内閣支持率と自民党支持率の下落がリンクし始めた、〝頭のすげ替え〟だけで政治危機は脱出できない、岸田内閣と野党共闘(その25)

 前回に引き続き、メディア各紙の世論調査の動きをみよう。9月19日発表の毎日新聞と日経新聞の世論調査には共通した傾向が見られる。第1は、内閣支持率が2021年10月の政権発足後最低に落ち込んだこと。第2は、内閣支持率と自民党支持率がリンクして下落していることである。この傾向が同時にあらわれているのはこれまでの世論調査では見られなかったもので、現局面の政治情勢を読み解くうえで重要な判断材料だと言える。

 

 毎日新聞によれば、岸田内閣の支持率は29%で1か月前の36%から7ポイント下落した。岸田内閣の支持率がいわゆる「危険水域」と言われる30%を下回るのは、2021年10月の政権発足以降初めてのことだ。前回はこれまでにない大幅な下落(16ポイント)だったから、今回の調査と合わせると僅か2カ月の間に内閣支持率が52%から29%への続落したことになる。「どこまで落ちるのか」がわからない状況になってきている。一方、不支持率は64%で前回54%から10ポイント増、前々回の17ポイント増と合わせると、27ポイントの増加となった。要するに、2カ月で支持率が半分近くに減り、不支持率が倍近く増えたのである。これは、余りにも急な変化だと言わなければならない。

 

 加えて注目されるのは、自民党の政党支持率が同時並行して下落していることだ。前回調査では34%から29%へ5ポイント減、今回調査では29%から23%へ6ポイント減となり、現在の調査法によると2020年4月以降で最低となった。前回と今回を合わせると、自民党支持率は34%から23%へ11ポイント減(3分の1)となり、「保守岩盤層」といわれる自民党支持層にも大きなひび割れが生じてきていることがわかる。

 

 日経新聞はどうか。日経の世論調査は、「重ね聞き」(最初の質問で支持、不支持を回答しなかった人に対して「どちらかと言えば」と重ねて聞き、両方の回答を合計して算出する)といわれる手法なので、毎日新聞よりは支持率が高く出る。それでも今回は43%で前回の57%から14ポイント低下し、2021年10月の政権発足後最低となった。また、不支持率は前回32%から17ポイント増の49%となり、政権発足後初めて不支持が支持を上回った。自民党支持率は、前回46%から9ポイント減の37%となり、同様に政権発足後最低となった。自民支持率の9ポイントという下落幅は、第2次安倍政権が発足した2012年末以降で最大の数字だったのである。

 

これら世論調査の全てが、「政権発足後初めて」と言われるような傾向を示しているのはなぜか。そこには、これまで余り知られていなかった旧統一教会の実態が赤裸々に暴露され、とりわけ自民党支持層を中核とする保守層に衝撃的な影響を与えているからであろう。長年旧統一教会を研究してきた日本宗教学会元会長の島薗進東大名誉教授は、日経新聞の「旧統一教会と政治」(9月15日)、毎日新聞の「政治と旧統一教会問題、日本の岐路」(9月16日夕刊)の中で次のように指摘している。

 

日経新聞のインタビューでは、宗教について無関心な政治家が、教義や世界観にあまり頓着せず、選挙応援など実利面を評価して関係を結ぶ...といった姿勢が、「社会的にはさほどの支持も得られていない宗教団体が大きな影響力を持ち、国民生活にも累を及ぼす一因となった」として、次のように言う(抜粋)。

「自民党と旧統一教会は、教団が1968年に設立した反共産主義の政治組織、『国際勝共連合』を軸にして接近した。宗教団体としての実績がまだあまりないにもかかわらず、『反共』という点で一致しているから共闘できると考えたのはあまりにも安易だった。教団はその後も合同結婚式や霊感商法で批判を浴び、教組の文鮮明氏も米国で脱税の実刑判決を受けた。にもかかわらず、92年には文氏が政治的判断で日本入国を許されている。旧統一教会の教えには、日本は特別の罪を負っているがゆえに、韓国あるいは教団の教組に貢献しなくてはならないという内容が含まれている。選挙に協力してもらえるからというだけで、自民党の政治家がそのような教団と関係を持っていたのは、日本の政治史上の汚点だ」

