めるか、そこに安倍内閣打倒の全てが掛かっていると言っても過言ではない。

 

第2グループの世論調査に共通することは、国民の安倍政権に対する不信感が頂点に達し、それも女性の不信感がもはや修復不可能なレベルに達していることだ。この事態を安倍政権に近いジャーナリストはどう見ているのだろうか。毎日新聞特別編集委員の山田孝男氏は、『風知草』(毎日新聞コラム、2019年11月18日)で次のように語る。

「時ならぬ桜騒動は、身内に厚く、問い詰められれば強弁――という、憲政史上最長政権の〈不治の病〉再発を印象づけた。見過ごされていた首相の公私混同、政権の慢心を丹念に調べた共産党の追及は鮮やかだった。これを小事と侮れば政権は信頼を失うが、『桜を見る会』の運営が天下の大事だとは思わない。大嘗祭もつつがなく終わり、令和への転換が進む。世界激動の今日、国際的な課題を顧みず、観桜会が『最大の焦点』になるような国会のあり方自体、改める時ではないか」

 

この主張は、その後テレビでも盛んにコピーされ、少なくないキャスターやタレントからも同様のメッセージが発信されている。天下国家の大事を論じなければならない国会が、こんな些末なことに何時までもかかわっていてよいのか――、一見尤もらしい主張である。しかし、事の本質は山田氏の前半の指摘にあるのであって、後半の主張にあるのではない。国民は「桜を見る会」疑惑の中に安倍首相の宰相としての「不治の病=公私混同・身びいき・えこひいき・強弁・居直り・すり替え・屁理屈・嘘つき・逃げ回り...」に気付き、こんなのは〝ダメ〟と言っているだけのことなのである。安倍夫妻のような「チャチな男とノーテテンキな女」に6年間もダマされてきたことを嘆き、そして怒り、心の底から嫌気がさしているだけのことなのである。

 

同じ毎日新聞のコラムでも、土曜サロンの「松尾貴史のちょっと違和感」(2019年12月7日)の方がはるかに的を射ている。

「この案件は関係者が安倍夫妻、副総理、官房長官、内閣府、自民党関係者、安倍晋三後援会、ホテルニューオータニ、そして招待者1万8000人というおびただしさなので、ウソで蓋をしようとすればするほど、つじつまの合わないところが出てきて疑惑が数珠つなぎに引っ張り出される構造になっている。森友学園や加計学園の疑惑は何となくほとぼりが冷めているだけなので、もしこの桜を見る会についてのスキャンダルが長引けば、さらに政権の体質自体が問題であることがどんどん顕在化して、ダメージは大きくなっていくだろう」

 

「桜を見る会」疑惑の本質は、松尾氏が指摘する通り、まさに安倍政権の〝体質〟の問題なのである。安倍首相夫妻の公私混同・身びいきの性癖が「国政の私物化」をもたらし、天下国家の大事を歪める根底になっているからだ。この土台を取り換えることなく、新しい時代を迎えることはできないし、国際的な課題はおろか人類史的な課題にも向き合うこともできない。

 

安倍首相は12月26日、2012年12月の第2次政権の発足から7年を迎えた。日中韓首脳会議の演出で支持率を回復させようと帰国した首相を待っていたのは、現職の自民党衆院議員のIR汚職による逮捕だった。「桜を見る会」疑惑の方は安倍首相が主役だったのに対して、IR汚職の方は自民党議員が主役だ。しかも逮捕された秋元容疑者はIR担当の内閣府副大臣だったというから、安倍政権の中枢部が事件に関与していたことになる。二階幹事長などは、「この件は安倍政権が関わったことではないので影響はない」と言ったというが、この人物はいったい何を見て、何を考えているのだろうか。安倍首相と自民党はいまやボロボロで見るに堪えないと言うべきだろう。

 

私たちは、もうそろそろ「みみっちい首相へ別れの手紙」を書く時が来たのであり(朝日新聞「多事奏論」、編集委員・高橋純子、2019年12月18日)、古い瘡蓋(かさぶた)を取り除いて新しい時代を迎える時が来たのである。次回は、今年最後のブログを「IR疑惑特集」で飾りたい。(つづく)

安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(7)、政権崩壊に至る支持率下落のメカニズム(2)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その184)

11月後半になっても、第2期の「内閣支持率は下がるが、自民支持率はそれほど下がらない」傾向が続く。共同通信調査(11月23、24日)、日経調査(11月22~24日)、毎日調査(11月30日、12月1日)も全て同じ傾向だった。内閣支持率は共同通信「支持」54.1→48.7%(▲5.4ポイント)、「不支持」34.5→38.1%(△3.6ポイント)、日経「支持」57→50%(▲7ポイント)、「不支持」36→40%(△4ポイント)、毎日「支持」42%(▲6ポイント)、「不支持」35%(△5ポイント)となって支持率がかなり下がり、不支持率が上がって両者が接近した。その差は、共同通信調査と日経調査では10%だが、毎日調査では10%を割って7%になっている。

