中国、海外団体旅行中止に踏み切る、京都市長選への影響や如何に? 安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(18)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その195)

 

 1月19日の選挙告示日から今日26日で1週間、京都市長選は折り返し点を迎えた。知人のジャーナリストの情報によれば、福山陣営と村山陣営は街頭宣伝活動が中心で盛り上がっているのに対して、門川陣営は支援組織の票固めに重点を置いているので姿が見えにくいのだという。新人候補2人は市民各層や無党派層への働きかけなしには勝てないのだから街頭宣伝活動に打って出るしかないが、現職候補は自民・公明・国民・立憲・社民5党の推薦に加えて経済界や業界団体からも圧倒的な支援を受けているのでその必要がない。それが両陣営の選挙戦術の違いになるのだそうだ。

 

 福山陣営には昨日25日、志位共産党委員長や山本れいわ代表、市民連合の山口法政大教授などが応援演説に駆け付けて気勢を上げた。これに対して門川陣営は「与野党オール5党推薦」という豪華陣容にもかかわらず、目下のところ安倍自民党総裁はもとより山口公明党代表、枝野立憲民主党代表、玉木国民民主党代表、又市社民党党首の誰ひとり応援に来ていない。選挙前の門川陣営総決起集会では激烈な門川応援演説をぶった福山立憲民主党幹事長も、それ以来姿を見せない。公明党は本部推薦だが、それ以外の各党は京都府連推薦だから党首は来ない――というのが表向きの理由だそうだが、それなら山口公明党代表は来て然るべきなのに来ないのはなぜか。

 

 それはそうだろう。明日27日からの通常国会では衆院予算委員会質疑が始まるが、ここでは自公与党と野党4党(維新を除く)が「桜疑惑」や「IR汚職」を巡って激突することになっている。その最中の京都市長選で「与野党オール5党」が街頭で雁首を並べていたのでは、「野党とはいったいなんだ?」ということになる。国会では対決しながら京都では手を結ぶなど、そんな二律背反的な行動が市民の支持を得られるわけがないからである。だから、「与野党オール5党」推薦の門川陣営の選挙戦術は地下に潜るほかないのであり、組織的な街頭宣伝活動に打って出ることができないのだ。

 

 だが、この選挙戦術は「投票率を上げないと勝てない!」とする門川陣営の基本方針に反するのではないか。西田自民党京都府連代表は「35%では負ける!」「 40%なら勝てる!」と何回も連呼した。西田氏は「与野党オール5党」の組織固めをすれば40%台を確保できると踏んでいるようだが、この線で突っ走っているのは公明党と創価学会ぐらいで、肝心の自民党市議団の動きがそれほど活発ではないのである。その背景には、現職候補が市民の苦情を無視してインバウンド観光を強力に推進してきたことへの自民支持層の反発があり、昨今の「観光公害」の広がりがさらにそれに輪をかけていて、「空気が重たくて動かない」という声が聞こえてくる。

 

 選挙はある意味で「空気」みたいなものだ。選挙公約が有権者の心をとらえると「空気」が一気に変わる。街頭宣伝活動に打って出るのはそのためであり、室内の身内だけの集会を幾ら重ねても雰囲気は盛り上がってこない。最後は「化石」のような反共演説一本やりになり、「市役所に赤い旗が立つ!」など公明党張りの絶叫しかできないことになる。これでは真面な市民は離れていくしかない。目下、門川陣営はこんな悪循環から抜け出そうと必死だというが、「空気」を変えるにはよほど大胆な手を打たないと難しいという。

 

 「政治は一寸先が闇」だというが、ここにきて京都市長選に大きな影響を与える大事件が起こった。各紙(1月26日)が1面トップで伝えているように、中国政府が1月25日、国内の旅行会社に対し、すべての団体旅行を中止するよう命じたというのである。中国国内の団体旅行は24日から停止しており、海外旅行は27日から取りやめるという。団体旅行は中止だが個人旅行はそうでないので影響はないかといえば、そうはいかない。航空機とホテル宿泊をセットにした「パック旅行商品」も販売中止になるので、それを利用する個人旅行はすべて中止ということになるからだ。

 

 日経新聞は、その影響を次のように伝えている。「2019年の中国大陸から海外への旅行者数は推定で約1億6千万人。春節(旧正月)休暇の海外旅行先でも日本は最も人気がある。日本政府観光局(JNTO)によると、19年の中国からの観光客は959万人と全体の3割を占めただけに、日本の観光業への影響は避けられない見通しだ。旅行業界関係者によると、日本向けは個人旅行が3分の2以上を占め団体旅行の比率は少ないが、『パック旅行の利用者も多く、個人旅行にも大きなブレーキになる』(旅行会社)」。

 

 朝日新聞も同様の見通しだ。「春節の大型連休中に中国からの団体旅行が禁止されたことで、日本の観光業界などにも大きな影響が出そうだ。経済発展とともに海外旅行する中国人は増加しており、日本政府観光局によると、2019年の訪日外国人客のうち、中国本土からの割合は約30%の959万人だった。東日本大震災のあった11年に落ち込んだが、その後はビザの発給要件の緩和などの影響で増えており、10年前の9倍以上に激増している。中国人にとって日本はタイと並ぶ人気の旅行先で、昨年の春節があった2月は1カ月間で約72万人が訪日した。日本側もデパートやホテルなどで中国語を話せるスタッフを増やすなどして春節商戦に備えていた。日韓関係の悪化で韓国からの訪日客が落ち込むなか、この時期に中国人観光客が激減すれば、日本の観光関連産業にとっては二重の打撃になりそうだ」。

 

京都観光も同様だ。あるいは、その打撃はもっと大きいかもしれない。インバウンド観光をやみくもに煽ってきた現職候補に今回の事件がどのような影響を及ぼすか、市民の審判はもうすぐ出るだろう。(つづく)