 

毎日新聞では紙面が大きい(全紙)こともあって、記者とのやりとりの中でその全容と本質を明らかにしている。

 〇自民党が旧統一教会や関連団体との関係について、所属国会議員179人に何らかの接点があったことを明らかにしたのは、「――形だけ何かしたことにして、批判をやり過ごそうとしてはいるのでしょう」。

〇大半の議員が教団との関係を「認識していなかった」とした点については、「――旧統一教会が『正体隠し』の巧みな教団であることは確かです。とはいえ、これだけの数の議員が相手の素性をろくに確かめもせず関係を持つというのがあり得るでしょうか。むしろ教団の正体は知っていて、『分からなかった』ことにした議員もいたのではないか。つまり、ごまかしているのではと疑いたくなります」。

〇教団との関係では本丸と言えるのが安倍氏だが、本人が亡くなったことを理由に自民党は調査に消極的だ。真相はまだ何ら解明されていない。それでもこれで幕引きするつもりなのか、記者会見で茂木幹事長は「率直に反省している」と述べている。このことについては、「――いったい何を反省しているのかがよく分かりませんね。なぜ多くの被害者を生んできた教団が長い間存続し、そして政治家に取り入るようになったのか。問題の本質に立ち入らずに『関係を絶つ』と言っても、なぜという疑問が残ります」。

〇韓国発祥の旧統一教会は1964年、日本で宗教法人として認証された。教団は68年に政治団体の国際勝共連合を設立。「反共」を媒介に安倍氏の祖父である岸信介元首相との関係を深めていったことは、今や広く知られるようになった事実である。この点について、「――文氏は米国で脱税容疑で摘発され、84年に刑務所に収監されます。ところが岸氏は米国のレーガン大統領に釈放するように手紙を書き、92年に文氏が来日した際には、自民党の実力者だった金丸信氏も骨を折りました。岸氏に源流を持つ自民党のタカ派は、勝共連合と思想的に響き合っていた。そういう状況の中でメディアが次第に委縮し、警察が捜査の手を緩めたりといった方向にいった可能性は否定できません。私たち学者も、社会に対して十分に啓発できなかったという反省がある」。

〇旧統一教会といえば、高額な壺を売りつける「霊感商法」のイメージが強いが、「――これは日本特有の現象で、そこには教団が教義の基本として重視する『堕落論』が大きく関わる。この世に堕落をもたらした『エバ国家』の日本は『アダム国家』の韓国に使える責任がある、という論理です。韓国に対して『はべる』、つまり金銭的にも人的にも奉仕するのが当然だとする教えで、日本による植民地支配の償いという意味も込められています。いわば、反日ナショナリズムというわけだが、80年代以降は対外的にもあらわになっていく」。

〇教団が政治への接近を企図した時期は、民主党への政権交代を経て自民党が政権を奪還するタイミングとちょうど重なる。「――安倍さんにとっては民主党に政権を奪われたのはトラウマになっていました。選挙に勝ち続けるためには集票力を増やさなくてはいけないと。そこで、急速に教団との関係を深めていったとみられます」。

 

これまで「日本会議」など歴史修正主義の立場に立つ自民党タカ派は、朝鮮での日本の植民地支配の意図や事実を覆い隠し、日本の戦争責任を指摘する歴史学を「自虐史観」などとして悪罵中傷を続けてきた。そして、右翼雑誌などを通して「嫌韓プロパガンダ」を大々的に展開し、国内の嫌韓感情を一貫して煽ってきた。ところが、その先頭に立ってきた安倍元首相が旧統一教会信者の手によって暗殺され、教団の実態が赤裸々に暴露されるに及んで、自民党支持層の中に大きな動揺が生まれた。自らの政権維持のためには旧統一教会の「反日ナショナリズム」に目を瞑り、日本信者の窮状を見殺しにしてきた自民党に対して、激しい不信と怒りの渦が巻き起こっているのである。

 