 

ただ、これまでと異なる大きな特徴は、男性に比べて女性の回答が否定側に大きく振れ始めたことだ。内閣支持率は男性・女性の平均なので、男女とも同じ傾向を示すこともあれば違う傾向を示すこともある。これを毎日調査でみると、男性よりも女性の方がいずれの回答においても否定側の回答が多く、否定側の回答が肯定側の5倍から8倍に達している。以下はその概要である。

 

(1) 内閣支持は42%(▲6ポイント)、不支持は35%(△5ポイント)となって、支持・不支持率が接近した。特に、女性の支持率が男性46%よりも8ポイント低く38%になったのが目立つ。

(2) 「国の税金を使って開く『桜を見る会』に、安倍首相の地元後援会関係者らが多数、招待されていたことが明らかになりました。あなたはどう思いますか」との質問に対しては、「問題だと思う」65%、「問題だとは思わない」21%で、問題視する回答が問題視しない回答の3倍に上った。女性は70%対14%で5倍だった。

(3) 「『桜を見る会』の招待者名簿を取りまとめている内閣府は、野党の議員から国会で『桜を見る会』に質問を受けたその日に名簿をシュレッダーで廃棄していました。政府は廃棄と国会質問は一切関係がないと説明していますが、この説明に納得できますか」との質問に対しては、「納得できる」13%、「納得できない」72%で、「できない」が「できる」の5倍強となった。女性は9%対72%で8倍となった。

 

 いずれの回答も政府への批判が圧倒的であり、特に女性の「桜を見る会」への疑惑が大きく、安倍首相(夫妻)に対する不信感が強い。女性に対して一旦不信感を抱かせれば、再び支持を取り戻すのは容易でないと言われている。内閣支持率の先行指標として女性の回答が注目されるのはそのためなのである。

 

それにしても「桜を見る会」の疑惑に対する不信感がこれほど大きいにもかかわらず、安倍首相夫妻による国政私物化の真相究明を妨げている自民・公明・維新の与党支持率がいっこうに下がらないのはなぜなのか。共同通信調査は「自民」44.6→41.8(▲2.8ポイント)とやや下落したものの、「立憲・国民・共産・社民・れいわ」の全てを合わせても16.6→16.2%(▲0.4ポイント)と変化がなく、「支持政党なし」28.9→30.4%(△1.5ポイント)が少し増えただけだった。

 

毎日調査でも、与党支持率は自民36→36%、公明3→3%、維新4→4%、合計43→43%と変化していない。一方、野党支持率は、立民10→8%、国民1→1%、共産3→4%、社民1→0%、れいわ1→2%、合計16→15%と却って低下している。つまり、この段階では〝自民離れ〟が〝野党支持〟へ移行しておらず、「支持政党なし」に途中下車している程度の変化しか見られなかったのである(日経調査は、政党支持率の数字が明示されていない)。

 

 自民など与党支持率が下がらないのは、世論調査の方法にも問題があるからだ。内閣支持率に関しては「支持する」「支持しない」の理由に関する質問項目があるにもかかわらず、政党支持率にはそれが全くない。例えば、「『桜を見る会』の真相解明には国会での予算委員会集中審議など徹底した質疑が必要だと思われますが、自民・公明など与党会派が野党の開会要求を拒否しました。あなたはこれをどう思いますか」と言った質問が当然あってしかるべきなのに、その種の質問にはお目にかかったことがない。

 

 また、「国会世論調査特集」として、国会運営に関する調査報道とともに議院運営委員会をはじめ各委員会での審議状況に関する項目を組み、それぞれにふさわしい質問を工夫して調査をすることも考えられるが、この種の企画は寡聞にして知らない。安倍1強体制を分析するには自民・公明など与党の国会運営の実態解明が不可欠であり、単に政党支持率だけを聞いていても仕方がないのである。

 

とはいえ、この時期の情勢は日経調査にも見られるように、(1)安倍長期政権の仕事ぶりが国民に評価されている(第2次安倍政権以降の仕事ぶりを「評価する」55%、「評価しない」34%)、(2)安倍内閣の支持率は底堅い(日経調査では50%ギリギリを維持)、(3)不祥事は政権の「緩み」から生じるもので本質的な欠陥に基づくものではない(「安倍政権に緩みがある」67%)と総括されている。つまり、続出する安倍政権の不祥事の原因は「腐敗」ではなく「緩み」によるものであり、質問全体が「党内改革」を図れば立ち直れるというストーリーになっているのである(そもそも「安倍政権は腐敗していると思うか」「腐敗していないと思うか」という質問項目がない)。だが、事態は刻々と変化している。12月に入ってどんな変化が現れるのか、次回はそれを追ってみたい。(つづく)

