〝旧いままの共産党〟では21世紀に生き残れない、衆参5補選、統一地方選挙後半戦の結果から(2)、共産党党首公選問題を考える(その10)、岸田内閣と野党共闘(45)

 冒頭に、京都市内で開かれた選挙報告集会での渡辺京都府委員会委員長の発言を紹介しよう。京都新聞(4月26日)が伝えたのは、「京都の共産、トップが『異例』の謝罪、統一地方選で歴史的大敗、京都市長選どう挑む」という見出しの選挙総括シリーズの記事だ(「決戦 京都のこれから」中)。

――「皆さんのご期待、ご奮闘に応えられず、誠に申し訳ありませんでした」。統一地方選前半の投開票日翌日の10日夕。共産党京都府委員長の渡辺和俊(71)は、京都市内で開かれた集会の冒頭、約200人の支持者が詰めかけた満席のホールで頭を下げた。選挙後の報告集会でトップが謝罪から入るのは「異例」(党関係者)だ。歴史的大敗だった。これまで党がすくい取ってきた「反自民票」を日本維新の会に奪われ、京都市議選では改選前4減の14議席、府議選は3減の9議席に後退した。市議会で15議席を下回るのは1967年(12議席)以来56年ぶりで、下京区で議席を落とすのは戦後初。府議会で10議席を割ったのも56年ぶりだった。23日投開票の後半も流れは変わらず、福知山市議選で現職2人が落選し、宇治市や城陽市の現職各1人が議席を失い、府内地方議員数は改選前の108人から96人に減った。

――府委員会は「党組織の高齢化、党勢の後退」を挙げる。全国トップの議席占有率を誇り、長年、府議会や京都市議会で自民党に次ぐ第2党を維持してきた党勢を支えた党員は、82年の約2万7千人をピークに現在は約1万5千人になった。候補者擁立も困難となり、府議選の4選挙区で候補を立てられず、前回、候補が当選まで166票差に迫った福知山市でも見送った。候補のいない空白区は67年の5選挙区に次ぐ多さになった。年明けに表面化した党員除名問題も統一選に影響したとの声もある。府委は2月、党首公選制の導入や党の安全保障政策の見直しを自著で訴えた党員を最も重い除名処分にした。さらに翌月、志位和夫党委員長の辞任を自著などで求めた元府委幹部も除名した。いずれも「外部から党を攻撃した」ことなどが理由だが、党内外から「異論を許さない体質」などと批判が噴出。京都市議団長を務め、今回9選を逃した井坂博文(67)=北区=は「コアな支持層への影響は少なかったと感じるが、いわゆる『市民派』の票が離れていった」と振り返る(以下略)。

 

 統一地方選におけるメディアの消極的な報道姿勢については前回述べたが、中でも共産党関係の記事の少なさが目立った。各党の動静に関する記事でも自民、立憲、公明、維新などの党首写真は掲載されているが、共産関係者の写真が欠けていることが多かった。このことは、共産の影響がメディア空間では話題にならないほど低下していることを裏付けるもので、それがどのような結果を導くかは容易に予測できた。共産党の機関紙「赤旗」でも、選挙戦後半になると小池書記局長の姿がクローズアップされる一方、志位委員長の動静には紙面があまり割かれなくなった。これまでの大規模な露出度から考えると信じられないような扱いだが、赤旗読者にとっても志位委員長を前面に出すことが敬遠されるようになってきたのだろうか。

 

 そんな全国紙の中でも、毎日新聞は共産の動静に関する充実した解説記事を書いている。統一地方選後においても6段抜きの大型記事を掲載し、見出しは「共産 統一選で党勢低迷、135議席減 空白県拡大」「京都府市7減 『除名』影響大」というものだった(4月26日)。

 ――今月9日、23日に投開票された統一地方選で共産は大敗を喫した。党の発表によると、前半戦の道府県議選と政令市議選でそれぞれ22議席減。後半戦の市区町村議選でも91議席を減らすなど党勢減退があらわになっている。最近では党首公選制を主張したベテラン党員を立て続けに除名処分にしたことが物議をかもし、頼みの綱である野党共闘も不調が続く。来年の党大会に向けて組織を立て直せるかは見通せない。

 ――「草の根で大きな役割を果たしている多くの候補者を落選させてしまったことは大変残念であり、おわびを申し上げたい」。後半戦から一夜明けた24日の記者会見で、小池書記局長は神妙な面持ちで謝罪した。敗因について「党そのものの地力、党員を増やすことが途上に終わっている」と述べる一方、自身を含めた指導部の進退については「そういう議論になっていない。対応を打ち出していくことで責任を果たしたい」と否定した。党は今後、詳細な敗因について総括としてまとめる方針だが、党内では、党首公選制を求める著書を出発したジャーナリストの松竹伸幸氏や、党京都府委員会の常任委員を務めた鈴木元氏を党規約上最も重い除名処分にした影響を指摘する声もくすぶっている。小池氏は今月10日の記者会見で「影響が出たとは思っていない」と否定したが、「京都では除名問題の影響が大きく出た。各支部でも批判が相次いだ」(共産関係者)との見方もある(以下略)。

 

