第28回共産党大会決議案を読んで思うこと、選挙目標と党勢のギャップが大会ごとに広がっていく、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その176)

 

前回のブログからもう1カ月半もの時間が経過した。この間、別に怠けていたわけではないが、書くために必要な材料がなかなか見つからなかったのである。確かに、政治情勢は激動している。「適材適所」で組閣したはずの第3次安倍内閣の中から、閣僚2人が相次いで辞めるという不祥事が発生したこと。文科相に任命された安倍首相の最側近・荻生田氏が大学入試への英語民間試験の導入に絡んで不適切発言を連発し、いまや「身の丈閣僚」と言われるまでに追い詰められていること。英語民間試験導入のキーパーソンである下村元文科相の利権疑惑が浮上していることなど、例を挙げれば切りがない。

 

注目されるのは、今後の世論調査の行方だろう。安倍内閣の場合、たとえ不祥事が発生して内閣支持率が低下しても、しばらく経つとまた元に戻るという動きがこれまで繰り返されてきた。今回はまだ世論調査が行われていないが、どんな結果が出るか興味津々というところだ。支持率が下がるのか下がらないのか、下がるとすればどれほど下がるのか、また元に戻るのか戻らないのか...などなど興味は尽きない。

 

一方、野党共闘がどれだけ進んでいるかについては、まだ断片的な情報しか入ってこない。政権側の不祥事が続いていることもあって国会審議では野党間の連携が見られるが、次の総選挙に向かっての共闘体制はまだ端緒についたばかりだ。11月7日に告知された高知県知事選では共産系候補が野党統一候補になり、各党党首は11月6日、都内で会談して選挙協力を申し合わせたという(各紙、11月8日)。この先、野党共闘がどのような展開をたどるかについては不確定要素が多いものの、高知県知事選の結果次第ではかなりの影響を与えることは間違いないだろう。

 

与野党ともに政治情勢が流動する中で、第28回共産党大会(2020年1月)に向けての8回中央委員会が2019年11月5、6両日に開催され、大会議案が11月7日の赤旗に掲載された。内容が膨大なので全体を理解することは容易でないが、ここでは選挙目標と党勢拡大の分野に限って感じたことを記してみたい。といっても、第28回党大会の議案だけでは不十分なので、第26回大会決議(2014年1月)、第27回大会決議(2017年1月)と比較して考えてみることにする。

 

第26回大会決議は、「自共対決時代の本格的な始まり」という冒頭のスローガンで特徴づけられた威勢のいい決議である。「2013年7月の参議院選挙では自公政権が参院でも多数を握る一方、野党のなかで日本共産党がただ一つ躍進を果たした。日本共産党の躍進は1961年に綱領路線を確立して以来、1960年代終わりから70年代にかけての“第1の躍進”、90年代後半の“第2の躍進”に続く、“第3の躍進”の始まりという歴史的意義をもつものとなった。日本の情勢は『自共対決』時代の本格的な始まりというべき新たな時期を迎えている」とある。

 

 「自共対決時代の本格的な始まり」というのだから、この段階では「野党共闘」といった言葉は一言も出てこない。他の野党はお呼びでないということだろう。また「時代」という言葉は、政治的にも社会的にも一定の特徴ある性格を付与された年月が長期的に継続している状態を指すのだから、当時は共産党が中核となって政治革新を推進する新しい状況が生まれ、このような政治構図がこれからも長く続くと考えていたのであろう。

 

「この間の総選挙と参院選を通じてつくりだされた『自共対決』の政治構図には、これまでにない新しい特徴がある。自民党と共産党との間の自民党批判票の『受け皿政党』が消滅した。『二大政党づくり』の動きが破たんし、『第三極』の動きがすたれつつあるもとで日本共産党は自民党への批判を託せる唯一の党となっている」との自信溢れる情勢分析がそのことを表している。

 

