高市政権発足から1年、〝推し内閣〟の本格的な「賞味期限切れ」が始まる、高市政権を倒すのは多弱野党でもなければ党内反主流派でもない、化粧が剝がれるだけのことだ、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その13)

 10月21日、高市政権が発足してから1年を迎えた。直前に行われた各メディアの世論調査は、簗農水相更迭の影響は限定的だったものの、内閣支持率は依然として下げ止まらず、「支持政党なし層」が増え続ける中で、高市政権は正念場を迎えている(以下要旨)。

 〇時事通信(10月9~12日実施、個別面接方式、有効回収率58.4%):「内閣支持率42%に下落、簗氏続投批判 8割問題視、『高市離れ』男性も加速」

(1)高市内閣の支持率は前月比1.7ポイント減の42.4%、不支持率は0.4ポイント増の29.7%、下落は5カ月連続でこれまでの最低値を更新した。簗農水相の地元自治体の「道路予算カット」発言や公選法違反疑惑が報じられる中、半月にわたり続投させた高市首相の判断が影響したとみられる。簗農水相続投の是非については「問題だ」49.6%、「どちらかと言えば問題だ」28.4%、合わせて8割弱に上った。

 (2)男女別支持率では、女性42.9%(1.1ポイント増)、男性42.0%(4.2ポイント減)で、男性の「高市離れ」が進み、女性と拮抗するようになった。世代別では「18~29歳」は5割を超え(50.4%)、「30~50歳代」4割台、「60歳代・70歳以上」3割台と若年世代の支持率が高い。支持政党別では「自民支持層」81.4%(3.3ポイント増)と高水準だが、「支持政党なし」32.0%(3.5ポイント減)で無党派層の「高市離れ」が進んだ。

 (3)政党支持率は「自民」22.1%(1.1ポイント減)、「維新」1.6%(0.5ポイント減)で連立政権を組んで以降、初めて2%を切った。野党各党の支持率は公明3.4%(0.2ポイント増)、参政2.7%(0.5ポイント増)、国民民主1.9%(0.9ポイント減)、チームみらい1.7%(0.6ポイント増)、立憲民主1.5%(1.3ポイント減)、共産1.4%(0.4ポイント減)の順だった。調査に回答した1167人のうち、民主、中道を支持したのは各1人(0.1%)だった。

 (4)立憲民主、中道、民主を合わせた3党支持率は1.7%、中道結成直前(今年1月)の立憲民主支持率は4.2%で、中道の結成と分裂を経て支持率は半分以下となった。「支持政党なし」は59.7%(3.0ポイント増)に増えた。

 

 〇読売新聞(10月16~18日実施、音声電話応答方式、有効回収率36.4%、内閣支持率「重ね聞き」):「積極財政『評価』59%、経済政策 高い評価、政権 下落回避に安堵、農相更迭 打撃は限定的、『経済最優先』安定化図る」

 (1)高市首相が掲げる経済成長優先の「責任ある積極財政」の方針を「評価する」59%、「評価しない」29%。「評価する」は6割を維持し、経済政策に対する期待感が高市内閣の支持率を下支えしている。

 (2)食料品消費税率関連法案に「賛成」56%、「反対」37%。「賛成」の人は内閣支持71%、不支持18%、「反対」の人は内閣支持41%、不支持48%で、経済政策に対する賛否が内閣支持・不支持に強く影響している。物価高に対する政府の対応を「評価する」29%、「評価しない」61%で家計の負担感は根強く、今後の政策への期待が先行している。

 (3)改正皇室典範成立後の内閣支持率が前月比12ポイント急落したことに比べて、簗前農水相辞任の影響は限定的で内閣支持率は57%で横這いだった。内閣支持率が急落しなかったのは、内閣支持層や若年層、中年層の現役世代が簗氏問題と高市首相の責任問題を切り離す傾向が大きかったため。簗氏更迭を「当然だと思う」82%に対して、「首相の責任が大きいと思う」は46%にとどまった。政府・与党内では、経済政策が底堅い支持を得ており、簗氏辞任の影響を打ち消したとの見方があるものの、消費税減税・支援金法案の成否が今後の政権運営を左右するとみられる。政党支持率は自民34%、支持政党なし41%だった。

 

 〇朝日新聞(10月17,18日実施、同上、有効回収率43.5%):「簗氏巡る対応『評価せず』52%、内閣支持は横這い50%、高市政権 岩盤支持層を維持、発足1年 増える『消極的支持』」

 (1)内閣発足1年を前に起きた簗氏問題の内閣支持への打撃は、今のところ限定的だ。簗氏の「道路予算大幅カット」の発言に対しては「大いに問題」「ある程度問題」を合わせて84%、この問題をめぐる高市首相の一連の対応については「評価する」39%、「評価しない」52%と否定的だったが、簗氏が辞任した問題で高市首相のイメージがどうなったかを聞くと、「変わらない」72%、「悪くなった」22%、「よくなった」3%と影響を感じさせない。さらに高市首相の発言や振る舞いにどの程度の好感を持つかとの問いに対しては、「大いに好感を持つ」11%、「ある程度好感を持つ」44%、「あまり好感を持たない」29%、「まったく好感を持たない」12%で、高市首相のキャラクターに対する好感度が高く、不祥事が首相のイメージ悪化に直結しにくいことが窺える。

 (2)高市内閣の支持率は発足時の68%から50%へと下落傾向にあるが、支えている「岩盤支持層」は自民支持層で、自民支持率は29~35%で推移している(「支持政党なし」は41%)。自民支持層の内閣支持率は80~93%で「身内」の支持が固い。年代別では18~29歳の若い世代の57%、男女別では男性56%、女性43%で男性の支持が厚い。一方、支持理由を「首相が高市さんだから」「自民党中心の政権」「政策の面」「他よりよさそう」の4択で選ぶ質問では、発足当初は「政策の面」25%と最も多かったが、今回は12%に減少。消極的支持の「他よりよさそう」が当初の21%から25%に増えた。

 (3)個別の政策で注目されるのが物価対策だ。物価上昇への高市首相の対応を「評価する」は昨年11月の44%から今回29%に、「評価しない」は59%に上った。「評価しない」層の内閣支持率は32%と低かった。物価高対策や消費税など国民の暮らしに直結する政策にどう向き合うかが、今後の高市内閣の支持率を占う上でのカギになる。

 

 これらの世論調査から不思議に思うのは、高市首相がさしたる成果を挙げられず、しかも閣僚の不祥事が相次いでいるにもかかわらず、支持率がなかなか下落しないことだ。簗氏が国民の顰蹙(ひんしゅく)を買って辞任したにもかかわらず、高市首相のイメージが「変わらない」72%というのだから、頭を抱えてしまう。朝日調査は、その理由を高市首相のキャラクターに対する好感度が高いことを挙げ(55%)、不祥事が首相のイメージ悪化につながらないからと分析している。

