終盤戦になって“劣勢”にあえぐ橋下維新、堺市長選の投票は1週間後に迫った、いまこそ魯迅が言う「水に落ちた犬は打て」を実行するときがきた、堺市長選の分析(その17)、改憲勢力に如何に立ち向かうか(47)

 堺市長選の序盤戦がほぼ終わった9月21日、「堺大好き堺っ子」というフェイスブックを運営する市民グループの案内で市内一円を歩いた。私のような岡目八目派は、時々現場に行かないと「遠目」が利かなくなる。8月中旬から現在まで5回ほど通ったが、それでも終盤戦がどう転ぶのかまったく予測できない。そこで思い切って、市民グループの方々にお願いして選挙事務所に連れて行っていただいたのだ。

 最初に行ったのは竹山選挙対策事務所。堺東駅近くの選対事務所は人の出入りでごった返しているので、短時間のインタビューを試みた。話してくれたのは(選対責任者ではない)前国会議員だから、個人的観測が前面に出るのは承知の上だ。それによると、「現時点で投票があるとすれば、竹山陣営が勝つ」との自信溢れる回答が返ってきた。理由は、維新の側にいままでのような勢いが見られないこと、竹山陣営が現職市長を擁立していること、「大阪都構想」に対する市民の反応が少しずつ変わってきていること(正体が見抜かれ始めていること)などが相前後して語られたが、私が最大の関心を持ったのは公明党の動きだった。

 前議員によると、大阪の公明党幹部はこれまでは表だった選挙活動をしていないそうだ。不思議なことに最高幹部の何人かが選挙当初から姿を見せず、学会婦人部もそう活発には動いていないという。公明党本部が「自主投票」といったのはその通りで、目下のところ維新側に付いたという情報は入ってきていない。このままで行くと、竹山陣営の方に公明票(の多く)が来るのと違うかという楽観的予測だった。なお余談ながら、事務所を出る時に選挙事務を手伝っている竹山市長の可愛いお嬢さんと握手してきた。

 次に行ったのは、そこから歩いて十数分の距離にある「住みよい堺をつくる会」(住みよい会)の選挙事務所である。この会は、堺市市職労や共産党が中心になっている組織で、竹山事務所とは関係なく勝手連的に活動している。それでも街頭で選挙ビラを配っている活動家の多くが同会のメンバーだから、維新の側にとっては一番目障りになっている勢力だろう。突然の訪問だからこの事務所でも選対責任者は不在で、副責任者クラスの市職労元幹部から話を聞いた。

 最も印象的だったのは、元幹部が「情勢は五分五分で一瞬たりとも気を抜いたら負ける」と繰り返し強調したことだ。これは竹山選対事務所とはまったく正反対の反応で、同じような明るい情報を期待していた私たちは度肝を抜かれた。しかし話をよく聞いているうちに、「気を抜けない」最大の理由が、公明党が最終的にどっちに転ぶかわからないからだということがわかってきた。彼が「いける」と思えるのは、公明党がたとえ維新側に付いても勝てるだけの条件があると判断したときのことだろう。要するに、今回の選挙のキャスティングボート公明党が握っているのである。

 そこで市民グループの間では、公明党の動向が話題になった。話題と言っても公明党幹部のことではない。市民グループが日頃から接触している学会婦人部やその活動家たちの動きについてである。それによると、今回の市長選ではこれまでの地方議員選挙や国会議員選挙のときのような激しい動きは見られないそうだ。必死の形相で票集めをするといった雰囲気が感じられないというのである。となると、やはり「自主投票」というのは本当なのかということになるが、「最後まで行かないとわからない」というのが全員の一致した意見だった。

 私自身も個人的には現職の堺市議から幾つかの情報を得ている。それは、竹山陣営の講演会や選挙集会に少なからぬ公明党支持者の姿が見られるというものだ。個人的によく知っている人たちだから、その人たちの表情を見ていると「そんなに裏があるとは思えない」との意見だった。私はこの意見を信じたい。そして、公明党支持者が自分の判断で投票してほしいと思う。

 両選挙事務所への訪問の後、維新の影響力が大きいといわれる南区の泉北ニュータウンでの「大阪都構想」に関する学習会に行った。革新系無党派市議が主催する集会であり、選挙期間中であるから選挙運動とは無関係ではないと思うが、中身は本当に真面目な学習会(60数人規模)だった。こんな学習会が選挙期間中に開かれること自体驚きであり、加えてそこに参加している人たちがもっと「大阪都構想」のことを知りたいと思っている様子が印象的だった。土曜日ということもあって参加者は夫婦連れが多く、それも年齢階層的にも多様だった。参加者の3分の1から質問シートが出されて市議が丁寧に回答するなど、集会の中身はまさに維新のタウンミーティングとは対極に位置するものだった。

 学習会会場へ行く途中、泉北高速鉄道駅の構内で維新の会の選挙運動(南区の市議補欠選挙)に出くわした。応援演説をしているのは立派な議員バッジをつけて全国から動員された維新の議員さんたち、通路に沿って選挙ビラを配るのはその秘書たちであろう。だが、道行く人たちがほとんどそのビラを受け取らない。維新の運動員たちの表情も冴えず、雰囲気もさっぱりだった。選挙初日の堺東駅前のわびしい雰囲気がその後も続いているのだろうか。

 そんなことで選挙情勢の行方について確信をつかめないまま帰途に就いたが、9月22日の読売新聞ディジタル版で、読売新聞社が19〜21日に堺市内の有権者を対象に世論調査を実施し、「竹山リード」との結果が出たことを知った。それは、終盤戦になって“劣勢”にあえぐ橋下維新の実体を統計的に示すもので、今回の私たちの印象と合致するものだ。いまこそ魯迅が言う「水に落ちた犬は打て」を実行するときがきたのであり、最後の1週間の奮闘が期待される。次回は読売世論調査結果について分析したい。(つづく)