この事態は一過性のものではない。戦後の政治体制の根幹を揺るがすような構造的問題、すなわち自民党の政治基盤の崩壊につながるような問題と見るべきであろう。安倍元首相の「国葬」を強行しようとしている岸田政権に対する批判は、「国葬」が終わったからといって収まるようなレベルの問題ではない。それは、もはや岸田首相の首を挿げ替えても、旧統一教会と自民党の癒着関係を根本から清算しなければ解決しない問題と化している。自民党は果たして生まれ変われるだろうか。自民党支持層のみならず、多くの国民は冷めた目でその行方を注視している。(つづく)

同じことを繰り返すだけの〝丁寧な説明〟では国民の信は得られない、安倍「国葬」をめぐる世論の変化について、岸田内閣と野党共闘(その24)

 9月に入ってから、各メディアの世論調査が注目を集めている。12日発表のNHK世論調査、13日の朝日新聞調査、そして15日の時事通信調査が相次いで内閣支持率の〝急落〟を報じたからである。一般的に言って、内閣支持率が下がることはそれほど珍しくないが、支持率が急速に低下するとか、不支持率が支持率を上回るようになると耳目を引くようになる。政権運営に危険信号が点滅していることが、誰の目にも明らかになってくるからだ。

 

  NHK調査では、内閣支持率が先月より6ポイント下がって40%になり、去年の岸田内閣発足以来最も低くなった。不支持率は12ポイント上がって40%となり、支持率と不支持率が同率になった。支持率の下落(6ポイント)よりも不支持率の上昇(12ポイント)が2倍になるほど大きいのは、これまで支持してきた人たちが不支持に回ったことに加えて、どちらでもない人が不支持に転じたことを示している。いわば、岸田内閣の評価をめぐって様子見をしていた人たちが、大げさに言えば「雪崩を打って」否定側に移行したのである。

 

 その理由は、以下の質問に対する回答からも明らかだろう。岸田首相が先月行った内閣改造と役員人事については、「大いに」と「ある程度」を合わせて「評価する」34%、「あまり」と「まったく」を合わせて「評価しない」56%。政府が今月27日に安倍元首相の「国葬」を行うことについては「評価する」32%、「評価しない」57%。「国葬」についての政府の説明については「十分だ」15%、「不十分だ」72%。自民党が今後、旧統一教会や関連団体と一切関係を持たないことを基本方針とし、党所属の国会議員との関係を点検して公表したことについては「十分だ」22%、「不十分だ」65%と、いずれも否定側の回答が圧倒的に多い。

 

 この結果は、「旧統一教会との関係を断ち切る」と称して岸田首相が行った内閣改造や党役員人事、党所属国会議員の同協会や関連団体との関係に関する自己申告調査、そして安倍元首相の「国葬」の実施と説明の全てが国民の信を得ていないことを示している。国民の疑惑に何ら応えることなく、ただ「丁寧な説明」を繰り返すだけの岸田首相に対して、世論はもはや「政権を担う能力なし」と判断していると見るべきであろう。

 

朝日新聞調査も同様の結果を示している。内閣支持率は先月より6ポイント下がって過去最低の41%になり、不支持率は8ポイント上がって47%となり初めて逆転した。「国葬」への賛否は、先月の「賛成41%、反対50%」から「賛成38%、反対56%」と反対が大きく増えた。安倍元首相の「国葬」に関する岸田首相の説明には「納得できる」23%、「納得できない」64%、安倍元首相と旧統一教会の関係について自民党が調査すべきかについては「するべきだ」63%、「その必要はない」31%と大差がついた。自民党の政治家が旧統一教会との関係を断ち切れるかについては、先月の「断ち切れる」16%、「断ち切れない」76%から、「断ち切れる」12%、「絶ち切れない」81%に更に差が開いた。つまり国民世論は、自民党と旧統一教会との関係は何ら解明されておらず、その大元の安倍元首相と同協会との関係の調査に踏み込まないようでは、これまでの深刻な〝癒着関係〟を解消できないと判断しているのである。

 

