森友学園の籠池夫妻が漸く逮捕された、籠池夫妻逮捕が財務省捜査につながるかどうかは、内閣支持率の動向に懸かっている、国民世論は安倍内閣を拒否し始めた(2)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その74)

2017年7月31日、大阪地検特捜部は、学校法人森友学園大阪市)による国の補助金不正受給事件で、前理事長の籠池泰典容疑者と妻諄子容疑者を詐欺容疑で逮捕した。籠池容疑者は「天性の詐欺師」と言われただけあって、身体中のどこを叩いても埃が出てくるような怪しげな人物だ。もうとっくの昔に逮捕されていてもおかしくないのに、それが昨日までズルズルと引き延ばされてきたのには訳がある。

言うまでもなく、森友学園疑惑は籠池夫妻の単なる詐欺事件ではない。事件の核心は、大阪財務局(財務省)が安倍首相夫妻の意を受けて(忖度して)、国民の財産である国有地をタダ同然の安値で森友学園に払い下げしたという点にある。いわば、安倍政権による国政私物化の象徴が森友学園疑惑の核心であって、それが解明されるかどうかに国民の関心が集中しているのである。

検察は極めて世論動向に敏い政治的な権力組織だ。国民の意向を忖度する上ではどの省庁よりも敏感なアンテナを持っている。森友学園疑惑に関して言えば、それを籠池夫妻の個人的詐欺事件のレベルにとどめるのか、それとも財務省主導の国家的レベルの犯罪として捜査するかが判断の分かれ目になる。検察は、世論動向を見ながらその落しどころを探ってきたのだろう。それが籠池夫妻逮捕までにかなりの時間を要した背景だ。

しかし、籠池夫妻の逮捕だけはどうしても避けられない。放置すれば、「騙した方が得」ということになって法治国家の骨格が揺らぐからだ。だから、遅かれ早かれ籠池夫妻はいずれ逮捕されることになっていた。問題はそのタイミングである。私は、この8月3日に予定されている内閣改造直前に、籠池夫妻が逮捕されたことに重大な意味が込められていると考える。

今回の籠池夫妻逮捕は、森友学園疑惑を国家的犯罪の一環として財務省にまで捜査の手を広げるかどうかについて、検察が国民に投げかけた「リトマス試験紙」のようなものだ。国民世論が籠池夫妻逮捕だけで満足すれば森友学園疑惑はこれで幕引きになるだろうし、納得しなければ次のステージに移ることになる。その決め手になるのが内閣改造に対する国民世論の動向であり、有体に言えば、内閣支持率が上がるか下がるかによって、検察の次の一手が決まるということだ。

検察は「正義の味方」でもなければ「法の番人」でもない。国家統治機構(国家権力)の秩序と安定をまもることが最大の使命であり、そのためには犯罪を見逃すこともあれば、立件することもある。市民で構成される検察審議会が往々にして異議を申したてるのはそれゆえだ。とりわけ国家的犯罪ともなれば、国家統治機構の根幹を揺るがす可能性を秘めているだけに、それをどの程度の影響にとどめるか(逮捕するかしないか、逮捕するにしてもどのように立件するか)は、ひとえに検察の判断に懸かっている。

注目されるのは、大阪地検特捜部が近畿財務局関係者の事情聴取を始めているという情報が流れていることだ。NHK大阪放送局(社会部)がスクープした近畿財務局と森友学園との国有地払い下げに関する事前交渉記録の存在が明らかになったのである。大阪放送局には幸い政治部がないので、スクープした記録がそのままニュースに流されることになった(NHK大阪放送局がんばれ!)。ローカルニュースだけでなく全国ニュースでも流れたところをみると、政治部や上層部の妨害ももはやこれまでとなったのだろう。

検察はこの状況を注意深く見守っていると思う。世論動向を見間違えれば、検察庁の表看板にペンキが掛けられるようなことも起こり得るし、ロッキード事件のように田中角栄首相の逮捕にまで発展すれば、国民の拍手喝さいを受けることにもなる。籠池容疑者が「今日は田中首相が逮捕された日と同じ」と呟いたのは、森友学園疑惑を籠池夫妻逮捕という次元で終わらせるなという彼一流のアピールだったのだろう。

内閣改造人事については巷間様々な憶測が流れている。私たち国民には知るすべもないので拙速な予断は避けなければならないが、一つ言えることは、今後の内閣支持率の動向が森友学園疑惑解明のカギを握っているということだ。支持率が回復すれば検察は財務省追求の手を緩めるだろうし、支持率が回復しなければ次の一手である財務省捜査に着手するかもしれない。

防衛省では稲田大臣の辞任にとどまらず、防衛事務次官陸上幕僚長の退職にまで発展した。財務省もこのままで済まされるとは思われない(思いたくない)。国税庁長官に栄転した前理財局長をはじめ、元近畿財務局局長など森友学園疑惑関係者は山ほどいる。この氷山の一角でも明らかになれば、後は芋づる式に事件の全容は明らかになる。

次回の世論調査内閣改造後に行われる。国民世論が森友学園疑惑に対して如何なる審判を下すか、私は固唾をのんでその結果を待っている。(つづく)