ナチス突撃隊張りの足立康吏衆院議員の野党攻撃、維新は結社の自由、政党の存在を否定するのか、維新のこれから(10)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その162)

 いまどきこんな極右体質の国会議員がいるかと思うと、背筋が寒くなり身体中に戦慄が走る。2019年6月25日、衆院本会議における維新代表・足立康吏議員の発言が耳から離れない。足立議員は安倍内閣不信任案決議に反対する理由として、「共産党と同じ行動をとるのが死んでも嫌だからだ」と臆面もなく述べたのである。「死んでも嫌」という表現は、相手の存在そのものを否定する主張すなわち「共存の否定=民主主義の否定」につながる。共に生きるのが嫌であれば、自分が死ぬか、相手が死ぬか(殺すか)のどちらかを選ぶしかない。憲法で保障された基本的人権としての思想信条の自由、結社の自由を根本から否定する恐ろしい考え方だ。

 

 足立議員といえば、これまでも野党各派に対して聞くに堪えないような罵詈雑言を数知れず繰り返してきた悪名高い人物だ。2016年当時、野党第1党だった民進党に対しては「民進党はあほでバカでどうしようもない政党」「民進党はウソつき」「最大の違憲集団こそ民進党」などと議場で数回にわたって放言し、ブログでは「民進党に国会の議席は不要」とまで書き込む有様だ。なにしろ野党側からは年4回も連続して懲罰動議を出されるという、憲政史上比類のない「新記録」をつくった人物なのである。

 

 不思議なことに、足立議員に対しては野党側から繰り返し懲罰動議が出されているにもかかわらず、その取り扱いを協議する(与党主導の)衆院議院運営委員会では結論が出されないままで放置されている。このため動議は懲罰委員会にかからず、足立議員は登院停止や資格停止などの処分もなく、責任も問われないままノウノウと問題行動を繰り返す状況が続いている。つまり、足立議員は与党に庇護されることで(飼われることで)、野党攻撃の「鉄砲玉」としていとも効果的に利用されているのである。

 

 足立議員の攻撃は、朝日新聞などリベラルなメディアにも向けられている。朝日新聞は、2017年11月11日の社説で文部科学省の審議会が加計学園の獣医学部の新設を認める答申をしたことに関し、「『総理のご意向』をめぐる疑いが晴れたことにはまったくならない」と指摘した。これに対し足立議員は、ツイッターにこの社説を引用した上で「朝日新聞、死ね!」とのドギツイ言葉を投げつけ、おまけに「拡散歓迎」との書き込みまで付け加えたのである。ことあるたびに「死ぬ」「死ね」を連発する足立議員は、物事の決着を相手の抹殺によって付けようとする衝動に駆られるのであろう。行き着くところは、ナチスドイツの「ホロコースト」の道に通じるのではないか。

 

 アメリカのトランプ大統領も、自らの言動に批判的なニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNNテレビなどのメディアを「フェイク」と決めつけることで知られる。取材拒否を始め、あらゆる手段を使ってその影響力を削ごうとする。安倍首相も、読売、産経、フジテレビなど右派メディアを重用する点では「親密な友人」と変わりない。まして、足立議員のような無鉄砲な人物がいれば、これを利用しない手はないと考えるのがごく自然だろう。だから、足立議員は懲罰委員会にも掛けられずに泳がされ、安心して野党攻撃の「鉄砲玉」としての役割を果たすことができるのである。

 

 維新は6月27日、次期参院選の公約を発表した。毎日新聞(6月28日)を除いて内容を報じたメディアは見当たらないが、私はその中の「憲法改正」に関する項目を読んでゾッとした。その内容は以下の通りだ(抜粋)。

 「9条議論の前提として、旧日本兵らのための国立追悼施設の整備や米中央情報局(CIA)のようなインテリジェンス機関を創設。各党に具体的改正項目の提案を促し、衆参両院の憲法審査会をリードする」

 

 「旧日本兵のための国立追悼施設の整備」及び「米中央情報局(CIA)のような諜報機関の創設」を維新がことさらに参院選公約として掲げたことは、維新の目指す国家像を明らかにするうえで重大な意味を含んでいる。端的に言えば、それは「靖国神社の国立化」であり、「特高警察の拡大強化」にほかならない。軍事支配体制のためのイデオロギー拠点施設として国立追悼施設をつくり、実行部隊としてCIAのような謀略諜報機関を創設するとの方針なのだ。ナチスドイツでいえば、国民生活の隅々までナチズムを浸透させた情報宣伝局と秘密警察(ゲシュタポ)を併せ持ったような体制を整備しようというのである。

 

 維新は目下参院選に向け、大阪以外の地域で候補者擁立に精力的に動いている。北海道では「新党大地」の鈴木宗男代表、東京では「都民ファースト」出身の元都議、神奈川では「希望の党」前代表の松沢参院議員など、とにかく票を稼げる候補者は所属を問わず大歓迎というわけだ。その背景には、維新は大阪では猛威を振るっていても、全国的には広がらないという焦りがある。なぜなら大阪を除く国政選挙の比例代表の得票数は、2012年衆院選の1080万票が17年衆院選では僅か5分の1の245万票へ激減したからである(毎日新聞2019年6月22日)。

 

 だからこそ、維新は大阪ダブル選挙の勢いを駆って次期参院選で一気に勢力を挽回する戦略をとらざるを得ない。それが足立議員を代表に立てての野党攻撃を主とする内閣不信任案決議反対の発言であり、参院選における突出した極右的政策の打ち出しとなって表れている。「日本のこころ」や「希望の党」など極右政党が軒並み退場した現在、その支持層を維新が一手に集めるには足立議員のような「鉄砲玉」が必要であり、自民党より右の政策が有効だと判断しているためであろう。

 

維新幹部の吉村大阪府知事は6月28日、大阪府庁で記者団に対し「特に憲法改正は強く訴え、議論をリードしていきたい。今の自民党に任せていたら全然進まないので、参議院選挙ではこの点を訴え、憲法改正を強烈に引っ張っていく役割を果たしたい」と述べた(NHKウェブニュース)。吉村知事も足立議員と同じく極右体質の政治家であり、外見は異なっていても根はつながっている間柄だ。参院選では両者は並び立って活躍するだろう。だが、審判を下すのは全国の有権者だ。選挙結果の行方を注視したい。(つづく)