時事通信調査ではさらに結果が鮮明になった。時事通信は各社が電話自動音声で調査しているのに対して、調査員が回答者に個別面接して調査していることが特徴だ。社会調査法の常識として、この方法はコストがかかるが正確な回答を得られることは言うまでもない。また有効回答率も高く、今回は61.9%だった。結果は、内閣支持率は前月比12.0ポイント減の32.3%に急落し、昨年10月の政権発足後最低となった。不支持率は同11.5ポイント増の40.0%で、初めて不支持率が支持率を上回った。安倍元首相の「国葬」については「賛成」25.3%、「反対」51.9%と、反対が賛成の倍以上になった。岸田首相の旧統一教会問題への対応については「評価する」12.4%、「評価しない」62.7%、首相や自民党議員の同問題への説明については「納得できる」5.5%、「納得できない」74.2%と、数倍から桁違いの賛否の差が開いている。

 

時事通信は、この結果を次のように分析している。

(1)NHKや朝日新聞の内閣支持率がまだ40%台に止まっているのに対して、32%にまで落ち込んだ時事通信の内閣支持率は、政権維持の「危険水域」の目安とされる30%に近づいてきている。このまま内閣支持率が低下して30%を割り込むようになると、首相の求心力低下に拍車がかかり、政権維持が困難になる。

(2)深刻なのは、自民党支持層の理解も得られていないことであり、「国葬」への「賛成」47.3%と半数に届かず、「反対」33.2%だった。旧統一教会に関する首相らの説明も「納得できる」13.0%、「納得できない」63.9%と、まったく信用されていない。

(3)与党内は危機感に覆われつつある。自民党の森山選対委員長は「支持率が非常に厳しい状況になってきた」との認識を示し、二階派幹部は「歯止めがかからない。菅政権の末期と似てきた」と述べ、首相の身内である岸田派中堅も「肌感覚で逆風を感じる」と不安を口にしている。

(4)「首相が何をしたいのか分からない」との不満も強い。岸田内閣は「新しい資本主義」を看板政策に掲げるが、自民党内ですら理解が広がっていない。公明党ベテランは「政権の柱がない。全て対症療法で右往左往している」といら立ちをあらわにしている。

 

 安倍元首相の「国葬」に対してこれほど国民の間に世論反対が広がっているというのに、予定通り9月27日に行われることになっている。しかし、野党陣営のなかでも「国葬」への出欠をめぐって大きく意見が分かれている。日本維新の会や国民民主党が真っ先に出席の意思を示したのは予想されたことだが、見苦しいのは立憲民主党の態度が最後まではっきりとしないことだ。9月16日の京都新聞はこの問題を大きく取り上げ、立憲民主党の態度が煮え切らいないことの背景に、泉健太代表の「決断できない」姿勢が横たわっていることを鋭く批判している。

 (1)安倍元首相の「国葬」をめぐる立憲民主党の泉代表の発言は揺れに揺れてきた。「本来なら出席する前提に立っている。本当に悩ましい(9月2日)」、「説明責任を果たしていない。政府の対応を見極めたい(8日)」、「政府の考えに変更がなければ、執行役員の出席は難しい(13日)」などと、結論を一貫して先送りしてきた。

 (2)泉代表が明確な方針を出さないまま状況が推移する中で、政府から国会議員に「国葬」への案内状が届き、立憲民主党の各議員が執行部判断を待たずに出欠意向を示し始めた事態が発生する。慌てた執行部は9日、役員以外を除いて出欠は各議員の自主判断とする方針を通知した。

 (3)13日に開いた両院議員総会では「幹部は党の明確な姿勢を示してほしい」「対応が中途半端だ」との意見が相次ぎ、同日、政府への質問書を提出したが、翌14日に届いた返事は「予想通りゼロ回答」(幹部)。これを踏まえて、執行部は15日に欠席方針を漸く決定した。

 (4)泉代表の一連の対応に、対しては、「まともな回答が返ってこないのはわかっていたはず。遅いとしか言いようがない(政務三役経験者)」、「欠席をすぐ宣言せず、もたもたするからだ(元幹部)」、「国葬対応一つを取っても、泉氏が何をしたいのか全く見えてこない(重鎮議員)」などの呆れた声が溢れ返っている。

 

