民進党解体劇のお膝元京都、希望・立民・民進の〝三すくみ状態〟を分析する(1)、立憲民主を軸とした新野党共闘は成立するか(11)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その98)

 京都新聞は、昨年暮れの前原民進党前代表の独占インタビューに引き続き、今年に入ってから各党代表に「安倍1強政治」に対する姿勢や対応のあり方などについてインタビュー記事の連載を始めた。連載は1月5日から12日までの計8回、自民党から京都党(地域政党)まで10政党の代表がインタビューに応じた。

 京都は古からの政争の地で、NHKの大河ドラマ西郷どん」でも京都は舞台として欠かせない。そんな京都でいま、世にも奇妙な政争が展開している。言うまでもなくそれは、民進党解体後に希望の党立憲民主党民進党の間で訳の分からない駆け引きが続いていることだ。以下、その当事者である泉健太氏(希望の党京都府連会長、衆院国会対策委員長)、福山哲郎氏(立憲民主党京都府連会長、党幹事長)、安井勉氏(民進党京都府連会長、京都市会議員)の言い分を聞いてみよう(抜粋要約)。

泉健太氏】
―1強体制を強める安倍政権をどう評価するか。
 「アベノミクスは地域経済や国民生活の向上に結びつかず、投資家だけが評価している。有効求人倍率は上がったが、所得は伸びず、格差が広がった」
―安倍政権にどう対峙するか。
「森友・加計問題のように疑惑追及、抵抗戦術一辺倒にならず、国民の共感を得られるような本格論戦を重視する。外交・安全保障、経済政策、(中福祉中負担の)『オールフォーオール』を目指している社会保障などで政策を変えていきたい」
自民党が主導する改憲論議へのスタンスは。
憲法を議論し、時代に合わせることは賛成だ。首相の衆院解散権の制約、知る権利、緊急事態条項、教育無償化、地方自治について議論し、優先順位アが高い内容の改正を目指せば良い。だが、改憲イコール9条改正ではない。党としては自衛隊を合憲と考えている。安倍政権の掲げる9条への明記はおかしく、日程を決めて論じるものではない」
希望の党の立ち位置や政策が見えにくい。
民進党自民党に代わる本格政党を目指し、共産党にもくみしないという中道政党として歩み、広範な国民の支持を集めた。これを継ぎたい。政権を担当できる陣容を整えるため、野党再編に向けた統一会派の結成など、旧民進系の仲間とは可能な限り大きなかたまりをつくっていきたい」
―(希望の党)府連は衆院議員4人だけだ。今後の選挙で勢力を拡大するための戦略は。
民進との信頼関係を優先するため、民進地方議員には入党を呼び掛けない。選挙では連合京都とも連携し、候補者を擁立していく。4月の府知事選では、知事与党会派の民進府議団の意向を尊重したい。来年の統一地方選には民進の現職や新人、無所属を軸に応援する。地域政党を作って立ち上げることもあり得る」

福山哲郎氏】
 ―6年目に入った安倍政権の評価と対応は。
 「昨年の衆院選で、与党の議席は3分の2のままだったが、比例票は与野党でほぼ五部という大きな変化があった。政権の支持率と不支持率も拮抗しつつある。アベノミクスで株価が上昇したが、想定したほどの輸出の増加はなく、物価も上昇していない。人手不足なのに実質賃金は下がり、生活が豊かになる実感はない」
改憲論議に対する市政は。
「首相の衆院解散権の制約、知る権利といった人権を確保する改憲の議論はすべきだ。ただ、安倍政権が進める自衛隊を9条に位置づける改正には反対だ。むしろ、改憲国民投票で低投票率でも過半数の賛成があれば成立したと見なしてよいのか、といった議論が先だ」
―政権獲得に向けた道筋をどう描くか。
「理念や政策に賛同する仲間を増やすため、来年の統一地方選参院選で多くの候補を擁立する。政権交代可能な二大政党の一つの核になる政党を目指すが、永田町の数合わせにくみするつもりはない」
京都府連の方針は。
「京都では『非自民・非共産』を掲げて府民から支持を得てきた。親近感のある民進党時代の仲間や、連合京都との友好関係を優先したいので、いずれの選挙でも共産党との共闘はない」「国政の混乱を押し付けてしまった地方議員については、立憲民主への参加を歓迎したい。統一地方選では、民進系現職がいる選挙区にいたずらに立てるつもりはないが、調整しつつ擁立する。4月の府知事選は、民進府議団の意向を尊重して対応を考える」

【安井勉氏】
  ―安倍政権5年の評価は。
集団的自衛権行使を認めた安全保障関連法の国会審議を強引に進め、森友・加計学園問題では疑惑が解明し切れていない。アベノミクスは株価や一部企業の利益を上げたものの、労働者の給料は上がらず、可処分所得は減っている」
―党の憲法改正へのスタンスはどうあるべきか。
 「憲法公布70年が過ぎ、国内外の情勢変化にいかに整合させてゆくか考える必要はある。ただ、平和主義を守ってほしいという声も根強い。こうした状況の中で改憲論議を無理に進めても国民を分断する可能性がある。憲法の在り方を議論する必要はあるが、最優先事項ではない」
 ―野党が乱立している。安倍政権にたいじできるか。
 「安倍政権の1強を変えるため、野党で一のかたまりを形成する必要はある。ただ、まずは民進から分裂した希望の党立憲民主党との3党間でどう協力関係を築くかを優先してほしい。すぐ一緒になるのはハードルが高いが、統一会派を組むところから始めれば良い。その後、社民党自由党との共闘に進めてほしい。一方、共産党とは共闘できず、『非自民・非共産』で歩んできた立ち位置は堅持するべきだ」
民進京都府連はいったん解体すべき、と発言していた。4月の府知事選にどう関与していくのか。
「昨年の衆院選希望の党への合流と事実上の解党を決め、公認候補を出さなかった以上、国政での役割を終えた政党だ。党の低い支持率からも有権者の気持ちが離れてしまったのは明確だ。ただ、府知事選には自民党公明党との知事与党の枠組みで選挙に臨めるよう、当面は府連を維持していく」
―来年の統一地方選への対応は。
「府知事選が終わると統一地方選まで残り1年を迎えるので、そこで民進府連を存続するか、どうかを判断する」

以上、引用ばかりの長文になってしまったが、実はこの3者の間の微妙な立ち位置の違いが今後の野党共闘の行方に大きな影響を与えることは間違いない。次回から希望・立民・民進の〝三すくみ状態〟を分析する。(つづく)