維新候補が知事選・大阪市長選ともに先行、大阪ダブル選挙での維新敗退は安倍政権崩壊の引き金になるか(4)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その148)

 

 

 新元号が発表される予定の2019年4月1日、各紙朝刊(大阪本社版)は、読売新聞を除いて大阪ダブル選挙情勢調査(大阪府民・大阪市民対象、3月29~31日実施)の結果を大きく報じた。朝日・毎日両紙は一面トップで、府知事選・大阪市長選のいずれにおいても維新候補が先行していることを伝えたのである。一瞬目を疑ったが、朝日の見出しは「松井氏 やや先行、大阪市長選、柳本氏激しく追う」「知事選 吉村氏一歩リード、追う小西氏」、毎日は「大阪知事選 吉村氏リード、市長選 松井氏やや優位、3割近く態度未定」というもの。驚くと同時に、大阪維新の浸透力にいささかの不安を覚えたことは否定できない。朝日は単独調査、毎日は共同通信・日経・産経など5社との共同調査(分析は独自)なので、ここでは基本的に2種類の世論調査について分析することにしよう。

 

朝日の情勢調査は「質問と回答」を掲載していないので、記事本文から調査結果を要約する。

〇府知事選、前大阪市長の吉村氏が維新支持層を固め、無党派層からも6割近い支持を得ている。元副知事の小西氏は、公明支持層を固め、立憲や共産支持層から一定の支持を得ているが、自民支持層の支持は5割弱にとどまる。

〇大阪市長選、前府知事の松井氏が維新支持層を固め、自民支持層の支持も取り込んでいる。元自民大阪市議の柳本氏は、自民支持層を固められず、無党派層の支持は松井氏と分け合う。

〇一方、情勢調査と合わせて行った世論調査では、維新が実現を目指す大阪都構想の賛否に関しては、大阪府民「賛成36%、反対28%」、大阪市民「賛成43%、反対36%」。入れ替わりダブル選挙に関しては、大阪府民「評価する27%、評価しない49%」、大阪市民「評価する33%、評価しない51%」だった。

 

毎日他の調査は、各紙によって「質問と回答」の項目が一部省略されているものの大略を知ることができる(※カッコ内は大阪市の有権者)。

〇大阪ダブル選に関心がありますか。「大いにある33.7%(38.6%)」「ある程度ある49.1%(44.3%)」「あまりない13.4%(13.4%)」「まったくない3.7%(3.6%)」

〇府議選で投票する候補者の政党・政治団体は。「大阪維新の会38.4%(36.7%)」「自民党17.6%(18.3%)」「公明党5.7%(5.0%)」「共産党3.1%(3.0%)」「立憲民主党2.7%(2.7%)」「国民民主党0.6%(0.9%)」

〇大阪都構想に賛成か反対か。「賛成46.5%(44.2%)」「反対34.3%(41.4%)」

〇入れ替わり選挙についてどう思うか。「理解できる46.3%(38.5%)」「理解できない44.2%(51.7%)」

〇大阪府市が目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)の大阪湾人工島への誘致に賛成か反対か。「賛否45.0%(46.9%)」「反対41.7%(40.2%)」

〇どの政策に最も力を入れてほしいか。「景気、雇用対策17.6%(15.9%)」医長、福祉22.9%(21.0%)」「財政再建11.9%(12.9%)」「二重行政の解消15.0%(14.2%)」「教育、子育て20.7%(20.6%)」「治安、防災4.7%(7.8%)」「環境、エネルギー4.0%(5.4%)」

〇どの政党を支持していますか。「自民党31.3%(30.7%)」「立憲民主党3.5%(2.2%)」「国民民主党1.1%(0.4%)」「公明党7.1%(8.6%)」「共産党3.3%(3.5%)」「大阪維新の会18.8%(21.9%)」

 

世論調査結果についての解説は、毎日新聞が詳しいので以下その内容を紹介する。

〇政党支持率では、府全体では自民が3割を超えてトップで2割の維新を上回っていたが、両選挙ともに自民の擁立候補が自民支持層を固めきれず、維新側に流れている傾向が顕著に表れた。

〇府知事選、現段階での投票先は、吉村氏が維新支持層をほぼ固めたほか、自民支持層の5割程度を取り込み、無党派層の4割近くからも支持を得た。また、都構想に賛成する人の大半が、吉村氏を投票先に選んでいた。

〇小西氏は、都構想に反対する人の6割程度が投票先に選び、公明支持層の7割程度をまとめた。一方、自民支持層は3割程度、国民民主支持層は2割弱にとどまり固めきれていない。

〇大阪市長選、都構想に賛成する大半が松井氏を投票先とし、反対の人は柳本氏を選んだ。

〇松井氏は維新支持層の9割を固めたほか、自民支持層の4割近く、共産からも4割以上の支持を得ている。年代別でも40~50代の中年層の男性や30代以下の若年層の女性などに浸透。無党派層も3割が投票先に選んだ。

〇柳本氏は、投票先に反対する7割以上の人が投票先に選んだ。自民支持層は5割、公明支持層は6割にとどまっている。

 

以上が、大阪ダブル選に関する選挙情勢(中盤戦)と世論調査の概要であるが、その結果が前回の拙ブログで紹介した京阪神自治体ОBの意見と余りにも合致していることに驚く。最大のポイントは「とにかく自民党がアカン!」ことであり、小西・柳本両候補は政策的に大阪維新と対決してはいるものの、その手足となる個々の自民党府議・市議候補になると、大阪都構想に関しても、今回のダブル選挙に関してもはっきりした政策的対決軸を示していないのだ。したがって、自民支持層の多くはこれまでの人間関係や地縁関係を通して投票先(大阪維新)を選ぶことになり、ドブ板選挙に強い大阪維新に票が流れることになるのである。

 

「自民党がアカン」ことは、選挙態勢の組み方にも表れている。立憲民主党や共産党が自主的に小西・柳本両候補を応援していることに、大阪維新が「野合だ」「自共共闘だ」と批判していることに対して、自民大阪府連は3月30日、府連のホームページに「仮に自公以外の政党より、両候補に対し推薦等行いたい旨申し出のあった場合はこれを完全に放棄する」との基本方針を「特に共産党とは一切の関係は無(な)く」との一文も入れて、安倍晋三首相(党総裁)や二階俊博幹事長ら党幹部の連名で掲載したのである(産経ディジタルニュース、2019年3月31日)

 

本来「オール大阪」で戦わなければ勝てない首長ダブル選挙を、大阪自民党が自らの前近代的体質を棚に上げて共闘体制を拒否し、あまつさえ非力な「自公与党」だけで選挙戦を戦おうとするなど「勝つ気がない」と思われても仕方がないが、案外これが今回のダブル選挙の内実(本質)なのかもしれない。安倍首相が維新を改憲勢力の一翼に止め、トランプ大統領とのアメリカ大手の「カジノ企業誘致」の約束を果たすためには、ここで大阪維新を負けさせるわけにはいかないからだ。選挙戦中盤になって出された自民党大阪府連の「オール大阪拒否宣言」は、菅官房長官と創価学会幹部による第2の「大阪都構想住民投票」の布石と見てもおかしくないからである。(つづく)