大阪維新のダブル選圧勝によって大阪の政治情勢は大きく変わった、大阪自民の安倍自民化とともに「オール大阪」体制の崩壊が進んでいる、来るべき大阪都構想住民投票には「革新+リベラル無党派層」の再結集が必要だ、大阪ダブル選挙の行方を考える(その14)

前々回の拙ブログでこんなことを書いた。
――自民党大阪府連を取り巻く環境はこれから一段と厳しくなるだろう。ダブル選の勝利で大阪維新に世論が傾いたいま、橋下氏らの公明党を巻き込む多数派工作が間もなく実行に移されるだろう。橋下氏は11月26日の記者会見で「維新もとにかく攻撃の一点張りだったが、吉村新市長になったら自民、公明と妥協点を探る新しい大阪市政の時代に入る」(朝日新聞11月26日)と述べ、府議会・市議会で与党多数派を形成する意図を鮮明にした。公明党本部や創価学会がすでに「維公」体制を期待していることを考えれば、国会に先駆けて「維公」連立が大阪で形成されることになり、少数派となった大阪自民が孤立することも考えられる。その時、大阪自民は「地元保守」としての主体性を維持するのか、それとも大阪維新に屈して「維公」体制に加担するのか、その帰趨が問われることになる。中山氏がその時まで府連会長にとどまるときは(週刊文春で暴露された「クラブホステスお持ち帰り」事件で失脚する可能性もあるが)、首相官邸の指示に従って「維自公」体制の構築に全力を傾けるだろう。国会での改憲勢力総結集モデルの構築のために。

残念ながら、その後の事態は「オール大阪」体制の崩壊に向かって着実に進んでいるようだ。以下、そう判断せざるを得ない事象を幾つか挙げよう。

第1は、11月30日に開かれた自民党大阪府連の緊急全体会議で、中山会長がダブル選敗北の責任を取らずに「会長としてしっかり足元を固めていきたい」と述べ、居座りを続けることになったことだ。NHKのウェブニュース(11月30日)はその模様を次のように伝えている。
――自民党大阪府連の緊急全体会議が30日、開かれ、府連会長の中山泰秀衆議院議員は、先の大阪ダブル選挙の敗北の責任をとって会長を辞任する考えはないとしたうえで、「再生本部」などの新しい組織を設置する考えを示しました。11月22日の大阪ダブル選挙での敗北を受けて、自民党大阪府連は、きょう緊急全体会議を開き、国会議員や府議会議員などおよそ70人が出席しました。会合は非公開で行われ、出席者からは「惨敗したのに誰も責任を取らないのか」「いまの体制では維新にいつまでも勝てない。府連会長はすぐに辞めるべきだ」などといった厳しい発言が相次ぎました。これに対して、府連会長の中山泰秀衆議院議員は「会長として、しっかりと足もとを固めていきたい」と述べ、選挙の敗北の責任をとって会長を辞任する考えはないことを明らかにしました。そのうえで、中山氏は選挙の敗因を分析し、今後の対策をまとめる「党府連再生本部」と府連の掲げてきた政策を抜本的に見直す「大阪政策構想委員会」をそれぞれ設置する考えを示しました。会合の後、中山氏は記者団に対し、「厳しい意見もいただいたが、新たな組織の設置について全会一致で後押しをもらった。自民党が立ち直れるように全力で取り組んでいきたい」と述べました。

 このニュースの中で私がとくに注目するのは、中山氏が「大阪府連の掲げてきた政策を抜本的に見直す」として、そのための「大阪政策構想委員会」を立ち上げると述べたことだ。これが中山氏の個人的発言に終わるのか、府連方針として正式に実行に移されるかどうかは目下のところわからないが、中山氏の意図は明白だ。首相官邸の指示に従って大阪維新と和解し(与党入りし)、大阪都構想の実現に向けてハンドルを180度右旋回させるということだろう。すでに松井知事(大阪維新の会幹事長)は11月27日の記者会見で、「大阪都構想の設計図を作る議論を続けていいという民意が出た。副首都が成り立つように取り組む」と述べ、都構想再挑戦のために府市の事業統合や副首都化について大阪市と共同で議論する「副首都推進本部」を年内に設置することを表明している(日経新聞、11月27日)。中山氏の発言はこれに呼応するものと考えるべきだ。

