「アベノマスクがまだ届かない...」で盛り上がった政治談議、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(36)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その213)

 

 暇と健康を持て余している元気老人が数人、いつもの喫茶店に集まった。マスターももちろん元気で健康そのもの、お互いに「コロナをうつさない」ことを信条とする暇な連中の集まりだ。共通するのは「オンライン」「テレビ会議」などの最新兵器が苦手なこと、というよりは、「そんなものやれるか!」と突っ張っている点が特徴だ。画面に向かって話しかけるなどゾッとする、小さな画面に多人数が出てくるといったい誰が何を喋っているのかわからない、表情が平面的で読み取れないなどなど、口々にこぼして留飲を下げる。何のことはない、時代遅れの連中なのだ。

 

 そんな時代遅れの連中のなかで盛り上がった話題が、「アベノマスクがまだ届かない」ということだった。400兆円何がしの巨費を投じて1世帯に1袋(2枚)のマスクを届けるといった子供じみたアイデアを一国の総理が口にするだけでもビックリなのに、それが本当に実施に移されるのだから開いた口が塞がらない。おまけに近所のドラッグストアでもマスクの大安売りが始まっている昨今、誰に聞いてもまだ届かないのだという。

 

 この国の不幸は、この程度の人物が一国のリーダーの椅子に座っていることにある。その上、そんな人物が6年有余も居座り続けている政治世界の劣化と貧困さに皆が辟易しているのに、いっこうに政治が変わらないことが国民の絶望に拍車をかけている。コロナ危機は誰かが連発する「国難」の安売りではなく、まさに正真正銘の国難なのだ。それに立ち向かうのが「アベノマスク」というのでは、余りにも悲しすぎる。

 

安倍政権はこれまで数々の政治課題に遭遇してきたが、本当の国難に直面したことがない。これまで政争の課題になったのは、モリカケ疑惑、桜を見る会など、当人のレベルに相応する幼稚な事件ばかりだ。だが、今回のコロナ危機は違う。アベノマスクや10万円一律給付などではごまかせない大事件なのだ。コロナ危機は安倍政権の対処能力を遥かに超える正真正銘の国難なのである。

 

各紙の世論調査でも、コロナ危機に対する安倍政権の対応については日を追うごとに「ノー」が増えてきている。

【朝日】(3→4月)

「新型コロナウイルスをめぐる、これまでの政府の対応を評価しますか」、

「評価する」41→33%、「評価しない」41→53%

【毎日】(4→5月)

 「新型コロナ問題への安倍政権の対応を評価しますか」、

「評価する」39→22%、「評価しない」53→48%

【共同通信】(4→5月)

 「新型コロナウイルスの感染が日本各地で拡大しています。あなたは、これまで

の政府対応を評価しますか、しませんか」(3月)、「評価する」48.3%、「評価

しない」44.3%

 「新型コロナウイルスへのこれまでの政府対応を評価しますか、しませんか」

(5月)、「評価する」34.1%、「評価しない」57.5%

 

 また最近では、内閣支持率も不支持率が支持率を上回るのが普通になった。朝日(4月)支持41%、不支持41%、毎日(5月)支持40%、不支持45%、読売(4月)支持42%、不支持47%、共同通信(5月)支持41.7%、不支持43.0%と、軒並み不支持率が支持率を上回っている。これで与党内から危機感が出てこないのは不思議だが、自民党支持率が安定しているからだろう。逆に言えば、野党支持率がいっこうに上がらず依然として低迷を続けているからだ。

 

 そんな中で唯一変化があるとすれば、「維新の会」の支持率が若干上向いていることだ。各紙全体の傾向とまではいかないが、朝日・毎日だけをみると明らかに変化が認められる。3月から4月への変化は、朝日1→3%、毎日4→6%となっていて誤差範囲の変化だというわけにはいかない。

 

その代わりというわけではないが、立憲民主党の支持率が次第に低下してきている。朝日6→5%、毎日9→5%とこれまた変化が顕著だ。朝日は維新の会の支持率上昇の背景に吉村大阪府知事の突出ぶりがあるとして、次のような解説記事を載せている(コロナの時代、混迷の1カ月、2020年5月10日)。

 「吉村氏は大阪に地盤を持つ地域政党・大阪維新の会の代表代行。現代表の松井一郎・大阪市長と連携しながら、党の創設者である橋下徹・元大阪市長とも連絡を取り合う。国を批判しながら世論を味方に付ける――。吉村氏のそんな意図が見え隠れした」

 

 一方、毎日はもっと挑発的な世論調査結果を発表している(2020年5月8日)。携帯電話だけの調査で回答者数は575人の小規模な調査だが、調査内容が面白い。新型コロナウイルス問題への対応で「最も評価している政治家」を1人挙げてもらったところ、401人が具体的な政治家の名前を挙げたという。その中で吉村大阪府知事がダントツ1位で188人、次点は小池東京都知事59人、第3位が安倍首相34人だった。毎日はこの結果を、「政府対応の遅れが批判される中、独自の取り組みや情報発信をしている知事が評価された」「吉村氏への評価が維新の支持率アップにつながったとみられる」と分析している。

 

 たかが人気投票だと笑い飛ばすわけにはいかない結果ではないか。4位以下は鈴木北海道知事26人、山口公明党代表10人、小池共産党書記局長7人などが並んでいるが、玉木国民民主党代表3人、枝野立憲民主党代表1人というのが振るっている。なかでも401人の回答者の中でたった1人しか枝野氏の名前を挙げなかったのは象徴的だ。立憲民主党は早く党首を換えた方がいいと世論が言っているようだ。(つづく)