安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(2)、内閣支持率は底堅いのか、底割れするのか、その分岐点に差しかかっている、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その179)

 

読売・産経から約1週間遅れで、共同通信(11月23、24日)と日経(11月22~24日)の世論調査が行われた。この1週間は、野党側の「桜を見る会」への追及によって招待者の実態が次々と明らかになり、安倍首相夫妻や政権幹部、自民党関係者による「桜を見る会」の私物化が暴露された1週間だった。おまけに招待者名簿が野党の資料請求当日に破棄されると言うのだから、証拠隠滅も露骨かつ組織的だ。こんな有様だから、内閣支持率が一気に二桁ぐらい下がってもおかしくないと思っていたのである(期待していた)。

 

共同通信の結果は、支持54.1%→48.7%(▲5.4ポイント)、不支持34.5%→38.1%(△3.6ポイント)、日経の方は支持57%→50%(▲7ポイント)、不支持36%→40%(△7ポイント)となり、1週間前と比べて支持率下落のテンポはそれほど変わっていない。ただ、これまで過半数を維持していた内閣支持率がそれ以下に落ち込むと言う傾向ははっきりと出ている。この傾向がこのまま続くのか、それとも下げ止まるのか、今がその分岐点だということだ。

 

分岐点の右左を決めるのは、「桜を見る会」の真相が今後どこまで解明されるかに懸かっている。野党側は総力を挙げてこの問題に取り組んでいるが、この作戦はまさに安倍政権の泣き所を点いている。世論調査を見れば、国民の関心がこの点に集中していることは明らかだからだ。

 

日経は「桜を見る会」について僅か1問しか質問していないが、それでも「桜を見る会の首相の説明」については、「納得できる」18%、「納得できない」69%と圧倒的な不信感が表明されている。共同通信は「桜を見る会」に3問を割き、「首相の発言」→「信頼できる」21.4%、「信頼できない」69.2%、「首相の地元支援者が大勢招待」→「問題だと思う」59.9%、「問題だとは思わない」35.0%、「桜を見る会の今後」→「続けた方がよい」26.9%、「廃止した方がよい」64.7%との明確な結果が出ている。

 

一方、野党側が統一候補を立てて臨んだ高知県知事選挙の結果はどうだったのか。こちらの方は、自党の候補者を出した共産は「大健闘」「大善戦」と手放しで評価しているが、メディアの方は「大敗」と判断するなど評価が分かれている。毎日新聞(11月26日)は、参院選(高知県内分)では自民候補(13万7473票)に2万票差に迫った共産候補(11万8188票)が、知事選では統一候補(11万1397票)になったにもかかわらず票を伸ばせず、与党候補(17万3758票)に6万票もの大差をつけられた点に注目し、以下のような解説をしている。「野党内には『共産党系の限界』との指摘も出ているが、各党執行部は互いの信頼関係を深める効果があったとして、『共闘路線』を維持する方針だ。一方、与党は首相主催の『桜を見る会』の影響は小さかったとして胸をなでおろしている」。

 

だが、この与党判断は少し甘すぎるのではないか。高知県知事選挙という地域的にも時間的にも限られた選挙結果で、「桜を見る会」の影響が小さかったなどと判断するのは「針の穴から天を覗く」ようなもので、全国的に拡がる大きな世論の動きを見誤る可能性が大きい。自民選対は「国政でのマイナスの影響を払拭して選挙ができた」「今後の衆院選にも影響を与える知事選に勝てたことは、国政においてもプラスだ」(毎日、同)などと分析しているが、今後の事態の展開はそれほど甘いものではないだろう。

 

安倍政権に対する忖度がマスメディアにも浸透しているのか、今回の日経世論調査においても同様に、与党判断に近い分析が目立つ。例えば...

「安倍晋三首相は20日に通算在任日数が憲政史上最長となった。日本経済新聞社の22~24日の世論調査で、2012年12月に発足した第2次安倍政権以降の仕事ぶりについて質問すると『評価する』と答えた人が55%、『評価しない』が34%だった。長期政権を評価する声が過半に達したが、一方で『安倍政権に緩みがあると思う』と答えた人も67%にのぼった」

「首相主催の『桜を見る会』をめぐる問題などで内閣支持率は7ポイント下がったが、それでも50%あり、首相への評価は底堅い。10人の名前を挙げて『次の政権の首相にふさわしいと思うのは誰か』を聞いたところ、安倍首相は前回10月調査の16%とほぼ横ばいの14%で、順位は同じ3位だった」

「一方、政権の緩みには厳しい意見が目立つ。9月の内閣改造から1カ月半で菅原一秀前経済産業相、河井克行前法相と2閣僚が相次いで辞任したことを受け『政権に緩みがあると思う』と答えた人は67%に上った。『あるとは思わない』の27%を大きく引き離した」

 

この解説は日経の編集方針の基調である、(1)安倍長期政権の仕事ぶりは国民に評価されている、(2)安倍内閣の支持率は底堅い、(3)不祥事は政権の「緩み」から生じるので気を付ける必要がある、という体制側の認識に基づいて構成されている。この場合のキーワードは「緩み」であり、続出する自民政権の不祥事の原因をすべて党内の「緩み」に求めるというものだ。この論調は、国民に対して自民政権の継続を前提とする印象を与えるもので、ここからは〝政権交代〟の主張は出てこない。安倍政権の腐敗を「政権の緩み」にすり替え、「党内改革」によって体制の延長を図ると言う典型的なストーリーである。

 

安倍内閣の支持率は底堅いという認識にしても、日経世論調査の方法には問題が多い。内閣支持率を「重ね聞き」という方法で尋ね、支持率の上積みを図ると言う方法だ。まず安倍内閣を「支持するか」「支持しないか」で尋ね、「何とも言えない」「わからない」と回答した人に対して、「どちらかといえば」との前書きを付けて再び「支持するか」「しないか」を問うのである。今回の調査結果に即して言えば次のようになる。

 

最初の質問では、「支持する」44%、「支持しない」37%、「言えない・わからない」19%だった。通常ならばこれで内閣支持率44%となるのだが、日経では「言えない・わからない」と回答した人に「どちらかと言えば」と再質問した結果を案分してそれに上乗せするのである。すなわち「19%×どちらかと言えば支持33%=6%」と「19%×どちらかと言えば不支持19%=3%」をそれぞれ加算して、支持率(44%+6%=50%)、不支持率(37%+3%=40%)としては発表するのである。支持率・不支持率とも加算するからいいのではないかという論法も考えられるが、最初に「言えない・わからない」と回答した人に無理やりに回答をさせるのは、やはり支持率を上積みする意図があるからとの疑念が晴れない。(つづく)