 第2は、信じられないことだが、ダブル選敗北を受けて交代したばかりの自民大阪府議団役員3人が、選挙期間中の選対会議に出ないでゴルフをしていたことが発覚して更迭されたことだ、12月3日の各紙(電子版)は次のように伝えている。
 ――11月の大阪ダブル選での敗北を受けて(12月)1日に役員を一新したばかりの自民党大阪府議団(25人)が、新役員6人のうち副幹事長ら3人を更迭することがわかった。選挙期間中にあった同党府連の選挙対策会議に参加せず、ゴルフに行っていたことが判明したためという。3人は副幹事長2人と副政調会長1人で、先月17日に細田博之・党幹事長代行も参加して開いた会議当日にゴルフをしていたという。1日の人事は、知事選で候補者擁立の責任者だった花谷充愉・前幹事長が職を辞したことを受けて行われた。幹事長、政調会長ら新役員6人全員を2期目までの若手議員とし、大敗のイメージ払拭を目指していた。しかし、新人事決定後にこの問題が発覚。3人のうち、副幹事長2人の後任にはベテラン府議らを充て、副政調会長は補充せずに1人体制とする(読売新聞)。

 中山会長の居座りが大阪自民に対する「外=官邸からの攻撃」だとすれば、選挙期間中の府議ゴルフ事件は大阪自民の「内からの崩壊」を象徴するものだろう。しかも選対本部長としての責任を取って辞任した前幹事長に代わって新役員に就任したばかりの人物(たち)がこの有様だというのだから、本人たちは自分たちの選挙中の行動を隠して府連役員を引き受けたことになる。こんな人たち(連中)が自民府議団を率いるとなると、松井知事に早晩丸め込まれることは目に見えている。

 第3は、公明党大阪市議団幹部が大阪自民の中核だった柳本参院議員を「ダブル選敗北の戦犯」と名指しで批判していることだ。産経新聞は次のように伝える(11月24日電子版)。
 ――自民党推薦の候補が、橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会の公認候補に完敗した大阪府知事と市長のダブル選の敗因について、公明党市議団の明石直樹幹事長は24日、自民の柳本卓治参院議員が共産系の集会に出席し、支持を呼びかけたことが「保守層に対して、大きなマイナスイメージになった」との見方を示した。市役所で記者団に答えた。卓治氏は、市長選に出馬し落選した元市議、柳本顕(あきら)氏の叔父で自民府連元会長。選挙直前の10月29日、大阪市内で行われた共産系の市民団体の集会に自民府連の方針に反して参加し、「党派を超えてオール市民、府民でダブル選をともに頑張ることを誓う」と支持を呼びかけたことが問題視され、府連の中山泰秀会長から厳重注意処分を受けた。一方、明石氏は、大阪維新が再挑戦を掲げる大阪都構想については「住民投票で否決されたことには変わらない。同じものを出されるのであれば、『はい、そうですか』とはいかない」とクギを刺した。

 この公明大阪市議団幹部の発言は意味深長だ。これまで市議会で連携してきた大阪自民への「決別状」とも受け取れ、大阪自民が共産と共同行動がとるようなことがあれば、公明は市議会で大阪維新と組む(与党入りする)――と言わんばかりの「側面攻撃」だ。そうでなくても公明は、橋下氏らから衆院大阪選挙区での議席を巡って大きな圧力を受けている。今年5月の都構想住民投票の実施に協力したのも、橋下氏らが大阪選挙区で立候補しないことの「見返り」だったと言われており、今後はますますその圧力に晒されるだろう。橋下氏らはダブル選後、何度も「公明との丁寧な議論」を強調しており、松井氏はすでに創価学会幹部らとの会合を重ねている。公明市議団幹部が「住民投票で否決されたことには変わらない。同じものを出されるのであれば、『はい、そうですか』とはいかない」とクギを刺したというが、このことは「同じものを出さないのであればイエスだ」とのサインでもある。

 大阪維新のダブル選圧勝によって大阪の政治情勢は大きく変わった。大阪自民は「外」「内」「側面」の3方向から攻撃されて、「オール大阪」は事実上崩壊しつつある。府議会、市議会の与党・野党関係も大きく変化するだろう。公明が逸早く宗旨替えし、自民もそれに続いて、議席の圧倒的多数を占める「維公自」体制が成立するかもしれない。大阪維新の都構想再挑戦を阻止するためには、「オール大阪」に代わる「革新+リベラル無党派層」の再結集を図るほかない。(つづく)