参院選京都選挙区、立憲民主党・国民民主党は「共倒れ」するか、統一地方選と参院選を控えて野党共闘はどうなる(4)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その144)

 参院選京都選挙区の立憲民主党と国民民主党の候補者が並立する中で、国民民主党関係者や連合京都はもとより、メディアの間でも両党候補の「共倒れ」の可能性が囁かれている。連合京都会長は昨年10月に国民候補の推薦を機関決定しているにもかかわらず、1月11日に開いた新春旗開きでは「立憲、国民には候補者一本化の協議を改めて要請したい」と異例の呼びかけを行った(各紙、2019年1月12日)。

 過去3回(2010年、13年、16年)の参院選京都選挙区の党派別得票率の推移を見ると、自民28%、37%、40%、民主43%、19%、37%、共産17%、21%、20%となり、自民・共産が組織票によって比較的安定した得票率を維持しているのに対して、民主の得票率はその時の政治情勢による変動幅がかなり大きい。民主は無党派層などの浮動票に頼る割合が大きく、このためその時々の政治情勢の影響を大きく受けるのである。

 前原氏も福山氏もこのことはよく承知しており、無党派層の支持をどう獲得するかが選挙戦のカギになると考えている。だがこの点、前原氏の歩はいささか(というよりは非常に)悪い。野党第一党を解党に導いた記憶は有権者の間でいまだ薄れていないし、国民民主党の世論支持率も著しく低い。前原氏自身も(表向きは)民主党解体の「戦犯」であることは認めざるを得ない十字架を背負っており、無党派層の浮動票頼みだけでは勝てないことは十分に承知している。だからこそ、「共犯」関係にある神津連合会長の後押しで、連合京都の組織力にすがるほかないのである。

 これに対して、福山氏は強気一方だ。彼が主導して発掘したレズビアンを公言する女性候補を、社会の多様性を重視する党の象徴的な候補と位置づけ、無党派層からの大量得票を見込む。立憲民主党の世論支持率が高いことも選挙戦を戦う上での有利な条件であり、京都選挙区が立憲民主党の「必勝区」となっていることからも、選挙戦においては幹部多数の応援も期待できる――というわけだ。

 枝野代表や福山幹事長からすれば、参院選京都選挙区での戦いは前原氏の牙城を切り崩す絶好の機会でもある。枝野代表はこの間、国民民主党から国会議員を引き抜くことで同党の弱体化を着実に推し進めてきているが、参院選京都選挙区では国民との連携を拒否して前原氏の影響力を一挙に削ぐ方針であることは間違いない。国民候補が惨敗すれば、前原氏の政治力は一気に低下し、次期衆院選での自らの議席確保も容易でなくなる。立憲民主党による国民民主党解体作戦の第一歩が、実は参院選京都選挙区での戦いの本質なのである。

 立憲民主党女性候補の擁立は、共産党現職の女性候補にとっても侮れない強敵となる。性的少数者(LGBT)の代表として若い女性候補が登場するとなると、昨今の世論状況から見て選挙戦の流れが一挙に変わることも十分にあり得るからだ。それに共産現職は自民現職のように盤石の票田を持っているわけでもなく、2013年参院選の得票率は21%にすぎない。共産候補の議席は、維新候補が16%を得票することによって民主候補の得票率が19%に沈んだ結果、相対的に獲得したものにすぎない。いわば「漁夫の利」による勝利であり、真っ向勝負による当選でないことを十分考慮に入れておかなければならない。

 このような複雑極まる京都の政治情勢から考えると、「絵に描いたような野党共闘」あるいは「本気の野党共闘」が全国的に直ちに実現するとはおよそ考えにくい。地域によっては1人区で「政策協定付きの野党共闘」が成立することがあるかもしれないが、そんな事例はごく少数にとどまり、多くの選挙区で候補者一本化が実現したとしても、単なる棲み分けによる「名ばかり野党共闘」に落ち着く可能性が高い。次期参院選は「野党共闘」という名の政党間の駆け引きが主たる側面であり、本格的な野党共闘には程遠い。

 昨年12月25日付の朝日新聞の解説記事「『多弱』野党 進まぬ共闘」は、野党共闘の複雑な局面を分析していて面白い。この中で立憲幹部は「国民は来年の参院選までの政党。今後起こるのは弱肉強食だ」「まずは参院選で国民を解体し、政権との対決はその次の衆院選」だとする「立憲の2段階戦略」を展開している。枝野代表や福山幹事長の言動を見れば、この2段階戦略はあながち荒唐無稽な噂話とは思えない。

野党共闘の「フィクサー」といわれる小沢自由党代表の動きもまた複雑だ。ある時は「立憲、自由、社民3党による統一会派構想」を打診したかと思えば、次は踵を返して国民と「非共産、非立憲」の統一会派結成を画策する。また、橋下氏と前原氏の定期的な会食にも参加して橋下氏の政界復帰を促すなど、その行動は変転極まりない(同上)。小沢氏が政界から退場する時期はもうそこまでやってきている。

今後、参院選が近づけば近づくほどこのような動きが一段と激しくなるであろうが、好むと好まざるにかかわらず、最大野党である立憲民主党の「2段階戦略」に沿って事態が展開するように思える。そのシナリオはどのようなものか、推測を交えて考えてみたい。
(1)枝野代表の政権交代構想は、「安倍政権打倒」ではなく「ポスト安倍政権奪取」に向けられている以上、夏の参院選では「政権交代」のための野党共闘を構築する必要はなく、立憲民主党の党勢拡大に利するものであればよいと考えている。
(2)このため、政権交代を求めて野党間の本格的な政策協定を主張する共産党とは形式的な話し合いに止め、結果として候補者の一本化が実現すればよいと言うのが本心であろう。立憲民主党にとっては、前回の衆院選のように共産党が一方的に候補者を降ろして共産支持票が立憲民主党に流れる状況をつくるのが「最高の形」であるが、それが実現しなくても「リベラル政党」としてのイメージを維持しながら実質的な棲み分けができればよいのである。野党共闘は、立憲民主党が「リベラル政党」としての衣をまとうためのパフォーマンスである側面が大きい。
(3)次期参院選あるいは衆参同日選で立憲民主党が躍進すれば、国民民主党を始め自由党、維新の党などの第三勢力は自ずと消えていくものと考えられる。政界が「保守」「中道保守」「革新」の3潮流に再編され、立憲民主党が「リベラル政党」から「中道保守政党」へ衣替えする時がやってくる。その時から「保守(の一部)」と「中道保守」の連携を通して「保守本流政権」を構築するための政党再編が始まり、立憲民主党がその中核となる――これが枝野代表の抱く政権構想であろう。(つづく)