読売新聞といえども、もはや安倍内閣支持率の急落は止められない、いよいよ内閣総辞職を社説に掲げるときが来た、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(39)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その70)

7月10日の読売新聞朝刊は、1面から3面まで安倍内閣支持率が急落したことに関する特集記事で埋められている。1面トップは、今回の世論調査(7月7〜9日実施)の内閣支持率が前回調査(6月17〜18日実施)49%から13ポイント下落して36%となり、2012年12月の第2次安倍内閣発足以降で最低水準に落ち込んだことを大々的に伝えた。不支持率もまた前回41%から52%と11ポイントも上昇し、2015年9月の安保法強行採決後の51%を超えて最高となった。

「『安倍離れ』女性に顕著」との見出しもあるように、今回の読売調査(結果)の特徴は、女性の内閣支持率が前回46%から18ポイント減って28%にまで一気に下落したことだ。読売は結果を報じただけでその原因については一切言及していないが、安倍首相に対する女性の拒否反応が強かったのは、その背景に(1)昭恵夫人が森友疑惑における自らの行動について説明責任を徹底的に回避していること、(2)身びいき人事の象徴である女性閣僚の稲田防衛相が重大な失態を重ねているにもかかわらず、安倍首相が責任を問うことなく依然として庇い続けていること、(3)安倍チルドレンの豊田真由子衆院議員が女性の品位と尊厳を真っ向から否定するような(聞くに堪えない)暴言を吐いたこと...などが横たわっているからだろう。

読売調査のもう1つの特徴は、自民党支持率が前回41%から10ポイント下落して31%となり、第2次安倍内閣発足以降最低を記録したことだ(これまでの自民党支持率の最低は安保法強行採決後の2015年9月調査の33%)。この反動で無党派層が前回より7ポイント増えて47%となり、第2次安倍内閣発足以降では2014年8月の49%に近い高水準となった。無党派層内閣支持率は、第2次安倍内閣以降で最も低く僅か16%でしかない。自民支持層の4分の1が離れ、それらが無党派層となって支持率の下落に拍車をかけたのである。

拙ブログで(数回前)、読売世論調査における内閣支持・不支持の理由について分析したことがある。回答全体を母数(100%)にして支持・不支持別の理由が回答全体に占める割合を算出し、その分布範囲(最低%〜最高%)を60%台の支持率を維持した2017年1月〜5月調査と前回6月調査を比較したものだ。この手法を用いて2017年1〜5月調査と今回7月調査を比較してみよう

【支持理由の推移、2017年1〜5月調査→7月調査】
〇「自民党中心の政権だから」4.3〜7.2%→4.3%
〇「これまでの内閣よりよい」23.2〜27.5%→17.6%
 〇「政策に期待できる」7.3〜9.8%→3.6%
 〇「閣僚の顔ぶれがよい」0〜0.7%→0.4%
 〇「首相が信頼できる」6.2〜8.5%→3.2%
 〇「首相に指導力がある」8.5〜13.4%→4.7%

【不支持理由の推移、2017年1〜5月調査→7月調査】
〇「自民党中心の政権だから」5.3〜6.9%→5.7%
〇「これまでの内閣の方がよい」0.6〜1.3%→0%
 〇「政策に期待できない」5.8〜9.6%→7.8%
 〇「閣僚の顔ぶれがよくない」2.2〜4.3%→8.3%
 〇「首相が信頼できない」5.3〜10.7%→25.5%
 〇「首相に指導力がない」0.8〜1.6%→2.6%

このデータから言えることは、これまで安倍内閣を支持してきた「ハードな保守層」(6%前後→4%)と「ソフトな保守層」(25%前後→18%)が全体的に縮小して2割台に落ち込み、これに「政策に期待」(8%前後→4%)、「首相の指導力」(11%前後→5%)、「首相への信頼」(7%前後→3%)が半減したことから内閣支持率が一挙に急落し、自民党支持率の下落にも波及したということだろう。つまり、今回の内閣支持率の急落は、特定の理由に基づくというよりは、保守層全体が「安倍離れ」を起こしたのであり、いわば保守基盤の「総崩れ(寸前)」の状態になったのである。

このことは、安倍内閣に「長期政権のおごりが出ている」と見る人が全体の68%を占め、内閣支持層でも54%、自民支持層でも63%という異例の高さに達したことでも証明される。また、自民党が歴史的大敗を喫した東京都議選の結果についても「よかった」とする回答は全体で65%、内閣支持層と自民支持層でもそれぞれ54%と過半数を占めた。自らが支持する内閣や政党の大敗を「よかった」と感じる回答状況は、もはや「自民党にお灸をすえる」といったレベルをはるかに超えている。保守層の多くが「こんな政党や内閣は困る」と考える日がすぐそこまでやってきているのである。

問題は、「安倍離れ」した保守層や無党派層の「受け皿」がまだ明確に見えてこないことだ。「都民ファースト」が勝利したことを「よかった」と思っても、都民ファーストが国政に進出することについては、「期待する」の37%よりも「期待しない」49%の方が上回っている。また、民進党が次期総選挙で共産党選挙協力を行うことについても「賛成」28%、「反対」47%と反対の方が多い。民進党蓮舫代表に対する期待に至っては、「期待する」23%、「期待しない」70%という惨憺たる有様だ。

安倍首相は国民世論のこのような流動的状態を見て、まだ内閣改造程度でこの危機は乗り切れるとでも思っているらしい。秋の臨時国会自民党憲法改正案を提出し、2020年に改正憲法施行を目指す方針を撤回していないのが何よりの証拠だ。これまで安倍内閣の広報誌として世論操作に総力を尽くしてきた読売新聞も、一蓮托生の立場から「愚直に政策実行を」とする政治部長の論説を掲げている。森友・加計疑惑について自らの言葉で真摯に丁寧に説明し、経済政策を総点検して「ニューアベノミクス」を打ち出せば何とかなるとでも言いたいのだろう。

だが、安倍首相も読売新聞も国民世論の真の在りかを理解していない。「安倍離れ」は一過性の現象でも過渡的現象でもない。安倍内閣の全てに「ノー」を突き付けている明確な政治現象なのだ。この「安倍離れ反自民」の世論は、安倍内閣の退陣まですたれることはない。読売新聞はいまこそ「安倍内閣の総辞職」を社説に掲げるときではないか。(つづく)