次期衆院選が間近に迫る、維新から袖にされて進退窮まった立憲泉代表はどうする、岸田内閣と野党共闘(49)

 立憲民主党の岡田幹事長は5月13日、千葉県柏市の街頭演説で「6月解散、7月投票の可能性は十分にある」と述べたという。岸田首相が6月21日の通常国会会期末までに衆院を解散して「勝負に出る」可能性が大きい――、というのがその理由だ。また、昨年から国会共闘を組んでいた日本維新の会に関しては、一転して「基本政策が自民党保守派に近く、立憲との隔たりが大きい」と強調し、「保守2党による政治か、リベラルから中道までを束ねる野党をつくり、与党と対峙するのか。それを選択するのが次の衆院選だ」と訴えた(共同通信5月13日)。

 

 一方、立憲泉代表はそれに先立つ5月10日、党両院議員懇談会で衆参補選全敗の責任を追及され、「次期衆院選の議席目標を示し、達成できなければ代表辞任の覚悟をみせるべきだ」との声に対して、次期衆院選で150議席に達しなければ辞任する意向を表明したという(朝日新聞5月13日)。このことは、立憲が維新との国会共闘の延長線上に描いていた次期衆院選での選挙協力がすべてパーになったことを意味する。この瞬間から自公与党に対抗するため、立憲が「野党第1党」の座を維持しながら、維新を「目下のパートナー」として利用しようとする「第2保守党化路線」は崩壊した。統一地方選で躍進した維新が、「目下のパートナー」から野党第1党争いを巡る「ライバル」になったからである。

 

立憲が泉健太氏を代表に担いで「市民と野党共闘」から離脱した背景には、泉氏の政治理念である「非自民・非共産=第2保守党化路線」を実現しようとする企てがあったとされる。泉氏は長年、前原国民民主党代表代行と政治信条も政治行動も共にしてきた仲であり、前原氏が小池都知事や神津連合会長らと結託して民進党を「希望の党=第2保守党」に変質させようとしたときも一貫して前原氏と行動を共にしている。その泉氏があろうことか立憲民主党に鞍替えしたときは、国民民主党の「トロイの木馬」として送り込まれた――、というのが京都でのもっぱらの評判だった。

 

 それ以降、泉代表はまさにそれにふさわしい働きをしてきたと言える。「提案路線」と称して与党批判を極力回避し、野党としての役割を放棄して与党に終始追随する有様だ。その結果、国会運営もすべて与党ペースで進められるようになり、国会審議における野党の影が見えなくなった。各種の世論調査で立憲の政党支持率が維新を下回るようになったのは、第2保守党化した立憲の存在意義が薄れているためであり、もはや「野党第1党」とは見なされなくなった政治状況を反映している。維新を利用しようとして、逆に利用された立憲の姿は実に見苦しい。維新に袖にされた泉代表は、苦し紛れに「150議席」という異様に高い目標を掲げたが、党外はもちろん党内の誰も実現できるとは思っていない。

 

 それでいて岡田幹事長は、これまでの維新との協調を(まるでなかったように)棚に上げ、次期衆院選は「保守2党による政治か、リベラルから中道までを束ねる野党をつくり、与党と対峙するのか。それを選択するのが次の衆院選だ」と平然と言うのだから開いた口が塞がらない。昨日までは維新を「野党」の一員として位置づけながら、今日からは「保守2党」の一員と言うのでは、ご都合主義もここに極まれりというべきだろう。これでは、立憲もまた「保守2党」の同類ということになり、有権者から「同じ穴の狢(むじな)」と見られるだけだ。

 

 同時に、「市民と野党共闘」から離脱した立憲を、再び「リベラルから中道までを束ねる野党つくり」の中核に据えようという岡田氏の手前勝手な魂胆も見過ごせない。「第2保守党化路線」を実現するため「市民と野党共闘」の戦列から勝手に離れていった立憲が、今度が維新に「袖にされた」からといって復帰するというのではまったく筋が通らない。こんな手前勝手な理屈で仮に「野党共闘」が出来たとしても、それは「野合そのもの」だとして誰にも相手されず、見向きもされないだろう。

 

 立憲が取るべき態度はただ一つ、泉代表や岡田幹事長をはじめ党執行部が総辞任し、この間の行動についての責任を明確にすることだ。「150議席」といったありもしない(出来もしない)架空の目標を掲げて執行部にとどまるときは、次期衆院選で大敗を喫すること疑いなしだ。「言うことがコロコロ変わる」執行部の下で選挙戦をたたかうことなどおよそ考えられないし、戦ったとしても有権者の信を得ることはできない。多くの有権者が大量に棄権するという低投票率のなかで、立憲は空前の敗北をすること間違いなしだ。今からでも遅くはない。立憲は臨時執行部を作ってメンバーを一新し、総選挙が終わってから態勢を立て直せばいいのである。

 

 一方、野党共闘の一員だった共産などの各党はどうするのだろうか。共産は赤旗(5月13日)で、5月21、22両日に開催予定だった第8回中央委員会総会を6月中旬以降に延期すると発表した。理由は「国会日程との関係で総会開催が困難になった」というものだが、国家日程は予め決まっているのだから、こんなことは理由にならない。おそらく統一地方選の結果を巡っての総活や今後の方針について意見がまとまらず、総会開催ができない状況に陥っているのであろう。加えて、次期衆院選が間近に迫っていることもあって、選挙態勢の立て直しに忙殺されているという事情もあるのではないか。

 

 いずれにしても、岸田首相がウクライナ訪問を皮切りに一連の外交日程をこなして支持率を回復させつつある現在、G7広島サミットを成功裏に終えれば、解散・総選挙をためらう理由は何もない。実質的な保守勢力の共闘体制が「自公維国」という形で形成され、その一方、野党共闘が崩壊状態にあるいまこそ岸田首相にとっては〝千載一遇〟のチャンスだと言っていい。「嵐の前の静けさ」はとっくに去り、「嵐の予兆」は刻々と激しさを増している。(つづく)