中国発新型コロナウイルスが京都を襲う、インバウンドブームに躍った門川市政は「挑戦と改革」ではなく「手直しと後始末」に追われるだろう、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(24)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その201)

 

京都が今年初めての本格的な寒波に見舞われた昨日、ある会合のため円山公園近くの場所まで歩いた。京阪四条駅から八坂神社へ向かう四条通りは京都第一の観光ルートだが、正午前の時間にもかかわらず閑散として人影が少ない。いつもは混雑を極めている花見小路も人影はまばら、いったいどうしたことかと驚いた。道路清掃に当たっているおじさんたちに聞くと、ここ2、3日はこんな様子が続いているのだという。原因は明らかだろう。中国発の新型コロナウイルスによる感染が世界規模で広がるなかで、中国政府が海外団体旅行の中止を打ち出した影響が早くもこんな形で表れているのである。

 

京都市長選投開票日の翌日、特大の紙面を組んだ京都新聞1面には、「京都市長門川氏4選、組織手堅く2氏破る」「投票率40.71%、『京の未来開く』」との大型見出しが躍っていた。また、紙面の下には「東京五輪あと172日、パラリンピックあと204日」のロゴマークもあった。だが、本来なら1面全部が市長選関連の記事で埋められてもおかしくないのに、万歳を繰り返す門川氏の写真の横には、「新型肺炎死者 300人超、比でも、中国国外初」の大型記事が掲載されていたのである。

 

記事に添えられた「新型肺炎の感染状況(2日現在)」の表には、「中国本土1万4360人(死亡304人)」とあり、世界26カ国・地域171人の感染者数がリストアップされている。なかでも中国の観光客が多数訪れるタイ19人、シンガポール18人、日本・香港・韓国15人、オーストラリア12人などが上位に並んでいる。3日後の最新情報によれば、2月5日現在、中国本土の感染者2万4324人、死者491人、重症者3219人に拡大し、中国以外では27カ国・地域で感染者239人、死者2人に増加している(NHKニュース)。

 

重視しなければならないのは、中国以外の国・地域の感染者数で日本35人がトップになったことだ。続くのはシンガポール28人、タイ25人、香港21人、韓国19人だから、この間に日本の感染者数は2倍以上に増えている。世界各国・地域の中で日本の感染者の広がり方が最も大きくかつ早いということになると、これまでのような一周遅れの政府対応では到底対処できないのではないか。

 

一方、4期当選を果たした門川市長は2月3日、早速府庁を訪れて西脇知事と会談し、府市協調については「構想段階から一体として政策をつくっていく。市民、府民の意見も反映させ、府市協調から府市一丸となった政策の立案、実行という段階に入ってきている」と述べたという(朝日新聞2月4日)。また、同日の京都新聞インタビューでも、別荘税や新交通構想に意欲を見せている。いずれも「京の未来を開く」につながる構想であり、門川市長の言う「挑戦と改革」の課題なのだろう。

 

こんな希望が実現すれば結構なことだが、私は門川市長の「挑戦と改革」は結局のところ幻に終わるだろうと見ている。なぜなら、門川氏の前方には待ったなしの新型コロナウイルス感染対策が待ち受けており、これまで煽りに煽ってきた市内の宿泊施設拡大政策の〝手直しと後始末〟に追われることになるからだ。5万室近くに達したホテルや民泊など京都市内の宿泊施設はいまや「飽和状態」から「過剰状態」に劇的に変化しており、外国人宿泊客の3分の1を占めていた中国人観光客が消えてしまうとなると、観光産業に与える影響は計り知れないものになる。「ゴーストビル」ならぬ「ゴーストホテル」が林立しないことを祈るばかりだが、このような事態を招いた門川市政は逃げるわけにはいかない。その対応に追われるなかで最後の任期はあっという間におわるのではないか。

 

日本旅行業協会(JATA)は2月3日、中国政府による海外への団体旅行の禁止措置が続くなか、中国人団体旅行客のキャンセルが少なくとも3月までに40万人超にのぼる可能性があると発表した。日本旅行業協会(JATA)の調べでは、通常の中国からの団体旅行客が半分以下に減る恐れがあるというのである。中国人が団体旅行で日本に来るためには、日本の旅行会社に身元保証書の書類を作成してもらう必要がある。JATAが中国当局の団体旅行禁止を決めた1月27日から3月末までの身元保証書の申請枚数を調査したところその数は約40万人、これらのほぼ全てがキャンセルされる可能性が高いという(日経新聞2月4日)。

 

昨年2019年の中国人の訪日客は959万人で1カ月あたり平均約80万人、うち個人旅行は6割、団体旅行は4割だった。したがって、1カ月あたり約32万人の団体旅行客が訪れている勘定になるが、この40万人には個人旅行客やクルーズ船で来日する客は含まれていない。日本旅行業協会は実際のキャンセル数は40万人よりも多くなるとみているが、中国人観光客に人気の京都はその影響を最も受ける観光都市だ。門川市政4期目の最大の課題は、3期12年にわたるインバウンド推進政策の〝手直しと後始末〟に終わる公算が大きい。(つづく)