安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(6)、政権崩壊に至る支持率下落のメカニズム、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その183)

これまで、内閣支持率と自民支持率の変化(下落)をトレースしてきたが、ここにきて政治情勢がにわかに流動化してきた。「IR法=カジノリゾート法」を強行採決した張本人の秋元内閣府副大臣(IR担当)がIR関係中国資本からの現金授受に伴う外為法違反容疑で任意聴取され、逮捕一歩手前の家宅捜索を受けたと言う。目下、カジノリゾートの選定作業を一手に握っている菅官房長官にとってこれは手痛い打撃だろう。IRの認可が闇の世界の巨大な利権によって動かされていて、自民国会議員がその手先となって暗躍していることの一端が図らずも明らかになったからだ。

 

一方、加計学園の獣医学部新設問題に関して「総理に代わって私が言う」と文部次官を恫喝した和泉首相補佐官が、今度は厚生労働省の女性官僚を京都にまで同行し、山中京大教授に対して「ips補助金を打ち切る」と脅かしたという。それだけではない。その後二人は市内で(いささか旧い言葉だが)〝逢引き〟を楽しんだことが、週刊誌で写真入りで暴露された。京都在住の私は、逢引きの場所はいずれもよく知っているが、選りも選ってよくもこんな人目に立つところを選んだものだと驚嘆する。白昼堂々、親密な関係を披露することに何の躊躇を覚えないほど、官邸官僚の思い上がっている姿が目に浮かぶ。

 

加えて、下村元文科相の「強いリーダーシップ」の下に導入された大学入試の民営化(民間英語試験の採用、国語・数学の記述式問題採点の丸投げなど)の策動が、荻生田文科相の失言もあって土壇場で中止になった。全国の大学や受験性に与える影響は計り知れないものがある。そして今度は、鈴木総務次官が日本郵政副社長(元総務次官)に「かんぽ不正問題」の処分に関する情報を逐一漏洩(報告)していたとして更迭された事件が発生した。元総務次官は、自らの責任は棚に上げ「かんぽ不正問題」を報道したNHK番組の撤回を迫り、会長に謝罪させた名おうての強者だ(面構えからもよくわかる)。こんな人物が、官邸人事で各省庁のトップに任命されるのだからたまったものではない。もう何もかも滅茶苦茶ではないか。

 

深刻な不祥事がこれほどまでに頻発するのは、史上最長の長期政権による安倍首相の「身内政治=国政私物化」の弊害が構造化し、もはや官僚機構全般に及んでいるためだ。国民全体の奉仕者であるべき官僚が〝安倍首相の私的召使〟に堕したことが官僚機構の劣化と腐食を招き、止まることの知らない統治機構の機能不全をもたらしている。「資料が見つからない」「資料を破棄した」「調べるつもりはない」「これまでの見解通り」などなど、菅官房長官の記者会見における慣用語句はそのことの象徴と言える。

 

だが、このような事態はもはや限界に来ているのではないか。ここにきて、世論の風向きが変わってきていることはあきらかだ。〝知らぬ存ぜず〟一点張りで逃げ切ろうとする姿勢が国民の激しい怒りを呼んでいるからである。安倍首相当人や官邸は、国会延長を要求する野党の追及を振り切り「逃げ切った」と思っているらしいが、野党はもとより国民がそんなことで納得するわけがない。正月が来れば「その内にみんな忘れてくれる」なんて甘い夢は見ない方がいいのである。

 

この間の世論状況の推移を各社の世論調査で追ってみると、僅か2カ月足らずの間に世論が大きく動いていることがわかる。画期の区分は、(1)内閣支持率も自民支持率も下がらない、(2)内閣支持率は下がるが、自民支持率はそれほど下がらない、(3)内閣支持率と不支持率が接近し(あるいは不支持率が支持率を上回り)、自民支持率も下がる、の3期である。このような区分をするのは、安倍政権に対する支持は、首相自身に対する評価と自民党全体に対する評価の二重構造になっていて、内閣支持率が下がっても自民支持率が下がらなければ、自民党政権が安泰だからである。自民党政権の危機は、その両方が連動して本格的に下がるときに初めて訪れることになる。この3期に分けて、内閣支持率および自民党支持率の推移をみよう。

 

第1期の「内閣支持率も自民支持率も下がらない」時期は、今年11月前半まで続いていた。11月になって最初に行われた時事通信調査(11月8~11日)は、政府が首相主催の「桜を見る会」を来年度中止を決定した11月13日以前だったためか、2閣僚辞任や大学入試への英語民間試験の導入見送りなど不祥事が相次いだにもかかわらず、内閣支持率は48.5%(△4.3ポイント)、不支持率は29.4%(▲3.6ポイント)となり、支持率が逆に上昇していた(マジか!)。