 驚いたのは、あろうことか連合の芳野会長までが15日の記者会見で、「首相経験者が凶弾に倒れたことに弔意を示すため、労働者代表として出席する」と安倍元首相の「国葬」への出席意向を表明したことだ。「国葬の決定過程や法的根拠に問題がある」「苦渋の決断」などの言い訳をしきりに並べながら、結局は「出席」するというのだから、連合にとっては国民の民意に従うことよりも自民党との盟友関係を維持することの方が大切なのだろう。芳野氏が「労働者代表」であることはもはや誰もそう思っていないが、彼女が安倍元首相の「国葬」に出席することによって、早晩その仮面を剥がれる日がやってくるに違いない。(つづく)

旧統一教会の盟友・安倍元首相を国葬にするという〝破局の選択〟岸田内閣は国民世論から厳しく断罪されるだろう、岸田内閣と野党共闘(その23)

 先日、私の携帯電話に突然「非通知」の知らせが届いた。普段なら応答しないのだがたまたま開いてみたら、なんと「解散総選挙」についての世論調査なのである。形式は、例の如く「選挙に関心はあるか」「投票に行くか」「支持政党はどこか」などの質問に対して回答を求めるもの、内容は何の変哲もないものだった。

 

しかし、驚いたのは他でもない。こんな世論調査が「なぜこの時期に?」ということだった。参院選が終わったばかりで当分の間国政選挙はない、岸田内閣は「黄金の3年間」を手に入れて安泰そのもの――、政治情勢はおよそ解散総選挙とは無関係だと思われていたのである。それが「解散総選挙」についての世論調査が突然行われるのだから、政界に何か異変が生じていて、国葬後に解散総選挙が行われるかもしれないという情勢になっているのだろうか。

 

そういえば、このところ自民党と旧統一教会との関係は〝底なし沼〟の状態を呈している。朝日新聞は8月18日から9月2日にかけて、全国の国会議員と都道府県議、知事計3333人を対象に、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関係を尋ねるアンケートを実施した。その結果、教団や関連団体と接点があったことを認めたのは計447人、内訳は国会議員150人、都道府県議290人で、ともに8割を自民が占めたという(朝日新聞9月4日)。

 

国会議員で接点を認めた150人は、自民120人、維新14人、立憲9人、公明、国民、参政各1人、無所属4人、自民が80%を占める。同じく都道府県議290人は、自民239人、公明11人、維新7人、立憲4人、国民1人、その他3人、無所属25人で、ここでも自民が82%と突出して多い。まさに「根絡み」「抜き差しならぬ」の状態だ。このほか、宮城、秋田、富山、福井、愛知、徳島、鹿児島の7県の知事が接点を認めた。これら7知事はいずれも自民が与党として支援している。接点を認めた全議員と知事447人のうち、今後関係を見直すと回答したのは384人人(国会議員139人、都道府県議242人、知事3人)だった。

 

 共同通信はその1か月前の7~8月、安倍元首相を除いた全国会議員712人を対象に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わりを尋ねるアンケートを実施している。回答を寄せた594人のうち接点を認めたのは与野党双方117人、自民は93人で80%を占めた。また9月3日段階のまとめでは、これが「少なくとも146人」に上り、党所属国会議員381人の38%が関係議員であることが判明した。僅か1カ月で自民関係国会議員が93人から146人に1.6倍も増えるのだから、まさに〝底なし沼〟状態だ。今後調査が進めばその数はどんどん増えていくことだろう。加えて地方議員まで調査範囲を広げれば、自民関係議員(保守系無所属を含めて)はさらに増えること間違いない。

 

旧統一教会問題については、民放テレビが精力的に連日報道しているのに対し、これまで「だんまり」を決め込んできたNHKが、8月29日の「クローズアップ現代」で漸くこの問題を取り上げた。その中で、安倍元首相がビデオメッセージを送っていたUPFジャパン、国際勝共連合など関連団体のトップ・梶栗正義氏が初めてテレビ出演し、「反共」の立場でこれまで自民党とは同志的関係にあったこと、そのトップである安倍元首相を尊敬し支援してきたこと、旧統一教会の信者からの献金を政治活動に流用していることなどを(至極当然のことのように)淡々と語った。

 

