旧統一教会の盟友・安倍元首相を国葬にするという〝破局の選択〟岸田内閣は国民世論から厳しく断罪されるだろう、岸田内閣と野党共闘(その23)

 先日、私の携帯電話に突然「非通知」の知らせが届いた。普段なら応答しないのだがたまたま開いてみたら、なんと「解散総選挙」についての世論調査なのである。形式は、例の如く「選挙に関心はあるか」「投票に行くか」「支持政党はどこか」などの質問に対して回答を求めるもの、内容は何の変哲もないものだった。

 

しかし、驚いたのは他でもない。こんな世論調査が「なぜこの時期に?」ということだった。参院選が終わったばかりで当分の間国政選挙はない、岸田内閣は「黄金の3年間」を手に入れて安泰そのもの――、政治情勢はおよそ解散総選挙とは無関係だと思われていたのである。それが「解散総選挙」についての世論調査が突然行われるのだから、政界に何か異変が生じていて、国葬後に解散総選挙が行われるかもしれないという情勢になっているのだろうか。

 

そういえば、このところ自民党と旧統一教会との関係は〝底なし沼〟の状態を呈している。朝日新聞は8月18日から9月2日にかけて、全国の国会議員と都道府県議、知事計3333人を対象に、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関係を尋ねるアンケートを実施した。その結果、教団や関連団体と接点があったことを認めたのは計447人、内訳は国会議員150人、都道府県議290人で、ともに8割を自民が占めたという(朝日新聞9月4日)。

 

国会議員で接点を認めた150人は、自民120人、維新14人、立憲9人、公明、国民、参政各1人、無所属4人、自民が80%を占める。同じく都道府県議290人は、自民239人、公明11人、維新7人、立憲4人、国民1人、その他3人、無所属25人で、ここでも自民が82%と突出して多い。まさに「根絡み」「抜き差しならぬ」の状態だ。このほか、宮城、秋田、富山、福井、愛知、徳島、鹿児島の7県の知事が接点を認めた。これら7知事はいずれも自民が与党として支援している。接点を認めた全議員と知事447人のうち、今後関係を見直すと回答したのは384人人(国会議員139人、都道府県議242人、知事3人)だった。

 

 共同通信はその1か月前の7~8月、安倍元首相を除いた全国会議員712人を対象に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わりを尋ねるアンケートを実施している。回答を寄せた594人のうち接点を認めたのは与野党双方117人、自民は93人で80%を占めた。また9月3日段階のまとめでは、これが「少なくとも146人」に上り、党所属国会議員381人の38%が関係議員であることが判明した。僅か1カ月で自民関係国会議員が93人から146人に1.6倍も増えるのだから、まさに〝底なし沼〟状態だ。今後調査が進めばその数はどんどん増えていくことだろう。加えて地方議員まで調査範囲を広げれば、自民関係議員(保守系無所属を含めて)はさらに増えること間違いない。

 

旧統一教会問題については、民放テレビが精力的に連日報道しているのに対し、これまで「だんまり」を決め込んできたNHKが、8月29日の「クローズアップ現代」で漸くこの問題を取り上げた。その中で、安倍元首相がビデオメッセージを送っていたUPFジャパン、国際勝共連合など関連団体のトップ・梶栗正義氏が初めてテレビ出演し、「反共」の立場でこれまで自民党とは同志的関係にあったこと、そのトップである安倍元首相を尊敬し支援してきたこと、旧統一教会の信者からの献金を政治活動に流用していることなどを(至極当然のことのように)淡々と語った。

 

9月4日のNHK「日曜討論」でも旧統一教会問題が討論の中心テーマとなり、各党の幹事長・書記長らが激論を交わした。その中で際立っていたのが、自民茂木幹事長の信じられないような居直りとふてぶてしさだった。「自民党は政党として旧統一教会とは一切関係をもたない。党議決定をした」「協会と個々の議員の関係は現在まとめている」「これは調査ではなく個々の議員による点検、自己申告によるもの」と平然と言い切り、口先では「反省している」と言いながら、真相をあくまでも覆い隠そうとする態度を変えていない。

 

この発言に対して野党側からは、自民党総裁の安倍元首相がメッセージを送り、岸田内閣の閣僚や党役員の中枢部が旧統一教会と数多く関係しているというのに、「自民党は政党として関係を持っていない」とはどういうことか、との追及が相次いだ。組織のトップや中枢幹部の多くが反社会的勢力やカルト集団との関係を持っているとすれば、一般社会はそれを「組織的に関係を持っている」と見なすのが普通だ。この国民的常識、社会通念を無視して「黒を白」というような人物が自民党幹事長の席に座っているのだから、この番組を見た視聴者は、茂木幹事長のどす黒い表情の陰に、自民党と旧統一教会との間の「ただならぬ関係」を感じ取ったに違いない。

 

 事実、JNNの最新の世論調査結果を伝えたTBSテレビ(9月4日夜)は、「自民党は8月31日に、旧統一教会や関連団体と今後一切関係を持たないことを党の基本方針として正式に決定しました。あなたは自民党議員が旧統一教会との関係を絶つことが出来ると思いますか」との質問に対して、「絶つことが出来ない」75%、「絶つことが出来る」16%と、圧倒的多数の人が「自民党議員は旧統一教会との関係を絶つことが出来ない」と考えていることが分かった。