 

一方、政党支持率の方は、「自民」30.1%(△2.6ポイント)で断トツ1位を維持しており、それに比べて「立憲」3.1%(▲2.7ポイント)で公明3.7%を下回る始末、その他野党はいずれも2%以下で見る影もない。「支持政党なし」55.5%(▲0.5ポイント)が過半数を占めているように、国民多数が〝野党離れ〟にある状況の下で、安倍政権はこのまま不祥事をやり過ごせると踏んでいたのである。

 

しかし、安倍首相が来年度の「桜を見る会」中止を決定した11月13日以降、情勢は少し変り始めた。11月半ばから後半にかけて、世論動向は第2期の「内閣支持率は下がるが、自民支持率はそれほど下がらない」へ移行した。これまで相対的に高い支持率が続いてきた読売調査(11月15~17日)と産経調査(11月16、17日)においても、読売「支持」54→49%(▲6ポイント)、「不支持」34→36%(△2ポイント)、産経「支持」51.7→45.1%(▲6.6ポイント)、「不支持」33.0→37.7%(△4.7ポイント)となって、下落傾向が明らかになってきた。50%台を恒常的に維持していた読売・産経の内閣支持率が、過半数割れの状態に落ち込む傾向がはっきりと出て来たのである。

 

また、支持率が低かった朝日調査(11月16、17日)においても「支持する」45→44%(▲1ポイント)、「支持しない」32→36%(△4ポイント)となった。首相が来年度の「桜を見る会」中止を決定してからというものは、程度の差はあれ支持率が下落し、不支持率が上昇した。安倍首相の「臭い物に蓋をする」姿勢に少なくない国民が失望したのだろう。ただしこの段階では、まだ不支持率が支持率を上回るような状況ではなかった。

 

一方、「自民」支持率の方は、読売42→37%(▲5ポイント)、産経37.7→36.2%(▲1.5ポイント)、朝日45.7%で変わらずと各社まちまちだった。野党は「立憲」にやや上昇傾向がみられるものの(読売5→7%、産経7.3→7.8%、朝日7.8→9.8%)、「支持政党なし」がほとんど動いていないので(読売38%変わらず、産経39.4→38.7%、朝日30.0→26.5%)、こちらの方はそれほど大きな変化はなかったと言える。(つづく)

安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(5)、内閣支持率と自民支持率が両方とも下がった、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その182)

 

時事通信が2019年12月6~9日に実施した世論調査によると、安倍内閣支持率は前月比7.9ポイント減の40.6%、不支持率は5.9ポイント増の35.3%となった。同時期に実施されたNHK世論調査では、内閣支持率45%、不支持率37%だから相当な開きがある。具体的な質問の読み上げ方が表示されていないのでよくわからないが、この差は電話調査(NHK)と個別面接調査(時事通信)の違いと理解しておきたい(個別面接調査になると、質問の趣旨に対する回答者の理解度が上がるので調査精度が高いと言われている)。

 

時事通信調査の時系列でみると、今回の内閣支持率の下落幅の大きさは2018年3月(9.4ポイント減)以来のことだ。首相主催の「桜を見る会」をめぐり、安倍首相が多数の後援会関係者を招いていたことや、マルチ商法を展開したジャパンライフの元会長も招待されていたことなどが批判を浴び、支持率に影響したとみられる―と同社は分析している。前回は、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書改ざん問題が国会の焦点となっていた時のことで、支持率は40%割れの39.3%(9.4ポイント減)、不支持率は40.4%(8.5ポイント増)と支持・不支持が逆転した。いずれも安倍首相絡みの不正隠しを与党・官僚が総ぐるみで行ったことが背景となっている。今回は支持・不支持が逆転するまでに至っていないが、それでも下落幅の大きさは注目に値する。

 

今回の調査のもう1つの大きな特徴は、自民支持率が前月比で23.0%(7.1ポイント減)と大幅に下落したことだ。2018年3月の自民支持率は25.2%(3.3ポイント減)だから、下落幅は前回よりも大きいことになる。与党総ぐるみで安倍首相の不正を隠し、野党の真相解明を妨げるために国会審議を拒否したことが国民から激しく批判されているのだ。安倍首相はもはや「死に体」と見なされているので、今後の政治情勢にとっては自民支持率の下落の影響の方が大きいのではないか。次の総裁を誰に代えても自民党支持率が下落していれば、選挙戦は著しく困難になるからである。

 

