丸山穂高・長谷川豊両氏の発言で維新への風向きが急速に変わり始めた、堺市長選や参院選へどう影響するか、大阪維新のこれから(5)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その157)

 

 大阪政界の風向きは変わり目が早い。またこれに劣らず、有権者の心変わりも早いという。大阪ダブル選挙と統一地方選で「維新台風」が府下一円に吹き荒れたと思っていたら、今度は一転して丸山穂高衆院議員(維新、大阪19区選出)や長谷川豊氏(維新参院選比例候補、元フジテレビアナウンサー)の発言が切っ掛けで、大阪維新が乱気流(突風)に巻き込まれ始めたのである。大阪維新を「大阪復権の旗手」としてイメージチエンジさせることに成功したと思っていた矢先、丸山暴言でそのマントが剥がれ始めたのだから、松井代表が目下火消しに躍起なのも無理はない。問題は、それが目前に迫った堺市長選や夏の参院選にどう影響するかということだ。

 

 『週刊文春』(2019年5月22日、文春オンライン)が伝えるところによれば、丸山氏は、国後島への「ビザなし訪問」の最中、団長に「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」などと発言したことに加えて、その後「俺は女を買いたいんだ」と禁じられている外出を試み、事務局スタッフや政府関係者ともみ合いになったというのである。売買春は日露両国で共に違法行為なので、実行していれば(日本の)国会議員の逮捕・勾留ということになりかねない稀代の不祥事であり、外交問題にも発展する可能性があった。

 

 このことは、共同通信社(同5月22日電子版)によっても「丸山氏『女性いる店で飲ませろ』 北方領土訪問中に外出試みる」として配信(確認)されている。記事の内容は、「訪問団員によると11日夜、宿舎の玄関で丸山氏が酒に酔った様子で『キャバクラに行こうよ』と発言して外出しようとし、同行の職員らに制止された。ある政府関係者は『女のいる店で飲ませろ』との発言や、『おっぱい』という言葉は聞いた」というものだ。いずれも国会議員としてはもとより日本国民としても絶対に許されない行為であり、「国辱もの」というしかない。

 

 一方、これまで数々の暴言、例えば「自業自得の人工透析患者なんて全員実費負担させよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」といったブログで批判を浴びてきた維新参院選比例候補の長谷川氏が、今度は今年2月の東京都内の講演会で江戸時代の被差別部落に関して差別発言をしたという問題が急浮上した。毎日新聞(5月22日電子版)によると、同氏は「人間以下と設定された人たちも、性欲などがあります。当然、乱暴なども働きます」と指摘し、被差別民が集団で女性や子どもに暴行しようとした時、侍は刀で守ったという話をしたという。

 

 長谷川氏は22日、公式ホームページに「私自身の『潜在意識にある予断と偏見』『人権意識の欠如』『差別問題解決へ向けた自覚の欠如』に起因する、とんでもない発言」と認め、「謝罪するとともに、完全撤回させてください」と陳謝するコメントを掲載したというが、馬場維新幹事長は毎日新聞の取材に対して、「大変な無知による事実誤認の発言。党紀委員会を開き、処分を含めて議論する」と語ったとされる(同上)。

 

 大阪市民はもう忘れているかもしれないが、維新の創始者である橋下氏が市長当時、旧日本軍の慰安婦問題に関して「慰安婦の制度的必要性」に理解を示したことをはじめとして(彼自身も神戸・福原の高級風俗店のコスプレイ常連客だった)、維新にはおよそ国会議員にはあるまじき人物(群)が要職に就いている。「民主党はアホ」「石破氏などは犯罪者」「朝日新聞は死ね!」などの暴言を吐いて何度も国会の懲罰動議を受けながら、現在は馬場幹事長の片腕として「活躍」している足立康史衆院議員(維新幹事長代理)もそうなら、丸山氏も発言前は維新政調副会長だった。『新潮45』にLGBT(性的少数者)に対する差別論文を寄稿して国民的批判を浴びた杉田水脈衆院議員(現在は自民党)も、最初は維新から国会議員に出馬して当選した。

 

 丸山・長谷川両氏の暴言は、足立・杉田氏らの言動とも通底する維新の暴力的政治体質に根ざしている。人間の尊厳を踏みにじることに平気で何度も繰り返す、物理的・言語的暴力で相手を屈服させることを厭わない、ウソとデマをまき散らすことに長けている――、こんなファッショ的体質が余すところなく露出しているというべきではないか。こんな危険な政治集団が「官邸別動隊」として表舞台に出てきたのだから、これが堺市長選や参院選を通して全国的に波及していくとなると、事態は容易ならざる様相を帯びることになる。

 

 堺市長選の反維新陣営の候補が漸く決まったという。若手の自民党堺市議が離党して「反維新」「反大阪都構想」を掲げ、維新元府議と対決する構図だ。共産党や立憲民主党は自主的支援に回り、市民団体が選挙母体を作って選挙戦を戦うのだという。しかし、問題は自民と公明がどう動くかと言うことだろう。自民大阪府連は渡嘉敷会長の下で反維新候補は支援しないとすでに態度表明しているし、公明は自主投票を表明しているものの、情勢次第でこれからどう転ぶかわからない。事前の予想からすれば、維新候補の圧倒的優勢が伝えられていて「ダブルスコア」どころか「トリプルスコア」もあり得ると言われていた。果たしてこの情勢が丸山・長谷川暴言で変化するのかしないのか、今後の行方が注目される。(つづく)