戦後最大の歴史的岐路となる政治情勢の下で、「過去=党勢拡大主義」から「未來=開かれた市民政党」へ脱皮しなければ、時代の趨勢から取り残される、共産党の再生は可能か(その18)

 4月に入ってから共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は、8中総決定推進本部の訴えを立て続けに発信している。「8中総決定をすべての支部・グループのものとし、この4月、必ず党勢拡大で前進に転じよう」(4月3日)、「8中総決定推進 田村智子本部長の訴え」(4月15日)、「必ず4月に前進に転じよう、全国都道府県機関紙部長会議開く」(4月16日)などである。志位議長が資本論に託して‶社会主義・共産主義の未来〟を滔々と語るなかで、共産党の組織や財政が極度の危機に直面していることが問わず語りに訴えられている。以下は、その要旨である。

 

 〇「8中総決定をすべての支部・グループのものとし、この4月、必ず党勢拡大で前進に転じよう」(4月3日)

 (1)3月の党勢拡大の結果は、入党の申し込みが190人(青年・学生22人、30~50代61人)で、現勢では後退の見込み。赤旗読者拡大では、紙の日刊紙1512人、日曜版1万1343人の後退、電子版は日刊紙152人、日曜版365人の前進。党員も読者も大きく後退したことは「重大な結果」である。

 (2)8中総では、党大会を目指す目標を変更し、「これだけは必ずやりきれる」目標として、第29回党大会時の党勢の回復・突破を掲げた。この決意に立って、4月は何としても連続後退を断ち切り、前進に転じる月にしなければならない。その道はただ一つ、8中総決定をすべての支部・グループのものとし、すべての支部・グループが参加する運動にすることである。

 (3)そのためには、①「戦後最大の歴史的岐路の情勢」が展開する下で、日本と世界の前途を憂える人々のなかで大きな変化が起こっていることを捉え、国民の中に打って出る、②4月前半にすべての支部と連絡を取り、実践に踏み出す、③いついかなる時にも党勢拡大の独自追求を握って離さない、④「要求対話・要求アンケート」と『Q&A』の学習という2つのチャレンジと一体に、党員拡大、読者拡大の独自追求を強める。

 

〇「8中総決定推進 田村智子本部長の訴え」(4月15日)

 (1)8中総決定の支部討議は6割弱、半数近くの党員に文書が届いていない。4月に入ってからの入党申し込み76人(青年・学生5人、30~50代29人)、紙の日刊紙233人、日曜版2109人、日曜版電子版60人で、4月も3月同様、党員、読者とも「重大な後退」を繰り返しかねない現状にある。このままずるずると党勢の後退を続けるならば、党大会の成功も統一地方選挙での勝利もなくなってしまう。現状を打開するため、3つの訴えを行う。

 (2)第1は、4月11日、民青主催で志位議長を講師に開かれた「Q&A戦争と平和」の学習会を生かし、たたかいと党づくりを発展させること。4・11学習会は、今年から来年にかけて国政の最大の問題になると予想される憲法闘争において、党として政治的・理論的に攻勢に転じる上で重要な内容となっている。現在、党員拡大は「止まった状態」にあり、読者拡大でも後退が続いている。4月の党勢拡大で前進に転じるため、4.11学習会を徹底的に生かしていく。

 (3)第2は、8中総決定をすべての支部・グループで討議・具体化し、何か一つでも実践に踏み出していく援助を貫くこと。

 (4)第3は、党員拡大、読者拡大の独自追求を抜本的に強めること。党勢拡大の(9月末)中間目標は、純増数で党員約7千人(青年・学生1200人、30~50代2500人)、読者の純増目標は日刊紙7700人、日曜版3万7000人、日曜版電子版7600人で、党大会までの目標の「半分以上」となっている。いま大きなチャンスが広がっている。「戦争国家づくり」に反対する国民的運動が起こり、多くの若い世代、女性が声を上げている。こうした国民の変化にふさわしく、日本共産党の先駆的な立場、平和と社会進歩のためにたたかう党員の生き方を訴えるのが4・11学習会。これを大規模に活用して集いを開き、入党を訴えよう。

 (5)赤旗は、高市政権による大軍拡と憲法9条改憲の危険な企ての本質を明らかにするとともに、いま声を上げる市民・国民のたたかいの連帯と共同を広げる新聞だ。その一方で、読者数が9カ月連続で後退したことにより発行危機がさらに深刻となり、文字通り「もう一歩も引くことができない」事態にある。昨年1月の4中総で呼びかけた「100万人読者回復・10億円募金」は、10億円募金は4月に達成したものの、100万人読者回復の目標は昨年1月から日刊紙1万人、日曜版5万4千人もの大幅後退となり、発行危機は月を追うごとに深刻化している。赤旗の発行を守り、前進させることは、戦後最大の歴史の岐路のもとで国民に対するわが党の責任であり、4月から必ず読者拡大の前進をかちとることを訴える。

 

〇「必ず4月に前進に転じよう、全国都道府県機関紙部長会議開く」(4月16日)

 (1)今回の会議の目的は、危機と希望が交錯する歴史的岐路の情勢のもと、読者拡大の独自追求が弱く、大幅後退となった3月の反省に立って、この4月から赤旗読者で前進に転じるため、機関紙部の意思統一を行うことである。

 (2)昨年1月の4中総で呼びかけた「100万人読者回復・10億円募金」のうち、100万人読者回復の方は後退して日刊紙、日曜版とも「最小限部数」を割り込み、「もう全く後がない」状態になっている。赤旗を失えば、日本共産党は日本社会に対する責任を果たせなくなる。その一方、4月から前進に転じて党員、読者とも第29回党大会時を突破すれば、赤旗発行危機を緩和し、県・地区の財政危機も緩和できる。

 (3)赤旗中心の党活動を発展させ、発行の危機を打開するため、①「要求対話・要求アンケート」と「ストリート対話」を一体に、赤旗見本紙を活用して支持者・後援会員を軒並み訪問し、対話を進める、②SNSの取り組みの強化と赤旗電子版の周知を中央と地方が一体となって探求・発展させる、③配達・集金の危機打開に向けて若い世代の党員拡大と配達集金への参加を促す。

 

 これら3つの悲壮な「訴え」を読むと、党組織が党員と財政の両面で深刻な危機に陥り、「もう全く後がない」状態にまで追い詰められていることがわかる。とりわけ機関紙の現状は深刻で、日刊紙・日曜版とも「最小限部数」を割り込み、それに伴って県・地区委員会の財政が極度に悪化していることが示されている。今年9月末までに赤旗読者5万2千人の〝純増〟を目指すとなると、昨年1月から今年3月までの15カ月は6万4千人減(月平均4300人減)の大幅後退になったので、これから半年で減少分(6万4千人)と純増分(5万2千人)を合わせた11万6千人(月平均1万9千人)を拡大しなければならない。

 

 党員7千人の〝純増〟も提起されているが、昨年1月から今年3月までの月平均入党数が262人であることを考えれば、凡そ不可能というほかない。「純増数=入党数-死亡数-離党数」なので、今年9月末までの6カ月を含めて計算すると、昨年1月から今年9月末までの死亡数は3470人(月平均165人×21カ月、赤旗訃報欄から掲載率を乗じて算出)、離党数は6990人(第28~第29回大会4年間の離党数1万6千人を参考に月平均333人×21カ月として算出)となり、純増7千人を実現する算定式は、「純増7千人=入党1万7460人(月平均2910人)-死亡3470人-離党6990人」となる。

 

これまで「月平均4300人減」の赤旗読者を今年4月から「月平均1万9千人増」に一挙に増やす、「月平均262人」の入党数を今年4月から11倍の「月平均2910人」に一挙に増やす――という党勢拡大方針は、8中総で「必ずやりきれる」目標として全会一致で決定されたが、これを可能だと思う党員は(党幹部を含めて)恐らく誰一人もいないだろう。然るに機関紙部長会議では「討議では、各県から9カ月連続後退の深刻さを直視するとともに、赤旗への期待と共感を実感し、4月前進を決意した発言がありました」(赤旗、4月16日)といった信じられない光景が紹介されている。そこには全会一致で決定された「架空の拡大目標」に誰一人異議を唱えられず、根拠のない決意表明を繰り返すという「空虚なセレモニー」が展開されているだけである。

 