これに対して野党支持率はいっこうに伸びていない。立憲3.8%、共産2.0%、れいわ0.7%、国民0.6%、社民0.2%、足しても僅か7.3%でほとんど動きがないのである。だが、注目されるのは今回の6割にも及ぶ「支持政党なし」の急増ぶりだ。「支持政党なし」は61.1%(5.6ポイント増)で、今年3月以来の60%台に乗った。これは、自民離れ層が「支持政党なし」に移行したものと思われ、今後の政治情勢が極めて流動化していることを物語っている。野党各党がどれだけ「政党支持なし層」を取り込めるか、そこに安倍内閣打倒の全てが掛かっている。

 

これまで安倍政権が比較的安泰だったのは、野党が弱体化している一方、自民支持層が岩盤のように分厚いからだと言われてきた。いかなる政治状況においても自民を支持する強固な保守層が常に3割台を占め、野党の進出を許してこなかったからだ。ところが、安倍政権の長期化による腐敗の極みが「身内政治=国政の私物化」という形で顕わになり、それが官僚機構まで巻き込んで国の統治機構の根幹が侵される事態にまで発展してきた。この期に及んでも与党内に亀裂が入らないのは自民全体の腐食が進んでいるとも言えるが、その土台である保守層の「自民離れ」が顕著になってきたことは、彼らの心胆を脅かさずにはおかないだろう。

 

 安倍内閣と自民党の支持率が今年最大の下げ幅となったことに関して、時事通信は次のように分析している。

「政権内では、なおくすぶる首相主催『桜を見る会』をめぐる問題が直撃したとの見方は強く、反転へのきっかけがつかめない状況に危機感がにじむ。首相官邸幹部は13日、支持急落に関し『ずいぶん下がった』と深刻に語った。自民党幹部は『やはり桜が大きかった』と指摘した。11月8日に国会で取り上げられて以降、『桜』問題は拡大を続けた。首相後援会や首相夫人の昭恵氏の関与、共産党が名簿提出を求めた日の廃棄、反社会的勢力とされる人物の参加などが相次いで指摘された。10月に2閣僚が辞任しても支持率は堅調だったが、『桜』問題は野党が連日追及、メディアも大きく取り上げたことが響いたとみられる。別の自民党幹部は『桜ももちろんだが、長期政権のおごりが原因だ。緊張感がない』と述べ、政権の緩みに警鐘を鳴らした」

  

「自民党内には、支持率低下は『今が底』(参院幹部)、『3割台にならなければ大丈夫』(中堅議員)と強がる声もある。ただ、内閣支持率に連動して自民党支持率が大きく下落したのは今年初めてのケースだ。党関係者は『解散は当分できない。これでやれば自爆だ』と語る。一方、世論調査では『支持する政党はない』が前月比5.6ポイント増の61.1%に上った。野党各党の支持率は横ばいで、自民党から離れた支持は野党に向かわなかったとみられる。立憲民主党の福山哲郎幹事長は『無党派層の支持を得るような発信をしていく』と強調した。公明党からは『(支持急落は)桜が響いているが、またすぐ上がるだろう。野党も全然伸びていない』(幹部)との楽観論も出ている」

 

これが現時点における与党内全体の空気であることは間違いない。彼らの危機意識がこのままで終わるのか、それとも新たな動きを起こさない限り国民から見捨てられると判断するのか、今後の世論の動きが極めて重要だ。引き続くメディア各社の世論調査がどのような結果を導くか、注目(期待)することしきりである。(つづく)

安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(4)、「大きな塊」への野党合流か、野党共闘の発展か、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その181)

 

 政党支持率で自民ダントツ状態が動かず、野党支持率が伸びない原因の一つとして「多弱野党」だからという見方がある。何しろ自民は衆院465議席のうちで285議席(61%)を占め、野党第1党の立憲は59議席(13%)に過ぎないのだから、有権者の眼には「これではとても政権を担えない」と映るのだろう。そう言う意味では、現在統一会派を組む立憲・国民・社民・無所属120議席が合流すれば、自民285議席の4割、全議席の4分の1を占める勢力となり、それなりの現実感が出て来る。

 

 さる12月6日、枝野立憲代表が統一会派を組む各党に「年内合流」を呼びかけ、次期衆院選を迎えての野党結集の必要性を訴えた。これに対して各党党首は概ね賛意を示したというが、立憲と国民の間には具体的な合流方法に関して大きな隔たりがある。合併方式については、立憲が国民を「吸収合併=党名や基本政策を変えない」としているのに対して、国民は「対等合併=両党が一度解党して党名も政策もゼロベースで検討」を主張しているためだ(毎日新聞2019年12月7日)。

 

 国民を支援する連合傘下の民間産別労組(電力総連など)の間では、「原発ゼロを1日も早く実現し、再稼働を認めない」とする立憲のエネルギー政策に対する警戒感が強く、連合幹部は「国民が吸収される合流では、立憲の政策をのまされることになり、絶対に受け入れられない」と言明している(読売新聞2019年11月13日)。しかし、立憲が基本政策を変更すれば、有権者には「立憲の国民化」と受け取られることになり、支持者離れにつながる可能性が大きい。野党合流しても支持率が上がらないのであれば、何のために合流したか分からなくなり、却って野党への不信感が増すだけだ。

