吉村大阪府知事は「政治=広報」と勘違いしているのではないか、政策を持たない政治家は間もなく消えるだろう、菅内閣と野党共闘の行方(29)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その254)

 

 大阪の1日当たり新型コロナ感染者数が4月13日、遂に1000人を超えた(1099人)。大阪を中心に廻っている関西経済は大打撃を受け、その他の活動も軒並み大きくダウンしている。学会活動も研究会もまたもや「オンライン」時代に逆戻りだ。大学の講義も「リモートワーク」でやってほしいと言われている。しかし、私のような時代遅れの人間は、「ズーム会議」とやらには付いていけない。第一、パソコンにカメラが付いていないのだからどうしようもないのである。

 

 それにしても、連日テレビに出ずっぱりの吉村知事には呆れてものが言えない。毎日のニュース番組には必ず登場して、急増する感染者数を挙げて「自粛をお願いします」というだけなのである。出る方も出る方だが、出す方も出す方だろう。感染者数を挙げてその理由も説明することもせず、ただ「お願いします」というだけの人物をいったい何時まで使い続けるつもりなのか。吉村氏もマスメディアも「政治=広報」だと勘違いしているようだ。というよりは、政治を意図的に広報活動に矮小化し、「政策不在の政治」を国民に見えないようにしているのである。

 

 だが、こんな小手先の「騙しのテクニック」はいつまでも通用しない。メディアに対しては抗議が殺到しているというし、第一、若者の「テレビ離れ」がどんどん進んでいる。変異ウイルスが主流となり、若者の感染者数が増えてくるようになると、吉村式広報は破綻せざるを得ない。見てもくれもしないテレビニュースで幾ら宣伝しても、彼・彼女らの目や耳に届かなければ「自粛効果」は上がらないからである。

 

 それに我々世代の「テレビ人間」からしても、4月13日の関西方面のニュースは傑作だった。吉村知事が自粛を呼びかけるニュースに引き続き、誰もいない万博記念公園での東京五輪聖火リレーの様子が映し出されたのである。有名な上方の噺家や歌舞伎役者が満面の笑顔を振りまいて走っていたが(というよりは、歩いていたが)、その様子は誰が見ても寒々としたものだった。変異ウイルスによる感染症の第4波が襲来している最中での聖火リレーなど、まさに「パロディ」そのものではないか。

 

 すでに、大阪維新のお家芸である「騙しのテクニック」は破綻している。大阪を〝バクチの街〟にするカジノリゾートを誘致するための「関西万博」は、新型コロナパンデミックによるカジノ産業の破産によって実現が難しくなった。大阪府と大阪市の二重行政を解消すると称してぶち上げた「大阪都構想」は、住民投票で否決された。そしていま、新型コロナ対策に対して本気で取り組まず、その場凌ぎの「自粛要請」と「緊急事態宣言解除」を繰り返してきたツケが、大阪維新の足元を掘り崩そうとしているのである。

 

 同じことは、菅政権についても言えるのではないか。菅首相は4月12日、高齢者向けの新型コロナウイルスワクチン接種が始まったのを受け、「ワクチンは発症や重症化(の予防)に対し、まさに切り札だ」と、東京都八王子市の接種会場で強調した。だが、鳴り物入りの「高齢者向けワクチン接種」は本数が余りにも少ないため、「予約が取れない」との不満が沸き起こっている。30分もすれば「予約完了」となり、大多数の高齢者は不安と焦燥の中に置き去りにされる状況が全国各地で起こっているのである。

 

 八王子の接種会場での医師の話が象徴的だった。本来、ワクチン接種は医療従事者を先行させ、その後に高齢者に接種するはずだった。にもかかわらず、接種を担当する肝心の医師本人がまだ接種を受けていないというのである。これでは自分も感染する恐れがあり、また高齢者に感染させる恐れもあるという医師の話が、菅政権のワクチン接種の内実を暴露している。ワクチンの本数が余りにも少ないため、医療従事者の接種が終わるのを待っているといつ高齢者接種が始まるかわからない。これでは、菅政権が国民に約束した4月12日接種スタートがウソになる。テレビニュース向けの場面を演出するため、ごく少数のワクチン接種をとりあえず始めたというのが真相なのだ。

 

 新型コロナ対策を巡っては4月12日、新たに東京、京都、沖縄の3都府県に「まん延防止等重点措置」が適用された。だが、飲食店などの営業時間短縮要請といった既存の対策は十分な効果が見通せないことは百も承知だ。日本のワクチン接種状況は1%足らず、すでに国民の多くが2回接種を終えている先進諸国に比べて余りにも少ない。歴代の自民党政権がワクチンの国内製造を怠ってきたツケで外国薬品メーカーに頼らざるを得なくなり、菅政権がワクチンの必要量の確保に各国の後れを取り失敗してきたからである。

 

ワクチン接種に対しては国民の期待も大きい。それだけに接種が円滑に進まなければ政権批判が噴出することは避けられない。直近の世論調査の内閣支持率は、朝日、共同通信ともにそれほどの大きな動きはない。支持率と不支持率が拮抗している状態には変わりないのであるから、もしワクチン接種が遅れるようになると、国民の不満は爆発する。河野ワクチン担当相は、自治体はワクチン接種に対して「フルスウィング」で臨んでもらいたいと胸を張ったが、これが「フルスウィングの空振り」になると、事態はただでは収まらなくなる。菅政権は「ワクチン接種」という〝薄氷〟の上を歩いている。(つづく)