第28回共産党大会決議案を読んで思うこと(その2)、前衛党意識の下で設定される選挙目標の現実性や如何に、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その177)

 「850万票、15%以上」という総選挙得票目標は、2015年1月の第3回中央委員会で初めて打ち出された壮大な目標だ。前年2014年12月衆院選で606万票、11.4%の成果を挙げたことで自信をつけ、これまでの「650万票、10%以上」の目標を一挙に3割増に設定したのである。実際の得票数606万票は、第26回党大会(2014年1月)で決定した「650万票、10%以上」に対して1割弱足りないが、「基本的に」達成されたということで次の新たな目標が設定されたのだろう。

 

 これほどの強気の目標設定の背景には、前回でも指摘したように本格的な「自共対決時代」が到来したという時代認識があったと思われる。志位委員長は幹部会報告として次のように述べている。

「今回の総選挙が日本の政治の新しい段階――本格的な『自共対決』の時代の到来を告げるものとなったということであります。どういう意味で『本格的』といえるのか。それは、この選挙で唯一躍進したのが日本共産党だけだったという事実だけによるものではありません。いま、内政においても、外交においても、自民党政治に代わる新しい日本の進路を示している政党は、日本共産党以外には一つもありません。政治を変えようと思ったら日本共産党しかない。そういう政治情勢の大きな変化が、目に見える形で起こっていることを強調したいのであります」

 

報告の中で強調されている「自民党政治に代わる新しい日本の進路を示している政党は、日本共産党以外には一つもありません。政治を変えようと思ったら日本共産党しかない」という(唯我独尊的な)認識は、第22回党大会(2000年11月)の規約改正で削除された〝前衛政党〟の面影を彷彿とさせる。事実、それまでの党規約では、「日本共産党は日本の労働者階級の前衛政党であり、はたらく人びと、人民のいろいろな組織のなかでもっとも先進的な組織である。また、日本の労働者階級の歴史的使命の達成をみちびくことをみずからの責務として自覚している組織である」、「党は革命の事業を成功させる保障である党を量、質ともに拡大強化し、大衆的前衛党の建設と統一戦線の結集、発展のために奮闘する。とくに未来の担い手である青年の役割を重視し、青年・学生のあいだでの活動をつよめる」と記されていた。こうした自信と自負が、本格的な「自共対決時代」の到来という時代認識となり、自民政治と対決する共産党に支持票が集まるとの展望(期待)を抱かせたのだろう。

 

確かに、2014年衆院選は波乱の総選挙だった。「第3極」と称された中間政党が大きく後退したことで政治構図に一大変化が生じたのである。2014年総選挙は、政治に失望した有権者が大量棄権して投票率(59.3%→52.7%)が史上最低となり、投票総数が6018万票から5323万票へ695万票も減少したことをまず押さえておかなくてはならない。その上で2012年衆院選と2014年衆院選の政党別比例代表得票数を比較すると、みんなの党がなくなり(524万票→ゼロ)、日本維新の会(1226万票→838万票)と自由党(342万票→102万票)が大きく票を減らしたことが特筆される。

 

しかし、自民(1662万票→1766万票)、公明(712万票→731万票)、民主(963万票→978万票)は票を減らさず(得票率は増加)、共産党(369万票→606万票)は行き場を失った票の一部の「受け皿」になっただけにすぎない。いわば、政治構図の一時的な流動状態が生じただけで、これを「自共対決時代」の本格的な到来だと規定するのは、いささか無理があったというべきだ(大きな勘違いだった)。

 

現実は厳しく、結果はすぐに明らかになった。2014年衆院選と2017年衆院選を比較すると、自民(1766万票→2011万票)、公明(731万票→698万票)、立憲(旧民主978万票→1108万票)との得票数の推移にもみられるように、自民と立憲が得票数を伸ばしているのに対して、共産(606万票→440万票)は「自共対決時代」以前の状態に戻ったのである。だが、「850万票、15%以上」という目標設定を変更することはなかった。民主連合政府を樹立するためには、共産党が中軸にならなければならないと前衛党意識の残像がそうさせるのであろう。

 

政治変革を目指す政党が政治課題の旗を高く掲げるのは当然のことだ。また、それを実現するためには、それ相応の政治勢力でなければならない。それが「850万票、15%以上」という得票目標になるのであろうが、「440万票、8%」という現在の実力からすれば、倍近い目標はいっこうに現実感が湧かない。4メートルしか跳べない程度の選手に、8メートルの課題を与えても結果は目に見えている。疲労骨折するか、挫折するかのどちらかに終わるだけだ。

 

第28回党大会議案として承認された党綱領(一部改定案)には、「四、民主主義革命と民主連合政府」のなかに次のような一節がある(赤旗2019年11月9日)。

「日本共産党は、(民主主義的な変革すなわち)国民的な共同と団結をめざすこの運動で、先頭に立って推進する役割を果たさなければならない。日本共産党が高い政治的、理論的な力量と、労働者をはじめ国民諸階層と深く結びついた強大な組織力をもって発展することは、統一戦線の発展のための決定的な条件となる」

 

その意気たるや壮とすべくも、文中の「先頭に立つ」「高い政治的、理論的力量」「強大な組織力」といったキーワードは、一昔前の前衛党時代そのものだ。これを高齢者中心の党員28万人、赤旗読者100万人(割れ)で実現できるとは誰も考えていないだろうし、この事情はまた党創立100周年(2022年7月)に党勢が「第28回党大会比130%の党(党員36万人、赤旗読者130万人)」になっても勿論変わることがない。

 

現在の政治情勢は、共産党が「先頭」に立って世の中を変革するというよりは、国民世論の成熟に貢献する(寄り添う)と言った方が現実に合っているのではないか。また、民主義的変革のためには「高い理論」「強大な組織力」が決定的条件だというよりは、国民世論の形成に影響を与えるような柔軟で創造的な「思考力」が必要なのではないか。そのためには、時代錯誤の「民主集中制」といった党運営形態が抜本的に改革され、開かれた党組織に生まれ変わることが求められるだろう。自由な討論を通して多様な考え方が生まれないような組織では、「とくに未来の担い手である青年の役割を重視し、青年・学生のあいだでの活動をつよめる」ことは到底不可能だからである。(つづく)