 

 朝日新聞は世論調査に引き続き「検証・高市政権1年①」(10月21日)の特集で、地方の高市支持者のインタビューを通して、高市首相の根強い期待感の背景を探っている。ここでは、石破前首相への落胆が高市氏への期待感につながり、石破氏と対比することで、初めての女性首相の高市氏の特徴が際立つ状況が浮き彫りにされている。 

 ・「一番の好印象は話し方。聞いていて気持ちがすっきりする」(徳島県、40代女性)

 ・「石破さんは周りに流され、やりたいことがわからなかった。高市さんは自分で『こうする』と考えているのが伝わる」(同、50代女性)

 ・「石破さんはどっちつかず。高市さんは信念を曲げない」(富山県、60代男性)

 ・「首相の強い言葉が『何とかしてくれる』という期待につながっている」(岩手県、60代男性)

 

 この現象を谷口尚子慶応大学教授(政治行動論)は、2025年参院選と26年衆院選に合わせて実施した全国約1万人の有権者の政治意識と投票行動の調査をもとに、次のように分析している。少し長くなるが、時機を得た内容なので紹介しよう(「発足1年 高市政権の構図」朝日新聞10月21日、要旨)。

 ――なぜ高市首相は個人人気が高いのでしょうか。

 「有権者にとっては、政党や政策といった抽象的なものより、政治家の人柄や績の方がイメージの伝わりやすい面があります。近年普及しているSNSを通じて政治家は有権者に直接メッセージを発信し、支持者のコミュニティを作ることもできる。SNSの時代では、政治家個人の人気が重要になってきていると指摘されます」

 ――高市首相を支持する人にはどんな特徴がありますか。

 「従来の自民党投票者と比べると、女性が多い傾向がみられました。日本で初めて女性が首相になったことに感慨を覚える人もいるでしょう。高市さんは世襲政治家でも官僚出身でもありません。SNSでは洗濯や掃除、アイロン掛けなどの家事をしていることや、多忙な日常を発信しています。首相でありながら一人の生活者としての側面を見せることで、身近さを感じる人もいるでしょう」

 ――政策面での支持はいかがですか。

 「安全保障や外国人政策に関心が高い有権者ほど、高市さんに好感を抱く傾向がありました。戦後の日本では、米国と良好な関係を築ける政治家が評価されてきました。高市さんもトランプ米大統領と良好な関係を保とうとしています。そこが有権者の安心感につながっている面はあると思います」

 ――高市首相は責任ある積極財政を掲げていますが、景気や暮らしが上向いている実感がありません。

 「議員定数や内閣改造といった政治の内側の話より、物価高や消費税など暮らしに直結する問題に関心を持つ有権者の方が多い。そのため有権者が期待する消費税減税について『まずは1%まで下げる』という姿勢を打ち出すことは大事だったのでしょう。そうしなければ、支持率の低下を招くからです」

 ――高市さんへの支持は今後も続きますか。

 「新鮮なイメージで期待を集めたリーダーであっても、有権者に何か具体的な利益がなければ、支持が下がる可能性はあります。高市政権もこれからが正念場といえるでしょう」

 

 ここでは、高市首相が「生活感のある女性の姿」を巧みに演出して同性の支持を集める一方、安全保障や外国人対策では保守右派(主として男性)の心情を引き寄せる右寄りの政策を打ち出し、高い支持率を維持してきた構図が的確に分析されている。それが1年間も続いてきたのは野党が割れているからであり、とりわけ中道改革連合の解体で立憲が壊滅した影響が大きい(同紙の中北浩爾中大教授の分析)。各メディアの世論調査をみても、野党各党の政党支持率は1~3%台に低迷しており、保革2大ブログが交代する兆しは見出せない。

 

 だが、高市首相への期待感はそう長くは続かないだろう。各世論調査がいみじくも指摘しているように、物価高対策に象徴される国民の暮らしをよくする政策が実行されなければ、有権者の〝推し〟で盛り上がった高市首相の期待感は一気に失望・落胆に変わり、化粧が剝がれることになる(世俗的な言い方をすれば「化けの皮が剥がれる」)。

 

 高市人気が「賞味期限切れ」を迎えていることは、専門家の次のようなコメントでも確認できる。問題は「何時になるか」ということであり、それが〝正念場〟という言葉で語られているだけのことである。

 ・「この1年間で、高市氏は女性初の首相として登場し、保守層の支持を集めて選挙に勝ったというだけで、果たすべき役割を終えてしまったのではないか。私は『政策インプットなき政権にサステナビリティ(持続可能性)はない』と考えており、長期政権にはならないだろう」(牧原出(いづる)東大教授、行政学、毎日新聞10月14日)。

 ・「参院ではいまだに自維は過半数に届きません。2年後の参院選の結果次第では状況はもっと悪くなる可能性があります。(高市政権は)全速力を出していますから、走り抜ける可能性もありますが、転べば一気にクラッシュします」(中北浩爾中大教授、日本政治史、現代日本政治論、朝日新聞10月21日)。

政治方針を決める党綱領と政治組織のあり方を決める党規約は不可欠の両輪、「綱領一部改定・規約ゼロ改定」では党勢後退を止めることができない、共産党「改定綱領案」「第30回党大会決議案」を読んで、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その12)

 共産党が綱領改訂を行う第30回党大会(来年1月開催)に向けて、10月12~14日の3日間、大会議案を審議する第10回中央委員会総会(10中総)が党本部で開かれた。志位議長が「綱領一部改訂案についての提案報告」を行い、田村委員長が大会決議案を提案して「第30回党大会成功・統一地方選挙勝利をめざす大運動」を呼びかけた。総会は、綱領一部改訂案および提案報告、志位議長の発言と結語、「大運動」のよびかけを、いずれも全員一致で採択した(赤旗10月14、15,16日)。

 

 志位議長の「提案報告」は、赤旗全紙6面・3万6000字に及ぶ長大なもので、改定案本文(全紙3面)の倍以上の分量を占める。おまけに「結語」(全紙1面)でも重ねて言及しているので、合計4万3000字にも達する大論考となっている。志位報告は、志位氏が新たに発見(解明)したとするマルクスの「未来社会論」や「自由な時間論」の講釈や注釈で埋め尽くされ、自著「赤本」「青本」「緑本」シリーズの広告も含めて、紙面全体がまるで〝志位講演集〟のような様相を呈している。「結語」の見出し一つをとってみても、「人間の発展、人間の尊厳を何よりも大切にする『人間賛歌』の理論」「提案報告――改訂案の理論的根拠について説明責任を果たす立場でまとめた」「資本主義批判と社会主義への期待の新たな広がり――改定綱領案の意義ははかりしれない」などと、天まで持ち上げられている。