戦後高度成長期に革新自治体運動と連携して急速な発展を遂げた共産党は、第15回党大会(1980年2月)で不破書記局長が次のような結語を述べている。

――1960年代初頭の4万2千余の党員、10万余の機関紙読者から、60年代を通じて28万余の党員、180万の読者へ(70年代初頭)、さらに70年代を通じて今日の44万の党員、355万を超える読者へ――これが、この20年来の党勢拡大の大まかな足取りであります。第14回大会決定は「百万の党」の建設を展望しつつ、当面「五十万の党、四百万の読者」の実現という課題を提起しました。

――私たちは、年内に「五十万の党員、四百万の読者」の目標を必ずやりとげるために奮闘する必要があります。そして80年代には、わが党が戦後、党の再建以来目標としてきた「百万の党」の建設を必ずやりとげなければなりません。「百万の党」とは決して手の届かない、遠い目標ではありません。日本の人口は1億1千万、「百万の党」といえば、人口比で1%弱の党員であります。私たちは、大都市はもちろん遅れたといわれる農村でも、少なくとも人口の1%を超える党組織をもち、全国に「百万の党」をつくりあげることは、必ずできる目標だということに深い確信をもつわけであります

 

それから10余年後、ソ連・東欧の社会主義体制の崩壊とともに「日本人口の1%」を目指した「百万の党」は幻と消えた。無党派層が増え、組織運動としての労働運動や学生運動が下火になる一方、組織に属さない多様な市民運動が数多く生まれた。民主集中制に基づく閉鎖的・権威主義的体質の共産党への忌避感が広がり、志位体制の下での四半世紀は、党員が40万人から25万人(6割)へ、赤旗読者が200万人から85万人(4割)へ激減した。2026年3月現在、党員23万6千人、赤旗読者76万9千人と更に後退を重ねている。国政選挙でも志位体制の四半世紀は、671万9千票(2000年6月総選挙、比例得票率11.2%)から332万6千票(2024年10月総選挙、同6.1%)へ半減し、さらに251万9千票(2026年2月総選挙、同4.4%)に落ち込んでいる。

 

 党組織が党員と財政の両面で極度の危機に直面し、党勢拡大が「止まったまま」にある現在、党指導部の取るべき態度は、地方党組織に対する「訴え」の連発でもなければ、上からの会議の招集でもあるまい。党指導部が率先して地方の実情を調査し、その打開策を考える行動を直ちに起こすことが求められているはずである。ところが驚いたことに、この最中に志位議長は団員4人を率いて4月23日から5月6日までの14日間にわたって米国・カナダを長期訪問し、アメリカ民主的社会主義者指導部と会談し、米国・カナダの研究者との理論交流に取り組むのだという(赤旗、4月21日)。

 

 赤旗の発行が「もう後が全くない」危機的状態にあり、県・地区委員会の財政状況が(専従者の給料遅配が発生するほど)悪化しているにもかかわらず、志位議長は巨額の渡航費用をものともせず、「北米の左翼・進歩勢力と幅広く交流を進める方針」を堂々と実行する。そこには党組織の現状を顧みることなく資本論を説き、諸外国リーダーとの交流を通して自らの存在を誇示しようとする飽くなき「高踏的姿勢=自己顕示欲」が露呈している。赤旗は「志位代表団訪問記」をこれからも連載し、依然として部数を減らし続けるのだろうか(つづく)。

共産・れいわ・社民の弱小政党化が進み、衆議院議席の4分の3を超える「高市翼賛体制」が成立した下で、反改憲・軍拡運動をいかに進めるか、高市政権の対抗勢力としての市民連合の新たな兆し、共産党の再生は可能か(その17)

 自民党が3分の2を超える議席を占め、自民・維新政権が4分の3以上の議席を獲得した2026年総選挙以降、国会情勢は激変している。中道改革連合は野党としての存在感を示せず、支持率は数パーセント(直近のNHK世論調査では2%台)の低迷状態から抜け出せない。中道大敗の総括文書「素案のたたき台」では、「立憲民主党と公明党の支持基盤を合算すれば、一定の議席を確保できるとの前提に立ったことが最大の誤算だった」と明記され、大敗の責任は「新党結成に関わった両党幹部に第一義的に帰する」と記されている(毎日新聞、4月14日)。

 

 一方、共産・社民・れいわなどの革新野党は、党組織の弱体化が急速に進み、共産は党勢後退が止まらず、社民・れいわは内紛騒動もあって消滅寸前の危機にある。これら弱小政党は、国会内では「泡沫政党」並みの扱いとなり、政治的影響力はほとんど失われていると言ってよい。それでも共産は「高市政権は小選挙区制による民意の切り捨てによって圧倒的多数の議席を占めましたが、多くの国民との関係で深い矛盾を幾重にも抱えており、その土台はもろくて弱い」などと根拠もなく(一方的に)主張している(赤旗、2月19日)。

 

 このような共産の教条的姿勢に対して、「憲法9条の会」の中心メンバーとして活躍してきた渡辺治一橋大学名誉教授(政治学、日本政治史)は、高市自民党が総選挙で大勝した背景を客観的に分析し、「高市翼賛体制」ともいうべき戦後未曾有の反動政権が成立した政治情勢の下では、従来の政党中心の反改憲運動は通用せず、新しい形の対抗運動が必要であることを提起している。一言でいえば、それは「政党中心の運動」から「市民中心の運動」への転換である(「戦後未曾有の反動政権としての高市政権」『前衛』2026年5月号、以下要旨)。

 

Ⅰ.なぜ高市自民党は大勝したのか

(1)長年の新自由主義政治がもたらした暮らしの困難の鬱積により参院選で大敗し、政権維持の危機に直面した自民党が「新手の新自由主義」路線に転換し、暮らしの困難を何とか変えてほしいと切望する人々の期待を集めて大量得票した。

 (2)「新手の新自由主義」とは、国民民主・参政の政策に代表されるように、①新自由主義の根幹にある大企業の競争力強化による経済成長路線を堅持し、②アメリカを盟主とする巨大多国籍企業優位の世界秩序を維持するために改憲・軍拡を主張しながら、③表向きは消費税の減税・廃止や緊縮財政からの転換を主張する政治路線のことである。

 (3)高市首相は、国民民主や参政が打ち出していた減税と積極財政の政策に便乗(横取り)し、改憲・軍拡と強い経済、強い大国日本の再生を打ち出して「新手の新自由主義」への転換に相応しい政治家として登場した。

 

Ⅱ.高市自民党の勝因は、一方では高市首相の改憲・軍拡、右翼的持論を徹底して隠し、他方では中道結成に伴う立憲の「市民と野党の共闘」から離脱によって小選挙区で自民が圧勝したことにある

 (1)高市首相は、「日本列島を強く豊かに」のスローガンの下で「責任ある積極財政」一本に絞って選挙戦を展開し、新自由主義の是非と並ぶ戦争と平和の論点、改憲問題を争点化することを徹底的に回避した。

 (2)中道は平和・憲法・暮らしの点でも高市自民党の対抗軸になれなかった。消費税減税の財源として大企業の負担を掲げられず、エネルギー政策では原発再稼働を容認し、平和の問題では「存立危機事態」の容認、「責任ある憲法改正論議を深化」など立憲の基本政策を転換した。

 (3)中道が「市民と野党の共闘」から離脱した結果、「野党統一候補」としての立憲が共闘の力で当選してきた小選挙区の議席をほとんど失った。

 

Ⅲ.総選挙後、高市政権の下で日本の平和、憲法、暮らしはどうなる?