9月4日のNHK「日曜討論」でも旧統一教会問題が討論の中心テーマとなり、各党の幹事長・書記長らが激論を交わした。その中で際立っていたのが、自民茂木幹事長の信じられないような居直りとふてぶてしさだった。「自民党は政党として旧統一教会とは一切関係をもたない。党議決定をした」「協会と個々の議員の関係は現在まとめている」「これは調査ではなく個々の議員による点検、自己申告によるもの」と平然と言い切り、口先では「反省している」と言いながら、真相をあくまでも覆い隠そうとする態度を変えていない。

 

この発言に対して野党側からは、自民党総裁の安倍元首相がメッセージを送り、岸田内閣の閣僚や党役員の中枢部が旧統一教会と数多く関係しているというのに、「自民党は政党として関係を持っていない」とはどういうことか、との追及が相次いだ。組織のトップや中枢幹部の多くが反社会的勢力やカルト集団との関係を持っているとすれば、一般社会はそれを「組織的に関係を持っている」と見なすのが普通だ。この国民的常識、社会通念を無視して「黒を白」というような人物が自民党幹事長の席に座っているのだから、この番組を見た視聴者は、茂木幹事長のどす黒い表情の陰に、自民党と旧統一教会との間の「ただならぬ関係」を感じ取ったに違いない。

 

 事実、JNNの最新の世論調査結果を伝えたTBSテレビ(9月4日夜)は、「自民党は8月31日に、旧統一教会や関連団体と今後一切関係を持たないことを党の基本方針として正式に決定しました。あなたは自民党議員が旧統一教会との関係を絶つことが出来ると思いますか」との質問に対して、「絶つことが出来ない」75%、「絶つことが出来る」16%と、圧倒的多数の人が「自民党議員は旧統一教会との関係を絶つことが出来ない」と考えていることが分かった。

 

また、「自民党は党所属の国会議員に対し、旧統一教会との関係を点検し、党に報告するよう求め、集計結果を今週中にも公表する考えですが、これにより実態の全容が解明されると思いますか」との質問に対しては、「解明される」6%、「解明されない」89%だった。実に国民の9割近い人びとが、自民党と旧統一教会との関係は「絶つことができない」、自民党の点検は「全容を解明することができない」と考えている。この圧倒的な国民世論を前にして、茂木幹事長が白を切れば切るほど自民党は〝底なし沼〟から這い上がることが難しくなる。

 

 元経済企画庁長官の田中秀征氏は、毎日新聞政治プレミア(8月24日)に寄稿し、自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について、「このまま成り行きに任せれば、自民党そして岸田内閣への不信感がさらなる支持率の急降下を招き、政権の統治力が著しく減衰する」「自民党は、党内に調査会を設置して事実関係を解明し、調査結果に基づいて国民が納得する厳正な対応をする必要がある」「さらに党として改めての決別宣言も欠かすことはできない。岸田首相は、各政治家の個人としての説明を強調するが、国民の不信はむしろ党に対してのものだ」と苦言を呈し、最後に現在の政権と旧統一教会の関係について「まるで旧統一教会との連立政権のよう」と指摘した。以下はその抜粋である。

 

(1)8月10日の岸田文雄内閣の改造は成功とは言えない厳しい経過を辿(たど)っている。本来なら、物価高、新型コロナ、そして安保強化など喫緊の課題に対応する力を強めるものであったはずだが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関また、係が重大問題化してそれも吹き飛んでしまった。

(2)このまま成り行きに委(まか)せることになれば、自民党、そして岸田内閣への不信感がさらなる支持率の急降下を招き、政権の統治力が著しく減衰することが避けられない雲行きだ。何としても岸田首相、そして自民党にはこの問題から逃げず、国民、有権者が心から納得する対応を示してほしいものだ。

(3)第一に、自民党は、党内にこの問題を徹底調査する調査会を設置して事実関係を解明して発表する必要がある。この調査会に、学者、弁護士、言論人などの第三者が加わればその調査や報告への信頼性が格段に高まる。今のところ自民党は、党としての徹底調査の責任から逃げている印象だ。