 

 余りの突出ぶりに気が引けたのか、志位議長は「提案報告」の中で生前の不破前議長との会見を引き合いに出し、「不破さんは、現綱領は自分自身との関係でも研究の途上で作成したものであり、人間の自由と全面的な発展をめざすというマルクス本来の見地から党綱領を改訂することに賛成です」と、その連続性を強調している。不破氏は、委員長就任(1982年)から議長退任(2006年)まで24年間、志位氏は委員長就任(2000年)から現在まで26年間、それぞれ最高幹部の位置にあり、この間、不破氏は規約の全面改訂(2000年)と綱領の全面改訂(2004年)を行ったが、志位氏は綱領の一部改訂を行うだけで、規約改定には全く関心を示さない。綱領と規約は不可分の関係にある以上、なぜ規約改定を行わないのか大きな疑問が残る。

 

 私は拙ブログのシリーズ(その6)で、共産党にとって求められるのは「解党的出直し」であり、来年1月の第30回党大会をその契機にしなければならないとして、①志位議長をはじめ古参幹部が揃って引退する、②若手と中堅世代を抜擢して新指導部をつくる、③党首代表選挙を実施して清新なリーダーを選ぶ、④「民主集中制」の規約を撤廃して党員・支部間の自由で開かれた党組織に改革する、⑤党員拡大による「強くて大きな党づくり」から〝リベラル結集〟の軸になる「開かれた左翼進歩勢力」へ脱皮することなどを提案した。しかし、今回のように綱領の一部改訂だけでは、党組織改革は何一つ実現しない。党勢後退の根本原因が党員の自由な活動を縛る権威主義的な規約にある以上、規約を改訂しないことには問題は解決しないからである。

 

 志位報告はメディアから完全に無視され、大手各紙は党大会決議案に焦点を当て、野党共闘路線の転換と党勢拡大の厳しさを中心に報道している。このことは党組織問題を棚上げし、綱領一部改訂であたかも党勢拡大が可能になるかのような志位報告の空虚さを言外に批判するものとなっている(以下要旨)。

 

 〇毎日新聞(10月14日)「共産 野党共闘を転換、中央委総会 党勢拡大優先へ」

 ――共産党は12日、第10回中央委員会総会を党本部で開いた。田村智子委員長が来年1月の党大会決議案を報告し、国政選挙での野党共闘路線を転換する方針を表明した。立憲民主、公明両党による中道改革連合の結成や分裂などの情勢を念頭に「新しい政党配置」が生じたと指摘。「高市政権に正面から立ち向かう」と対決姿勢を鮮明にし、党勢拡大を優先する考えを示した。共産はこれまで国政選挙で、立憲などとの協力を目指して「市民と野党の共闘」を掲げてきた。2017年から3大会連続で決議にあった野党共闘の文言が消えることとなる。

 

 〇朝日新聞(同上)「共産 衆院選目標を下方修正、比例650万票から450万票に減」

 ――共産党は12日、第10回中央委員会総会(10中総)を開き、2027年1月の党大会に諮る大会決議案と党綱領の改正案を示した。党勢低迷が続く中、決議案では衆院選での比例票の獲得目標を下方修正した。党幹部は修正について「現状の党勢が厳しいことを踏まえた」と説明する。ただ、この目標さえもハードルは高そうだ。2月の衆院選での共産の比例得票は約250万票で、得票率は4.4%だった。国政選挙のたびに議席減が続く状況で、比例得票を増加基調に変えられるかは見通せない。

 

 〇読売新聞(同上)「共産党が『野党共闘路線』転換、党大会決議案から削除…田村委員長『反転攻勢を必ずやり遂げよう』」

 ――共産党は12日、党本部で第10回中央委員会総会を開き、来年1月の党大会の決議案を提示した。国政選挙における野党共闘路線の転換を打ち出し、「軍国主義」の復活やAI(人工知能)への懸念などを盛り込んだ綱領改定案も示した。決議案では、2017年の党大会決議以降、毎回盛り込んできた「野党共闘」の文言を削除した。安全保障関連法への反対を前提とした野党間での選挙協力の旗印として掲げてきたが、安保関連法を合憲とした中道改革連合の結成などを念頭に「新しい政党配置」が生じたとの認識を示した。田村委員長は総会で「高市政権に正面から立ち向かって、国政選挙での反転攻勢を必ずやり遂げよう」と訴えた。決議案では次期衆院選の目標として、比例選450万票、得票率7.5%を打ち出した。

 

 各紙が指摘するように、「『市民と野党の共闘』の到達点と展望」(第29回党大会決議)に関する項目は削除され、「国民との共同をひろげ、社会変革の国民的運動を」(第30回党大会決議案)といった一般的命題に変わっている。具体的には、「党は、革新懇運動と共同して『三つの共同目標』――①日本の経済を国民本位に転換し、暮らしが豊かになる日本をめざす、②日本国憲法を生かし、自由と人権、民主主義が発展する日本をめざす、③日米安保条約をなくし、非核・非同期・中立の日本をめざす――を国民の中に広げ、国民多数を結集する独自の努力に力を注ぐ」とあるように、〝独自の努力〟が強調されている。

 

 田村委員長の結語では「綱領で党をつくる」ことが強調され、これまでの「党勢拡大で強い党をつくる」一本槍の方針に「綱領で党をつくる」ことが新たに加わった。だが、下方修正された党勢拡大目標(前大会時の党員25万人、赤旗読者85万人)を残り3カ月で実現するためには、①党員拡大は1万9千人以上の前進、②赤旗読者は日刊紙1万6千人、日曜版8万6千人の現勢での前進、③1支部・グループ平均では、日刊紙1人、日曜版6人の読者数――という途方もない数が必要になる。

 

 大会決議案によれば、第29回党大会後の2年8カ月で迎えた新入党員は1万134人(月平均316人)。残り3カ月で前大会時25万人党員を回復するとなると、1万9千人以上(月平均6300人以上、拡大実績の20倍)の新入党員を迎えなければならない。赤旗読者は、前大会後の2年8カ月で日刊紙1万6千人減(月平均500人減)、日曜版8万6千人減(月平均2680人減)と後退が続いてきた。前大会時の85万人読者を回復するには、残り3カ月で10万人(月平均3万3千人)の読者を増やさなければならない。

 