(略)

 

Ⅳ.対抗する運動の課題

 (1)高市政権の支持は高いが、それは新自由主義政治の変革を期待する国民各層の期待をかすめ取った結果であり、医療制度改革、改憲・軍拡、反人権立法などに対して白紙委任したわけではない。しかしこの問題は、新自由主義の転換を本格的に追及する政治勢力が大きくなり、そのための政権をつくる方向でしか解決できない。

 (2)高市政権の「新手の新自由主義」は、①暮らしは良くならず新自由主義政治の転換はできない、②改憲・軍拡は平和をもたらさず戦争への道を開く――という大きな矛盾を抱えている。しかし、こうした矛盾は自動的に高市政権を窮地に追い込むわけではなく、市民と運動の力によって初めて追い詰めることができる。特に改憲・戦争体制づくりに対しては、広範な市民の「戦争反対」「改憲許すな」の声が不可欠となる。

 (3)衆議院の翼賛体制化の下では、国会内と呼応して高市政権の悪政を追い詰めることが難しいだけに、市民や労働者の国会外での行動が鍵になる。そのためには、反改憲の大きな市民運動の広がりをつくることが大事であり、自衛隊が国を守るために必要と考える人たち、憲法改正の議論が必要だと考えるが九条を変えることには反対という人たちも含めて、大きな広がりをつくっていくことが鍵になる。

 

 ここには、高市自民党が維新を含めて衆議院議席の4分の3以上を占めるという圧倒的な「高市翼賛体制」が成立している現実を踏まえ、「高市翼賛体制」が今後4年間にわたって継続することを前提に、国会外での反改憲・軍拡運動を広範な市民運動として再構築していくことの重要性が提起されている。言い換えれば、国会で少数野党に転落した政党中心の改憲・軍拡反対運動には限界があり、国民世論を動かすような大きな市民運動が広がらなければ、改憲・軍拡動向を阻止することは難しいという情勢判断が示されている。このことは、一方では「情勢の劇的変化をとらえ、国民の中にうってでよう」と言いながら、党活動の重点が常に「いついかなる時にも党勢拡大の独自追求を」に置かれている共産の運動方針(8中総決定推進本部の呼びかけ、赤旗4月3日)とは真逆の内容になっている。

 

 一方、市民連合は2月22日、「信じられる未来へ 希望の新しい選択肢 2.22市民と野党の共同アクション」を開催し、野党代表も参加して新しい方針を打ち出した(市民連合ウェブサイト)。その趣旨は、「決して忘れてはならないことは、歴史の作り手はいつも私たち市民、民衆であったことだ。私たち市民連合は、自らを新たに『信じられる未来へ―市民連合』と名づけ、あらゆる試行錯誤を積み重ね、皆さんと一緒に未来を構想し、新しい市民政治の可能性を探求していく」とする行動提起にある。この日の会場には参加者が多かったばかりではなく、ペンライトを持った若い女性たちなど多様多彩な参加者の姿が多くみられるなど、高市一強による大軍拡と生活破壊・人権抑圧への危機感が呼び起こした新しい動きの萌芽が感じられた。市民連合は、「市民運動のプラットフォームとして市民連合の役割は決して終わっていない」と確認できた集会だったと記している。

 

 「信じられる未來へ――市民連合」からのメッセージは以下の通り(要旨)。

(1)市民連合は、2015年に国会で安保法制が強行採決され、この国の立憲主義が根底から脅かされたことに広範な市民が抗議し結集する中で誕生した。市民連合はこの10年、「市民と野党の共闘」による政権交代を訴え、暴走する自公政権に対して国政選挙を通じて異議申し立てを行ってきた。それまで立憲野党勢力は選挙における「共闘」の経験がほとんどなく、国政における「一強多弱」状況の一因となっていた。しかし野党が協力することで多くの選挙区で次第に与党を追いつめることができるようになり、その経験も全国各地で共有され、地域ごとのさまざまな実践も実を結ぶようになった。

(2)争われる政策も大義もない抜き打ち国会解散によって実施された先の総選挙では、準備不足の立憲野党は壊滅的な敗北を喫した。高市氏の「日本列島を強く豊かに」というスローガンは、きわめて抽象的でその具体的な根拠は薄弱だったにもかかわらず(むしろそれゆえに)、野党特に新たに結党された「中道改革連合」はこれに対抗する魅力的な世界像を打ち出すことができなかった。立憲政治を守るために「市民と野党の共闘」を支持していた多くの市民にとって、平和憲法、沖縄、原発といった基本政策における同党の変節ぶりは、権力追求の策に溺れた市民置き去りの理念なき政治として映った。

(3)未来を展望できない政治の下で約半分の有権者は選挙に行かず、多くの若者は政治に絶望している。若者たちの多くは生活に追われ、未来そのものを信じることができずにいる。既存の政治勢力に希望を失った有権者は、立憲野党にも見切りをつけ、新興の「一度に何か変えてくれそうな」指導者に一縷の期待を託すようにもなった。しかし「信じられる未来」は誰かに与えられるものではなく、既存組織の既存メニューから選択するだけでは、危機の克服は困難となる。

(4)市民連合は、今後あらゆる既存の組織と垣根をこえた対話をしながら、信じるに足る未来を地域から構想したいと思う。この国の平和を希求する市民が求めるものを草の根から共に見いだし、政治に反映させたいと思う。今後政府は、国会の絶対的な数の力で再び戦争国家への道を突き進むだろう。今度の選挙で国会内の力はきわめて限られたものになったが、私たち市民は、平和の砦を再び路上から築き上げることができる。市民連合は自らを新たに「“信じられる未来”へ――市民連合」と名づけ、あらゆる試行錯誤を積み重ね、未来を構想し、新しい市民政治の可能性を探求したいと思う。

 

 市民連合はその後、拡大委員会や全国意見交換会を開いて様々な意見を集めている。その中の主な意見は次の通り。

 ・選挙結果はショックが大きいものではあるが、選挙後の市民連合の集会には多くの人が集まった。これは「国会の政治」から「広場の政治」へのシフトが起きていると思う。今後、市民連合は単なる政党間の繋ぎ役としてだけでなく社会運動のなかでも呼びかけを行なっていきたい。

 ・選挙結果は惨憺たるもので国会内では抵抗勢力は少なくなったが、最近の市民運動には新しい人も増えており、戦争をさせてはいけないという市民が増え始めている。国際政治も国内政治も動きつつある。全国各地でこれまで運動に参加していなかった人たちが次々と参加し始めている。

・いま市民連合の活動は「セカンドステージ」に入った。有権者自身が社会の問題に向き合うときに市民連合が一緒に希望を考えるということ、憲法改正に抗う人たちを増やしていくということを大きな軸にすることが大事だ。

 

 これら「国会の政治から広場の政治へのシフトが起きている」「市民連合は単なる政党のつなぎ役から社会運動の主体へ発展する」「市民連合の活動はセカンドステージに入った」といった意見は、市民運動の新たな展開を示すものとして注目される。いわば、市民運動が政治の舞台での「脇役」から「主役(の一人)」へ脱皮する時代が始まっているのであって、既存政党とりわけ革新政党に与える影響は大きい。「高市翼賛体制」の下では弱小野党の出る幕はなく、従来からの発想では戦後未曾有の反動政権を抑止することができない。しかし、既成政党の桎梏から脱皮しきれない革新野党に代わって市民連合が世論に影響を与える政治勢力に成長すれば、新しい政治情勢が生まれるかもしれない。市民運動団体が開かれた市民政党を結成し、既成政党に代わって政権のイニシアティブを握るような時代がくれば、ヨーロッパのみならず我が国においても新しい政治体制を実現できる条件が生まれるかもしれない(つづく)。

京都府知事選挙で共産推薦候補が3人中最下位に沈んだ、都道府県別比例得票率第1位の京都府で進む党勢後退の現実、共産党の再生は可能か(その16)

    24年間続いてきた「与野党相乗り非共産候補対共産推薦候補」の京都府知事選挙が、諸派新人候補(NHKから国民を守る党・前参院議員)の参入で「三つ巴選挙」となった。過去3回の知事選における有権者数は、2018年209万2千人、2022年206万3千人、2026年201万2千人と少しずつ減ってきているが、投票率は35.2%、37.6%、37.4%と依然として3割台の低水準のまま、投票総数も73万6千票、77万5千票、75万3千票と余り変わらない。諸派候補の参戦で「2極選挙」が「3極選挙」になったものの、‶非共産対共産〟という政党の対決構図は旧来通りで論戦が盛り上がらず、有権者の関心が著しく低かった。

 

 そういえば、いつもの選挙戦では何回も回ってくる選挙カーを今回は一度も見かけなかった。自宅は京都市内で一番人口の多い伏見区にあるが、ビラ配りもなく選挙カーも来ないとあれば、有権者の関心が薄れるのも無理はない。午前10時近く小学校の投票所に出かけたが、投票所に充てられた体育館はガランとして僅か数人がいただけ、午後のニュースで知ったこの時刻の投票率は僅か7%だった。これでは選挙制度そのものの意義が失われるというものだ。

 

京都新聞(4月6日)が「熱なき論戦 組織力で信任、西脇さん府知事3選」と大見出しを打ったように、今回の知事選は問われるべき争点は多かったが、現職側が実績を強調することに重点を置いて論戦を避け、総花的な選挙戦を展開したこともあって著しく盛り上りに欠けた。諸派候補が名乗りを上げたとはいえ、現職候補を与野党相乗り5党で推薦するという力関係から大勢は事前に決しており、有権者の多くは選挙に行っても行かなくても結果は同じ――、と感じていたからだろう。

 

