沖縄の民意を足蹴にしながら、大阪の民意には追随する公明党の究極のご都合主義、変節を繰り返す政党は民意によって必ず淘汰される、大阪維新のこれから(6)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その158)

 5月12日(日)に続いて26日(日)朝刊の各紙(大阪本社版)はまたもや1面トップで、「大阪都構想」に関する公明党の方針転換(変節)を大々的に伝えた。公明党がこれまでの態度を一変(豹変)し、10年来反対してきた大阪維新の「大阪都構想」に賛成して維新と正式に合意を交わしたというのである。

 

維新・公明両党は25日合同記者会見を開き、佐藤茂樹・公明党大阪府本部代表は満面の笑みを浮かべて、「統一地方選で都構想を進めてほしいという当初の予想を上回る民意を感じた」と、これまでの反対姿勢から賛成の立場へ方針転換したことの理由をまことしやかに説明した。その上で賛成の条件として、①70歳以上が地下鉄を1回50円で利用できる敬老パスの維持など住民サービスを低下させない、②特別区再編コストを抑制する、③窓口サービスを低下させない、④各特別区へ児童相談所を設置する―の4条件を提示し、維新はこれを即座に受け入れたという(各紙、2019年5月26日)。

 

 一方、松井一郎・維新代表はゆとりに満ちた表情で、これもにこやかに「公明との激烈な戦いを展開したが選挙は終わった。政治家は選挙後の民意に沿った形で行政運営するのが責務だ。法定協議会で1年を目途に協定書(制度案)を作り上げ、速やかに可決して住民投票を実施することで合意した」と述べたという(同上)。

 

 政令指定都市・大阪市を解体して大阪府と一体化する「大阪都構想」は、大都市制度に関する戦後最大の改変であるにもかかわらず、公明党が敬老パスや窓口サービスの維持といった「子供だましの約束」で賛成に回ったことは、この政党の地方自治制度に対する認識レベルの(余りもの)低さと貧しさを物語っている。大阪市の権限や自治を大阪府知事に譲り渡すという一大事を、僅か「敬老パス」や「児童相談所」と引き替えに賛成するというのだから、これはかって世界大陸の侵略者に対して一片の贈り物と引き替えに自らの領土を譲り渡した(無知な)原住民の態度と変わらない。

 

 今回の公明党の変節はまた、公明党支持者や創価学会員などに対する侮辱・侮蔑でもある。公明党の支持者が幹部の言うまま行動するというこれまでの上意下達の慣習に照らして、今回もこの程度の「言い訳」で支持者が納得するとでも思っているのだろうか。高齢者には「敬老パス」、子どもには「児童相談所」というわけだが、しかし支持者を馬鹿にしてはいけない。公明党が10年来反対してきた「大阪都構想」に対してこれで支持者が納得するとでも思ったら大間違いだ。国政選挙で維新がわざわざ刺客を立てなくても、支持者や選挙民が公明党を見限るときが必ずやってくる。次期参院選や総選挙で、公明党が有権者から手痛いしっぺ返しを喰らうことを覚悟しておいた方がいい。

 

 これは自民党大阪府連も同じだが、大阪ダブル選挙や統一地方選の結果をどうみるかという大問題がある。自民党大阪府連は25日、府内選出の国会議員や府議、市議ら幹部が集まって都構想や参院選などへの対応を協議した。大阪ダブル選挙の敗北の責任を取って辞任した前任者に代わって新しく府連会長に就任した渡嘉敷氏は、今月11日の就任早々「民意を受けて住民投票に賛成したい」として、維新が主張する都構想住民投票に対して容認する考えを表明した。国会議員の間では、これまで首相官邸のエージェントと地元の意向を尊重するグループで「大阪都構想」に対する意見が分かれていたが、今回の選挙結果を受けて官邸派がイニシアティブを握り、それが渡嘉敷会長の態度表明になったというわけだ。25日の会合後、渡嘉敷会長は記者団に「府連として一枚岩になって方向性を決めるのが必要だ。大阪自民は維新の抵抗勢力と見られている。負けた方が道を譲るのがスジだ」と述べ、維新に歩み寄るべきだとの考えを改めて示した。

 

しかし上から言いなりの公明党市議団と違って、自民党大阪市議団の北野妙子幹事長は、都構想に反対する考えは「1ミリも変わらない」と改めて表明。「地方自治の精神から言っても、一つの市がなくなるのであれば、そこの議員が頑張るのは当たり前。市議団に一任いただきたい」と主張した。また公明党に対しては、「理解できない。支持者にどう説明するのか。支持母体のメンバーであっても、やはり人間。ついてきてくれるのか」と痛烈に批判した(朝日、2019年5月26日)。

 

自公両党が大阪ダブル選挙や統一地方選の「選挙結果=民意」を尊重するというのであれば、沖縄でこれまで行われてきた数多くの「選挙結果=民意」も尊重しなければならない。憲法で保障された「地方自治」の精神とはそういうものだろう。沖縄の民意は尊重しないが、大阪の民意は尊重するということでは(渡嘉敷会長が言うように)「スジが通らない」のではないか。

 

沖縄では、1996年の「米軍基地の整理・縮小と日米地位協定の見直しの賛否を問う県民投票」では89%が基地縮小と日米地位協定見直しに賛成、2014年の名護市長選、知事選、衆院選では辺野古基地建設に反対する候補が当選、2018年知事選では基地建設反対の玉城デニー候補が圧勝、2019年の「辺野古米軍基地建設のための埋立に対する賛否を問う県民投票」では玉城知事の39万7千票を上回る43万4千票が埋立反対に投じられるなど、いずれも圧倒的な〝民意〟が示されているのである。

 

 公明党の方針転換が伝えられた5月26日(日)、奇しくも堺市長選がはじまった(というよりは、この日に合わせて発表された)。堺市民が自民大阪府連や公明党の方針転換(変節)に巻き込まれるのか、それとも維新候補に鉄槌を下して堺市民の〝民意〟を示すのか、いまその帰趨が全国から注視されている。(つづく)