立憲民主党枝野代表の野党共闘に対する態度は本気なのか、京都1区への対応がその試金石だ、菅内閣と野党共闘の行方(45)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(270)

 今年9月6日の京都新聞は、「衆院選京都1区、独自候補か 野党共闘か、立民、あいまい態度」との見出しで次のように伝えている。

「次期衆院選で野党共闘の成否が注目を集める京都1区で、立憲民主党が独自候補の擁立を巡り、あいまいな態度を続けている。『最終決定権は党本部だが、京都府連などとよく相談して最終的な判断をしないといけない。(候補を)立てないという方針を決めているわけではない』。枝野幸男代表は8月31日の定例記者会見で京都1区の対応を問われ、『白紙』と説明した」

「京都1区は、これまで多くの当選を重ねてきた自民党の伊吹文明元衆院議長が今期限りで引退を表明し、新人で元総務官僚の勝目康氏(47)が議席継承を狙う。日本維新の会も新人の堀場幸子氏(42)が立候補を予定。京都1区初勝利へ意気上がる共産党は、10選を目指す穀田氏を野党統一候補とするよう立民などに求めている」

「小選挙区制となった1996年以降の計8回の衆院選で、京都1区に旧民主党系の候補が立たなかったのは2014年だけ。立民の福山哲郎幹事長(参院京都選挙区)は、旧民主系が非自民・非共産のスタンスで存在感を発揮してきた京都の事情を踏まえ、『共闘は難しい』とするが、独自候補の擁立や野党共闘については言葉を濁す。立民に共闘を呼びかける共産は早期の協議開始を求める」

 

京都1区では、これまで伊吹文明氏が安定した得票で議席を獲得してきたこともあって、共産党の穀田恵二国対委員長(74)=比例近畿=は、常に次点に甘んじてきた。両氏の票差はおよそ2万票余りでそれほど大きな差ではないが、穀田氏はどうしても伊吹氏の厚い壁を破れなかった。それが今回、伊吹氏の引退で大きなチャンスが訪れたというわけだ。ちなみに過去2回の京都1区での得票数は以下の通りである。

    〇第47回衆院選(2014年) 伊吹文明73684票 穀田恵時53353票

    〇第48回衆院選(2017年) 伊吹文明88106票 穀田恵二61938票

 

京都1区のような固定票が大半を占める市内激戦区では、新人候補が大量得票することは極めて難しい。勝目氏が伊吹氏の後継候補であり、伊吹氏が全力を挙げて支援することは間違いないが、それでもこれまで伊吹氏との個人的つながりで投票してきた多くの有権者をそのまま引き留めることはできない。かなりの票が浮動票となり、これを誰が獲得するかが勝負の分かれ目になるとみられている。

 

立憲民主党枝野代表は、菅首相の退任でタナボタの「単独過半数」の夢が消え、目下自民党総裁選の波間でもがいている。今頃になって連日「新政策」を打ち出してももう遅いが、それでも諦めきれないのかメディアに露出することに懸命だ。立憲民主党が自民党総裁選の中に埋没してしまうことへの危機感から、野党共闘に向かって地道な努力を続けることなどは眼中になく(ほったらかしにして)、とにもかくにも立憲民主党が目立つことだけに終始している有様は見苦しいことこの上ない。

 

9月8日に野党共闘に関する政策合意が成立して以来、実質的な選挙協力は全国レベルでは何も進んでいない。それどころか、京都では野党共闘に逆行する動きが強まっている。福山幹事長は、野党共闘の政策合意を誠実に実行しなければならない党の要職にあるにもかかわらず、「京都は共産党と共闘できるような地域情勢ではない」と言い切る有様だ(産経7月30日)。京都は「独立王国」であり、公党間の約束が通用しない「無番地」とでも思っているのであろうか。

 

京都1区での立憲民主党に残された道はただ1つしかない。それは穀田氏を野党統一候補と認めて選挙協力することであり、それがどうしても嫌だというのなら、せめても独自候補の擁立を見送り、自由投票にして実質的に穀田氏を支援することだ。しかし、そうはすんなりといかないところに、謀略が渦巻く「千年の古都・京都」特有の複雑な政治事情がある。ならば、立憲民主党が独自候補の擁立に踏み切った場合のことを考えてみよう。

 

およそ当選の見込みのない立憲民主党の独自候補を擁立することは、自民党勝目氏と共産党穀田氏の一騎打ち戦において穀田票を削ることを意味する。僅差で勝負が決まる接戦において「第3候補」を擁立することは、選挙戦の常識では「敵の回し者」とみられ、この場合は事実上勝目氏の「別働隊」としての役割を果たすことになる。しかし、このことは不思議でもなんでもない。これまでの京都での数多くの選挙では、旧民主系政党が自民など保守系政党と強固な連合軍を組み、共産党の進出を阻んできた長い歴史があるからだ。

 

しかし、「今回は別だ」という見方もある。それは立憲民主党が野党共闘の旗を掲げて衆院選に臨むことを公約している以上、それに反する行動をとったときは公党としての存在意義を疑われることになるからである。枝野代表が「最終決定権は党本部にある」と言っている以上、これ以上のあいまいな態度は許されない。「京都府連などとよく相談して最終的な判断をする」ということになれば、立憲民主党は地域政党の連合体となり、政権政党としての資格を失う。枝野・福山ラインは最終的にどんな決定を下すのだろう。京都の有権者のみならず多くの国民がその決定を見守っている。(つづく)