京都新聞の反共広告は謀略宣伝広告だった、千住博・前京都造形芸術大学学長(日本画家)や放送作家の小山薫堂氏が「無断掲載」との緊急コメント、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(20)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その197)

 

京都新聞1月26日掲載の市長選最中の大型反共広告について、私は翌27日の拙ブログで「選挙終盤戦にかけての大掛かりな謀略宣伝の匂いがする」と書いた。その後、ある友人から広告の支持者リストに名を連ねている著名人の1人、千住博・前京都造形芸術大学学長(日本画家)の緊急声明が転送されてきた。続いて「未来の京都をつくる会」を取材したJ-CASTニュース(1月28日)も送られてきた。大手メディアでは、毎日新聞が今日1月29日朝刊の全国版で「京都市長選『共産党はNO』広告、現職側団体『無断』で著名人顔写真」と初めて報じた(京都新聞はノーコメント)。まずはJ-CASTニュースを紹介しよう。

 

〇 京都市長選挙(2020年2月2日投開票)に立候補している現職の門川大作氏(69)の選挙母体「未来の京都をつくる会」が地元紙に掲載した共産党を批判する内容の選挙広告について、名前と顔写真が掲載された元京都造形芸術大学学長で同大教授の日本画家・千住博氏(62)が「まるで千住博がこの様な活動に同意しているような意見広告に、千住の許可なく無断で掲載されたことを大変遺憾に思います」と無断掲載である旨を主張した。未来の京都をつくる会の事務担当者はJ-CASTニュースの取材に、千住氏が門川氏の推薦人として各種広報物に掲載することは「承諾を得ている」と回答。一方で、広報物の個別の内容まで細かく承諾を得ることは「していなかった」という。

 

  〇千住博氏は27日、自身の公式サイトで「緊急:京都新聞の広告について」と題してコメントを発表。下記のとおり、広告内容に反対の立場を表明するとともに、無断掲載であった旨を訴えた(声明は2回続けて出された)。

「1月26日(日曜日)付の京都新聞の広告において、あたかも私が京都市長選に立候補している門川大作氏のワンチームと称する応援団のメンバーとして、ある政党に対してネガティブキャンペーンに加担しているかのごとくに受けとれる意見広告が載っていますが、これは門川大作氏の選挙事務所が全く私の了解を得ず勝手に掲載したもので、断じて私の本意ではなく、大変遺憾に思います。私はあらゆる政治団体とは距離を置くもので、特定の党の不利益に加担する事はありません」

「1月26日(日曜日)付の京都新聞の選挙広告について。千住博は京都造形芸術大学学長当時に候補者を応援してきた経緯から、今回も推薦者として名前を連ねてきておりました。ですが、千住はアーティストとして、意見の多様性や、議論の必要性を大切にしています。今回のような、ある特定の党を排他するようなネガティブキャンペーンには反対です。まるで千住博がこの様な活動に同意しているような意見広告に、千住の許可なく無断で掲載されたことを大変遺憾に思います」

 

  〇こうした反論について、未来の京都をつくる会の事務担当者は28日、J-CASTニュースの取材に次のように話す。「まず事実として、千住氏は前回選挙(16年2月)でも門川候補の推薦人として各種広報物に掲載しており、今回の選挙においても、各種広報物で推薦人として掲載することを依頼し、ご承認をいただいています。千住氏のサイトでも、過去の選挙に続けて今回も推薦者として名前を連ねている旨が記載されています」

 

〇一方で、広報物の具体的な内容について承諾を得ているわけではないという。「個別の広報物の中身まで細かく承諾を得ることはしていません。こちらは広告内容を含めてさまざまな広報物に掲載させていただくことに承諾いただいたという認識でいましたが、ここに認識の違いがあったのは確かだと思います。今回は踏み込んだ内容の選挙広告になったので、見解の違いがあったのかもしれません。相手側と受け取り方に違いがあったのであれば、事務のほうでニュアンスを丁寧に詰めておくべきであったということはあると思います」(担当者)

 

〇また、千住氏に対しては「しかるべきところを通じて連絡を取りました。それでサイトの文章の言い回しが変わったのではないか」(担当者)としている。前出した千住氏の公式サイト上のコメントには当初、京都造形大学長時代に門川氏を応援してきたこと、今回も同氏の推薦者となっていることについては言及がなかった。

   

〇今回の広告に掲載した他の8人の著名人についても、「各種広報物に推薦人として掲載することを依頼し、ご承諾いただいている関係」(同)と、上記の千住氏と同様の関係。「広報物ごとの個別の細かい文言まで確認しながら、推薦人の名前を掲載するところまでは、従来からしていなかったと思います。相手側との(信頼)関係だと思います」と話した。今回の選挙では、他の広報やビラでもこの9人の著名人を推薦人として掲載しているが、「そちらでは何のご意見も頂いていません」という。掲載した9人は「門川氏本人とさまざまなところでつながりのある人物であるのは間違いない」としている(※小山薫堂氏も「無断掲載」とのコメントを出しているので、担当者は自らの責任で確認していないのだろう)。

 

〇なお今回の広告の内容については、「あくまで門川氏を支援している団体の政策広告です。選挙期間中に政治団体が政治的主張をすることは認められており、その手法の1つです。また、『共産党の市長はNO』という文言は特定候補を名指ししたものではなく、一般論として書いたものです。政治的な主張を発信するに際し、各所に確認して問題ないと判断いただいた上で掲載させていただきました」

との見解を示している。

 

J-CASTニュースの取材に対する「未来の京都をつくる会」事務担当者の回答を要約すると、その言い分は次のようになる。

  1. 著名人9名の方々は、各種広報物に門川候補の推薦人として掲載することを依頼し、承諾いただいている信頼関係にある。
  2. 個別の広報物の中身まで細かく承諾を得ることはしていない。こちらは広告内容を含めてさまざまな広報物に掲載させていただくことに承諾していただいたという認識でいた。
  3. 今回は踏み込んだ内容の選挙広告になったので、見解の違いがあったのかもしれない。
  4. 今回の広告は、あくまで門川氏を支援している団体の政策広告だ。選挙期間中に政治団体が政治的主張をすることは認められており、その手法の1つである。「共産党の市長はNO」という文言は特定候補を名指ししたものではなく、一般論として書いたもの。

つまり、前半の3フレーズにおいては、著名人に門川候補を応援する広報に名前を使わせてもらうと持ち掛けて氏名掲載の了解を取り、その氏名を門川候補支援の一般的な広報物ではなく、今回は「踏み込んだ内容の選挙広告」すなわち対立候補を中傷する意見広告に無断掲載したことを認めているわけである。これは個人の尊厳と思想信条を踏みにじった悪質極まりない行為であり、目的(当選)のためには手段(無断掲載)を選ばない謀略宣伝広告以外の何物でもない。

 

しかし、最後のフレーズの方がもっと重大な内容を含んでいる。「共産党の市長はNO」という文言は、特定候補を名指ししたものではなく一般論として書いたものだというが、一般論として特定政党に「NO」を突き付けるのであれば、この選挙広告は憲法第21条で保障された政治結社の自由を否定し、政党政治そのものを否定することになる。与野党オール5党から成る門川陣営は、共産党を憲法上の政党と認めず、市民支援団体も含めた対立候補の存在を抹殺しようというのであろうか。次回は、毎日新聞記事を紹介しよう。(つづく)