 過去3回の知事選の推移をみよう。2018年は与野党相乗り候補と共産推薦候補の一騎打ちだったが、両者とも新人候補だったこともあって、得票数・得票率は40万2千票・55.9%vs31万7千票・44.1%と比較的接戦だった。2022年は同じ対決構図だったが、現職の強みで両者の差は50万5千票・66.8%vs25万1千票・33.2%とダブルスコアに開いた。今回は、現職候補41万2千票・55.4%、諸派候補18万2千票・24.4%、共産推薦候補14万9千票・20.0%となり、諸派候補が現職候補と共産推薦候補の票を喰って次点に食い込んだ。共産推薦候補は3人中最下位に沈んだ。

 

 朝日新聞出口調査の支持政党別投票率をみると(京都版、4月7日)、現職の西脇隆俊氏を推進した5党のうち、自民支持層の72%、立憲・公明両党の支持層を含む中道支持層の73%、国民支持層の40%が西脇氏に投票し、無党派層からも54%得票している。諸派の浜田聡氏は、参政支持層の74%、国民支持層の40%、無党派層の23%、維新支持層の22%と幅広く得票した。これに比べて共産推薦の藤井伸生氏は、共産支持層の81%を得票したものの、それ以外の得票が少なく、無党派層からは24%しか得票できなかった。

 

 京都新聞出口調査でもほぼ同様の結果が出ている(4月7日)。政党支持率は、自民30.9%、維新8.9%、中道8.3%(中道改革連合2.7%・立民3.8%・公明1.8%)、共産7.9%、参政5.1%、国民3.1%、無党派23.4%と分散しており、かってのような「保革対決」の空気はどこにも見られない。現職の西脇隆俊氏を推進した政党のうち、自民支持層の7割、中道改革連合の8割、立民の6割、公明の9割が西脇氏に投票し、自主投票だった維新も6割が西脇氏に投票した。政党推薦を受けなかった浜田聡氏は、国民の4割、参政の7割から支持を集めた。藤井伸生氏には共産の8割が投票した。無党派層は西脇氏に5割強、浜田氏と藤井氏はそれぞれ2割と割れた。

 

 京都市、市部(14市)、町村部(11町村)に3区分してそれぞれの得票数をみると、西脇氏はいずれの地域でも第1位、浜田氏は第2位、藤井氏は第3位となっている。従来の傾向から言えば、都市部は革新票が多く、町村部は保守票が多いとされてきたが、藤井氏は都市部においても振るわなかった。京都府選挙管理委員会の開票結了速報によると、藤井氏の得票数・得票率は、京都市9万99票・22.9%、市部5万2065票・17.2%、町村部7166票・20.0%となり、大票田の京都市でも票が伸びなかった。朝日新聞(4月7日)はこの結果を次のように伝えている。

 ――府内に一定の地盤がある共産が推薦した藤井伸生氏は15万票弱で3位に終わった。前回22年の共産推薦候補より約10万票も減らす厳しい結果とった。労働組合や市民団体などと「つなぐ京都2026」をつくり選挙に臨んだ。党府委員会の渡辺和俊委員長は「『つなぐ京都』の中でも集票力があるのは共産。責任は重い」とうなだれた。党員の高齢化や機関紙「しんぶん赤旗」の読者が減り、「党の実力が後退している」と述べた。

 

 毎日新聞(京都版、4月8日)も、「共産 退潮ぶり鮮明、前回候補より10万票減、3人中最下位の衝撃」との見出しで大きく伝えている(要旨)。

 ――今回は得票率の低下に加え、浜田氏の後塵を拝した衝撃が大きかった。藤井氏が浜田氏の得票を上回ったのは、藤井氏の地元で共産党の「牙城」ともいわれる京都市左京区と、同党新人が市議に当選した南丹市の他、南山城村と伊根町だけだった。6日夜に選挙母体「つなぐKYOTO2026」が左京区で開いた報告集会で、共同代表の1人は「府民の心に届くには何が必要なのか、もう一度考えたい」と涙をこぼした。同じく共同代表を務めた弁護士は、浜田氏が動画配信を駆使した点に言及しつつ、「路地裏で対話を徹底的に広げていけるかが今後の一歩」と述べて、市民運動としての再興を誓った。

 

 同じ日の赤旗(4月8日)は、簡単な報告記事を載せただけだった。渡辺党府委員長は、「ケア労働を社会の真ん中に置き、国の悪政を押し返す藤井氏の訴えは、今後のたたかいに必ず生きる」と挨拶したが、朝日新聞記事にあるような選挙の敗因については何も語らなかった。

 

 過去3回の京都府知事選における共産推薦候補の得票数・得票率を直前の衆院選共産比例得票数・得票率(京都府)と比較すると、次のようになる。

 〇2017年衆院選15万票・14.1%、2018年知事選31万7千票・44.1%、

  知事選/衆院選得票数比2.1倍(31.7万÷15.0万)、同得票率比3.1倍(44.1%

÷14.1%)

 〇2021年衆院選15万2千票・13.1%、2022年知事選25万1千票・33.2%、

  知事選/衆院選得票数比1.6倍(25.1万÷15.2万)、同得票率比2.5倍(33.2%

÷13.1%)

 〇2026年衆院選10万2千票・9.1%、2026年知事選14万9千票・20.0%

  知事選/衆院選得票数比1.4倍(14.9万÷10.2万) 得票率比2.2倍(20.0%÷

9.1%)

 

 ここから読み取れる傾向は以下の通りである。

(1)知事選共産推薦候補得票数と直前の衆院選共産比例得票数の比率は、2018年2.1倍、2022年1.6倍、2026年1.4倍と縮小している。同じく得票率の比率も3.1倍、2.5倍、1.4倍と縮小している。

(2)このことは、国政選挙(衆院選)における共産比例得票数・得票率の縮小が知事選への影響力を弱め、(非共産対共産の2極対決選挙においても)共産推薦候補の得票数・得票率が縮小していくことを示している。

(3)今回の知事選で共産推薦候補得票数が前回から10万票も減り、得票率が13ポイントも低下したのは、直前の2026年衆院選で共産比例得票数が2021年衆院選から5万票(15万2千票-10万2千票)も減り、得票率も13.1%から9.1%へ4ポイント低下したことが大きく影響している。そのうえ、諸派新人候補の参入で「3極対決選挙」になったことが得票率の下落にさらに輪をかけた。

 (4)共産は京都府下でこれまで、国政選挙(衆院選)比例得票率で共産全国平均の約2倍の得票率(全国第1位)を獲得してきた。2017年京都府14.1%・全国7.9%(以下同じ)、2021年13.1%・7.2%、2024年11.8%・6.1%、2026年9.1%・4.4%である。しかし、京都府も例外ではなくこの10年間で得票率が3分の2になり、全国と軌を一にして後退している。原因は党府委員長が指摘するように特殊地域的な原因によるものではなく、党組織の高齢化に基づく党員と赤旗読者の減少によるものである。

 

 共産の退潮ぶりを伝えた毎日新聞(4月8日)は、記事の末尾を党府委員長の言葉で結んでいる。「藤井さんの訴えは今後の戦いに必ず生きる――としたが、具体策は述べなかった」というのである。今回の知事選では、社会保障の研究者である藤井氏がより良い保育環境などを求める市民運動に携わる中で知事選や京都市長選に関わるようになり、候補が見つからなかったために自ら立候補したという。その勇気ある行動は周囲から評価されているが、このまま党勢後退が続けば候補者の選出自体が危うくなる。ポット出の諸派新人候補に敗れて最下位に沈んだ今回の京都府知事選挙は、党活動の抜本的刷新なくして「共産党の明日はない」ことを教えている(つづく)。

党組織のさらなる‶集票マシーン化〟を促進する衆院比例ブロック得票数・得票率の数値化、党勢拡大方針が党勢後退をもたらす「パラドックス」現象が加速する、拙ブログへのコメントから、共産党の再生は可能か(その15)

最近、拙ブログへのコメントが少しずつ増えてきている。党中央への批判も多いが、その中には地方機関への批判も少なからず含まれている。各コメントの言わんとするところは、党勢拡大一本槍ではかえって国民・市民の信頼を失い、このままでは党が消滅するというもの。そこには、党勢拡大方針が逆に党勢後退の原因となるという「パラドックス」現象が発生しており、活動方針が是正されることなくこのまま続いていくことへの強い懸念が表明されている。以下は、それらの要約である。

 

