権力は腐敗する、安倍1強政治は絶対に腐敗する、安倍首相の日米首脳会談の目的はトランプ大統領との「私的取引」(ディール)にある、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その112)

 このところ、聞くに堪えない、見るに堪えない「底なし」の腐敗現象が目の前に広がっている。モリカケ問題に象徴される安倍首相(夫妻)の国政私物化の事実を隠すため、国会では閣僚や官僚の虚偽答弁が相次ぎ、さらには答弁との矛盾がないように大規模な公文書の改ざんまでが行われる始末。ウソを隠すためにウソを積み重ねるという「底なし」の絶対的腐敗現象が、国家統治機構全体に広がっているのである。

 加えて、「ノーパンしゃぶしゃぶ」以来といわれる財務官僚の退廃ぶりが赤裸々に暴露され、安倍1強政権の奉仕者となった官僚機構の腐敗現象がトップにまで及んでいる醜悪な事態が明らかになった。女性記者の人権を「言葉遊び」など称して散々蹂躙してきた福田財務次官が遂に辞職(更迭)に追い込まれ、福田次官の「人権擁護」を口実に真相の解明を妨害してきた麻生財務相も、漸くその政治責任任命責任から逃れられない破目に陥ったのである。

 こんな折も折、安倍首相は内政の矛盾を外交で逸らすためか、トランプ大統領とのトップ会談に臨んでいる。しかも、疑惑渦中の昭恵夫人や柳瀬審議官(元首相秘書官)を引き連れての外交日程だ。米朝首脳会談直前の緊張した国際情勢の下で、ゴルフや宴会に同席する(だけの)昭恵夫人を同行させる必要がどれだけあるのか、国民の財産である国有地をタダ同然で払い下げる切っ掛けを作った昭恵夫人を国民の税金で外遊させることが果たして許されるのか――、こんな国民の疑惑や不信感を一切無視しての訪米だ。

 おそらく帰途の機中では、福田財務次官更迭後の政界対応や柳瀬審議官の国会喚問などへの対策をめぐって関係者の間での「鳩首協議」が行われるのだろう。安倍政権にとって未曽有の難局となったこの事態をどう乗り切るか、頂点に達している国民の不信感をどうやわらげるか、低下一方の内閣支持率をどう回復させるか、そのための起死回生の一打はあるかなどなど、関係者の間で集中協議が行われるのであろう。

 そう考えると今回の日米首脳会談の目的は、日米外交交渉などといった表向きの体裁はともかく、安倍首相の政権危機を乗り切るためのトランプ大統領との「私的取引」(ディール)になる公算が大きい。今回の安倍首相の最大の訪米目的は、おそらくはトランプ大統領から「拉致問題」解決のための約束を取り付けること、そのことを梃子にして国民の目を内政問題から逸らして世論の支持を回復させることにあるのだろう。だから、政権の危機を脱するためには国益などはお構いなしにトランプ大統領との「私的取引」に応じる可能性が高いということだ。

安倍首相は、かねがね北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威を「国難」と喧伝することで自らの政権基盤を強化してきた。先の総選挙では選挙戦略として「北朝鮮問題」を取り上げ、その脅威を振りまくことで国民の不安を煽り(ミサイルからの避難訓練まで実施させた)、右派勢力を結集させた。また、1基1千億円ともいわれる「陸上型イージス」(ミサイル防衛システム)をアメリカから導入することについても早速予算化させた。いわば、安倍首相にとっての北朝鮮問題は「虎の子」なのであり、その時々の政治情勢に応じて自由に利用できる効果満点のカードなのである。

しかし、安倍首相にとっても泣き所はある。言うまでもなく、拉致問題の解決が遅々として進まないことだ。圧力一辺倒の安倍首相の方針に北朝鮮が応じるはずもなく、そのことが拉致家族や国民世論の厳しい批判を招き、新たな打開策が求められていた。進退窮まっていた安倍首相に対して、その窮状を打開する「千載一遇の機会」「最初で最後のチャンス」を与えたのが、今回の米朝首脳会談ではなかったか。

安倍首相は、自らが招いた国政私物化による政治危機を回避するために、そして懸案の拉致問題を解決するため、今回の日米首脳会談をフルに利用しようとするだろう。そのためには、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の一方的要求に応じることも厭わないだろう。それが日米貿易の2国間交渉であろうと、TTPへの譲歩であろうと、アメリカからの武器輸入であろうと、如何なる代償を払ってでも自らの政治危機を乗り切るためにはトランプ大統領の要求を呑むのではないか。

安倍政権の危機は、モリカケ問題に象徴される国政私物化から生じた。その危機を脱するために、安倍首相は「拉致問題カード」をトランプ大統領との「私的取引」(ディール)に利用しようとしている。自らの私益のためには国益も顧みない――、ここに究極の安倍政権による国政私物化の姿があらわれている。(つづく)