 

 こうしたせめぎ合いが当分続くのだろうが、いつまでも駆け引きを繰り返していると「野党合流」そのものに対する疑惑が高まり、次期衆院選では「ダメ野党」の刻印を押されて大敗することになる。こうなると再び立ち上がることは難しく、「多弱野党」の上塗りするだけのことになるのではないか。支持率1%の国民が譲歩しなければまとまらないと思うが、どうだろうか。

 

 一方、野党共闘の方は健闘している。共産が掘り起こした「桜を見る会」疑惑に野党各党が相乗りして政府を追及し、安倍政権をかなりのところまで追い詰めたからだ。自民・公明は臨時国会を閉会することで「逃げ切った」と言っているらしいが、野党各党は国会閉会中でも追及の手を緩めないとしている。菅官房長官は12月10日の記者会見で、「桜を見る会」の招待者名簿についての再調査は「行わない」と明言した。また、廃棄したとされる名簿の電子データの復元も「考えていない」とする答弁書を閣議決定した。全てを闇の中に葬るつもりでいるらしい(朝日新聞2019年12月11日)。

 

 彼らは、来年1月の通常国会が開会する頃には、国民は「正月ボケ」で忘れているとでも多寡を括っているのだろうか。国会を軽視し、国民世論を無視する傍若無人の専横ぶりには呆れて声も出ないが、今度ばかりはそうはいかないだろう。野党各党の街頭宣伝に対する反響でもみられるように、いまや桜を見る会は〝桜スキャンダル〟として国民の間に広く浸透しつつある。

 

また、メディアが追及の手を緩めることもないだろう。各紙の社説は、かってないほどに激しい論調で批判を強めており、今日11日の朝日新聞は、「議論するための委員会を開かない、やり取りを深めるための資料を示さない、疑惑を向けられた政治家が国会に出てこない――。9日に閉幕した臨時国会は、三つの『ない』に象徴される安倍政権の立法府軽視の姿勢が、際立った」と痛烈に批判している(「安倍政権の3〝ない〟国会」)。

 

問題は、この野党共闘が衆院選の勝利につながるかどうかだ。1人しか当選しない289の小選挙区において、野党各党がどれぐらい統一候補を立てることができるかがカギとなる。この場合、衆院選は政権選挙と言われ、基本政策の一致が前提になるが、そのことにこだわっていてはとても統一候補の擁立は難しいのではないか。とにもかくにも〝安倍政権打倒〟の1点に絞って連携する一種の「救国戦線」を構築し、果敢な選挙戦を挑むことが求められる。(つづく)

 

 

安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(3)、安倍内閣の「逃げ切る戦略」は成功するか、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その180)

 「桜を見る会」の疑惑が発覚してからの一連の世論調査が、毎日新聞調査(11月30日、12月1日実施)およびNHK調査(12月6~8日実施)で終わった。内閣支持率は毎日新聞42%(▲6ポイント)、NHKは45%(▲2ポイント)で先行調査とあまり変わらない。毎日新聞の方が的を射た質問をしているので、主だった結果を紹介しよう。

  1. 内閣支持率は42%で前回調査(10月26、27日実施)から6ポイント低下し、不支持率は35%で5ポイント上昇した。特に女性の支持率が38%になったのが目立つ。
  2. 「国の税金を使って開く『桜を見る会』に、安倍首相の地元後援会関係者らが多数、招待されていたことが明らかになりました。あなたはどう思いますか」との質問に対しては、「問題だと思う」65%、「問題だとは思わない」21%で、問題視する回答が問題視しない回答の3倍に上った。女性は70%対14%で5倍だった。
  3. 「野党は『桜を見る会』に反社会的勢力の関係者が参加していたと指摘しています。あなたは、誰の推薦でどのような人物が『桜を見る会』に招待されていたのか、政府は明らかにすべきだと思いますか」との質問に対しては、「明らかにすべきだ」64%、「明らかする必要がない」21%で、これも「すべき」が「必要ない」の3倍に上った。
  4. 『桜を見る会』の招待者名簿を取りまとめている内閣府は、野党の議員から国会で『桜を見る会』に質問を受けたその日に名簿をシュレッダーで廃棄していました。政府は廃棄と国会質問は一切関係がないと説明していますが、この説明に納得できますか」との質問に対しては、「納得できる」13%、「納得できない」72%で、「できる」が「できない」の5倍強となった。 

  いずれの回答も政府への批判が圧倒的であり、否定側の意見は肯定側の意見の3倍から6倍に達している。問題は「桜を見る会」の疑惑に対する不信感がこれほど大きいにもかかわらず、安倍首相夫妻による国政私物化の真相究明を妨げている自民・公明・維新の支持率がいっこうに下がらないことだ。