 「綱領で党をつくる」ことが〝魔法の小槌〟であればまだしも、1990年代以降30年以上にわたって歴史的後退を続けてきた共産党にとって、そんな奇策があるはずがない。それでいて残り3カ月で「党員拡大1万9千人以上」「赤旗読者日刊紙1万6千人、日曜版8万6千人拡大」といった途方もない数字を掲げ、しかもその目標が中央委員会総会で「全員一致」で決まるというのだから、志位議長をはじめ党幹部全員が「金縛り」状態に遭っているとしか思われない。第30回党大会で果たして決議案がそのまま採択されるのか、それとも異論が噴出するのか、結果が注目される(つづく)。

〝八方ふさがり〟の野党共闘、簗(やな)農水相の「予算カット=予算私物化」発言は政局のターニングポイントになるか、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その11)

 前々回の拙ブログで、現政局の特徴を次のように分析した。

(1)多党制の意義は、それぞれの政党が異なる政策を掲げて互いに切磋琢磨し、国民の支持を得て政策を実現することにある。ところが、日本の多党制は名前を変えた同じ体質の政党が並立しているだけで、その時々の政策の違いを針小棒大に誇張するポピュリスト的手法によって存在を演出しているにすぎない。

(2)日本の多党制の実態は、外観は異なるが内実は同質であって、本来の多党制とは言えない。反自民票が一時的に国民民主、参政、チーム未來などの新興政党に流れても、政策面では与党側に吸収され、結果として巨大な〝自民支持大連合〟が形成される仕組みになっている。

(3)翼賛体制化しつつある政治情勢の下でリベラル陣営に求められるものは、自民支持層や野党支持層をはるかに上回る「支持政党なし層=積極的無党派層」の獲得だ。各紙メディアの9月世論調査で無党派層が4割を超えたのは、時事56.7%、毎日44%、朝日43%、産経42%、読売40%だった。この巨大な無党派層の塊にアピールすることが、リベラル再起の条件につながる。

 

 絶望的ともいえる政治情勢の中で、私が注目したのは9月26、27日実施の朝日新聞世論調査だった。中道改革連合の分裂後、立憲出身議員で結成された「民主改革の会」に対しては「期待しない」70%という残酷な数字が出た一方、「自民党に対抗できる政党」に対しては、「必要」84%(自民支持78%、無党派層83%)という驚異的な数字が出たからである。この数字は、一時的な「高市ブーム」で自民が(予想外の)大勝をしたことに対して多くの有権者が危機感を抱き、高市政権の暴走に歯止めをかける「確かな野党」の存在を求める世論が新しく現れてきたことを示している。

 

 高市内閣の支持母体である自民の支持率は30%にすぎない。だが、それにも増して野党支持率はいずれも2~4%に低迷しており、全体でも20%に届かない。一方、与党も野党も支持しない「無党派層」が前回37%から43%に6ポイントも増えてきている。朝日新聞は「支持する政党はない」43%、「答えない・分からない」8%を合わせて51%を「無党派層」としているが、これだと有権者の過半数が「無党派層」になる。

 

 昨年出版された田中愛治監修『無党派層の研究』(有斐閣 2025年)によれば、従来の政党支持概念は、2大政党制で形成された政治構造を反映したもので、一本線の軸上で政党支持の「右か左か」が判断され、両党のいずれにも帰属しない「中間層」が無党派層と見なされてきた。しかし多党制の下では、これらの政党が一直線上に並んでいる「保革軸」は想定できず、したがって「中間層=無党派層」という図式は成立しない。無党派層の中には「どの政党も支持したくない」という〝積極的無党派層〟と「今は支持政党がない」「特にどの政党も支持しない」という〝消極的無党派層〟が混在しており、その区別をつけないと世論動向は分析できないというのである。

 

 党派性を避けつつも政治にはアクティブな関心を持つ〝積極的無党派層〟は、無党派という「社会的アイデンティティ」(社会的帰属に関する自己認識)が原動力となり、アナーキーではない「新しい政治」を求める民主的な政治システムを志向している――、とされる。先進民主主義諸国において中間集団が衰退して政党組織が弱体化し、個々の有権者が直接政治に対峙するようになってきている現在、今後の政局を規定するのは〝積極的無党派層〟かもしれない。

 

 朝日調査で示された「自民党に対抗できる政党」が必要だとする新しい世論の形成は、「どの政党も支持したくない」という積極的無党派層の政治意識とは一見矛盾するかのように見える。だが「自民党に対抗できる政党」を「自民党に対抗できる政治勢力」に読み替えれば、新しい政治構図が見えてくるのではないか。国会では政党対決が主な舞台となり、与党絶対多数政権の下で高市首相が好き放題に振舞えるように見えるが、内閣支持率に代表される国民世論の動向を見るとき、高市内閣が国民に無条件で支持されているとは考えにくい。党内権力基盤が弱く、内閣支持率の高さだけが高市首相の権力の源泉であることを思えば、新しい政治勢力が積極的無党派層を中核にして形成されれば、内閣支持率が激変することはまず間違いない。

 

 だが、野党共闘が冬の時代を迎えた現在、「ゆ党」を含む多弱野党を結集することは容易でない。唯一の手がかりになると思われるのが、簗(やな)農水相の「予算カット=予算私物化」発言だろう。簗農水相の発言は、これまでの利益誘導発言の域を遥かに超える度外れのものだ。衆院選の選挙期間中には、簗氏は街頭演説で「政権与党の議席が無くなったら地域への予算がごっそり削られます!」「民意が『もう与党の議員要らない』と言ったら、遠慮なしに予算を削れるんです!」「この地域についている予算がガクッと減りますよ!」と脅迫まがいの発言を連発している。その簗候補を高市首相が選挙区までやってきて「私の大事な簗ちゃん、私の知恵袋の簗ちゃん。いなかったら大変、本当に大変です!」と連呼するのだから、簗氏は高市首相の「子飼い」ともいうべき存在で一蓮托生の仲なのではないか(毎日新聞、10月11日)。

 

 〝八方ふさがり〟の野党共闘が現状を打破しようと思えば、簗発言を「一点突破口」にして政局を転換させるしかない。「自民党に対抗できる政治勢力」の結集は次の課題である(つづく)。

「政界再編=与党連携」を否定しない公明党が再スタート、中道のイメージは地に墜ち、行き着く先は自民の「下駄の雪」か、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その10)

 公明党は10月3日、党大会を東京都内で開き、新代表に岡本三成氏を正式承認して新体制を発足させた。公明には分裂した中道改革連合から公明出身者28人が復党、衆参49人での再スタートとなった。公職選挙法は、比例選出議員について自身が当選した衆院選に比例候補を擁立した他党に移籍した時点で「当選を失う」と規定している。公明は今年2月の衆院選で候補を擁立していないことで制度上は復党が可能になったが、「中道改革連合」の名前で比例当選した議員が全員そっくりそのまま「公明」に復党するのは、中道改革連合に投票した1043万人の有権者に対する背信行為であり、有権者を欺いたのも同然との批判が出ている(産経新聞9月26日、時事ドットコムニュース10月4日)。

