4月に入ってから共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は、8中総決定推進本部の訴えを立て続けに発信している。「8中総決定をすべての支部・グループのものとし、この4月、必ず党勢拡大で前進に転じよう」(4月3日)、「8中総決定推進 田村智子本部長の訴え」(4月15日)、「必ず4月に前進に転じよう、全国都道府県機関紙部長会議開く」(4月16日)などである。志位議長が資本論に託して‶社会主義・共産主義の未来〟を滔々と語るなかで、共産党の組織や財政が極度の危機に直面していることが問わず語りに訴えられている。以下は、その要旨である。
〇「8中総決定をすべての支部・グループのものとし、この4月、必ず党勢拡大で前進に転じよう」(4月3日)
(1)3月の党勢拡大の結果は、入党の申し込みが190人(青年・学生22人、30~50代61人)で、現勢では後退の見込み。赤旗読者拡大では、紙の日刊紙1512人、日曜版1万1343人の後退、電子版は日刊紙152人、日曜版365人の前進。党員も読者も大きく後退したことは「重大な結果」である。
(2)8中総では、党大会を目指す目標を変更し、「これだけは必ずやりきれる」目標として、第29回党大会時の党勢の回復・突破を掲げた。この決意に立って、4月は何としても連続後退を断ち切り、前進に転じる月にしなければならない。その道はただ一つ、8中総決定をすべての支部・グループのものとし、すべての支部・グループが参加する運動にすることである。
(3)そのためには、①「戦後最大の歴史的岐路の情勢」が展開する下で、日本と世界の前途を憂える人々のなかで大きな変化が起こっていることを捉え、国民の中に打って出る、②4月前半にすべての支部と連絡を取り、実践に踏み出す、③いついかなる時にも党勢拡大の独自追求を握って離さない、④「要求対話・要求アンケート」と『Q&A』の学習という2つのチャレンジと一体に、党員拡大、読者拡大の独自追求を強める。
〇「8中総決定推進 田村智子本部長の訴え」(4月15日)
(1)8中総決定の支部討議は6割弱、半数近くの党員に文書が届いていない。4月に入ってからの入党申し込み76人(青年・学生5人、30~50代29人)、紙の日刊紙233人、日曜版2109人、日曜版電子版60人で、4月も3月同様、党員、読者とも「重大な後退」を繰り返しかねない現状にある。このままずるずると党勢の後退を続けるならば、党大会の成功も統一地方選挙での勝利もなくなってしまう。現状を打開するため、3つの訴えを行う。
(2)第1は、4月11日、民青主催で志位議長を講師に開かれた「Q&A戦争と平和」の学習会を生かし、たたかいと党づくりを発展させること。4・11学習会は、今年から来年にかけて国政の最大の問題になると予想される憲法闘争において、党として政治的・理論的に攻勢に転じる上で重要な内容となっている。現在、党員拡大は「止まった状態」にあり、読者拡大でも後退が続いている。4月の党勢拡大で前進に転じるため、4.11学習会を徹底的に生かしていく。
(3)第2は、8中総決定をすべての支部・グループで討議・具体化し、何か一つでも実践に踏み出していく援助を貫くこと。
(4)第3は、党員拡大、読者拡大の独自追求を抜本的に強めること。党勢拡大の(9月末)中間目標は、純増数で党員約7千人(青年・学生1200人、30~50代2500人)、読者の純増目標は日刊紙7700人、日曜版3万7000人、日曜版電子版7600人で、党大会までの目標の「半分以上」となっている。いま大きなチャンスが広がっている。「戦争国家づくり」に反対する国民的運動が起こり、多くの若い世代、女性が声を上げている。こうした国民の変化にふさわしく、日本共産党の先駆的な立場、平和と社会進歩のためにたたかう党員の生き方を訴えるのが4・11学習会。これを大規模に活用して集いを開き、入党を訴えよう。
(5)赤旗は、高市政権による大軍拡と憲法9条改憲の危険な企ての本質を明らかにするとともに、いま声を上げる市民・国民のたたかいの連帯と共同を広げる新聞だ。その一方で、読者数が9カ月連続で後退したことにより発行危機がさらに深刻となり、文字通り「もう一歩も引くことができない」事態にある。昨年1月の4中総で呼びかけた「100万人読者回復・10億円募金」は、10億円募金は4月に達成したものの、100万人読者回復の目標は昨年1月から日刊紙1万人、日曜版5万4千人もの大幅後退となり、発行危機は月を追うごとに深刻化している。赤旗の発行を守り、前進させることは、戦後最大の歴史の岐路のもとで国民に対するわが党の責任であり、4月から必ず読者拡大の前進をかちとることを訴える。
〇「必ず4月に前進に転じよう、全国都道府県機関紙部長会議開く」(4月16日)
(1)今回の会議の目的は、危機と希望が交錯する歴史的岐路の情勢のもと、読者拡大の独自追求が弱く、大幅後退となった3月の反省に立って、この4月から赤旗読者で前進に転じるため、機関紙部の意思統一を行うことである。
(2)昨年1月の4中総で呼びかけた「100万人読者回復・10億円募金」のうち、100万人読者回復の方は後退して日刊紙、日曜版とも「最小限部数」を割り込み、「もう全く後がない」状態になっている。赤旗を失えば、日本共産党は日本社会に対する責任を果たせなくなる。その一方、4月から前進に転じて党員、読者とも第29回党大会時を突破すれば、赤旗発行危機を緩和し、県・地区の財政危機も緩和できる。