 

また、「自民党は党所属の国会議員に対し、旧統一教会との関係を点検し、党に報告するよう求め、集計結果を今週中にも公表する考えですが、これにより実態の全容が解明されると思いますか」との質問に対しては、「解明される」6%、「解明されない」89%だった。実に国民の9割近い人びとが、自民党と旧統一教会との関係は「絶つことができない」、自民党の点検は「全容を解明することができない」と考えている。この圧倒的な国民世論を前にして、茂木幹事長が白を切れば切るほど自民党は〝底なし沼〟から這い上がることが難しくなる。

 

 元経済企画庁長官の田中秀征氏は、毎日新聞政治プレミア(8月24日)に寄稿し、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について、「このまま成り行きに任せれば、自民党そして岸田内閣への不信感がさらなる支持率の急降下を招き、政権の統治力が著しく減衰する」「自民党は、党内に調査会を設置して事実関係を解明し、調査結果に基づいて国民が納得する厳正な対応をする必要がある」「さらに党として改めての決別宣言も欠かすことはできない。岸田首相は、各政治家の個人としての説明を強調するが、国民の不信はむしろ党に対してのものだ」と苦言を呈し、最後に現在の政権と旧統一教会の関係について「まるで旧統一教会との連立政権のよう」と指摘した。以下はその抜粋である。

 

(1)8月10日の岸田文雄内閣の改造は成功とは言えない厳しい経過を辿(たど)っている。本来なら、物価高、新型コロナ、そして安保強化など喫緊の課題に対応する力を強めるものであったはずだが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関また、係が重大問題化してそれも吹き飛んでしまった。

(2)このまま成り行きに委(まか)せることになれば、自民党、そして岸田内閣への不信感がさらなる支持率の急降下を招き、政権の統治力が著しく減衰することが避けられない雲行きだ。何としても岸田首相、そして自民党にはこの問題から逃げず、国民、有権者が心から納得する対応を示してほしいものだ。

(3)第一に、自民党は、党内にこの問題を徹底調査する調査会を設置して事実関係を解明して発表する必要がある。この調査会に、学者、弁護士、言論人などの第三者が加わればその調査や報告への信頼性が格段に高まる。今のところ自民党は、党としての徹底調査の責任から逃げている印象だ。

(4)そして、その調査の中では、自民党の思想や理念と、旧統一教会のそれが一致するかどうかも検討しなければならない。もし「反日」「侮日」のようなものが旧統一教会の教義・原理のなかにあるならば、保守を標ぼうする自民党が同調できる余地はない。

(5)第二に、自民党はその調査結果に基づいて国民が納得する厳正な対応をする必要がある。度が過ぎた癒着があれば、それに応じて処分や勧告を行うべきである。それが政権・政党の自浄力というものだろう。さらに、党として改めての決別宣言も欠かすことはできない。岸田首相は、各政治家の個人としての説明を強調するが、国民の不信はむしろ党に対してのものである。

(6)今回の内閣改造では閣僚7人と副大臣・政務官計20人が教団側と関わりがあることが判明したものの、それに先だって実施した共同通信の全議員調査では、副大臣・政務官の計12人のみであったという(8月14日付毎日新聞「旧統一教会接点106人 国会議員8割が自民 共同通信調査」)。それほど政治家個人の説明や告白は信用できないということになる。8月18日時点の報道(NHK)によると、政務三役の実に4割が旧統一教会と関係していたという。これではまるで旧統一教会との連立政権のようではないか。

(7)秋には臨時国会が開かれる。そこで自民党及び岸田内閣が、この問題で集中砲火を浴びれば、今まで以上に報道の追及は厳しくなり世論も沸騰して政権の土台を揺さぶるに違いない。現政権に代わるものが期待できない現状では自民党が生まれ変わるほかに道はないのだ。

 

 私には、「自民党が生まれ変わる」とはとても思われないが、せめても田中秀征氏の言うようなことだけでも実行しなければならないと思う。岸田首相が記者会見で表明したような「国会閉会中の審議」だけで済ませられるような簡単な問題ではないからだ。岸田首相は秋の臨時国会まで待つことなく、野党各党の憲法上の要求に基づいて直ちに臨時国会を開き、安倍元首相と旧統一教会の「ただならぬ関係=盟友関係」を徹底的に解明しなければならないのではないか。

 

 重ねて言うが、閉会中審議の「丁寧な説明」でお茶を濁し、安倍元首相の国葬を大々的に盛り上げ、この場を逃げ切ろう――といった岸田首相の姑息な思惑は通用しない。政治の原点に立ち戻り、政治生命を懸けて取り組まない限り、国民の信頼は取り戻すことができない。また、それだけの見識と覇気がなければ、首相の座を降りるほかはない。冒頭で述べた「解散総選挙」についての世論調査は、そのことの予兆だというべきだ。(つづく)