泉健太政調会長の〝野党候補一本化〟は「地域事情による=京都を除く」のダブルスタンダード(二枚舌)で成り立っている、泉氏はその理由を立憲支持者に説明しなければならない、岸田内閣と野党共闘(その6)

 立憲民主党代表選挙が本格化してきた。自民党総裁選挙の二番煎じの感があるが、それでもマスメディアで大きく取り上げられ、NHKテレビの日曜討論会にも出演するようになると、候補者一人ひとりの発言はそれなりの重みをもつようになる。一方、共産党の方は、機関紙で「志位委員長の発言を広げよう」「常幹声明を討議・具体化し、公約実現と大きな党づくりに踏み出そう」と連日呼びかけているが、こちらの方はいっこうにニュースにならない。マスメディアが取り上げるような新味ある材料が見つからないからだろう。

 

 代表選が告示された11月19日、逢坂誠二、小川淳也、泉健太、西村智奈美の4候補は党本部で記者会見し、政策や党改革の抱負を語った。その中で野党間の選挙協力に関しては、逢坂氏は「地域事情に配慮しながらできる限り(与党と)1対1の構図を作る」、小川氏は「野党は一本化する努力が必要だ」、泉氏は「(参院選の)1人区では一本化を目指していくことを明確にしたい」、西村氏は「(選挙協力は)自公政権の議席を一つでも減らしていくためには必要不可欠だ」とそれぞれ言明した。いずれも「野党共闘」は基本的に継続するとのことである(日経11月20日)。

 

 一方、共産党との選挙協力に関しては、各候補とも明確な方針を示さなかった。政権奪取時に共産が「限定的な閣外からの協力」をするという合意に関しては、泉氏は「連立や閣外協力という言葉が先走ったことを真摯に反省すべきだ」と合意の見直しを示唆したのに対して、逢坂、西村、小川3氏は合意への姿勢を明確にしていない(毎日11月20日)。

 

 私は、泉氏が「野党候補一本化」を言明したことに驚いた。これまでも再三再四指摘してきたように、泉氏は今回衆院選において地元京都での野党候補一本化には徹頭徹尾反対し、野党共闘に端から背を向けてきた人物だからである。たとえば、立憲民主党京都府連は衆院選前の10月9日、役員会と常任幹事会を開いた際、立憲京都府連会長を務める泉氏は、共産党から協議の申し入れのあった共闘については、「京都は自民、共産両党とは議席を争った地。これまでも非自民・非共産の立場で支持されてきた」と説明し、「『野党統一候補』という考えは取らないし、共産との選挙協力はない」と重ねて強調している(毎日10月10日)。

 

今回、枝野代表とともに幹事長を辞任した福山氏も、京都新聞(10月12日)の「――共産党とは「限定的な閣外協力」で合意したが、京都では共闘しない。福山幹事長、泉健太政調会長の地元で共闘しないことを有権者にどう説明するか」との質問に答えて、「私も共産党と20年以上、選挙を含めて争っている。一方、全国的には自公を倒すために共産を含めて他の野党と選挙区調整をして戦う機運がすごく高まっている。今回は『市民連合』が仲介した常識的な政策を実現する限定的な閣外からの協力であり、日米安保や天皇制、自衛隊の存在では以前から変わらない距離で共産党と向き合う」と、訳のわからない説明を相変わらず繰り返している。

 

 福山幹事長と泉政調会長は、いずれも共産党と選挙協力を結んだ立憲民主党の幹部(当事者)ではないか。それが京都では、これまで共産党と選挙戦を戦ってきたという理由にならない理由で「共闘しない」「選挙協力しない」と言うのでは、政党間の選挙協力なんて「いったいなんだ!?」ということになる。国政選挙における政党間の選挙協力に関する合意が、「地域事情」によって簡単に変更されたり破棄されたりすることが許されるのであれば、政党間の選挙協力は無意味なものになり、有権者には見向きもされなくなる。

 

 朝日新聞地方版(11月20日)は、立憲代表選に泉氏が立候補したことに関して、府内各党の反応を伝えている。立憲京都府連は11月21日に常任幹事会を開き、代表選への対応を協議するというが、田中健志幹事長は「政策について活発な議論を交わすことで、野党第1党としての存在感を高めてもらうことを期待する」と語ったという。一方、京都3区(泉氏が当選)で党候補の擁立を見送った共産党については、「10月の衆院選で立憲と『共闘』した共産党の渡辺和俊・府委員長は『新代表のもとで野党共闘を進めて、共通政策の発展に取り組まれることを望む。自公政権に対抗するため、国民の関心を引きつけてほしい』と述べた」という。共産党は、泉氏を含め新代表に誰になっても歓迎するということだろうか。

 

 京都では参院選に向けての前哨戦が早くも始まっている。立憲京都府連は11月5日、来年夏の参院選京都選挙区(改選数2)に現職で党幹事長の福山哲郎氏(59)を擁立すると決めた。福山氏は先月下旬、京都新聞社の取材に対し、来夏の参院選への対応について「私は自民党、共産党と戦うことになるだろう。私は私の主張を訴えていく」と述べていた。京都選挙区では、自民党府連が今期限りでの政界引退を表明した二之湯国家公安委員長(77)の後任に、京都市議の吉井章氏(54)を擁立すると決め、共産党も候補者擁立を目指している(京都新聞11月6日)。

 

 だが、福山氏の見通しは限りなく甘い。日本維新の会の馬場幹事長は11月10日の定例会見で、来年夏の参院選京都選挙区(改選数2)に向け「実際に候補者を発掘していく作業に入っていきたい」と述べ、独自候補の擁立に積極的に動く考えを示した。馬場氏は、先の衆院選で京都府内の維新の比例票が自民党(約33万8千票)に次いで2位(約26万6千票)だったことを踏まえ、2人区の京都について「候補者を出して活動すれば、当選する可能性が非常に高い都道府県になっている」と分析。衆院選で堀場幸子氏が比例復活を果たした京都1区で「かなりの得票をいただいている」とも述べ、「堀場さんを中心に京都の地方議員とタイアップして党勢を拡大し、次の参院選では京都でも1議席お預かりできるように努力したい」と意欲を見せた(京都新聞11月11日)。

 

 泉氏は、代表選における「野党候補一本化」の公約と地元京都での「野党共闘反対」の矛盾について説明しなければならない。「地域事情が国政選挙公約に優先する」理由を明確に説明できなければ、政治家としては失格の「ダブルスタンダード=二枚舌」を弄する人物になる。泉氏がこのまま頬かぶりを続けるのか、それとも納得できる説明をするのか、京都3区の有権者はもとより全国の立憲支持者の目が注がれているからである。

 

 福山氏も安泰というわけにはいかない。維新候補が来年参院選に候補者を擁立すれば、共産党との対決を強調して保守票を取り込もうとする立憲京都府連の選挙戦略は根元から崩れることになる。野党統一候補であり立憲副代表の辻元清美氏(京都府に隣接する大阪10区)は、今回の衆院選では名もない維新新人候補に大差で敗れ、比例復活もできなかった。自民党と共産党の間で「ヌエ」のように生き延びてきた民主党は、立憲民主党に衣替えしたもののその本質は変わっていない。福山氏がその路線を取り続けるかぎり生き残る保証はない。泉氏や福山氏に代表される「野党共闘拒否路線」はいまや終焉のときを迎えたのである。(つづく)