「未来の京都をつくる会=門川陣営選挙母体」の反共広告の賛同人はたった1人だった、京都新聞は謀略宣伝広告の掲載責任を認めなければならない、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(21)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その198)

 

1月29日の拙ブログで、「大手メディアでは、毎日新聞が今日1月29日朝刊の全国版で「京都市長選『共産党はNO』広告、現職側団体『無断』で著名人顔写真」と初めて報じた(京都新聞はノーコメント)」と書いたが、同日、京都新聞にも関係記事が出ていた。誤りを訂正したい。

 

京都新聞記事を読んで改めて驚いたのは、28日までの同紙の取材で「未来の京都をつくる会=門川陣営選挙母体」の反共広告の賛同人は、立石京都商工会議所会頭(未来の京都をつくる会会長)たった1人だったという事実である。すでに当日までに、日本画家の千住氏がホームページで「特定の党を排他するようなネガティブキャンペーンには反対。この様な活動に同意しているような意見広告に、許可なく無断で掲載されたことを大変遺憾に思います」と表明しており、放送作家の小山薫堂氏も秘書を通じて「了承もなく掲載され、支持してくださる皆様に不信感を抱かせ、大変心苦しく思います」とコメントしていた。

 

同紙の取材で新たに判明したのは、西脇知事や有馬臨済宗相国寺管長は「事前に知らなかった」、中島映画監督は「推薦人は了承していたが、広告の掲載や文言は聞いていない。共産党だからNOだとか排除するような考えは間違い。きちんと政策を訴えないと逆効果」、堀場製作所(経営管理部)は「広告を出すと聞いていたが、本人(堀場厚会長)も秘書も内容は全く知らなかった」とそれぞれ語ったことだ。

 

これに対して、門川陣営の吉井事務長(自民党京都府連幹事長)は、「あらゆる広告物に推薦人の名前と写真を使用することは事前に了承を得ている。個別の広告物についての掲載確認は以前からしていない。ただ、推薦人にご迷惑をおかけしたとするなら本意でない」と釈明した(謝罪ではない)。また、広告は同会所属の全政党メンバーが出席する会議で決めたという。立石氏は「会の事務局に任せていたが、本人の了承を事前に得ていないのであれば申し訳ない。会長としておわびをしなければならないと思う」と述べたが、反共広告の作成に関わった各政党(自民・公明・国民民主・立憲民主)は依然として口をつぐんだままだ。

 

一方、社民京都府連は代表名で1月28日、「2020年1月26日付京都新聞朝刊の『未来の京都をつくる会』広告について」との声明をネットで発表した。私は、選挙前の門川陣営総決起大会で主催者が社民党を含む5党が結集していると報告していたので、これまで門川陣営は「与野党オール5党」で構成されていると理解していた。しかし、社民党が「未来の京都をつくる会」の構成団体ではないというのであれば、今後は「与野党オール4党」と改める。以下は声明の内容である。

 

1.2020年1月26日付京都新聞朝刊に掲載された「未来の京都をつくる会」の広告に、社会民主党京都府連合は一切関与していない。

2.社会民主党京都府連合は「未来の京都をつくる会」の構成団体ではなく、広告の賛同団体でもない。社会民主党京都府連合が広告に名を連ねているかのような記述は事実に反しており、断固抗議する。

3.<大切な京都に共産党の市長は「NO」>というフレーズは、政策を訴えるのではなく、レッテル貼りで自由な議論を封じ込める手法であり、社会民主党京都府連合が賛同することはあり得ない。

4.2020年2月2日投票の京都市長選挙において、社会民主党京都府連合は、門川大作市長と政策協定を結び、推薦を決定した。

5.今回の京都市長選挙における社会民主党京都府連合の態度は「門川大作候補に投票を」である。正々堂々の政策論争で京都市長が選ばれることを望む。以上                 

 

それにしても、顔写真付きで掲載されていた9人の「賛同者」のうち広告掲載に同意したのはたった1人(無断掲載6人、不明2人)だったことといい、構成団体ではない社民党京都府連の名前を平気で並べたことといい、このような傍若無人の振る舞いは、門川陣営が当初から独断で著名人や政党名を謀略宣伝活動に利用しようとしていたことを示すものだ。したがって、これだけ醜悪な事実が暴露されても門川陣営が事態に頬被りしたまま選挙戦を続けるとしたら、これら与野党オール4党はすべからく〝謀略政党〟だと言われても仕方がない。

 

一方、このような謀略宣伝広告を堂々と掲載した京都新聞の態度はどうか。1月29日の京都新聞記事は、広告掲載の張本人であるにもかかわらず、まるで他人事のように「無断掲載」に関する取材結果を報じているだけだ。本来であれば、事前に確かめなければならない確認作業を批判が集中してから今頃始めるというのでは、地元有力紙としては恥ずかしくないのだろうか。おまけに新聞社としての態度を「社説」で表明するのではなく、広報担当による一片のコメント、「広告主の政策広告と認識しており、掲載前に審査している。本紙広告掲載基準、公職選挙法などに沿った形式で掲載している」で済ませようとしているのもいただけない。要するに、紙面を提供しただけと言って責任を回避しているのである。

 

だが、憲法違反の「特定の党を排他する意見広告=ネガティブキャンペーン」を社会の公器である新聞に、しかも市長選の最中に掲載したことは極めて重大な問題であり、その責任を回避することはできない。京都新聞は、門川陣営の選挙活動に事実上加担したと見なされても仕方がないのであり、単なる公職選挙法の適用でもって「事前審査」した....などといった屁理屈は通らないのである。このままでは、門川陣営・京都市選挙管理委員会事務局・京都新聞3者がグルになって謀略宣伝広告を画策したことになってしまう。

 

毎日新聞(1月28日)によれば、京都市選挙管理委員会事務局は当該広告について次のように判断している。(1)公職選挙法は、政治団体による新聞広告で「当該選挙区の特定の候補者の氏名またはその氏名が類推されるような事項を記載する」政治活動は禁止、(2)「共産党は『NO』」などの表現については、候補者の氏名等はなく、党の政策に対する意見は許されているとして「公職選挙法違反には当たらない」。だが、これはおかしい。

 

考えても見たい。僅か候補者3人の市長選において「共産党の市長は『NO』」といえば、特定候補者の氏名が〝類推〟されることは自明の理ではないか。また、候補者の氏名さえ出さなければ党の政策に対する意見は許される―というのであれば、何を言っても構わないことになる。それに、京都市選挙管理委員会事務局の見解を金科玉条の如く扱うことも問題だ。問題なのは意見広告の内容であって、公職選挙法の形式的解釈や適用ではないのである。

 

特定政党を名指しして「NO」ということは、憲法第21条で保障された政治結社の自由を否定し、政党政治そのものを否定する行為だと言わなければならない。なによりも門川陣営のトップ、立石京都商工会議所会頭が、事前の了承なしに当該広告を出したことを謝罪しているではないか。会長自身が謝罪しているのに構成団体や政党、選挙事務長や掲載紙が横を向いていることは許されない。潔く関係者全員が謝罪して謀略宣伝広告を撤回すべきなのだ。(つづく)