「鉄面皮が洋服を着て歩いているような男=山際大臣」が漸く辞任に追い込まれた、岸田首相は任命責任を厳しく問われるだろう、岸田内閣と野党共闘(その27)

 山際大臣(経済再生担当)がテレビに出てくると、スイッチを切るか、スリッパを投げつけるかのどちらかだ――私の周辺にはこんな過激な年寄り連中が多い。スリッパの代わりに雑巾を投げつける奴もいる。家人にたしなめられて最近は止めたと聞くが、それでは気分がますます悪くなるのでテレビを見なくなったという。全く同感だ。私もスリッパを投げつけたいところだが、テレビが壊れるといけないのでじっと我慢している。スイッチを切ると国会中継やニュースが見られなくなるので、これもじっと我慢している。この数カ月、血圧は上がり放しだ。

 

 それにしても、こんな「ウソの塊」のような人物がどうして国会議員になり、あまつさえ大臣に起用されるのか。最近は政治家の質が劣化している、国会議員は特に酷いなどと言われるが、それを地でいくような(輪をかけたような)「鉄面皮男」が大きな顔をして国会の大臣席に座っているのだから、もう見るのも聞くのも嫌になる。「全部首を切ってしまえ!」と、思わず絶叫しなくなるではないか。

 

 こんな空気が日本国中に充満していることは、最近の世論調査にもはっきりとあらわれている。10月22,23両日に実施された毎日新聞世論調査では、山際大臣は「辞任すべきだ」が71%に達した。とりわけ注目されるのは、男性が69%なのに対して、女性が76%とひときわ高いことだ。また、世間ずれしている男性の19%が「辞任する必要がない」と回答しているのに対して、女性は僅か8%でしかない。感性の鋭い女性の圧倒的多数が「辞任すべきだ」と判断しているのは、われわれ「怒れる高齢者」と同じく、鉄面皮男の本質を見抜いているからだろう。

 

 岸田首相は優柔不断極まる人物だ。「丁寧に説明する」だけで何も決断しない(できない)。「丁寧な説明」なら誰でもできる。同じことを何回も繰り返せばいいだけの話だ。山際大臣も岸田首相を見習って「丁寧な説明」を性懲りもなく繰り返してきた。違うのは、旧統一教会との関係を隠すためのウソを少しずつ修正してきただけのことだ。それも抜き差しならぬ証拠写真を突き付けられての話である。旧統一教会トップの傍に立っていて、それがバッチリと写真に映っているというのに、「記憶がない」などと平気で白を切るのである。こんな目にみえたウソは女性が一番嫌がることは勿論、国民の誰も我慢できないことは明白だろう。これでは、路上で「腐った卵」を投げつけられるような事件が起こらないとも限らない。

 

 このような閣僚としてはもとより人間としての基本的資質を欠き、国民の信頼が根底から失われているような人物を、かばい続けてきた岸田首相の責任は極めて重い。これでは、岸田首相には人間を見る目がなく、閣僚としての資質を評価する能力がないと言われてもしかたがない。山際氏と同様に、旧統一教会と深い関係にある萩生田政調会長への対応も目に余る。予算委員会の最初の質問者に萩生田氏を起用したのも、そのあらわれだ。萩生田氏は冒頭に形ばかりの反省の弁は述べたものの、その後はまるで何事もなかったように滔々と自分が閣僚時の成果を吹聴するばかり、呆れてものが言えなかった。

 

 岸田首相が「山際切り」で旧統一教会問題に片が付くと思っていたら大間違いだ。国民が自民党と旧統一教会との関係で解明を求めている問題については、何一つ明らかになっていない。自民党議員の自己申告に基づくアンケート調査などは「抜け穴」だらけで、誰も信用しない。事実、山際氏をはじめその後続々と「申告漏れ」が出てきているではないか。また、その中でも国民が一番知りたいと思っている安倍元首相と旧統一教会の関係、そしてその代理人として動いていた細田衆議院議長との旧統一教会との関係については、一切「知らぬ存ぜぬ」で押し通そうとしている点も見逃せない。

 

 岸田首相はこの問題を押し隠すため、安倍元首相の「国葬」を強行した。安倍元首相を「国政の功労者」に祭り上げることで世論を誘導し、元首相と旧統一教会の関係を消し去ろうと目論んだのである。だが、こんな茶番劇で国民の眼をごまかすことはできなかった。上記の毎日新聞世論調査は、安倍元首相の国葬についての是非を尋ねているが、結果は「実施してよかった」は18%(男性22%、女性8%)にとどまり、「実施するべきではなかった」が60%(男性56%、女性68%)に達した。いずれも女性の否定的反応の高さが際立っている。

 

 また、細田衆議院議長が旧統一教会との関係で説明責任を果たしているかとの質問に対しては、「説明責任を果たしている」が7%(男性9%、女性4%)、「果たしていない」が81%(男性79%、女性83%)と、圧倒的にぺけ印がついた。一から調査をやり直し、根本からウミを出し切らないと問題は解決しないのだが、岸田氏にはその勇気もなければ決断力もない。岸田氏には一国の宰相としての器が備わっていないのである。

 

 今国会の予算委員会の質疑では、泉立憲民主党代表の出番が全くなかった。「提案型」質問しかできない泉代表では、自民党と旧統一教会の関係は解明できないことがわかっていたからだ。要するに、泉氏も野党第一党の代表としての資質も能力もないことが衆目に晒された。宰相の器でない岸田氏と野党第一党の代表に値しない泉氏の対決では、事態の進展はおぼつかない。どちらかを変える、あるいは両方を変えるような政変が起こらなければ政局を打開できない――、過激な年寄り連中はこう息巻いているのである。(つづく)