アーキエイドの活動資金はどこから提供されているのか、石巻市2012年度当初予算から、平成大合併がもたらした石巻市の悲劇(番外編18)、震災1周年の東北地方を訪ねて(69)

 10月9日から10日にかけて、私の拙いブログに対して4人もの方々(「ひとこと」・「蘇れ石巻」・「部外者」・「雄勝出身者」の各氏)から貴重なコメントをいただいた。私の日記は毎日平均して200件前後のアクセスがあるが、コメントをいただける方はごく僅かなので感謝の言葉もない。どのような趣旨のコメントであれ、それが読者の方々の意見や感想を通しての社会的反響である以上、私にとっては教えられることが多いからである。

 今回の4つのコメントは、拙文の趣旨に対しては「賛同・激励」、「中立的補足」、「反対・批判」の3つの立場に分かれている。おそらくこの3つの立場は読者の反応の縮図ともいえるものだから、私がこれらのコメントから教えられたこと、考えさせられたこと、そして改めて言いたいこと整理して、以下箇条書き風に書いてみたいと思う。

 まず最初は、「蘇れ石巻」氏のコメントのなかにあった「伝え聞くところによると、20億円の契約を結んだ土木系コンサルタントに対して、アーキエイド側が5億円もの設計フィーを要求したとのこと。このあまりの高額な要求に対して、どう対応して良いものか頭を痛めているようです」との件についてである。この種の情報は、関係業界では常に流れている(あるいは意図的に流されている)情報なので、取り上げるにはあくまで慎重でなければならない。

 しかし敢えてコメントとして掲載したのは、私自身もこの種の情報(噂)を現地で何回も聞いていたからであり、それが果たして本当なのかどうかを読者の声を頼りに確かめてみたいと思ったからだ。聞くところによれば、アーキエイドのほとんどのメンバーは全国から「手弁当」で駆けつけているというが、しかしこれだけの大集団がしかも現地で継続的に活動するとなると、それに要する費用も馬鹿にはならないだろう。だからアーキエイドのホームページには、「アーキエイドは継続的に寄付を受け付けるため2011年9月に一般社団法人を設立いたしました。いただいた寄付金は当法人口座で管理され、被災地再建支援のための活動、また震災知識の集積と発信等の非営利活動に充てられます」として、寄付金への協力を広く呼びかけている。

 一般社団法人とは「一般社団・財団法人法」(2006年)に基づいて設立できる法人であり、所轄官庁の設立許可を必要とした従来の社団法人とは異なり、一定の手続きと登記さえすれば誰でも簡単に設立することができる法人組織だ。また事業目的に公益性がなくても構わないので、株式会社などの営利企業法人と同じく全ての事業が課税対象となる。法律の施行規則に詳細きわまる会計条項が設けられ、事業報告や会計報告の公開が義務付けられているのはそのためである。

 だがアーキエイドと同じく一般社団法人にした東日本大震災復興支援組織の多くは、すでに2011年度の事業会計報告をホームページで公開している。しかしアーキエイドは2012年10月現在、2011年度事業会計報告が未公開のままなので、アーキエイドがどこから収入を得ているか、どんな事業に支出しているかは不明である。まして上記の「設計フィー」(設計料)の話など“要求段階”のことだから、万が一これが事実だとしても、実態は2012年度の事業会計報告が公開されるまで判明しないことになる。

 そこで現在、雄勝地区まちづくり復興計画の「アドバイザー」として活躍しているアーキエイドメンバーの活動資金がどこから支出されているかを石巻市予算決算書で調べてみた。もちろん私は財政学・会計学の専門家でもなければ自治体財政分析の経験もないので、出来ることは限られている。また予算決算項目などはいくらでも大括りできるので、額がそれほど大きくなければ事業名そのものを消してしまうことも可能だ。それを承知のうえで2012年度当初予算の関係項目を以下に抜き出して見た。

○地域まちづくり委員関係費(委員報酬及び費用弁償) 3,454千円
○震災復興計画推進関係費              8,873千円
(アドバイザー4名×4回×12ヶ月×27,000円、旅費等)
○復興協働プロジェクト関係費            4,186千円
  (アドバイザー6名×12回×9,500円、企業訪問旅費等)
○水辺の緑のプロムナード整備事業委託料 69,000千円
  (基本設計、パブリックコメント補助、アンケート・ワークショップ等)
○被災市街地復興土地区画整理事業委託料 2,175,000千円
 (測量調査費、設計費、換地設計、仮換地指定、実施設計等)
○防災集団移転促進事業費 21,513,000千円
 (測量調査等業務委託料 63箇所 4,918,000千円)
 (防災集団移転用地造成工事等 7箇所 16,595,000千円)
○災害復興住宅整備事業費            12,173,300千円
 (測量調査等業務委託料 551,000千円)
 (災害復興住宅建設工事、用地購入費、駐車場整備工事 7,653,000千円)
 (借上公営型民間賃貸住宅借上料、建設補助金等、   1,146,000千円)

このなかでアーケイドに最も関係のありそうな予算項目は、震災復興計画推進関係費だろう。これに該当するアドバイザー予算は、1人当たり2万7千円/回・旅費別で年間48回分(月4回)の129万6千円、4人分で518万4千円が計上されている。雄勝地区に派遣されている4人のアドバイザー経費はこれに該当するかどうかは未確認だが、もし当該予算がアーキエイドに支出されているとすれば、アーキエイドでは一般社団法人としてこれをどのように会計処理しているのであろうか。

しかし、こんなアドバイザー料に対して比較にならないぐらいぐらい大きいのが各種土木事業プロジェクトの業務委託料だ。「水辺の緑のプロムナード整備事業」設計委託費6千900万円、「被災市街地復興土地区画整理事業」(同)21億7500万円、「防災集団移転促進事業」(同)49億1800万円、「災害復興住宅整備事業」(同)5億5100万円という億単位の設計業務委託料が予算化されたのだから、その争奪戦は熾烈なものにならざるを得ない。

土木コンサルタント「株式会社オオバ」が2012年6月に発表した「石巻市からの大口受注に関するお知らせ」によれば、ジョイントベンチャーの代表であるオオバは、石巻市復興まちづくり実施計画の策定業務(土地区画整理事業、防災集団移転促進推進事業など)にかかわる2012年予算のうち、市街地部16億4100万円、半島部23億8400万円、計40億2500万円(うち13億5500万円はオオバ受注分)を獲得した。この発表後、同社の株価が急上昇したことはいうまでもないが、これを目の当たりにしたアーキエイド(の一部)が「トンビにアブラゲをさらわれた」気持ちになったとしてもそれほどおかしくもないような気がする。次回は「部外者」氏の「震災遺産化構想」について話そう。(つづく)