立憲民主・国民民主の合流新党に「期待しない」68%、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(43)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その220)

 

立憲民主と国民民主が解党し、合流新党を結成することが8月19日決まった。国民民主の両議員総会で合流新党への参加が圧倒的多数で決まり、あくまでも「分党」に固執する玉木代表は孤立した。それにしても玉木代表の行動はわかりにくい。というよりは、立憲民主との合流話を表向き進めながら、その実は自分の勢力を広げるための策動を続けてきたというのがことの真相だろう。玉木氏には立憲民主との合流などもともと念頭になく、「政策提案型政党」「改革中道政党」の旗印を掲げて保守勢力の注目を引き、高値で自分を売りつけたいだけの話なのである。

 

合流新党の方は無所属議員も加えて衆参150人程度になると言われているが、「玉木新党」の方は全く目途が立っていない。毎日新聞(8月22日)によれば、国民民主の合流新党不参加9人の中で「玉木新党」入りを明言したのは僅か3人にとどまり、京都の前原氏をはじめ残り6人は「目下行先不明」なのである。新党が公職選挙法上の政党要件を満たすには、「国会議員5人以上」の参加が必要になる。また、政党要件を満たさなければ政党助成金も受け取れない。この事態は、「分党表明」をすれば相当数のメンバーが付いてくると見込んでいた玉木氏には「想定外」だったのではないか。

 

「議員は選挙に落ちればタダの人」と言われるように、国民民主にとっては次の国会議員選挙での当選が至上目的となる。国民民主が一定の政党支持率を確保しているのなら話は別だが、泡沫政党張りの1%程度では当選はとうてい覚束ない。前原氏とともに旧民主を分裂させて希望の党を立ち上げた連合の神津会長までが合流新党に前向きなのは、現状のままでは民間企業系産業別労組の出身議員の当選が危うくなり、延いてはそれが連合分裂の引き金になりかねないからだ。

 

とはいえ、政権交代のためには「大きな塊」が必要だと延々と繰り返してきた野党結集の旗印はもはや色が褪せている。コロナ危機のもとで果てしない合流話を繰り返してきた立憲民主と国民民主に対しては、国民の多くが呆れ果て匙を投げているのである。今回の合流新党の印象も「大山鳴動して鼠一匹」どころか、「大山鳴動せずして子ネズミ一匹」程度のインパクトしか与えていない。その証拠が各紙の世論調査にもあらわれている。

 

8月22日実施の毎日新聞世論調査では、「立憲民主党と国民民主党が合流して新党を結成する見通しです。この新党に期待が持てますか」との質問に対して、「期待が持てる」17%、「期待は持てない」68%だった。政党支持率は立憲民主9%、国民民主2%で前回と変わらずだった。

 

8月22~23日実施の共同通信世論調査の結果は、「国民民主党が立憲民主党との合流方針を決めました。合流する新党は140人を超える規模となる見通しですが、国民民主党の玉木雄一郎代表らは参加しない意向を表明しています。貴方は新党に期待しますか、しませんか」との質問に対して、「期待する」22.0%、「期待しない」67.5%だった。政党支持率は立憲民主党6.9%(前回6.3%)、国民民主党1.5%(同1.5%)だった。

 

いずれの世論調査も7割近い回答者が「新党に期待しない」と表明しており、この結果は野党への期待がいまや地に堕ちてしまっていることを示している。これでは前途多難と言うほかないが、まだそれに輪をかける事態が発生した。今日8月25日の民放テレビでは、安倍退陣説の高まりに伴う次期政権の行方を占う政局分析一色となり、いつもは安倍首相のオウム返しのような発言を続けている政治評論家までが「首相退陣・総裁選挙」に言及する状況に一変した。この調子だとメディア空間はここ当分与党を中心とする政局動向に独占され、野党勢力の存在などどこかに吹っ飛んでしまいそうな雲行きだ。

 

史上最長の在任期間となった安倍政権が退陣し、新しい与党政権が誕生すれば野党の出番はなくなること請け合いだろう。新政権誕生にともないメディア空間の空気が変われば、たとえそれが自民党政権の延長であっても国民の眼には新鮮に映る。そして新政権のもとで総選挙が行われれば、与党の圧勝、野党の惨敗といった見たくない光景が現実のものになるかもしれないのである。

 

さて、野党勢力はこのような政治情勢の下でどのような戦略を立てるのか、新しい与党政権の誕生に対してそれに対抗しうる斬新な政権構想を果たして打ち出せるのか、野党勢力の存在意義が今ほど問われている時はない。(つづく)