総選挙の得票目標は、「21世紀の早い時期に民主連合政府を樹立する」との展望のもとに、(1)どの都道府県、自治体・行政区でも「10%以上の得票率」を獲得できる党へと接近すること、(2)次期総選挙および参院選では、比例代表選挙で「650万票、得票率10%以上」を目標にたたかうことが提起された。党勢拡大の目標については、2010年代に「成長・発展目標」を実現するために、50万の党員(有権者比0・5%)、50万の日刊紙読者(同)、200万の日曜版読者(2・0%)、すなわち現在の党勢の倍加に挑戦することが提起された。ちなみに、2014年時点の党勢は党員30・5万人、日刊紙と日曜版を合わせた赤旗読者数は124万人である。

 

ところが、「自共対決時代」到来の下で躍進するはずだった2016年参院選の比例代表得票数は601万票、得票率10.7%にとどまり、2014年衆院選606万票、11.4%とほとんど変わらなかった。また「民主連合政府をつくる」ために提起された「2010年代に50万の党員、50万の日刊紙読者、200万の日曜版読者」という党勢倍加目標は、3年後の第27回大会では逆に後退して党員は30万人で足踏み、赤旗読者数は124万人から113万人に減少した。「自共対決時代の本格的な始まり」という情勢分析が誤りであり、時代錯誤だったことが判明したのである。

 

 第27回大会決議は、そのこともあってか「安倍自公政権とその補完勢力に、野党と市民の共闘が対決する日本の政治の新しい時代が始まった」と、時代認識を一転させた。僅か3年で時代認識が「自共対決時代」から「野党・市民共闘時代」に一変し、政権構想も共産中心の「民主連合政府」から「野党連合政権」に移行したのである。しかし、時代の流れは3年程度の期間でそう大きく変わるものではない。時代が変わったのではなく、時代を見る目が間違っていたのであり、情勢分析が的外れだったのである。

 

一方、総選挙の得票目標は、党勢が後退しているにもかかわらず「新しい統一戦線である野党・市民共闘を前進させ、野党連合政権をつくる」ために、比例代表選挙で「850万票、得票率15%以上」にバージョンアップされた。また、「2010年代に50万の党員、50万の日刊紙読者、200万の日曜版読者」という党勢倍増目標も取り下げられることはなかった。情勢分析の誤りを認めないために党勢拡大目標を変更する理由が見つからず、ただ叱咤激励を繰り返すという慣行がここでもみられる。尤も野党・市民共闘の旗を掲げれば、得票数を伸ばすことができ、党勢の停滞(後退)を回復できるとの期待と思惑があったのかもしれない。

 

だが「野党・市民共闘の時代」になっても、比例代表得票数は伸びず、それとは逆に2017年衆院選440万票、7.9%、2019年参院選448万票、8.9%と激減した。3年で豹変した時代認識に党員や支持者が付いていけなかったのかもしれない。党勢も2017年衆院選(2017年10月)から2年足らずで党員7300人減、日刊紙1万5千人減、日曜版7万7千人減となった(全国都道府県委員長会議、赤旗2019年7月30日)。年間ベースにすれば、党員約4200人減、赤旗読者約5万3千人減となる。その結果、第28回大会時点での党勢は党員28万人、赤旗読者100万人(割れ)となった。それでも「850万票、得票率15%以上」という選挙目標は維持され、第28回党大会議案では、党創立100周年(2022年7月)までに「第28回党大会比130%の党(党員36万人、赤旗読者130万人)をつくる」ことが提起された。

 

党勢は、この6年間で党員30.5万人から28万人へ、赤旗読者124万人から100万人(割れ)に後退した。党勢拡大目標も「2010年代に50万の党員、250万の赤旗読者」から「2022年に党員36万人、赤旗読者130万人」に後退(縮小)した。以上が得票数と党勢からみた2010年代の傾向であるが、「850万票、得票率15%以上」という選挙目標は堅持されている。なぜこれほどまでに背伸びするのか、なぜ「身丈にあった目標」を掲げないのか―、疑問は尽きないが、次回でその原因と背景を考えてみたい。(つづく)