〇共産党再生のためには、ゼロからの再建活動が必要。困りごと解決のための全戸訪問を実行し、身近で人間的信頼関係を築き、頼れる存在になる――、こういう小さな活動を積みあげることが大切。 ところが、党の地方議員候補になる者のほとんどが地方機関の常任委員で大学・短大卒業(中退)後すぐに党の勤務員になった者ばかり。職場で働いた経験がないため、庶民感覚や国民の感情・気分が全然わからない。自宅のある地域の人々との付き合いもないため、立候補しても地元の自治会の推薦も得られない。このままでは党は消滅する。

 

〇地区及び県委員会の常任委員はほとんどが「党活動オンリー」の状態。 ただし党活動といっても「拡大何パーセント」「中央委員会決定読了何パーセント」だけ。これでは支部の周囲状況まで把握しなければならない「指導」はできない。「○中総決定」は中央委員の全員一致で決まり、県・地区・支部は「決定の徹底・読了=鵜呑み」で金太郎飴の再生産、反省・工夫・進歩がない。

 

〇国民の生活向上が共産党の存在目的・存在意義だという‶原点〟に立ちかえることが必要。そのためには、①民主集中制を廃止し、支部間の自由な討論ができるようにする。 ②党首公選制にして新たな指導部を刷新する。 ③国会では、各政党の政策は異なるが、知恵を絞って共通点を見いだし、粘り強く誠意をもって信頼関係・協力関係を築く、 ④地方議員は任期4年間中に計画的に全戸訪問し、困り事解決の地域活動を展開する。こうして初めて国民に身近で人間的信頼感があり、頼れる存在となる。

 

〇東京都清瀬市長選挙で市民に推されて立候補した6期目市議が当選し、共産党員市長が誕生。切実な住民要求実現に市民と共に奮闘してきた姿が見えていたことが勝因。ここに共産党再生のカギがある。「革命政党」を強調するのではなく、市民に身近で頼れる存在の姿が見える活動が必要。

 

コメントには、党勢拡大に追われ、地域の要求運動にまで手が回らなくなった地方機関の現状(窮状)がつぶさに語られている。党勢後退のメカニズムが活写され、その原因が解明されている。地方機関の専従者に社会経験のない「世間知らず」の若者が配置され、しかも(適当な候補者がいないので)候補者に指名される結果、地域社会から遊離した選挙活動しかできず、得票数・得票率が減っていく。当選回数を重ねてきた高齢議員が引退しても(地域活動の不足で)地盤を引き継げる適切な後継者がなく、地方議員が減少して党勢後退が加速していく――というのである。

 

こうした地方機関の窮状を知ってか知らずか、8中総は総選挙の重大な後退から「深い総括と教訓」を引き出し、国政選挙と地方選挙での反転攻勢に転じる方針を決定したという。それが「すべての衆院比例ブロックで、議席獲得の直接の指標となる得票率の目標を決める」という数値化である。赤旗(4月2日)には「1議席当たりの必要得票率(絶対当選確実の得票率)」が比例ブロックごとに算出され、選対局長が「支部の獲得目標・支持拡大目標を決め、選挙勝利をめざす活動の日常化をはかる」「要求対話・要求アンケート、後援会活動の強化など、あらゆる活動で〈比例を軸に〉を貫き、日本共産党そのものの支持を広げる活動の日常化に踏み出す」ことを提起している。

 

ここでは、地域住民や国民の生活要求を実現するための活動が「要求対話・要求アンケート活動」に矮小化され、全てが党勢拡大の手段と化している。要求を実現するには絶えざる努力と粘り強い活動を必要であり、長い時間を必要とする。だが「要求対話・要求アンケート活動」は次の国政選挙・地方選挙を目指す時間を区切った活動であり、地域活動の端緒にすぎず、地域住民の声を聞くだけの話である。こんなことを選挙のたびに繰り返していれば、国民の信頼を得ることはできず、党勢が後退していくことは必至だと言わなければならない。衆院比例ブロック得票数・得票率の数値化は、党組織のさらなる‶集票マシーン化〟を促進するもので、支部や地方機関はこれまで以上に党勢拡大に追われることになる。党勢拡大活動をすればするほど、党勢後退が加速するという「パラドックス」現象が加速することになる。

 

 志位議長は、「総選挙結果を見て多くの人が危機感をつのらせ、高市政権と真正面から対決する日本共産党に新たな期待を寄せ、新しい連帯の輪が広がっている」などと力説してきた。党本部には、赤旗の新規申し込みが殺到していると言った記事も数多く掲載されてきた。だが、3月の党勢拡大の結果は、入党190人、日刊紙1512人減、同電子版152人増、日曜版1万1343人減、同電子版366人増という惨憺たるものだった(赤旗4月3日)。

 

 3月の赤旗訃報欄に掲載された党員死亡者は168人、掲載率を4割とすると実際の死亡者は420人となり、これだけで入党者190人の倍以上になる。日刊紙合計は1360人減(1512人減-152人増)、日曜版合計は1万977人減(1万1343人減-366人増)と恐ろしい勢いで減っている。8中総であれほど「双方向・循環型」活動の必要性が強調されたにもかかわらず、その最中に党勢後退が加速しているのはどういうわけか。8中総推進決定本部は「4月は何としても連続後退を断ち切り、前進に転じる月にしなければなりません」というが、その保証は何一つない。

 

共産党は来年1月の第30回党大会の目標を第29回党勢現勢(党員25万人、赤旗読者85万人)に回復させるとする「新たな目標」を設定した。だが、下方修正された目標も早くもこの3カ月で破綻しつつある。このまま党勢拡大を追及し続けるのか、それともどこかで「解党的出直し」を図るのか、共産党はいま存亡の岐路に立っている(つづく)。

「全会一致」の8中総後も依然として党勢後退が止まらない、「党の自力不足」の根本原因を解明せず、「六つの法則的活動=党勢拡大マニュアル」を徹底するだけでは事態を打開できない、共産党の再生は可能か(その14)

第29回党大会(2024年1月、党員25万人、赤旗読者85万人)は、第30回党大会(2026年1月予定)までに第28回党大会現勢(党員27万人、赤旗読者100万人)を回復することを目標としていた。だが、その後も党勢後退が止まらず、第30回党大会を1年延期せざるを得なくなり、2026年3月時点では党員23万6千人(2024年比9%減)、赤旗読者76万8千人(同10%減)へさらに後退している。その結果、8中総では「これだけは必ずやりきる」という目標に下方修正し、来年1月の第30回党大会までに第29回党大会現勢(党員25万人、赤旗読者85万人)を回復することを新たな目標に設定した。

 

しかしながら、下方修正された目標の達成も容易ではない。唯一の道として力説されているのが、全支部・グループが参加する「双方向・循環型」の活動である。赤旗はその後、志位議長による「双方向・循環型」活動の呼びかけ一色となっている。

〇「歴史的岐路、いまこそ日本共産党を大きく、千葉・船橋で決起集会 志位議長が訴え」(赤旗3月23日)

〇「返事に学んで六つの法則的活動の開拓を(上)、第28回党大会8中総から(再録)」(赤旗3月24日)

〇「同(下)」(赤旗3月25日)

 

ここで言う「六つの法則的活動」とは何か。それは「手紙」と「返事」のやり取りから学んだとする「党勢拡大の心得=党勢拡大のノウハウ」である。このノウハウは、①いかにして結びつきを広げるか、②どうやって「入党の働きかけの日常化」をはかるか、③いかにして全党員を結集し、新入党員の成長を保障する支部活動をつくるか、④配達・集金の困難をどうやって打開していくか、⑤「職場支部の灯を消したくない」との思いをどう生かすか、⑥若い世代、真ん中世代の地方議員の役割について、の六つにまとめられている。いわば「党勢拡大マニュアル集」ともいうべきもので、手を変え品を変え、詳細な党勢拡大のやり方が説明されている。党の下部機関や各支部では、この「党勢拡大マニュアル」に基づいて指導が行われるのであろう。

 

「双方向・循環型」活動を呼びかける志位発言の特徴は、党勢後退の根本に横たわる「自力不足」の原因究明を(自己責任に直結するからか)i一貫して避け、拡大方法のあれこれを「法則的活動」などと称して持ち出し、「やればやれる!」と発破をかけることに終始していることである。今回も「法則的活動」と称する「党勢拡大マニュアル」を徹底すれば、40年余り続いてきた「党勢の後退から前進への歴史的転換」をやりとげることができるというが、それを裏付ける根拠は何一つ示されていない。党勢後退の現状は、もはや「党勢拡大マニュアル」の改善と徹底といった小手先の対応ではどうしようもないほど深刻化しているにもかかわらず、未だに従来方法から脱することができないのは悲劇というほかない。

 