(3)赤旗中心の党活動を発展させ、発行の危機を打開するため、①「要求対話・要求アンケート」と「ストリート対話」を一体に、赤旗見本紙を活用して支持者・後援会員を軒並み訪問し、対話を進める、②SNSの取り組みの強化と赤旗電子版の周知を中央と地方が一体となって探求・発展させる、③配達・集金の危機打開に向けて若い世代の党員拡大と配達集金への参加を促す。
これら3つの悲壮な「訴え」を読むと、党組織が党員と財政の両面で深刻な危機に陥り、「もう全く後がない」状態にまで追い詰められていることがわかる。とりわけ機関紙の現状は深刻で、日刊紙・日曜版とも「最小限部数」を割り込み、それに伴って県・地区委員会の財政が極度に悪化していることが示されている。今年9月末までに赤旗読者5万2千人の〝純増〟を目指すとなると、昨年1月から今年3月までの15カ月は6万4千人減(月平均4300人減)の大幅後退になったので、これから半年で減少分(6万4千人)と純増分(5万2千人)を合わせた11万6千人(月平均1万9千人)を拡大しなければならない。
党員7千人の〝純増〟も提起されているが、昨年1月から今年3月までの月平均入党数が262人であることを考えれば、凡そ不可能というほかない。「純増数=入党数-死亡数-離党数」なので、今年9月末までの6カ月を含めて計算すると、昨年1月から今年9月末までの死亡数は3470人(月平均165人×21カ月、赤旗訃報欄から掲載率を乗じて算出)、離党数は6990人(第28~第29回大会4年間の離党数1万6千人を参考に月平均333人×21カ月として算出)となり、純増7千人を実現する算定式は、「純増7千人=入党1万7460人(月平均2910人)-死亡3470人-離党6990人」となる。
これまで「月平均4300人減」の赤旗読者を今年4月から「月平均1万9千人増」に一挙に増やす、「月平均262人」の入党数を今年4月から11倍の「月平均2910人」に一挙に増やす――という党勢拡大方針は、8中総で「必ずやりきれる」目標として全会一致で決定されたが、これを可能だと思う党員は(党幹部を含めて)恐らく誰一人もいないだろう。然るに機関紙部長会議では「討議では、各県から9カ月連続後退の深刻さを直視するとともに、赤旗への期待と共感を実感し、4月前進を決意した発言がありました」(赤旗、4月16日)といった信じられない光景が紹介されている。そこには全会一致で決定された「架空の拡大目標」に誰一人異議を唱えられず、根拠のない決意表明を繰り返すという「空虚なセレモニー」が展開されているだけである。
戦後高度成長期に革新自治体運動と連携して急速な発展を遂げた共産党は、第15回党大会(1980年2月)で不破書記局長が次のような結語を述べている。
――1960年代初頭の4万2千余の党員、10万余の機関紙読者から、60年代を通じて28万余の党員、180万の読者へ(70年代初頭)、さらに70年代を通じて今日の44万の党員、355万を超える読者へ――これが、この20年来の党勢拡大の大まかな足取りであります。第14回大会決定は「百万の党」の建設を展望しつつ、当面「五十万の党、四百万の読者」の実現という課題を提起しました。
――私たちは、年内に「五十万の党員、四百万の読者」の目標を必ずやりとげるために奮闘する必要があります。そして80年代には、わが党が戦後、党の再建以来目標としてきた「百万の党」の建設を必ずやりとげなければなりません。「百万の党」とは決して手の届かない、遠い目標ではありません。日本の人口は1億1千万、「百万の党」といえば、人口比で1%弱の党員であります。私たちは、大都市はもちろん遅れたといわれる農村でも、少なくとも人口の1%を超える党組織をもち、全国に「百万の党」をつくりあげることは、必ずできる目標だということに深い確信をもつわけであります
それから10余年後、ソ連・東欧の社会主義体制の崩壊とともに「日本人口の1%」を目指した「百万の党」は幻と消えた。無党派層が増え、組織運動としての労働運動や学生運動が下火になる一方、組織に属さない多様な市民運動が数多く生まれた。民主集中制に基づく閉鎖的・権威主義的体質の共産党への忌避感が広がり、志位体制の下での四半世紀は、党員が40万人から25万人(6割)へ、赤旗読者が200万人から85万人(4割)へ激減した。2026年3月現在、党員23万6千人、赤旗読者76万9千人と更に後退を重ねている。国政選挙でも志位体制の四半世紀は、671万9千票(2000年6月総選挙、比例得票率11.2%)から332万6千票(2024年10月総選挙、同6.1%)へ半減し、さらに251万9千票(2026年2月総選挙、同4.4%)に落ち込んでいる。
党組織が党員と財政の両面で極度の危機に直面し、党勢拡大が「止まったまま」にある現在、党指導部の取るべき態度は、地方党組織に対する「訴え」の連発でもなければ、上からの会議の招集でもあるまい。党指導部が率先して地方の実情を調査し、その打開策を考える行動を直ちに起こすことが求められているはずである。ところが驚いたことに、この最中に志位議長は団員4人を率いて4月23日から5月6日までの14日間にわたって米国・カナダを長期訪問し、アメリカ民主的社会主義者指導部と会談し、米国・カナダの研究者との理論交流に取り組むのだという(赤旗、4月21日)。
赤旗の発行が「もう後が全くない」危機的状態にあり、県・地区委員会の財政状況が(専従者の給料遅配が発生するほど)悪化しているにもかかわらず、志位議長は巨額の渡航費用をものともせず、「北米の左翼・進歩勢力と幅広く交流を進める方針」を堂々と実行する。そこには党組織の現状を顧みることなく資本論を説き、諸外国リーダーとの交流を通して自らの存在を誇示しようとする飽くなき「高踏的姿勢=自己顕示欲」が露呈している。赤旗は「志位代表団訪問記」をこれからも連載し、依然として部数を減らし続けるのだろうか(つづく)。