2025大阪万博誘致の成功が維新の〝過大幻想〟を生んだ、大阪ダブル選挙での維新敗退は安倍政権崩壊の引き金になるか(1)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その145)

 

 

 昨年暮れまでの大阪は「2025大阪万博」一色だった。大阪府民や大阪市民が別に浮かれていたわけではない。維新代表の松井府知事や吉村大阪市長が政治生命を賭けて誘致活動に奔走し、それを支援するマスメディアが大々的にキャンペーン活動を繰り広げてきたからだ。そして2018年11月、パリで開かれた博覧会国際事務局の総会で大阪開催が決まった直後から、松井知事の(思い上がった)暴走が始まった。大阪万博誘致の成功が松井氏の自信を高め(過信を深め)、それを背景に都構想住民投票を早期に実施したいとの決意を固めさせたのだ。

 

 だが、維新は府議会・大阪市議会の両方で過半数を制していない。前回の都構想住民投票では、菅官房長官と創価学会最高幹部の画策により大阪公明はやむなく住民投票実施の賛成側に回ったが、学会員の反発が強くて選挙離れを招く結果となり、「百戦全勝」の陣営がその後大きな打撃を受けることになった。しかし、懲りない面々のこと、大阪公明は2017年4月に維新と水面下で「合意書=都構想住民投票実施に関する密約」を交わし、維新との関係を保つことで国政選挙での「選挙区棲み分け」を何とか維持したいとまだ考えていたのである。

 

 これに対して松井氏は、いつまでも煮え切らない公明に「これ以上待てない」と強硬姿勢に転じ、昨年末には合意書を暴露して住民投票の早期実施を迫った。公明が応じない場合には、松井知事と吉村大阪市長が今年3月に任期途中で辞任し、入れ替わって知事・市長選挙に出馬するという強硬策に打って出たのである。どこでどう食い違ったのか知らないが、あるいは振り上げた拳を降ろせなくなったのか、結果は図らずも「入れ替わりダブル選挙」が実施されることになった。

 

 これに対して自民は、府知事候補に小西元副知事、大阪市長候補に柳本元市議を擁立し、他党派を含めた「維新対決候補」として目下態勢を固めつつある。すでに公明と連合大阪が小西・柳本両氏の推薦を決め、立憲民主、国民民主、共産、社民などの各派もこれに続くと見られる。2015年大阪都構想住民投票では公明が自主投票の立場をとり、投票結果は僅差で否決される形に終わったが、今回の「入れ替わりダブル選挙」では公明が対決姿勢に転じたため、維新側の劣勢は否めない。それでもなお、松井維新代表が強気姿勢を崩さないのはなぜか、その裏に安倍首相や菅官房長官の「隠れ支援」があるからではないのか...などなど疑問は尽きない。

 

 それでも安倍首相は、自民大阪府連の要請に応じて小西・柳本両氏と一応会見して激励の言葉をかけたと言う。真意はともかく表向き自民党総裁としての対応だったのだろうが、この「入れ替わりダブル選挙」の及ぼす影響は単なる一地方首長選挙の域にはとどまらない。もし、維新両氏が敗北すればもちろんのこと、どちらかが敗れても政界に及ぼす影響は多大なものがある。これまでの安倍首相や菅官房長官の維新幹部との密接な人間関係からすれば、大阪ダブル選挙での維新敗北は安倍政権への打撃となり、政権崩壊の引き金にならないとも限らないからである。

 

 今から1年前、2018年3月に大阪府の18歳以上の男女を対象にして行われたNHK世論調査『大阪 万博誘致などに関する意識調査』では、まだ態度を決めかねている有権者が多かった。以下は、調査結果の概要である。

 

 〇政府や大阪府が2025年に万博を大阪に誘致することを目指していることについて――、「賛成」46%、「反対」11%、「どちらとも言えない」39%

 〇大阪府はカジノを含むIR・統合型リゾート施設を誘致することを目指していることについて――、「賛成」17%、「反対」42%、「どちらとも言えない」34%

 〇大阪府や大阪市の議会では、大阪府や大阪市の行政の仕組みを変える「大阪都構想」や「総合区」が議論されていることについて――、「とても関心がある」13%、「ある程度関心がある」25%、「あまり関心がない」31%、「まったく関心がない」11%

 〇「大阪都構想」は大阪市を無くして、今の24の区を4つの特別区に再編し、区長は選挙で選ぶというものです。一方「総合区」は大阪市を残したまま、今の24の区を8つの区に再編し、区長は大阪市長が選ぶというものです。これらの構想について貴方はどう考えるか、次の3つの中からお答えください――、「『大阪都構想』に賛成」27%、「『総合区』に賛成」18%、「どちらにも反対」33%、「わからない、無回答」23%

 

 「入れ替わりダブル選挙」が決まった現在、近く緊急世論調査が実施されるだろうが、その結果や如何に...最新の結果を知りたいと思う。(つづく)