番外編、神戸市副市長の任期途中解任と市職労幹部の「ヤミ専」問題発覚の背景、身辺雑話(3)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その126)

つい最近のことだ。9月9日(日)の午後、市民団体の主催で「三宮再整備構想を考えるシンポジウム」が神戸三宮で開かれた。暫らく鳴りを潜めていた市民団体が久しぶりに大同団結し、神戸市政の目下の最大テーマである三宮再整備構想(以下、市プロジェクトという)の課題や問題点を考えようというのである。このシンポが単なる告発集会ではなく、市プロジェクトの問題を具体的に検証する学習・討論集会として開催されたことは高く評価される。シンポで開示された関係資料は貴重なもので、今後の検討材料としても大いに役立つに違いない。また、隣接する明石市の市民団体による駅前再開発事業の報告は、神戸市プロジェクトに対する鋭い警告となった。

このシンポの特徴は、市民団体だけではなく市議会野党各派(新社会、共産、無所属など)の市会議員の参加があったことだ。各市議から報告された市プロジェクトの問題点の指摘は、市民の知らない市の内部情報が数多く含まれており、神戸市政の(変わらない)実態や問題点が浮き彫りになった。この成果は、今後市議会でも大いに生かされることになるだろう。ここでは三宮再整備構想の内容を論じることが主目的ではないので概要紹介にとどめるが、市プロジェクトの中核事業は三宮駅前の超高層ツインタワー建設であり、このほど事業者として三菱地所が選ばれた。三菱地所は、東京・丸の内やグランフロント大阪など駅前再整備事業を手掛けた実績を評価され、神戸三宮でもオフィスを中心とするツインタワー建設計画を具体化するのだという(神戸新聞2018年9月11日)。

9・9シンポに参加した私は、『神戸百年の大計と未来』を書いた視点から市プロジェクトをめぐる庁内事情を次のように分析した。
(1)阪神大震災復興事業の大失敗によって、都市づくりの点でも財政運営の点でも失地にまみれていた神戸市政にとって、市政の抜本的再検討に取り組む機会は矢田市政による大リストラが終わった時点だった。この時期はまた久元市政(総務省元局長、市副市長への天下りを経て現職)への移行期でもあり、本来なら市長と官僚機構が率先してこの課題に取り組むべきだったが、両者が互いに様子見の状態にあったため、新しい一歩を踏み出すことができなかった。この間、70年余にわたって開発行政を推進して来た市官僚(テクノクラート軍団)が都市計画部門を中心に結束し、自らの失地回復のために用意したのが三宮再整備構想だと思われる。市長は事態の進行に気付かないわけではなかったものの、庁内の力関係で明確な意思表示を示すことはなかった(できなかった)。
(2)転機を迎えたのは、久元市政が第2期に入ってからのことである。大量得票で政治基盤を固めた市長は、当選直後の人事(2017年10月28日)で市プロジェクトの中心・鳥居副市長(都市計画局出身)の退任を決定し、鳥居副市長の後任には総務省時代の部下である寺崎氏を充てた(2018年4月1日)。なお、市プロジェクトは、鳥居副市長の退任後も岡口副市長(住宅・都市担当)の下で継続された。
(3)第2の転機は、玉田副市長の任期途中の解任(2018年8月31日)によって幕を開けた。これで副市長は岡口氏(みなと総局長出身)、寺崎氏(総務省官僚)の2人体制となるが、近く総務省から3人目の副市長を迎える準備が進んでいるというので、副市長3人体制のうち2人が総務官僚出身となる。これで久元体制は名実ともに整うことになる。
(4)問題は、岡口副市長所管の市プロジェクトの行方だろう。現在、市プロジェクトが凄まじいスピードで進んでいるのは、岡口副市長が担当を外れる(新しい副市長へ市プロジェクトが移管する)前に、一定の既成事実を積み上げたいとする市官僚側の思惑が働いているからではないのか。市長はこの事態に対していったい如何なる判断を下すのか。

注目すべきは、玉田副市長(人事、総務、財政担当)の解任直後から市職労幹部の「ヤミ専」問題がマスメディアで一斉に浮上したことだ。9月4日の神戸新聞は次のように報じた。
「神戸市の一般行政職員でつくる市職員労働組合(約9千人)の複数の本部役員が少なくとも2015年以降の一定期間、組合活動に従事して勤務実態がほとんどないのに市から給与を支給される『ヤミ専従』状態だった疑いがあることが3日、分かった。市から支払われた給与は数千万円になるとみられる。市人事課は『ヤミ専従かどうか把握できていないが、あらためて確認する』としている。(略)市職員が組合活動に専従する際は、地方公務員法に基づいて年度ごとに市長の許可が必要となり、専従期間中は無給となる。しかし、市関係者によると、役員の1人は15〜17年度、許可を得るための手続きがされていないのに所属部署にほとんど出勤せず、事実上業務に携わっていなかった。同様に、専従許可を取っていない別の役員は18年度、いったん所属部署に出勤するものの、ほぼ連日午前中のうちに職場を離れていたという。この役員2人は通常勤務の扱いのまま給与を受け取っていたという。市人事課によると、18年度は市職員本部の役員12人のうち専従は3人。残りの9人について『勤務実態はこれまで把握してこなかったが、詳細な調査を行う』とした(略)」

また、産経新聞も同日、神戸市の「ヤミ専」問題の背景について次のように解説している(9月4日)。
ヤミ専従は、かって大阪市など全国の自治体で相次ぎ問題化し、国側は『ながら条例』の厳格な運用を求めるなどしてきた。その後、是正されたとみられていたが、神戸市ではいまだ〝悪しき慣例〟が残っていた。大阪市では平成16〜17年、組合幹部によるヤミ専従カラ残業といった職員厚遇問題が発覚。市の調査で組合幹部129人がヤミ専従により、17年1月から4カ月で計1万400時間以上の給与を不当に受けていたことが判明した。問題を受け、総務省は全国の自治体に『ながら条例』の運用適正化を通知。22年に公表された同省の調査結果では、条例の範囲を逸脱した組合活動を認めたり、勤務時間中の組合活動を『口頭承認』や『手続きなし』で認めたりする自治体は、都道府県や神戸市を含む政令市レベルではゼロになったとしていたが、実態は異なっていたとみられる」

だが、事態はこれで止まらなかった。次回以降は、その劇的展開と背景について分析しよう。(つづく)