〝自公国立社オール5党〟が今回の京都市長選を「かってないほど厳しい選挙」という理由、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(13)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その190)

 1月12日の「未来の京都をつくる会・総決起大会」(自公国立社5党・門川選挙母体)において、各党代表が異口同音に「今回の市長選は厳しい!」と叫んだことは既に述べた。なかでも西田自民府連会長と竹内公明府連代表の語気が凄まじく、両党の危機感が相当大きいことをうかがわせた。直接的な理由は、従来のオール5党と共産が対決する「2極構造」が、地域政党の参入で「3極構造」に変化したことがある。しかし、それだけではない。自公両党の支持基盤が高齢化し、選挙活動や投票動員が思うようにならなくなってきているという構造的な背景もあるのである。

 

 西田氏は「951票」という数字を大声で連呼した。門川氏が初出馬した2008年市長選のことだ。この時は門川(オール5党)、中村(共産+市民派)、村山(第3極)の三つ巴の戦いとなり、村山氏が8万4750票(得票率19.6%)を獲得した結果、門川氏15万8472票(同36.7%)、中村氏15万7521票(36.5%)と、その差は僅か951票(同0.2%)となった。まさに〝薄氷の勝利〟だったのである。

 

 この時のことは肝に銘じているとして、西田氏は会場の参加者に「投票率を上げなければ勝てない」と何度も念を押した。「40%台」に乗せれば勝てるが、「30%台半ば」では危ないと言うのである。そうでなくても過去3回の市長選投票率は、2008年37.8%、2012年36.7%、2016年35.8%とじりじりと下がってきた。このままの調子で投票率が下がると革新系固定票の比重が増し、ひょっとするとひょっとするかもしれないと言うのである。

 

 だが、この「投票率が上がれば門川氏が勝てる」という西田氏の情勢分析は誤っているのではないか。私は逆に、「投票率が上がれば福山氏が勝てる」と考えている。問題は投票率がどれだけ上がるかだろう。理由は、立憲支持者など革新系市民の中に「門川離れ」の兆候が見られることであり、これに無党派層の流れが加わると一挙に形勢が変わる可能性があるからだ。

 

この点で、「れいわ」が福山氏を推薦した影響が大きいと思う。れいわは山本代表が福山氏の応援演説に入り、大型宣伝車を走らせるなどすでに選挙活動を開始している。これに福山陣営の労組や団体の活動が本格化すると、思いがけない相乗効果を発揮することも考えられる。投票率が40%台に乗るようであれば、これは保守派の動員の影響によるというよりは、むしろ革新系の動きによるものと考えるべきだろう。どれだけ革新系市民の浮動票を掘り起こせるか、ここに福山氏の勝利が懸かっていると言っていい。

 

 一方、竹内公明府連代表の演説は顔をそむけるような内容だった。「私は対立候補を名前では呼ばない。共産党候補だという。みなさんもそう言ってほしい」、「相手が勝てば市役所に赤旗が立つ。こんなことを許してはならない」など、半世紀前の反共演説を性懲りもなく繰り返したのである。まるで「化石」のようなこの反共演説にはさすがの会場参加者も白ける一方だったが、竹内氏には会場の空気が読めなかったようだ。公明党や創価学会の内部ではおそらくこんな調子で煽っているのだろうが、一般市民を反共演説で動員できる時代がもうとっくの昔に終わっていることに気が付いていないのだ。

 

 それに、創価学会会員の高齢化も無視できない。総決起大会の会場に学会婦人部の姿がないことは既に述べたが、市内の様子もこのところ大きく変化している。選挙前になると、学会会員は候補者のポスターを自宅や公営住宅の周辺に張り出すのがこれまでの恒例なのに、今回の市長選の門川ポスターは市営住宅の周辺でも恐ろしく少ない。公明市議が叱咤激励しても学会会員がなかなか動かなくなるような状態が生まれており、それがまた、竹内氏の反共演説にますます磨きをかけているのだろう。

 

 一方、「第3極」の村山氏がどれだけ得票するかについて神経を尖らせているのは、門川氏はもとより前原氏もその1人だ。門川陣営は目下、村山氏の勢いを削ぐための地下工作を精力的に進めているが、その先頭に立っているのは前原氏だといわれる。前原氏は立憲・国民の合流協議を表向き歓迎しているが、国民が立憲に吸収されるようであれば、「自分は参加しない」と明言している。前原氏は野党合流が不調に終わることを見通した上で、京都市長選を最大限利用して自分の影響力を拡げようとしているのである。市長選は二の次で自分の選挙地盤を固めることが第一であり、左京区を選挙地盤とする村山氏を潰すことが前原氏の市長選の主たる目的なのである。

 

 その意味で「第3極」の村山氏は、前回のように2割近い票を獲得することは難しいと思われる。となると、市長選は門川氏と福山氏の「ガチンコ勝負」になる。自民党は当初、門川氏への多選批判が大きく候補者擁立に消極的だった。しかし、市長選が福山氏との正面対決になると新人候補では危ないとして、やむを得ず門川氏の推薦に踏み切った。この消極的候補者選択がどのような結果を導くのか、告示後の情勢を注意していきたい。(つづく)