 共産党の統一地方選に関する中央委員会常任幹部会声明は、「前半戦の教訓を生かし、後半戦の全員当選をめざして奮闘しよう」(4月10日)および「『130%の党』づくり、岸田政権の暴走とのたたかいに立ち上がろう――統一地方選挙後半戦の結果について」(4月24日)の2つである。両方とも本格的な総括と言えるような内容ではないが、後者の声明には「後半戦の結果について」とのサブタイトルが付けられているので、それなりに党指導部の考えがわかる。以下はその抜粋である。

 ――23日、投開票が行われた統一地方選挙の後半戦で、日本共産党は、東京区議選挙で94議席、一般市議選挙で560議席、町村議選挙で256議席、合計で909議席を獲得しました。補欠選挙では3市1町で4議席を獲得しました。4年前の選挙と比べると、東京区議選挙で13議席減、一般市議選挙で55議席減、町村議選挙で23議席減となり、合計91議席の後退になりました。

 ――私たちは、今回の統一地方選挙の結果を、日本共産党の封じ込めをはかる大逆流との生きた攻防のプロセスのなかでとらえることが大切だと考えています。昨年8月の第6回中央委員会総会では、昨年夏の参議院選挙の結果について、2021年総選挙以来の野党共闘と日本共産党に対する激しい攻撃と、ロシアのウクライナ侵略を契機とした軍事力大増強の大合唱という「二重の大逆流」を、「全党の大奮闘によって押し返す過程での一断面」との解明を行いました。(略)その後も「二重の大逆流」との激しい攻防が繰り広げられました。「共産党は異論を認めない党」などといった反共キャンペーンが、一部の大手メディアをつかって大々的に展開されました。

 ――私たちは、最大の教訓にすべきは、党の自力の問題にあると考えています。「大激戦を勝ち抜くためにはあまりに力が足りない」「ここで党をつくることなしに、日本の前途も党の前途も開けない」「このままでは4年後の選挙はたたかえない」――こうした声が、この選挙をともたたかった全国のみなさんから寄せられています。7中総で、私たちは今年の最大の任務を、来年1月に予定している第29回党大会に向けて「130%の党」をつくることにおき、全国すべての支部・グループのみなさんに「手紙」を送り、「返事」をお寄せいただき、実践に踏み出す新しい挑戦を行ってきました。(略)しかし、3月末までに4年前の党勢を回復・突破するという目標は達成できず、私たちは4年前に比較して91%の党員、87%の日刊紙読者、85%の日曜版読者でたたかうことになりました。統一地方選挙の結果は、「130%の党」づくりの緊急で死活的な重要性を明らかにするものとなりました。

 

 この声明に見られる特徴は、議席後退の主な原因を外部からの攻撃(「二重の大逆流」「反共キャンペーン」など)に求め、組織内部の問題点については「自力不足」以外に何ら触れていないことである。言い換えれば、議席が減少した原因は、激しい外部からの攻撃に対抗できない「自力不足」にあると断定し、なぜ「自力不足=党勢後退」が生じているかという点は不問に付されたままだ。要するに、党の体質には何ら問題はなく、党勢を回復すれば全ての問題が解決する、だから「130%の党」づくりに邁進しなければならない――という論法で貫かれているのである

 

 だが、議席後退と自力不足は〝党勢衰退〟という本質の両側面であって、両者は因果関係にあるのではない。自力不足だから議席後退が起こるわけではなく、党勢が衰退しているから党勢後退と自力不足が生じ、議席が後退するのである。問題は、なぜ〝党勢衰退〟が生じているかであり、その本質を究明しなければ打開策は見えてこない。だから声明は、「130%の党」づくりが緊急で死活的重要性を持つと言いながら、第28回党大会(2020年1月)で決定した拡大目標(130%)を現在まで達成できず、「4年前に比較して91%の党員、87%の日刊紙読者、85%の日曜版読者でたたかうことになりました」と言わざるを得ない。それでいて、なぜ目標を達成できず、逆に後退しているかについては何ら説明しようとしないのである。こんな支離滅裂の論法で党員や支持者を党勢拡大運動に動員しようとしても、毎度の失敗に終わるだけだ。

 

 統一地方選挙は、地域によって事情が大きく異なる。地域の情勢に見合った的確な政策や方針を提起しなければ有権者の関心を引き付けることができない。党関係者と住民が自由に意見交換し、その中から生まれてきたさまざまなアイデアを政策化し、多様な方法で有権者に訴えなければ、勝利を手にすることができない。いわば、市民社会型の選挙でなければ革新支持層や無党派層の票を獲得することができない時代に、党中央が決定した国政選挙並みの政策を「折り入って」訴えても、そこに限界があることは誰もがわかっていることではないか。

 

 5月上旬には、4月の党勢拡大運動の「成果」が報告されるはずだ。この間、「3月、4月は勝負の月」だとして、全支部・グループへ「手紙」を出し、「返事」を求める方針が実行されてきた。しかし、3月は逆に党勢が後退しており、4月に拡大に転じることは難しい情勢にある。そのとき、次回の中央委員会総会はどんな総活と方針を提起するのだろうか。これまでのような「130%の党」づくりを掲げるのか、それとも〝解党的出直し〟ともいうべき抜本的な方針が打ち出されるのだろうか。「旧いままの共産党」では21世紀に生き残れない――、われわれオールドリベラリストはみなそう思っている。(つづく)