国政と地方政治は別か、京都府知事選で自公与党にまたもや相乗りした旧民進系3党に批判集まる、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その111)

 2018年4月8日投開票の京都府知事選(投票率35・2%)は、旧民進系3党の無節操ぶりを象徴するような選挙結果となった。国政では自公与党に対して激しいバトルを繰り広げている旧民進系3党(希望、立民、民進)が、またもや(いつものように)与党候補に相乗りし、激しい府民の批判に曝されたのだ。選挙結果は、自民・公明・希望・立民・民進5党が推薦した西脇候補は40万票余り(56%)しか得票できなかったのに対して、共産が単独推薦した福山候補が32万票弱(44%)を獲得し、その差は8万5千票だった。

 この選挙結果を伝えた各紙は、読売・産経・日経が「西脇さん 歓喜の初V、『子育て支援進める』」(読売)、「西脇氏『府政を継承・発展』、府民の安心最優先に運営」(産経)、「京都知事に西脇氏、子育て日本一打ち出す」(日経)ともっぱら相乗り候補に焦点を当てたのに対して、その他の各紙は「京都知事選 苦戦の相乗り、政権批判票?共産系得票伸ばす」(朝日)、「西脇氏 新人対決制す、共産推薦・福山氏が善戦」(毎日)、「府知事選に西脇氏 低投票率直視を、政策論争の高まり必要」(京都)と批判の目を向けた。赤旗が「『8対2』の力関係変えた、得票率 過去40年で最高、京都知事選 福山氏 無党派5割・立民支持6割が投票」と大喜びしたのは言うまでもない。

 詳しい選挙分析はこれからだが、地元の京都新聞の「選挙コラム・アングル」(4月10日)が面白い。その中から幾つか注目すべきコメントを抜粋して紹介しよう。
 ―初当選した西脇隆俊さんを推した五つの政党が、京都府知事選をどう総括するか。「勝てればそれでよい」「40万票を切らなくて格好はついた」「京都市内では予想以上に相手に迫られた」。この程度の振り返りに終わり、深い省察がないとしたら事態は深刻だ。直視しなければいけないのは、35%という丁重な投票率だ。大きな要因が国政与野党の相乗りにあるのは否めない―
 ―「国と地方は別」という理屈を全否定しないが、今回の府知事選ではその過程が余りにも不透明過ぎた。昨年12月に山田啓二知事が不出馬を表明した後、4期16年の評価や新知事像を巡る議論は政党から強く発信されることなく、「枠組みありき」で西脇さんの擁立へと動いた。理由を聞けば、長く京都の政治に関わっている人ほど、「革新府政に戻してはいけない」と40年も前の政治情勢を根拠に説明する―
 ―それが実感だとしても、相乗りの動機は別のところから生まれてきているように感じた。衆院選小選挙区が導入されて20年余り。大局的な視野で政治を語るよりも、目先の選挙勝利を優先する傾向が強まった。自らの都合で不意打ちの衆院解散・総選挙を繰り返し、勢力維持を図る安倍晋三首相の政治手法が、地方政治にも及んでいるのではないか―

 京都は政争の地だ。それも大義や政策ではなく〝非共産〟という(訳のわからない)旗印の下で展開される「政争」なのである。この旗印の下であれば、「安倍政治を許さない!」と国会前でマイクを握っている希望の党議員の面々は勿論のこと、国政では「数合わせをしない」と大見得を切っている立憲民主党も難なく自公与党の下に馳せ参じるのである。

〝非共産〟カードが、京都では「スペードのエース」になるのはなぜか。それは京都府議会・京都市議会をはじめとして、府下一円の市町村議会で「(非共産)オール与党体制」ががっちりと確立されているためだ。この仲間内では与党も野党もなく、「ボス」と「パシリ」がいるだけだ。彼らの間では相乗りで担いだ首長の下で利益を分け合う仕組みが完成しており、ちょっとやそっとでは崩れない構造体を形づくっている。「うまい汁」を吸うためには「大義や政策は要らない」という政治慣行が確立し、それが「ポスト革新府政」の原理として40年間の長きにわたって延々と続いてきたのである。

だが、今回の京都知事選ではその一角が崩れたことが新しい特徴だ。投票率は低いものの、京都市内では票差が接近し(西脇19万5千票、福山16万9千票)、なかでも希望の党・前原氏の選挙区(左京区)で福山2万4千票が西脇2万1500票を上回ったことが特筆される。直前の2017年衆院選小選挙区)では、前原氏(当時無所属、現在は希望の党)は左京区で3万3600票を獲得し、自民候補の1万8千票を加えると相乗り陣営には5万2千票近い基礎票があったことになる。これに対して共産票は1万7千票余りだから、3倍近い差があったにもかかわらず今回は形勢が逆転したのである。

このことの意味するものは決して小さくない。京都新聞の事前世論調査では「(相乗りについては)矛盾しており、理解できない」が46%に上り、「理解できる」42%を上回っていたが、それが左京区1区だけとはいえ現実の選挙結果となってあらわれたからだ。京都市内ではその他の行政区でも1千票台の差が北区、上京区、中京区、東山区、南区と目白押しに並んでおり、相乗り体制がそろそろ限界に達してきたことを予期させる。

次の2020年京都市長選が楽しみだ。相乗り現市長が出馬するかしないかは別として、その時の政治情勢次第では40年以上にもわたって続いてきた相乗り体制が崩壊するかもしれない。京都市長選では、これまでも市民活動家や弁護士出身の革新系候補が数百票の僅差にまで相乗り候補を追い詰めたことがある。福山氏はその伝統を引き継げる素晴らしい候補なので、京都にも新しい風が吹いてくるかもしれない。尤もその時は保守陣営が総決起して投票率を飛躍的に上げてくることが確実だから、良識ある保守票を獲得するための戦略、戦術を用意しておかなければならないが。(つづく)