 

 公明は、支持母体である創価学会の会員高齢化などが原因で集票力が著しく低下している。ピークは2004年参院選の比例862万票、これに対して2025年参院選は521万票で4割もの票を失った。そんなこともあって「ジリ貧」の自公連立から離脱し、立憲民主党を巻き込んで中道改革連合の結成で体勢の挽回を図ったが、今年2月の衆院選の惨敗で中道のイメージは地に墜ちたままだ。また、立憲が壊滅的大敗を喫した一方、公明だけが生き残り、あまつさえ議席数を伸ばしたことは公明の謀略的体質をあぶり出し、宗教政党の持つ底知れぬ不気味さを印象付けた。公明党のイメージはこれまでになく悪化している。

 

 公明は、来春の統一地方選や2028年参院選で党勢回復の足がかりをつかめるかが問われる。党大会で岡本新代表は「単にかつての公明党に戻るのではなく、国民の衆望を担う党へと成長する」と強調し、「中道の理念と政策を掲げる政界再編の軸となる」と力説した。だが、「中道の理念と政策」を掲げる中道改革連合が総選挙で惨敗し、結党以来僅か7か月余りで分解したことを思えば、中道が今後の政界再編の軸になることなど凡そ考えられない。立憲系との統一会派「中道」も正体不明のイメージを拭えず、党支持率も低迷して早晩解消する可能性が極めて高い。

 

 そうなると、岡本新代表の言う「政界再編の軸」は別の意味を帯びてくる。昨秋まで連立のパートナーだった自民党には、少数与党の参院で公明との協力を模索する動きもある。岡本氏は党大会後の記者会見で「この政党とはやるが、この政党とはやらないということは全く思っていない」と述べ、与党との連携を否定しなかった。「政界再編の軸」が野党間のみならず与野党間においても設定されるとなると、自公連立復活の可能性はますます大きくなる。臨時国会が10月5日から始まったが、2年間限定の消費税減税問題や衆院定数削減問題をめぐって事態が紛糾することは目に見えている。とりわけ、少数与党の参院では野党の取り込みをめぐっての激しい攻防が予想され、公明がこの「第1ハードル」をどう越えるかで、今後の政界再編の方向が見えてくる。おそらく衆院の統一会派「中道」は、与党との全面対決といった戦術は(公明の意向もあって)取れないだろうし、参院では立憲と公明が別々に分かれて行動することになるだろう。

 

 「第2ハードル」は来春の統一地方選での対応だ。公明は国会では自民の「下駄の雪」と位置づけられてきたが、地方議会では「下駄の鼻緒(はなお)」と言われるほど自公の結束は固い。「現世利益」を最重視する創価学会にとって地方議会は格好の舞台であり、与党に協力して連立の実を挙げることが公明の最大課題とされている。首長や与党会派にピッタリ寄り添い、保守系無所属と変わらない行動を取ることが公明の基本姿勢であり、国会での連立離脱の影響は地方議会にはほとんど及んでいない。

 

 統一地方選では創価学会挙げての選挙戦が展開されるが、公明が自民と政策的に対立する構図はこれまでもなかったし、これからも考えられない。公明が与党側の一員として行動し、自民との間で候補者擁立の調整や票のやり取りなど各種の選挙協力を駆使してきたことは体質化しており、公明が連立を離脱した状況においても大きく変わるとは考えられない。なぜなら、公明が立憲系と統一会派を組んでも、地方議会ではそんなこととは無関係に自公連立が「骨肉レベル」で機能しており、今後とも恒常的に維持されるだろうからである。

 

 京都新聞では、8月末から「2027年春統一地方選、『決戦』、京の各党に聞く」のシリーズが始まった。第1回に登場した本田太郎自民府連会長は、不思議なことに連立した維新との選挙協力は全面否定だが、連立離脱した公明との関係については信頼関係を強調している(京都新聞、8月25日)。

 ――連立した維新との候補者調整は。

 「地方においては選挙協力することにはなっていない。必然的に(競合相手として)意識することはあるかもしれないが、遠慮せずに自分たちの政策を訴えていく」

 ――連立離脱した公明との関係はどう影響するか。

 「前回の府議選では、競合しない選挙区では公明の推薦をもらえたが、今回はそうではない。これまで公明支持者と自民候補が築いてきた個人的な信頼関係は残っているので、そこは大事にしたい」

 

 一方の竹内譲公明府本部代表も、自民との関係については微妙な発言をしている(同、9月4日)。

 ――統一地方選の目標は。

 「民主主義の基盤である地方選挙は国政以上に重要。中央では野党だが、地方では首長とともに政策実現していく立場にある。新興勢力もあり激しい戦いになるだろうが、負けられない」

 ――前回は選挙区で競合しない自民党候補に推薦を出していた。立民との選挙協力はどうなる。

 「どちらも検討中で、これからだ。候補者が出そろわないと、抽象論では言えない」

 

 自民府連会長、公明府本部代表の発言からも分かるように、「自維連立」と「自公連立」には格段の差がある。自維連立は高市内閣による(選挙協力を含まない)「一時的・部分的連繫」にすぎないが、自公連立は国会・地方議会を通しての「包括的連繫」であり、個別内閣の枠を超えた「長期的連繫」である。したがって、高市内閣が退陣すれば自維連立は即座に崩壊に向かうだろうが、自公連立は「解消」ではなく「離脱」という表現にもあるように、「復活」の可能性を十分に残している。

 

 おそらく統一地方選では実質的な自公連立が復活し、立憲は孤立する事態に追い込まれるだろう。そして「第3ハードル」の2028年参院選では、名実ともに自公連立が復活し、公明は自民の「下駄の雪・鼻緒」として生き続けることになるだろう(つづく)。

 

与野党6党軍団で圧勝した沖縄県知事選は〝翼賛体制〟の再来か、リベラル再起の条件は積極的無党派層へのアピールにある、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その9)

 昨日で玉城県政が終わり、今日10月1日から古謝県政がスタートした。与野党6党軍団(自民、維新、国民民主、参政、日本保守、公明)が隊列を組み、現職の玉城デニー氏を大差で破った沖縄県知事選は、今後の政局を占う上で象徴的な政治戦だった。国政(衆院)では自民単独で3分の2、維新を加えると4分の3の「絶対多数」の議席を確保している上、さらに野党の国民民主・参政・公明までが加わったのだから、政党レベルでは「アリと象の戦い」と言っても過言ではない。高市首相が内閣改造に乗り出したのは、この勢いで10月開催の臨時国会を思いのままに操ろうとするもので、その布石を敷いたと言える。

