京都新聞に前例のない大型反共広告が京都市長選の最中に掲載された、「大切な京都に共産党の市長は『NO』」、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(19)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その196)

 

1月26日(日)の京都新聞朝刊を見てのけ反るほど驚いた。門川陣営の選挙母体である「未来の京都をつくる会」が紙面一杯の反共全面広告に打って出たのである。その文面がまた凄い。右翼団体やヘイト集団が街頭で撒くような「反共ビラ」そのものなのだ。その横に出ている現職候補の顔写真までがまるでお仲間のように映る。しかし、その下の「ONE TEAMで京都の未来を守りましょう」との欄に大勢の名前が並んでいる。この支持者と支持団体の顔ぶれをみると一笑に付すわけにはいかない。そこには、選挙終盤戦にかけての大掛かりな謀略宣伝の匂いがするからだ。まずは、その凄まじい文面を再掲しよう。

 

〇大切な京都に共産党の市長は「NO」、京都はいま大きな岐路に立たされています。わたしたちの京都を共産党による独善的な市政に陥らせてはいけません。国や府との連携なしには京都の発展は望めません。

〇いまこそONE TEAMで京都を創ろう! 「地下鉄延伸」「北陸新幹線延伸」「文化庁本格移転」 夢と希望に満ちた様々なプロジェクトも国や府との協力なしには実現できません! 市民のみなさまの多様な意見をしっかりと受け止めて国や府との強力な連と幅広い政党や団体との絆の下に確かな京都の未来を築いていけるのはただひとり。

〇京都市長候補(現京都市長)かどかわ大作(顔写真)、期日前投票に行ってください! 手続きは簡単 手ぶらでも投票できます。

〇「ONE TEAM」で京都の未来を守りましょう。立石義雄(未来の京都をつくる会会長)、西脇隆俊(京都府知事)、有馬頼底(臨済宗相国寺派管長)、堀場厚(堀場製作所CEO)、小山薫堂(放送作家)、千住博(前京都造形大学学長)、中島貞夫(映画監督)、夏木マリ(東京オリパラ組織委員会顧問)、榎木孝明(俳優)、自民党京都府連、公明党本部、国民民主党京都府連、立憲民主党京都府連、社民党京都府連、そのほか、商工業、農林業、建設・運輸、医療福祉衛生、労働、女性・青年、教育・子育て・文化・スポーツ関係等、幅広い団体が力を合わせています。

 

一読して驚くのは、いまどきの京都でこんな時代錯誤の反共宣伝を地元新聞に堂々と掲載する連中がいるということだ。そして、この新聞広告の支持者・支持団体のなかには、立石氏(京都商工会議所会頭)、有馬氏(宗教者九条の会呼びかけ人)など京都を代表する経済人や宗教者をはじめ、国会では野党共闘を組んでいるはずの国民民主党、立憲民主党、社民党の各京都府連組織がズラリと顔を並べているのである。これら支持者・支持団体は、新聞広告の原稿をきちんとチエックして了解したのだろうか。いずれにしてもこんな誹謗中傷広告に名を連ねるとは、政治的・社会的・道義的責任を免れることができない。

 

それから短い広告文面のなかに、「国や府との連携」というキーワードが3回も出て来るのも驚きだ。現職候補は、かねてから京都市政の独自性を売り物にしてきた人物ではなかったのか。それでいながら、ここにきてにわかに「国や府との連携」を持ち出すところをみると、3期12年の行政施策に自信を失っているとしか思えない。それもそのはず、京都新聞が1月25日に発表した「候補者・読者政策共通質問アンケート」によれば、現職候補がこれまで推進してきた「ホテル誘致政策」「北陸新幹線延伸政策」「建築物の高さ規制緩和政策」のいずれもが、3分の2の読者から「NO」を突き付けられているのである。

 

尤も現職候補は、「ホテルの数は規制すべきか」には〇、「建築物の高さ規制を緩和すべきか」には×を付けている。そのカラクリは、「ホテル規制」は僅か2カ月前に「規制反対」から「一律規制反対」に政策転換したことを、あたかも「規制賛成」と言い替えているだけのことだ。また「建物高さ規制緩和」に関しては、すでに幹線道路沿いに規制緩和を実施しているにもかかわらず、「景観の骨格を維持する」として「規制緩和に反対」と回答するのだから、こちらのほうは虚偽回答になる。

 

問題は、「大切な京都に共産党の市長は「NO」、京都はいま大きな岐路に立たされています。わたしたちの京都を共産党による独善的な市政に陥らせてはいけません。国や府との連携なしには京都の発展は望めません」というこの一文だろう。公職選挙法には、「当選を得させない目的をもって公職の候補者に対し虚偽の事実を公にし、又は事実を歪めて公表した者は、4年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処する(第235条第2項、虚偽事項公表罪)」という条項がある。また刑法には、「公然と事実を適示し、人の名誉を棄損した者は、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金に処する(第230条第1項、名誉棄損罪)」とある。私は当該広告がこれらの条項に明らかに抵触するものと考えるが、法律専門家の判断を俟ちたい。

 

加えて、当該広告が京都市内では圧倒的な購読部数を誇る京都新聞に掲載されたことも、その影響の大きさからして無視できない。こんな誹謗中傷広告が「社会の公器」といわれる新聞に、しかも選挙中に掲載されることが果たして許されていいのか、激しい怒りと強い疑問を感じる。日本新聞協会には倫理規定があり、以下のような一節がある。

 

【独立と寛容】

新聞は公正な言論のために独立を確保する。あらゆる勢力からの干渉を排するとともに、利用されないよう自戒しなければならない。他方、新聞は、自らと異なる意見であっても、正確・公正で責任ある言論には、すすんで紙面を提供する。

【人権の尊重】

 新聞は人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する。報道を誤ったときはすみやかに訂正し、正当な理由もなく相手の名誉を傷つけたと判断したときは、反論の機会を提供するなど、適切な措置を講じる。

【品格と節度】

 公共的、文化的使命を果たすべき新聞は、いつでも、どこでも、だれもが、等しく読めるものでなければならない。記事、広告とも表現には品格を保つことが必要である。また、販売にあたっては節度と良識をもって人びとと接すべきである。

 

 これらの倫理規定からみても、当該広告はそれを真っ向から否定する「反社会的広告」ではないのか。当該広告は、特定勢力に利用され、個人の名誉を棄損し、品格と節度を欠落させたヘイトスピーチではないのか。当該広告は、「大切な京都にヘイト市長はNO!」と直ちに書き改めなくてはならない。(つづく)