第2の特徴は、党を取り巻く情勢を客観的に分析しようとせず、自分の眼鏡に合う事例だけを取り上げ、それがあたかも事実であるかのように主張していることである。例えば、共産党を含む左派勢力が惨敗した情勢の下でも、「総選挙結果を見て多くの人が危機感をつのらせ、高市政権と真正面から対決する日本共産党に新たな期待を寄せ、新しい連帯の輪が広がっている」などと力説する(赤旗3月23日)。だが、3月に入ってからの各メディアの世論調査一つをとってみても、共産党の支持率は地を這うような低水準で推移し、そのような気配はまったく感じられない。時事通信1.1%(2月2.0%)、朝日新聞3%(同3%)、産経新聞1.7%(同2.2%)、毎日新聞2%(同2%)、読売新聞2%(同2%)の結果にも見られるように、朝日・毎日・読売は横這い、時事通信・産経は逆に下落している。僅か2%前後の支持率の下で、どうして「日本共産党に新たな期待が寄せられている」などと言えるのか、気が知れない。

 

第3の特徴は、共産党が衆院選で取るに足らない「弱小政党」に転落したという自覚がまったくないことである。「世界でも日本でも歴史の本流の側に立っているのは日本共産党だ」(赤旗、同上)などと繰り返し、旧態依然とした前衛党意識そのままに高飛車な姿勢を誇示している。このような「唯我独尊」の姿勢は、国会における野党間での孤立を深め、「野党共闘」を立て直す道を自ら閉ざす以外の何物でもないが、志位発言にはそのような反省が片鱗(へんりん)も見られない。

 

毎日新聞オピニオン欄「論点」(3月27日)が「野党が進む道は」を特集している。趣旨は「先の衆院選の結果、日本政治はこれまでに経験したことがない自民党優位の『1強多弱』の時代を迎えたと言える。圧倒的な数を誇る巨大与党を前に、野党の存在意義や役割、政権批判の「受け皿」になるカギは何か。野党に詳しい専門家や、かって政権交代に関わった人たちに聞いた」というもの。この論点は現在の国会情勢を的確に捉えており、興味深い視点を提供している。なかでも私が注目したのは、吉田徹同志社大学教授(比較政治学)のコメントである(要旨)。

――野党の重要な役割は、代表制民主主義においては、与党が法や手続きに反する権力行使をしていないかをチエックすることにある。もう一つの役割は、与党に対する「オルタナティブ(代替)」の提示だ。与党の政策が行き詰まった時に、異なる政策体系を有権者に示して評価を受ける。さらに「民意の残余」を代表する存在でもある。与党が国民の負託を受けても、1回の選挙での民意の結果であり、少数派を含む全ての民意を代表しているわけではないからだ。

――2月の衆院選で、立憲民主党と公明党の合流による新党「中道改革連合」は惨敗した。連合と創価学会という日本最大の「中間団体」(支援団体)が手を組んでも敗北したことは、今後の政党政治を考える上で象徴的な意味をもつ。社会の個人化が進み、無党派層が増え、支援団体に依存する選挙戦は融解しつつある。新しい戦い方を模索すべきだ。やるべきこと、やらないことを取捨選択し、国民に提示していくことが求められる。外交や安全保障という「ハイ・ポリティクス」などで、旧来型のイデオロギー対立に拘泥すれば、野党のじり貧化は続くのではないか。

――勝者総取りの小選挙区制を中心とした選挙制度のため、野党間の候補者調整は不可避だ。野党が政権批判票の「受け皿」になるためには、平和主義のような戦後日本が培ってきたレガシーを守るだけでなく、未来志向の価値を示す懐の深さをもてるかが重要だ。

 

吉田教授の視点からすれば、①共産党の選挙政策は膨大な内容を網羅した何でもありの「フルセット型」政策だったが、主軸は「世界も日本も重大な歴史的岐路に立つ」「反戦平和の党のがんばりどき」といった外交や安全保障政策などに置かれ、国民の生活困難の打開に連なる「受け皿」には程遠いものがあった。②選挙活動が融解しつつある支援団体中心の運動に傾斜し、社会の個人化や無党派層の増加に対応する姿勢が(極めて)弱かった。③「歴史の本流は日本共産党」といった前衛党意識が強く、イデオロギー対立にこだわり、野党間の候補者調整などに目が向かないなど、「旧来の戦い方」に終始した――と言える。志位発言は、野党のじり貧化につながる「旧来の戦い方」を象徴するものだったのである。

 

新聞購読料が次々と値上げされる昨今、赤旗と一般紙を併読している家庭は極めて少ない(私の自宅周辺でも新聞を購読している家はほとんどない)。赤旗と一般紙の記事を読み比べてみると、その記事や論調のギャップの大きさに驚く。時代は大きく変わっているにもかかわらず、一般紙を「商業新聞=ブルジョア新聞(ブル新)」と見下し、赤旗こそが「真実のジャーナリズム」だと主張していた時代と余り変わらないような気がする。志位議長の発言をはじめ、党指導部の主張や見解を数ページにもわたって延々と掲載している新聞など、いったい誰が読むというのだろうか。新聞が「社会の公器」と言われるのは、多様な主張や見解を比較可能な形で紹介し、読者の社会的関心や政治意識を高める役割を果たしているからである。赤旗だけを読んでいる支部・グループが、志位議長の見解や主張をそのまま鵜呑みにして行動すれば、社会や世論とのズレは避けられない。党組織全体が高齢化して活動力が低下しているうえに世論動向を踏まえず行動すれば、いくらマニュアル通りに行動しても党勢拡大の実は上がらない。近く党勢拡大の3月実績が公表されるが、その結果を見ればわかるだろう(つづく)。

「双方向・循環型」活動の手紙で党勢後退が止まらないのはなぜか、「党勢拡大」から新たな「支持拡大」へ党活動の戦略的転換が求められている、共産党の再生は可能か(その13)

2026年3月13~15日、日本共産党第8回中央委員会総会が党本部で開催され、中央委員177人、準中央委員25人、計202人が出席した。3日間にわたる討議で、志位議長のあいさつ、「手紙」、第一報告、第二報告、志位議長の中間発言、田村委員長の結語を全員一致で採択された。志位議長は、8中総が「文字通り日本共産党の命運がかかった重要な総会になる」と指摘した上で、8中総の任務について、①世界も日本も歴史の大きな岐路に立つもとで党の任務を明らかにする、②総選挙から深い総活と教訓を引き出し、国政と地方政治での反転攻勢に転じる方針を決定する、③来年1月の第30回党大会までに「党づくりで後退から前進への歴史的転換を果たす」という目標をやり抜く意思統一を行う、ことを提起した(中央委員会書記局、赤旗3月17日)。

 

志位議長の一連の発言の中でもひときわ重視されているのが、全支部・グループあてに「手紙」をおくり、「返事」を求める活動方針である。志位議長はその意義を次のように説明している(中間発言、要旨)。

――幹部会は、第29回党大会決定にもとづいて、この大会期を「党づくりで後退から前進への歴史的転換を果たす」大会期にすることを決意しました。そのためには、すべての支部・グループがみんなで立ち上がることがどうしても必要になる。このため、「双方向・循環型」で活動の発展をはかるという党づくりの大原則に立ち返り、全支部・グループあてに新しい「手紙」をおくり、「返事」をお願いし、ともに前進をつくりだしていくことを提案しました。

 

「双方向・循環型」活動は、第24回大会3中総で次のように解説されている(赤旗、2007年1月18日)。

――双方向・循環型の活動とは、中央委員会から県・地区委員会にいたる党機関や支部の関係を一方通行でなく、血のかよいあった温かい心がかよいあう関係をつくることです。民主的気風を大いに発揮しようという規約の精神にそったもので、支部と機関がお互いに学び励まし合って「政策と計画」をもった「支部が主役」の自覚的な党活動をつくりだすことが目的です。

 

この文面だけを読めば、双方向・循環型の活動は、党中央と支部の自由な交流・協働に基づく自主的・自発的活動のように見える。しかし、志位議長が「中間発言」で代表例として示している「手紙」は、党勢拡大を求める党中央からの「手紙」に対して各支部の「返事」を要求するもので、毎回「返答率」が点検される仕組みになっている。「手紙」は「双方向・循環型」という名の「上意下達型」党勢拡大の指示であり、各支部はその度に「政策と計画」を提出しなければならない。2023年1月の「最初の手紙」から「今回の手紙」に至る一連の流れを見よう。

 