 

 世論はこの状況をどう受け止めているのだろうか。沖縄県知事選後の世論調査で注目されるのは、朝日新聞9月調査(9月28日公表)の結果である。

(1)内閣支持率は53%(前回)から51%に引き続き下落した。高市内閣への国民の支持は確実に下降している。

(2)内閣改造人事に対する評価は、「評価する」35%に対して「評価しない」40%が上回った。裏金疑惑議員(旧安倍派)の入閣に象徴されるように、内閣のイメージは次第に褪せてきている。

(3)政党支持率は「自民」30%(前回34%)と下落し、「支持する政党はない」が43%(前回37%)と大幅に上昇した。野党の支持率はいずれも2~4%に低迷しており、全体でも20%に届かない。衆院では自民が圧倒的多数を占めていても、世論調査では無党派層(4割強)が自民(3割)を大きく上回っている。

 

 朝日調査の中でとりわけ注目したのは、最後の2つの質問だった。「中道改革連合が分裂し、立憲民主党出身議員が民主改革の会という新しい政党をつくりました。民主改革の会に期待しますか」「自民党に対抗できる政党は必要だと思いますか」という2つの質問である。前者の質問に対しては「期待する」18%、「期待しない」70%。後者の質問に対しては「必要だ」84%、「必要ない」10%という驚くべき結果が出た。

 

 民主改革の会に「期待しない」70%という数字はさほど驚かないが、自民党に対抗できる政党が「必要だ」とする回答が84%に達したことには正直言って驚いた。しかも「必要だ」とする回答は、自民支持層78%、無党派層83%でそれほどの差がない。この世論状況は、政党支持の如何にかかわらず圧倒的多数の有権者が「自民党に対抗できる政党」を求めていることを示しており、高市政権が「与党絶対多数」の議席数のもとで国会運営をほしいままにしている事態に対して、国民の多くが(党派を超えて)強い危機感を抱いていることを表している。

 

 政治危機はそれだけではない。沖縄県知事選では自民候補に対して野党の国民民主、参政、日本保守、公明が挙って与党側に回り、〝翼賛体制の再来〟とも言うべき事態が発生した。翼賛体制とは、政府が国民や政治団体を統合して憲法改正や戦争遂行など国家目的を推進する一元化された政治体制を指す。戦時中の近衛内閣のもとで成立した翼賛体制は、①政党政治の停止、既存の政党や団体を解体し、国家方針に従わせる、②国民統合、国民の思想・行動を戦争目的に沿わせる、③国家総動員体制、経済、労働、思想を統合し、戦争遂行を支援する、④政府主導の統制、大政翼賛会や翼賛政治体制協議会を通じて政治・社会活動を統合する――などの特徴を持つとされる。

 

 沖縄県知事選にあらわれた〝翼賛体制〟は、もちろん戦時中のそれと同一のものではない。自民、維新、国民民主、参政、日本保守、公明などは複数政党に分かれて多党制を構成しているものの、政策的には極めて近い関係にある。沖縄県知事選で共闘を組んだ与野党6党は、集団的自衛権の行使を容認する安全保障政策、国家の諜報機能を担う情報機関の強化、原発復活を推進するエネルギー政策、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設容認、皇室典範改正における女性・女系天皇の拒否など、いずれも基本政策で一致している。

 

 この政治構図は、山口氏が右派ポピュリズム政党の進出という最悪のシナリオを防ぐために提唱した「穏健連合」のシナリオとは様相を異にしている。自民党が穏健派と右派に分裂し、穏健派が現在の立憲民主党などと連携して政権を担うという「穏健連合」のシナリオは、国民民主党や参政党など右派ポピュリズム政党を過大評価し、自民党との同質性を看過している。両党が一時の勢いを失ったのは支持層が自民党に回帰したからであって、日本の右派ポピュリズム政党はその程度の存在だったからである。

 

 多党制の意義は、それぞれの政党が異なる政策を掲げて互いに切磋琢磨し、国民の支持を得て政策を実現していくことにある。ところが、日本の多党制は名前だけを変えた同じ体質の政党が並立しているだけで、その時々の政策の違いを針小棒大に誇張するポピュリスト的手法によって存在を演出しているにすぎない。日本の多党制の実態は、外観は異なるが内実は同質であって本来の多党制とは言えない。反自民票が一時的に国民民主、参政、チーム未來などの新興政党に流れても、政策面では与党側に吸収され、結果として巨大な〝自民支持大連合〟が形成されることになる。そしてこんな演出さえもかなぐり捨てたのが、与野党6党軍団が隊列を組んだ沖縄県知事選だったのである。

 

 翼賛体制化しつつある政治情勢の下で、リベラル陣営に求められるものは何か。それは、自民支持層や野党支持層をはるかに上回る「支持政党なし層=積極的無党派層」の獲得であろう。各紙メディアの9月世論調査で無党派層が4割を超えたのは、時事56.7%、毎日44%、朝日43%、産経42%、読売40%だった。この巨大な無党派層の塊にアピールすることが、リベラル再起の条件につながる。だが、国民の信頼を失った「民主改革の会」や片肺飛行の参院立憲民主党、そして権威主義的で閉鎖体質の共産党がその任を担えるとは思えない。リベラル陣営の再起は、各党の「解党的出直し」を必要とする。事態は混沌として見通せないが、次回はその可能性を考えてみたい(つづく)。

リベラル再起の条件はどこにある? 星浩著『リベラル再起の条件』(岩波書店)を読んで思うこと、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その8)

 1985年以来、40年余にわたる政治ジャーナリストとして活躍してきた星浩氏(朝日新聞政治部記者、TBSキャスター)の直近の著書、『リベラル再起の条件』(岩波書店、2026年9月9日刊)を読んだ。趣旨は「日本政治転換の鍵はリベラルの再起にある。戦後日本政治のリベラルが果たした役割と未來へ向けた潜在的力。『リベラル』再起の条件を提言する」「リベラル再起の道は描けるのか。保守・自民党に対抗する理念や政策を時代に合わせて磨き上げ、国民にわかりやすく説明する。上滑りの正義感ではなく、大衆の目線から組織を固めていく地道な努力が欠かせない。リベラル勢力が自民党に代わる選択肢を示し、活発な政策論争を繰り広げられるか。それは日本の民主主義の将来を左右する」(表紙、はしがき)というものだ。

 

