黒川東京高検検事長の賭けマージャン発覚は、産経新聞関係者からの週刊文春への通報だった、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(38)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その215)

黒川東京高検検事長の賭けマージャン発覚は、産経新聞関係者からの週刊文春への通報だった、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(38)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その215)

 

 黒川東京高検検事長の賭けマージャン事件で驚いたことが3つある。第1は、黒川氏が前代未聞の閣議決定による定年延長で東京高検検事長の職にとどまり、しかも次期検事総長への着任をめぐる検察庁法改正案までが審議されている渦中の張本人であるにもかかわらず、緊急事態宣言の下で反社会的な賭けマージャンに興じていたこと。第2は、賭けマージャンの相手が3人(産経2、朝日1)とも検察担当の新聞記者だったこと。第3は、週刊文春のスクープの情報源(ネタ元)が産経新聞関係者からの通報によるものだったことである。

 

 かねてから政界を揺るがすような大スクープは、新聞社の手によることは稀でもっぱら週刊誌に独占されていることに疑問を抱いていたが、今回の事件は図らずもその背景を説明する格好の材料になった。検察担当の新聞記者が検察幹部といつも賭けマージャンに興じているのでは、言うことも言えず、書くことも書けない仲になることは必定だ。いわゆる「ベタベタ」の関係、「ズブズブ」の関係というやつである。

 

ここまでは大方の察しがついていてさほど驚かないが、一番驚いたのは文春スクープのネタ元が産経新聞関係者だと週刊文春が明らかにしていることだ。5月21日(木)発売の週刊文春は、冒頭部分で「『今度の金曜日に、いつもの面子で黒川氏が賭けマージャンをする』」「こんな情報が、産経新聞関係者から小誌にもたらされたのは4月下旬のことだった。『今度の金曜日』とは5月1日を指していた」と書いているのである。

 

 それにしても産経新聞関係者が、社内の同僚記者らが黒川氏と賭けマージャンをしていることをわざわざ外部の週刊誌に漏らすのだから、事情は恐ろしく込み入っている。本来なら、産経新聞社自身が当該記者らの行動を調査して不始末を公表し、メディアの倫理綱領に照らして事の処分に当たらなければならないはずだ。しかし、関係者にはそれが端から不可能だと分かっていたので、外部に通報したのだろう。

 

 察するところ産経新聞社内でのこのような内部通報は、安倍政権を支える〝社是〟への「抵抗」「反乱」と見なされ、通報者は「規律違反」として処分される運命が待っているのだろう。とすれば、関係者は事実を見てみないふりをするか、外部に通報するかの二者択一の選択を迫られることになる。この場合、関係者が週刊文春を通報先に選んだことは象徴的だ。他の各紙に情報提供することも考えられるが、おそらく産経、朝日と同様、各紙にも同様のケースがあるとすれば、この通報が握り潰される可能性がある。週刊文春が選ばれた理由はここにあるのだろう。

 

 とはいえ、産経新聞社の中にこのような心ある関係者が存在していたことは、「闇夜の中の一筋の光明」を見る思いがする。この大スクープは喫水線ギリギリで航行していた「安倍丸」を直撃し、船体が大きく傾くほどの大打撃を与えることになった。以下、直後に行われた毎日調査(5月23日実施、前回調査は5月6日)、朝日調査(5月23、24日実施、前回調査は5月16、17日)の世論調査結果を見よう。( )内は前回調査。

 

 〇内閣支持率:毎日27%(40%)、朝日29%(33%)

 〇内閣不支持率:毎日64%(45%)、朝日52%(47%)

 〇政党支持率:

  毎日「自民25%(30%)、立民12%(9%)、国民1%(2%)、公明4%(5%)、共産7%(5%)、維新11%(11%)、社民1%(1%)、れいわ1%(2%)、支持政党なし36%(33%)」

  朝日「自民26%(30%)、立民5%(5%)、国民1%(1%)、公明4%(3%)、共産3%(3%)、維新4%(3%)、社民1%(0%)、れいわ0%(0%)、支持政党なし48%(46%)」

〇黒川検事長の定年延長に関する安倍内閣の責任:

毎日「安倍首相に責任28%、森法相に責任3%、首相と法相の両方に責任47%、内閣に責任はない15%」

  朝日「首相の責任は大きい68%、それほどでもない24%」

 〇黒川検事長が賭けマージャンで辞職:毎日「当然だ33%、懲戒免職すべきだ52%、辞める必要はない8%」 

〇新型コロナウイルスを巡る安倍政権の態度:

毎日「評価する20%(前回22%)、評価しない59%(同48%)」

朝日「評価する30%、評価しない57%」

 

今回の毎日・朝日調査で共通するのは、内閣支持率が挙って20%台に落ち込んだことだ。それだけではない。不支持率が毎日64%、朝日52%といずれも過半数を超えている。毎日などは内閣不支持率が前回より19ポイント増えて3分の2に迫る勢いとなっている。支持率の下落はともかく不支持率がこれだけ増えてくると、安倍内閣への拒否感がはっきりとした世論として姿を現していると言ってよい。「安倍内閣(だけ)は嫌だ」という国民感情がいまや明確に形成されていると言える。

 

内閣支持率と政党支持率の関係を見ても、毎日は内閣支持27%に対して自民支持25%、朝日は内閣支持29%に対して自民支持26%とあるように、世論は「保守岩盤層」といわれる自民支持層(25%前後)以外はほとんど安倍内閣を見放している。「安倍丸」は喫水線を大きく割り込み、安倍政権が今後どのようなコロナ対策を講じても、もはや浮上することは難しい。朝日調査の新型コロナウイルスを巡る安倍首相へ評価がそのことを証明している。

 

〇新型コロナウイルスを巡る安倍首相の対応を見て首相への信頼感は、「高くなった」5%、「低くなった」48%

〇PCRなどの検査体制の整備について政府の取組を、「評価する」25%、「評価しない」59%

〇新型コロナウイルスの感染拡大で経済的な打撃を受けた人や企業に対する政府の支援策を、「評価する」32%、「評価しない」57%

 

5月25日午前の時点で感じたことは以上だが、他社の世論調査が出た段階でまた書きたい。(つづく)