〇最初の手紙

2023年1月の第28回大会7中総で採択された「最初の手紙」は、その名もズバリ「130%の党をつくるための全党の支部・グループへの手紙」だった(要旨)。

――全党の支部・グループのみなさん。今年2023年は、日本の前途にとっても日本共産党にとっても、その命運がかかった文字通りの正念場の年になります。第7回中央委員会総会は、来年1月に開催予定の第29回党大会までに第28回党大会で決めた党建設の目標――党員拡大と「しんぶん赤旗」読者拡大で、第28回党大会比130%の党をつくる、青年・学生と労働者、30代~50代などの世代で党勢を倍加し、民青同盟を倍加するという目標を必ず達成することを決定し、この大事業を全党に呼びかけることにしました。

――「130%の党」という大目標をやりとげる道はただ一つです。すべての支部・グループのみなさんがこの運動に参加し、それぞれの条件をふまえ、それぞれがもつ可能性をくみつくして、この運動に主人公として参加することです。それができるならば「130%の党」は必ずつくることができる。私たちはそう確信し、7中総の総意としてこの手紙をみなさんにおくるものです。

――「130%の党」とは、全党的に36万人の党員、130万人の「しんぶん赤旗」読者をめざす大事業です。同時に、この仕事をすべての支部・グループで担うならば、来年1月の党大会までに平均して1支部あたり、現勢で2カ月に1人の党員、1人の日刊紙読者、3人の日曜版読者を増やせば実現できます。これが過大な目標でしょうか。「高い山」のように見えますが、すべての支部と党員のみなさんが立ち上がるなら決してできない目標ではないのではないでしょうか。まずはこの手紙をすべての支部・グループで読み合わせをし、率直な意見をどんどん出して議論していただき、「130%の党」にむけた自覚的目標をもち、足を踏み出すことを心から訴えます(以下略)。

 

〇次の手紙

 2024年4月の第29回大会2中総で採択された「次の手紙」も「党づくりの後退から前進への歴史的転換を」とあるように、党勢拡大指示の手紙だった(要旨)。

 ――第29回党大会は大きな成功をおさめました。そのなかで今大会期の私たちの最大の任務として確認したのは、「新たな大会期を党づくりの後退から前進への歴史的転換を果たす大会期にしよう」ということでした。この仕事をやりぬく最大の保障は、すべての支部・グループがそれぞれの条件を生かして、党づくりの主人公として足を踏み出すことにあります。それをやりぬこうとすれば、中央と党機関、支部・グループが互いに学びあい、互いに知恵をしぼって前途をひらく「双方向・循環型」の活動をさらに大きく発展させる必要があります。

 ――この2年間は、わが党にとって歴史的な分かれ道となる2年間です。党大会決定は、次期党大会までに、①第28回党大会時現勢――27万人の党員、100万人の「しんぶん赤旗」読者を必ず回復・突破すること、②第28回党大会で掲げた青年・学生、労働者、30代~50代での「党勢倍加」、1万人の青年・学生党員と数万の民青の建設をはかる「5カ年計画」の実現にむけ、2年後までの目標をもちやりとげることを決めました。2年間でこの目標を実現できるかどうか、ここに文字通りわが党の命運がかかっています。

――党大会で掲げた2年間の目標は決して無理な目標ではありません。すべての支部が毎月毎月、党員と読者の拡大に足を踏み出し、一つの支部に平均すれば、第29回党大会現勢から2年間で2人の党員、2人の日刊紙読者、8人の日曜版読者を増やすという目標です。全国のすべての支部と党員がたちあがるならば、必ずやりとげることができます(以下略)。

 

〇今回の手紙

2026年3月の第29回大会8中総で採択された「今回の手紙」も、「党勢の後退から前進への歴史的転換をやりとげ、第30回党大会を迎えよう」という党勢拡大の指示だった(要旨、山下第二報告を含む)。

――第8回中央委員会総会は、党勢拡大の到達点と党の現状を踏まえて、「これだけは必ずやり切る」目標として、第30回党大会までに党員数でも赤旗読者数でも、少なくとも必ず第29回党大会現勢(25万人の党員、85万人の赤旗読者)を回復・突破することを新しい目標として確認しました。

――新たな目標もやり切るのは容易なことではありません。やりとげる道は一つ。すべての支部・グループが参加する運動にすることです。すべての支部・グループが立ち上がるなら、第30回党大会を目指す党勢拡大の目標は、1支部あたり平均で党員1人、「しんぶん赤旗」読者日刊紙読者1人、日曜版読者5人の前進で達成することができます。

――そのためには、中央と支部・グループが互いに学び合い、一緒に党づくりの打開への答えを見つけていく「双方向・循環型」の取り組みを発展させることが重要になります。いま一度、「双方向・循環型」という党づくりの大原則に立ち返って前進への道を切り開きたい。そういう思いを定めて全党の支部・グループのみなさんに「手紙」を送ることにしました(以下略)。

 

これら3通の「手紙」を通して読んでみると、その筋書きが驚くほど似ていることに気付く。というよりは、ほとんどが同じ筋書きで書かれていると言っても過言ではない。「手紙」は基本的に3つの段落(内容)から構成されている。第1段落は「手紙」を提起した年が、いつも例外なく「党の命運を決する時期」であることが強調されていることである。

・今年2023年は、日本の前途にとっても日本共産党にとっても、その命運がかかった文字通りの正念場の年になります(最初の手紙)。

・この2年間は、わが党にとって歴史的な分かれ道となる2年間です。2年間でこの目標を実現できるかどうか、ここに文字通りわが党の命運がかかっています(次の手紙)。

・この中央委員会総会は、内外情勢の重大な展開とのかかわりでも、この間の総選挙の結果とのかかわりでも、そして、党建設の現状の抜本的打開とのかかわりでも、文字通り日本共産党の命運がかかった重大な総会になります(今回の手紙)。

 

第2段落は、党勢拡大目標を達成するためには「支部が主人公」として参加する「双方向・循環型」の活動が不可欠だと、繰り返し強調されていることである。

・「130%の党」という大目標をやりとげる道はただ一つです。すべての支部・グループのみなさんがこの運動に参加し、それぞれの条件をふまえ、それぞれがもつ可能性をくみつくして、この運動に主人公として参加することです(最初の手紙)。

・この仕事をやりぬく最大の保障は、すべての支部・グループがそれぞれの条件を生かして、党づくりの主人公として足を踏み出すことにあります。それをやりぬこうとすれば、中央と党機関、支部・グループが互いに学びあい、互いに知恵をしぼって前途をひらく「双方向・循環型」の活動をさらに大きく発展させる必要があります(次の手紙)。

・新たな目標もやりきるのは容易なことではありません。やりとげる道は一つ。すべての支部・グループが参加する運動にすることです(今回の手紙)。

 

第3段落は、党勢拡大目標を達成するための1支部あたりの平均数字が、客観的裏付けもなく全てが「たられば」の仮定で示され、党員や支持者の負担感を和らげる操作が行われていることである。

・この仕事をすべての支部・グループで担うならば、来年1月の党大会までに平均して1支部あたり、現勢で2カ月に1人の党員、1人の日刊紙読者、3人の日曜版読者を増やせば実現できます(最初の手紙)。

・すべての支部が毎月毎月、党員と読者の拡大に足を踏み出し、一つの支部に平均すれば、第29回党大会現勢から2年間で2人の党員、2人の日刊紙読者、8人の日曜版読者を増やすという目標です。全国のすべての支部と党員がたちあがるならば、必ずやりとげることができます(次の手紙)。

・すべての支部・グループが立ち上がるなら、第30回党大会を目指す党勢拡大の目標は、1支部あたり平均で党員1人、「しんぶん赤旗」読者日刊紙読者1人、日曜版読者5人の前進で達成することができます(今回の手紙)。

 

つまり、「双方向・循環型」の党活動の大原則に基づく「手紙」は、①党が危機的状況にあることを強調して党員や支持者の危機感を喚起し、②党中央からの指示を「支部が主人公」と言い換えて支部の自発的行動を引き出し、③拡大目標を支部平均に小分けして負担感を和らげる――という筋書きで出来ている。前後の文章は少し変えられているが、言わんとするところは「党勢拡大」一本槍なのである。

 

その反面、拡大目標と実績の格差に関する分析はほとんど行われていない。第28回党大会(党員現勢27万人、赤旗読者100万人)から第29回党大会への4年間は、党員目標36万人に対して実績25万人(69%)、赤旗読者目標130万人に対して実績85万人(65%)に終わった。第29回党大会(党員現勢25万人、赤旗読者85万人)から第30回党大会への2年間は、党員目標27万人に対して実績23万6千人(87%)、赤旗読者目標100万人に対して実績76万9千人(77%)に落ち込み、第30回党大会は1年延期された。延期された第30回党大会の目標は、党員25万人・赤旗読者85万人、3年前の現勢に戻すのが精一杯となっている。