 日本政治に関する星氏の基本認識は、「歴代の政権や自民党を取材する中で、日本政治に緊張感をもたらすには、自民党と非自民勢力とが切磋琢磨していくしかないと痛感した。そのためには、かっての民主党や立憲民主党、現在の中道などリベラル勢力の奮起が欠かせない」(同上)というもの。星氏の主たる取材対象が国会政治にあることから、政権に関与できない野党(共産党など)や国会外運動などは対象外で、本題として取り上げられていない。そういう意味では、既存の政治体制にどっぷりと浸かった政治評論と言えなくもないが、一般には知られていない政治の「内幕」が数多く紹介されていて興味深い内容になっている。以下、星氏が概観する日本のリベラル派の戦後の複雑な経緯をみよう(第1章、高市政権の誕生とリベラルの退潮、要旨)。

 

(1)敗戦から15年後の1960年には、岸首相が日米安保条約の改定を強行しようとしたことに反対する運動が強まった。その勢力には社会主義を信奉する親ソ勢力、労働組合、学生団体、市民グループなどが結集。平和憲法の擁護を訴えた。「左翼リベラル」とも呼べる運動だった。岸首相は混乱の責任を取って辞任。後継の池田首相は「寛容と忍耐」「所得倍増計画」を掲げて自民党の路線を転換。安保反対のリベラル勢力は萎んでいった。

(2)1990年前後には東西冷戦が終焉し、ソ連が崩壊、社会主義の潮流は衰退した。日本国内では、1993年に自民党が政治改革をめぐって分裂。解散・総選挙を経て初めて政権の座を降り、非自民の細川政権が誕生した。非自民陣営には社会党だけでなく、自民党を離党した小沢一郎氏の新生党や公明党、細川氏の日本新党などが加わった。「保守リベラル」といえる政権だった。

(3)自民党は1994年、社会党委員長だった村山氏を首相に担ぐという奇策に打って出た。当時の自民党は、宏池会の加藤紘一氏を代表とするリベラル派が主流を占めていた。加藤氏は2000年、野党提出の森内閣不信任案に賛成しようとした「加藤の乱」を仕掛けたが挫折。自民党内のリベラル派はその後、弱体化していった。

(4)2009年に誕生した民主党の鳩山政権は、鳩山氏自身が自民党出身。民主党幹事長を務めた小沢氏、外相を務めた岡田氏も自民党出身で「保守リベラル」政権といえる。保守リベラルの系譜は民進党、立憲民主党に引き継がれ、2026年の衆院解散・総選挙を控えて立憲民主党と公明党が中道改革連合を結成する。総選挙後に中道代表に就いた小川氏は、党の路線を「中道リベラル」と位置づけた。

(5)本書では「リベラル」を、①経済政策では競争重視より格差是正による平等を重視する、②社会保障、子育て支援など手厚くする、③防衛費の大幅増額や集団的自衛権の全面行使には慎重、④選択的夫婦別姓などジェンダー平等を推進する、⑤過去の戦争への反省を明確に示し、閣僚の靖国神社への参拝などについては否定的、⑥外国人の受け入れに前向きで共生社会をめざす――といった政治的立場と位置づける。2026年に結成された中道の大半、自民党の一部、国民民主党の一部などが広い意味での「リベラル派」といえる。

 

 文中には「左翼リベラル」「保守リベラル」「中道リベラル」といった多様な表現が見られるが、上記のリベラルの定義には社会主義体制を目指す政策が含まれていないことからも、リベラルは資本主義体制の改良を目指す政治勢力であることが分かる。この定義は、拙ブログで紹介した山口二郎・中北浩爾編著『日本政治、再建の条件』(筑摩選書、2025年11月15日刊)の見解とも重なっている。山口氏のいうリベラルとは、「財政制約の中でできるだけ再分配を進め、社会、経済の持続可能性を維持すること、国力相応の防衛力整備を進めつつ戦争を回避すること」を基本政策とする「再配分重視・反大軍拡勢力」(終章、2025年参議院選挙と政党政治の再編)のことである。

 

 また、リベラルを構成する政党についても、星氏と山口氏の見解は一致している。星氏は「2026年に結成された中道の大半、自民党の一部、国民民主党の一部」を広い意味でのリベラル派に挙げ、「自民党に対抗する『大きな塊』をつくり、政権を奪取する必要がある。衆院の中道に参院の立憲民主党と公明党とが合流することに加え、国民民主党との連携も欠かせない」(第11章、リベラル再起の条件とは)と提起する。山口氏も「巨人の周りを小人が取り巻くという状況が続けば、議会制度や選挙が存在しても、日本の民主主義は立ち枯れとなる。日本にどのような社会をつくりだすかという課題に向けて、リベラルの価値を共有する大きな政党が必要である。平和と福祉という点で、公明党は広い意味でのリベラル陣営に加わる資格を持つ」(『週刊金曜日』2026年9月4日号)と同意見である。

 

 だがその後、政治情勢は急変している。星氏が自民党に対抗する「大きな塊」として期待した中道改革連合、立憲民主党、公明党の「3党合流」は8月末に破談となり、立憲出身議員は新党「民主改革の会」を9月17日に結成(一部不参加)、公明出身議員は公明党に復党した。9月13日投開票の沖縄県知事選では、米軍普天間飛行場の辺野古移設を容認する与野党6党(自民、維新、国民民主、参政、日本保守、公明党県本部)推薦の古謝氏が、3選を目指した現職の玉城デニー氏を大差で破った。星氏や山口氏が「広い意味でのリベラル派」と位置づける公明党が、日米安保体制最前線で「オール沖縄」に敵対し、自民党候補の勝利に貢献したのである。

 

 衆院では「民主改革の会」と公明党が統一会派を組むというが、国家の基本政策である安全保障政策において見解を異にする政党が「統一会派」を組むことなど凡そ有り得ない。この事態を前にして、星氏、山口氏が公明党をこれまで通り「広い意味でのリベラル派」と位置づけるのか、それとも撤回して自説を修正するのか、今後の行方を見守りたい(つづく)。

〝戦国時代〟さながらの様相を示した沖縄県知事選挙、デマ拡散・誹謗中傷・利益誘導・裏切り・寝返りなど政治謀略が渦巻く中で自民候補が圧勝した、公明・その他野党が与党陣営に加わり、中道改革連合は解体した、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その7)

 9月13日投開票の沖縄県知事選で、古謝玄太氏が与野党6党(自民、維新、国民民主、参政、日本保守、公明党県本部)の推薦で、3選を目指した現職の玉城デニー氏を大差で破った。米軍基地問題で政府と対立してきた「オール沖縄」県政が終焉を迎え、保守陣営が12年ぶりに県政に復帰した。古謝氏は辺野古移設容認の立場で、県議会も容認派が過半数を占めることから、沖縄県政は今後、政府との協調路線に転換することになり、日米安保体制はさらに強化されることになる。

 