   毎日新聞の与党支持率は、自民36%→36%、公明3%→3%、維新4%→4%、合計43%→43%と微動もしていない。一方、野党支持率は、立民10%→8%、国民1%→1%、共産3%→4%、社民1%→0%、れいわ1%→2%、合計16%→15%と却って低下している。これは「支持政党なし」が34%→35%とほとんど変化していないからである。与野党支持率の差が3倍もあるのでは話にならない。

   NHKの与党支持率は、自民35.1%、公明2.7%、維新1.6%、合計39.4%。野党支持率は、立民5.5%、国民0.9%、共産3.0%、社民0.7%、れいわ0.6%、合計10.7%と、こちらの方は与野党差が4倍近くに開いている。「支持政党なし」41.4%が大きな割合を占めているためだ。

 自民など与党支持率が下がらないのは、世論調査の方法にも問題があると私は考えている。内閣支持率に関しては関連する質問項目が沢山あるのに、政党支持率の方はそれが全くないのである。例えば、「『桜を見る会』の真相解明には国会での予算委員会集中審議など徹底した質疑が必要だと思われますが、自民・公明など与党会派が野党の開会要求を拒否しました。あなたはどう思いますか」と言った質問が当然あってしかるべきなのに、その種の質問にはお目にかかったことがないのである。

 また、「国会特集」として、国会運営に関する調査報道とともに議院運営委員会をはじめ各委員会での審議状況に関する項目を組み、それぞれにふさわしい質問を工夫して世論調査をすることも考えられるが、このような企画についても寡聞にして知らない。安倍1強政治を批判するのであれば、それを支える自民・公明の国会運営の実態を明らかにすべきであって、単に政党支持率だけを聞いていても仕方がないのである。

 昨日12月9日に国会が閉会された。安倍首相をはじめ自民首脳部は「逃げ切った」と言っているらしい。国会で追及される心配がなくなると、「反省している」「説明が足りなかった」「これからは改善する」といった言葉を並べ、「もはや終わったこと」として事態の終息を図るのが彼らの常套手段なのだ。後は補正予算の大盤振る舞いで景気の落ち込みをカバーし、オリンピックになだれ込んで興奮状態をつくりだす...という算段なのだろう。

    だが、これで幕引きだと思うほど国民はバカではないだろう。私は毎日世論調査にも見るように、とりわけ女性の怒りが大きいことに注目している。安倍首相夫妻すなわち安倍首相はもとより昭恵夫人に対する怒りが彼女らの間には渦巻いているのである。こんな気持ちや感情は簡単に消えるものではない。地下に溜まったマグマ火山のようにいつでも噴き出す活火山なのだ。「逃げ切った」のではない。逃げている醜い姿が国民にはいつまでも見えているのである。次回は、枝野立民代表が呼びかけた野党合流の行方を考えてみたい。(つづく) 

安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(2)、内閣支持率は底堅いのか、底割れするのか、その分岐点に差しかかっている、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その179)

 

読売・産経から約1週間遅れで、共同通信(11月23、24日)と日経(11月22~24日)の世論調査が行われた。この1週間は、野党側の「桜を見る会」への追及によって招待者の実態が次々と明らかになり、安倍首相夫妻や政権幹部、自民党関係者による「桜を見る会」の私物化が暴露された1週間だった。おまけに招待者名簿が野党の資料請求当日に破棄されると言うのだから、証拠隠滅も露骨かつ組織的だ。こんな有様だから、内閣支持率が一気に二桁ぐらい下がってもおかしくないと思っていたのである(期待していた)。

 

共同通信の結果は、支持54.1%→48.7%(▲5.4ポイント)、不支持34.5%→38.1%(△3.6ポイント)、日経の方は支持57%→50%(▲7ポイント)、不支持36%→40%(△7ポイント)となり、1週間前と比べて支持率下落のテンポはそれほど変わっていない。ただ、これまで過半数を維持していた内閣支持率がそれ以下に落ち込むと言う傾向ははっきりと出ている。この傾向がこのまま続くのか、それとも下げ止まるのか、今がその分岐点だということだ。

 

分岐点の右左を決めるのは、「桜を見る会」の真相が今後どこまで解明されるかに懸かっている。野党側は総力を挙げてこの問題に取り組んでいるが、この作戦はまさに安倍政権の泣き所を点いている。世論調査を見れば、国民の関心がこの点に集中していることは明らかだからだ。

 

日経は「桜を見る会」について僅か1問しか質問していないが、それでも「桜を見る会の首相の説明」については、「納得できる」18%、「納得できない」69%と圧倒的な不信感が表明されている。共同通信は「桜を見る会」に3問を割き、「首相の発言」→「信頼できる」21.4%、「信頼できない」69.2%、「首相の地元支援者が大勢招待」→「問題だと思う」59.9%、「問題だとは思わない」35.0%、「桜を見る会の今後」→「続けた方がよい」26.9%、「廃止した方がよい」64.7%との明確な結果が出ている。

