『ねっとわーく京都』349号の新春特集は「視界不良で明けた2018年」だった、立憲民主を軸とした新野党共闘は成立するか(10)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その97)

 京都の月刊誌『ねっとわーく京都』編集部の依頼で、新春特集の一環としてのインタビューに応じた。新春にふさわしいテーマを語りたいと思ったが、とてもそんな気持ちにはなれない。時代状況があまりにも暗すぎるからだ。そんなことで、テーマは「視界不良で明けた2018年〜平成時代は不透明のままで終わるのか〜」になった。

 安倍首相は、年明けから一貫して「改憲発議」への前のめり発言を続けている。衆院改憲勢力が3分の2どころか4分の3に達したとのことでこの上なく勢いづいているのだろうが、はしゃぎ過ぎだ。なにしろ従来からの改憲勢力の自民・公明に加えて維新がすり寄り(昨年暮れには橋下・松井両氏がまたもや首相の私宴に招かれた)、希望の党も足並みを揃えることになるのだから、安倍首相が元気づくのも無理はない。

 これに対して野党側の動きは一向にさえない。民進党の解体でいったん摘み取られた野党共闘の芽がふたたび芽吹くことは極めて困難な情勢にある...と言わなければならない。民進党の大塚代表が立憲民主党希望の党統一会派構想を呼びかけているが、もともと希望の党に排除されたグループが立憲民主党をつくったのだから応じるわけがない。枝野代表が1月7日のNHK番組で「希望の党丸ごとと組むのは自己否定につながる。とても考えられない」(日経新聞、2018年1月8日)と明言しているのはけだし当然だろう。

 だが、この発言は意味深長だ。枝野代表は希望の党「丸ごと」との連携は拒否しているが、希望の党「有志」との連携は否定していない。希望の党代表選で玉木氏側に付かなかった(リベラル)勢力に対して立憲民主党への参加を暗に呼びかけ、勢力拡大を意図しているのだろう。その裏には、希望の党と維新が合流すれば「野党第一党」の座を奪われかねないことへの警戒心があるからだと言われる。

しかし、こんな政党間の駆け引きに明け暮れ、このままダラダラと事態が経過すれば、野党側のマイナスイメージはますます大きくなる一方だ。延いては立憲民主党に対しても期待が薄れ、国民の批判がブーメランのように撥ね返ってくる可能性があるからだ。立憲民主党に求められるのは、そろそろ曖昧な態度を改め、「いまがピーク」と言われないようにすることだろう。

 立憲民主党の曖昧さは、共産党との関係では一層際立っている。志位委員長は1月7日のNHK番組で「立憲、社民党自由党民進党に真剣な政策対話と候補者調整のための協議を呼び掛けたい」と改めて表明し、各党に対して月内に正式に申し入れる意向を示した。だが、立憲民主党は「共闘」という言葉は決して口にしない。「時間がないようであるので、慎重に検討していきたい」。立憲の枝野幸男代表は1月4日の記者会見で、参院選共産党が新たに掲げた野党各党との「速やかな政策対話」について、急がずに対応する考えを示した。スピード感を求める共産党とは対照的な姿勢だ(時事通信、2018年1月8日)。

 立憲民主党が来夏の参院選に向けた共産党の申し入れに対して曖昧な姿勢を崩さないのは、昨年総選挙直前の民進党の解体によって野党共闘が瓦解し、有権者の大きな失望を招いたことが背景にあるからだ。今年になってからの世論調査はまだ実施されていないが、昨年11月段階での野党連携のあり方に関する世論調査はいずれも消極的な結果に止まり、野党共闘に対する国民の期待が急速に薄れたことを示している。

 共同通信世論調査(2017年11月1,2日実施)では、「あなたは、今後の野党の在り方についてどう思いますか」との問いに対して、「できるだけ多くの野党が一緒になり、政権交代を目指す政党をつくる」19.3%、「野党はそれぞれの党を維持した上で、協力して与党に対抗する」37.8%、「野党は、政策課題ごとに与党に是々非々で対応する」34.9%と、野党共闘に対する国民の関心は必ずしも高くなかった。また、同日に実施された読売新聞世論調査においても、自民党に対抗する野党連携のあり方に関しては、「共産党を除く野党が連携した方がよい」32%、「共産党を含む野党が連携した方がよい」30%、「野党が連携する必要はない」28%と意見が大きく分かれた。

 こんな世論動向からして、立憲民主党は来年の参院選の行方を左右する1人選挙区での共産党との候補一本化や政策一致の必要性を一定認めるものの、明確な共闘関係を構築すれば共産党嫌いの保守票や無党派票が逃げる恐れがあるので、いつまでも曖昧な態度を続けているわけだ。だが、昨年総選挙で「トンビ(立憲民主党)に油揚げ(浮動票)をさらわれた」共産党が、今度はおいそれと一方的協力をするとは思えない。志位委員長も小池書記局長もそのことを繰り返し言明しているのだから、立憲民主党共産党が自主的に候補を取り下げるようなことを期待しない方がいい。

 まさに2018年の新春はこのように「視界不良」というほかないが、私は次回以降の世論調査の動向で事態は大きく変わると楽観している。結論を先に言えば、立憲民主党への政党支持率が低下するにしたがってこのまま曖昧な態度を続けることが許されなくなり、何らかの決断を迫られる時が迫っていると言うことだ。希望の党が急速に支持を失った反動で立憲民主党への支持が急上昇したが、いつまでもこの支持率が続くとは思えない。政党としての真実味を示さなければ、希望の党と同じく「泡」の如く消えていくことも否定できない。さて、新春に立ち込めていた深い霧がやがて晴れるとき、そこに現れてくる次の局面はいったいどんな光景なのか。目を凝らして今年もウォッチングを続けたい。(つづく)