 公明党の三浦選対委員長は9月13日夜、沖縄県知事選で与党や公明県本部が推薦した前那覇市副市長の新人・古謝玄太氏(42)の当選が確実になったことを受け、「平和と豊かさを実感できる具体的な結果を出す政策への転換を求める県民の強い期待が示された」とする談話を発表した。さらに「新知事のもとで、国との適切な連携を再構築し、沖縄の平和と県民生活の向上をともに実現できるよう、公明党としても県政運営を支えていく」とアピールした。自民内には沖縄での限定的共闘をきっかけに連携を国政の場に広げ、消費税減税の関連法案成立に向けて、少数与党の参院で公明の支持取りつけを目指す動きがあるという(読売新聞、9月14日)。

 

 一方、中道改革連合は立憲系と公明系の議員がそれぞれ離党する「分派」による解体が決まり、立憲系は新党「民主改革の会」を結成し、公明系は公明党に復党する。新党の代表は小川氏、幹事長は階氏が当分務め、綱領は「中道のものを基本的に踏襲」し、「生活者ファースト」を柱に「現実的な外交・防衛政策」を掲げるという(朝日新聞、9月16日)。この方針は、衆議院で立憲系新党が公明と統一会派を組むことを前提にしたもので、集団的自衛権の一部行使を容認する安全保障法制、原発復活を推進するエネルギー政策、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設容認、皇室典範改正における女性・女系天皇の拒否など、公明の基本政策を踏襲するものとなっている。

 

 だが、立憲系新党の前途は予断を許さない。第1は、解散(を決定)した中道改革に今年の政党交付金の未交付分11億6900万円が払われることの是非である。解散した政党は政党交付金を国庫に返還しなければならない。小川代表は9月9日の記者会見で「まだ(選挙費用の)支払いが半分も終わっていない」として交付金の受け取りに理解を求めたが、世論は必ずしも納得していない。また、政党助成法14条は政党交付金を借金の返済に使うことを禁じているので、選挙費用の清算は違法の疑いもある。いずれにしても解散(を決定)した政党が政党交付金を受け取ることは、道義的責任を免れない。

 

 第2は、公明が与党陣営に加わり、立憲や共産などと全面対決した沖縄県知事選の影響である。公明は(県本部推薦とはいえ)、日米安保体制最前線の沖縄で改憲勢力の自民・維新に全面協力し、自民候補の勝利に貢献した。この事実は限りなく重く、もはや「公明=中道リベラル」といった詭弁は通用しない。立憲系新党が衆議院で公明と統一会派を組んだ場合、今後、高市政権から繰り出されてくる改憲関連法案には到底対処できないだろう。公明に同調すれば立憲系新党はリベラル政党としての大義を失うだろうし、反対すれば統一会派はご破算となり、自公連立復活の前払いの役割を果たすことになる。

 

 第3は、それ以前に、立憲系新党が果たして無事にスタートできるのかという根本問題がある。立憲系出身議員21人の中には野田前立憲代表に連なる党執行部への批判グループも存在しており、先の特別国会で中道が賛成に回った改正皇室典範の採決では、党議拘束に従わず立憲系4人が退席するなど、そのギャップは次第に大きくなりつつある。党執行部は衆議院で一定の影響力を保つため21人の結束に腐心するが、少なくないメンバーが離反することが確実視されており、前途は全く見通せない。立憲系議員21人のうち相当数の議員が離反すれば、新党結成は出だしから躓くことになり、小川氏ら党執行部は行き場を失うことになる。

 

 こんな折しも折、『週刊金曜日』で「新シリーズ、リベラルは消えたのか」が始まった。「新シリーズ」の趣旨は次のようなものだ。「高市早苗政権の支持率が低下を続けているが、野党の支持率も低迷している。わたしたちは『リベラル』をどのように考え、その理念の重要性をどう把握すべきだろうか。新シリーズで思索を深めたい」。第1回(9月4日号)登壇の山口二郎法政大学教授(政治学)の論評は、公明が沖縄県知事選で与党陣営に加わっているにもかかわらず、(条件付ながら)依然として公明をリベラル勢力の一翼に位置づけている。

 ――リベラル勢力の再構築を図る際には、大きな固まりを目指すことが最終的な目標となる。立憲民主党が政権交代への挑戦者となりながら失速したのは、政権政策、特に人々の生活を支える政策構想を持たなかったからである。リベラルの弱点を克服し、次の社会の構想をつくることがリベラル再構築の作業である。

 ――巨人の周りを小人が取り巻くという状況が続けば、議会制度や選挙が存在しても、日本の民主主義は立ち枯れとなる。日本にどのような社会をつくりだすかという課題に向けて、リベラルの価値を共有する大きな政党が必要である。平和と福祉という点で、公明党は広い意味でのリベラル陣営に加わる資格を持つ。同時に、26年に及ぶ自民党との連立政権を総括する必要がある。中道改革連合が立憲民主党の理念を捨てたという批判がある。リベラル勢力の結集のためには、政策の方向性の共有を確認して、幅広く提携する発想が求められる。

 

 これに対して同時掲載の「望月衣塑子の政治時評」は、元衆院議員の川内博史・阿部知子・平岡秀夫氏らが立ち上げた政治団体「護憲リベラル共生」(略称「ゴリラ」)に注目する。

 ――「ゴリラ」の基本政策は、第1に憲法9条の堅持を掲げ、皇位継承については調子継承を可能にする皇室典範の再改正をあげる。在日米軍基地・国連軍基地の縮減と対等な地位協定への改定、米軍普天間飛行場の名護市周辺辺野古移設反対、脱原発と、ど真ん中のリベラル政策が並ぶ。政治全体が右へ引っ張られるなか、安全保障政策では軍事力強化を競い合う議論が目立つ。旧民主党支持のリベラル層の一部には、政治の思いを「託す先」がなくなっている。だから「ゴリラ」ができた意味は小さくない。

 ――参加の意思を示しているのは、現職国会議員を含む16人。今後、現職議員の参加が広がれば、存在感を持つ政治勢力になる可能性はある。枝野幸男・辻本清美・蓮舫・小沢一郎氏ら旧立憲のベテラン勢が今後どう動くかも注目される。

 

 中道改革連合は9月16日に議員総会を開き、所属議員48人の離党を確認した。立憲出身議員は新党「民主改革の会」を立ち上げ、公明出身議員は復党する。しかし、今日9月17日の各紙の反応は思いの外小さく、新党「民主改革の会」についても「多弱野党の一つ」が増えただけ――との冷ややかな扱いが目に付く。旧民主党支持のリベラル層はいったいどこに向かうのか、「ゴリラ」はリベラル結集の軸になるのか、今後の行方に注目したい(つづく)。