 

一方、野党側が統一候補を立てて臨んだ高知県知事選挙の結果はどうだったのか。こちらの方は、自党の候補者を出した共産は「大健闘」「大善戦」と手放しで評価しているが、メディアの方は「大敗」と判断するなど評価が分かれている。毎日新聞(11月26日)は、参院選(高知県内分)では自民候補(13万7473票)に2万票差に迫った共産候補(11万8188票)が、知事選では統一候補(11万1397票)になったにもかかわらず票を伸ばせず、与党候補(17万3758票)に6万票もの大差をつけられた点に注目し、以下のような解説をしている。「野党内には『共産党系の限界』との指摘も出ているが、各党執行部は互いの信頼関係を深める効果があったとして、『共闘路線』を維持する方針だ。一方、与党は首相主催の『桜を見る会』の影響は小さかったとして胸をなでおろしている」。

 

だが、この与党判断は少し甘すぎるのではないか。高知県知事選挙という地域的にも時間的にも限られた選挙結果で、「桜を見る会」の影響が小さかったなどと判断するのは「針の穴から天を覗く」ようなもので、全国的に拡がる大きな世論の動きを見誤る可能性が大きい。自民選対は「国政でのマイナスの影響を払拭して選挙ができた」「今後の衆院選にも影響を与える知事選に勝てたことは、国政においてもプラスだ」(毎日、同)などと分析しているが、今後の事態の展開はそれほど甘いものではないだろう。

 

安倍政権に対する忖度がマスメディアにも浸透しているのか、今回の日経世論調査においても同様に、与党判断に近い分析が目立つ。例えば...

「安倍晋三首相は20日に通算在任日数が憲政史上最長となった。日本経済新聞社の22~24日の世論調査で、2012年12月に発足した第2次安倍政権以降の仕事ぶりについて質問すると『評価する』と答えた人が55%、『評価しない』が34%だった。長期政権を評価する声が過半に達したが、一方で『安倍政権に緩みがあると思う』と答えた人も67%にのぼった」

「首相主催の『桜を見る会』をめぐる問題などで内閣支持率は7ポイント下がったが、それでも50%あり、首相への評価は底堅い。10人の名前を挙げて『次の政権の首相にふさわしいと思うのは誰か』を聞いたところ、安倍首相は前回10月調査の16%とほぼ横ばいの14%で、順位は同じ3位だった」

「一方、政権の緩みには厳しい意見が目立つ。9月の内閣改造から1カ月半で菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相と2閣僚が相次いで辞任したことを受け『政権に緩みがあると思う』と答えた人は67%に上った。『あるとは思わない』の27%を大きく引き離した」

 

この解説は日経の編集方針の基調である、(1)安倍長期政権の仕事ぶりは国民に評価されている、(2)安倍内閣の支持率は底堅い、(3)不祥事は政権の「緩み」から生じるので気を付ける必要がある、という体制側の認識に基づいて構成されている。この場合のキーワードは「緩み」であり、続出する自民政権の不祥事の原因をすべて党内の「緩み」に求めるというものだ。この論調は、国民に対して自民政権の継続を前提とする印象を与えるもので、ここからは〝政権交代〟の主張は出てこない。安倍政権の腐敗を「政権の緩み」にすり替え、「党内改革」によって体制の延長を図ると言う典型的なストーリーである。

 

安倍内閣の支持率は底堅いという認識にしても、日経世論調査の方法には問題が多い。内閣支持率を「重ね聞き」という方法で尋ね、支持率の上積みを図ると言う方法だ。まず安倍内閣を「支持するか」「支持しないか」で尋ね、「何とも言えない」「わからない」と回答した人に対して、「どちらかといえば」との前書きを付けて再び「支持するか」「しないか」を問うのである。今回の調査結果に即して言えば次のようになる。

 

最初の質問では、「支持する」44%、「支持しない」37%、「言えない・わからない」19%だった。通常ならばこれで内閣支持率44%となるのだが、日経では「言えない・わからない」と回答した人に「どちらかと言えば」と再質問した結果を案分してそれに上乗せするのである。すなわち「19%×どちらかと言えば支持33%=6%」と「19%×どちらかと言えば不支持19%=3%」をそれぞれ加算して、支持率(44%+6%=50%)、不支持率(37%+3%=40%)としては発表するのである。支持率・不支持率とも加算するからいいのではないかという論法も考えられるが、最初に「言えない・わからない」と回答した人に無理やりに回答をさせるのは、やはり支持率を上積みする意図があるからとの疑念が晴れない。(つづく)