 

 なぜかくも党中央は「党勢拡大」に固執するのか。それは「党勢拡大」→「得票数増」→「議席数増」という基本路線が敷かれているためであり、国政や地方政治で党の影響力を発揮するには議席数の増加が不可欠と見なされているためである。と同時に、もう一つの側面(理由)もある。碓井敏正氏が指摘する如く、「政党組織は固有の問題を抱えている。それは組織が一旦成立すると、本来の目的よりも組織の維持を自己目的化する。そのため社会変革より勢力の拡大(党員や機関紙増)を重視するようになる」という傾向である。この両方の力学が相まって「党勢拡大」が至上目的化し、8中総での「今が党のがんばりどき」「必ずやり切る」「もう一歩もひかない」といった大合唱になる(赤旗3月18日)。

 

 だが、「全員一致」で党大会や中央委員会総会決定が承認されても、40年来の党勢後退を止めることができなかった。とりわけここ数年間は、党勢後退と得票減・議席減が加速しており、「党勢拡大」一本槍では党の未来が展望出来なくなっている。「党勢拡大」の他に新たな「支持拡大」の道はないのか、党活動の戦略的転換が強く求められている。延期された第30回党大会は、第29回大会時の党勢回復に終始することなく、党活動の戦略的転換を議論する大会にしなければならない。民主集中制を廃止して支部間の自由な討論を保障し、党首公選制を実施して党指導部を刷新する。新たな指導部の下で党への新たな「支持拡大」の波を広げ、「党勢拡大」に頼らなくても得票増・議席増を実現する方法を見出すなど、課題は山積しているのである(つづく)。

一通の手紙で〝双方向・循環型〟の党活動が実現できるとは思われない、民主集中制廃止と党首公選を実現しなければ党勢回復は空文句に終わる、8中総の「あいさつ・報告」を読んで、共産党の再生は可能か(その12)

日本共産党第8回中央委員会総会の「志位議長あいさつ」、田村委員長と山下副委員長の「幹部会報告」(赤旗3月14日)を読んだ。志位議長はあいさつで「この総会は文字通り日本共産党の命運がかかった重要な総会」と位置づけ、田村委員長が第一報告(政治報告)、山下副委員長が第二報告(党建設に関わる報告)を行った。志位議長あいさつの骨子は以下の通り。

(1)ロシアのウクライナ侵略や米国トランプ政権のベネズエラ侵略、イランへの先制攻撃など世界の平和秩序が脅かされているもとで、世界はいま戦後かってない重大な歴史的岐路に立っている。日本でも衆院選で圧倒的多数を獲得した高市政権のもとで、憲法9条の改悪など平和・暮らし・人権を脅かす戦後かってない歴史逆行の危険が生まれている。日本でも総選挙の結果に強い危機感を抱く人々が、高市政権と真正面から対決する日本共産党に対して新たな期待を寄せ、新しいたたかいと連帯の輪が広がっている。世界でも日本でも、歴史の本流に立ち、逆流に正面から断固として奮闘する日本共産党の存在意義がこれほど鮮やかな時はない。

(2)党中央は、総選挙の結果について寄せられた声の一つ一つをしっかりと受け止め、総活作業を行ってきた。選挙活動を日常的に推進する上で、①「要求対話・アンケート」の取組を一貫して戦略的課題として追求すること、②早い段階から衆院比例ブロックごとに得票と議席の目標を明確にすることにおいて党中央のイニシアチブに弱点があり、選挙活動の立ち遅れにつながった。総選挙の後退の根本には、党の自力不足の問題があった。昨年9月の6中総決定に基づき「世代的継承を中軸に質量ともに強大な党をつくる集中期間」に取り組んできたが、目標に大きな距離を残したまま解散・総選挙をたたかうことになった。

(3)2024年1月の第29回党大会で決定した「党づくりで後退から前進への歴史的転換を果たす」という目標を、来年1月の第30回党大会までにやり抜くには、現在少数の支部と党員によって担われている拡大の現状を打開し、すべての支部と党員が参加する運動に発展させる以外にない。中央委員会と支部・グループが互いに学び合い、一緒に党づくりを前進させる「双方向・循環型」の取り組みを発展させることが必要だ。第8回中央委員会総会として支部・グループに「新しい手紙」を送ることを提案する。

 

志位議長の提案を解説する山下副委員長の「党建設に関わる報告」の骨子は以下の通り(一部は共産党ウェブサイトから補足)。

(1)2024年1月の第29回党大会は、党勢拡大の目標として第30回党大会までに2020年1月の第28回党大会現勢(27万人の党員、100万人の赤旗読者)を回復・突破することを目標とした。しかし、党勢の到達は党員でも赤旗読者でも長年にわたる後退から前進に転じることができず、第29回党大会の時点からさらに後退している。その結果「これだけは必ずやりきる」という目標に修正し、第30回党大会までに第29回党大会現勢(25万人の党員、85万人の赤旗読者)を回復・突破することを新たな目標とする。

(2)必要な拡大数は、党員拡大は現勢で1万3750人の前進、赤旗読者拡大は現勢で日刊紙は紙と電子版の合計で1万2803人の前進、日曜版は紙と電子版の合計で6万8398人の前進となる。党勢拡大の目標は、1支部あたり平均1人の党員拡大、日刊紙読者1人、日曜版5人の前進で達成することができる。

(3)新たな目標達成の唯一の道は、全支部・グループが参加する運動にある。そのため「双方向・循環型」の党づくりの大原則に立ち返り、全支部・グループに向けた「手紙」を送ることにした。「手紙」の一番の核心は、「党建設の前進はできるか、自信が持てない」という支部と党員の思いから問いかけ、「党づくりの大きな可能性が生まれている」ことを、客観的可能性、主体的可能性の両面から明らかにしたことにある。

(4)常任幹部会でも、幹部会でもかなり突っ込んで議論した。40年来の後退を克服するには、従来通りの活動でそんな大仕事ができるのか、できないんじゃないか――、そう考えながら活動の仕方を変えなければならないことを列挙した。

 

山下報告からわかる2026年3月現在の党勢は、党員23万6250人(25万人-1万3750人)、赤旗読者(紙と電子版を合わせて)76万8799人(85万人-1万2803人-6万8398人)となる。2026年1月に開催予定だった第30回党大会では、党員27万人・赤旗読者100万人の目標が掲げられていたが、現状は2年間で差引党員3万3750人・赤旗読者23万1201人のマイナスが出ている。これでは2027年1月の第30回党大会までに党員25万人、赤旗読者85万人回復を「必ずやりきる」目標に設定しても、実現できるかどうかは疑わしい。

 

山下報告では、「党づくりの大きな可能性が生まれていることを、客観的可能性、主体的可能性の両面から明らかにした」とある。だが、それを裏付ける客観的データはどこにも示されていない。時事通信社の最新の世論調査では、共産党の支持率は2026年2月2.0%から3月1.1%に下落している。その他各紙の世論調査でも共産党の支持率は押しなべて2~3%のレベルに低迷している。これでは党勢回復の〝客観的可能性〟が生まれているなどとは到底言えない。

 

党勢拡大の〝主体的可能性〟についてはどうか。山下報告では「1支部あたり平均1人の党員拡大、日刊紙読者1人、日曜版5人の前進で達成することができる」とあるが、これらの数字は全て「たられば」の仮定に基づくものであって、党活動の実態を反映していない。「現在少数の支部と党員によって担われている拡大の現状を打開する」(志位議長あいさつ)ためには、その現状と問題点を解明することが先決であって、「たられば」の数字を並べることではあるまい。

 

ざっと流し目で読んだだけでも、8中総の「あいさつ・報告」は杜撰(ずさん)極まるもので論評に値するものとは思われない。言い換えれば、それだけ共産党の政治方針が行き詰まり、党幹部会が「手紙」を出す程度の提案しかできないまでに衰退していることを示している。40年来の党勢後退の原因を解明できず、志位議長ら党指導部が何の責任も取らないことを前提とする8中総報告は、全支部・グループからブーイングを受けてもおかしくない代物だ。にもかかわらず、赤旗には「8中総 あいさつ・報告への(賛同する)感想」が恥ずかしげもなく掲載されている。志位議長らは、赤旗とともに共産党を墓場まで持っていくつもりなのだろうか(つづく)。