(4)そして、その調査の中では、自民党の思想や理念と、旧統一教会のそれが一致するかどうかも検討しなければならない。もし「反日」「侮日」のようなものが旧統一教会の教義・原理のなかにあるならば、保守を標ぼうする自民党が同調できる余地はない。

(5)第二に、自民党はその調査結果に基づいて国民が納得する厳正な対応をする必要がある。度が過ぎた癒着があれば、それに応じて処分や勧告を行うべきである。それが政権・政党の自浄力というものだろう。さらに、党として改めての決別宣言も欠かすことはできない。岸田首相は、各政治家の個人としての説明を強調するが、国民の不信はむしろ党に対してのものである。

(6)今回の内閣改造では閣僚7人と副大臣・政務官計20人が教団側と関わりがあることが判明したものの、それに先だって実施した共同通信の全議員調査では、副大臣・政務官の計12人のみであったという(8月14日付毎日新聞「旧統一教会接点106人 国会議員8割が自民 共同通信調査」)。それほど政治家個人の説明や告白は信用できないということになる。8月18日時点の報道(NHK)によると、政務三役の実に4割が旧統一教会と関係していたという。これではまるで旧統一教会との連立政権のようではないか。

(7)秋には臨時国会が開かれる。そこで自民党及び岸田内閣が、この問題で集中砲火を浴びれば、今まで以上に報道の追及は厳しくなり世論も沸騰して政権の土台を揺さぶるに違いない。現政権に代わるものが期待できない現状では自民党が生まれ変わるほかに道はないのだ。

 

 私には、「自民党が生まれ変わる」とはとても思われないが、せめても田中秀征氏の言うようなことだけでも実行しなければならないと思う。岸田首相が記者会見で表明したような「国会閉会中の審議」だけで済ませられるような簡単な問題ではないからだ。岸田首相は秋の臨時国会まで待つことなく、野党各党の憲法上の要求に基づいて直ちに臨時国会を開き、安倍元首相と旧統一教会の「ただならぬ関係=盟友関係」を徹底的に解明しなければならないのではないか。

 

 重ねて言うが、閉会中審議の「丁寧な説明」でお茶を濁し、安倍元首相の国葬を大々的に盛り上げ、この場を逃げ切ろう――といった岸田首相の姑息な思惑は通用しない。政治の原点に立ち戻り、政治生命を懸けて取り組まない限り、国民の信頼は取り戻すことができない。また、それだけの見識と覇気がなければ、首相の座を降りるほかはない。冒頭で述べた「解散総選挙」についての世論調査は、そのことの予兆だというべきだ。(つづく)

聞くだけ、言うだけ、何もしない、毎日新聞調査の内閣支持率急落は岸田首相への一大打撃となった、岸田内閣と野党共闘(その22)

毎日新聞が8月20、21の両日に実施した全国世論調査によると、岸田内閣の支持率は7月16、17日の前回調査52%から16ポイント下落して36%になり、昨年10月の内閣発足以降で最低となった。不支持率は54%で前回37%より17ポイント増加した。毎日新聞の内閣支持率調査は、日経新聞や読売新聞のように最初の質問で回答しなかった人に「どちらかと言えば」と、重ねて支持、不支持の回答を迫る「重ね聞き」をしない。世論調査の基本を踏まえた簡明率直な調査だから、結果がクリアに出ることで知られている。その調査で内閣発足以来の最低の数字が出たのだから、岸田首相もさぞかし驚いたことだろう。

 

しかし、この結果は考えてみれば当然のことだ。この間、岸田首相は旧統一教会と自民党の関係について、「それぞれが判断することだ」として何もしてこなかった。自民党国会議員が口先だけで「無関係だ」と申告すれば、政務三役(大臣、副大臣、政務官)に派閥均衡で起用するのだからこれほど安易なことはない。果たせるかな、共同通信が全国会議員を対象として行ったアンケート調査では、旧統一教会と関係のある議員は106人にも上ることが明らかになった(8月13日)。そのうち自民党議員は82人で全体の8割を占め、しかも8月10日の内閣改造で岸田首相が新しく任命した閣僚7人と副大臣、政務官計20人が含まれているのだから、何をかいわんやだ。

 

 岸田首相は8月10日に内閣改造と自民党役員人事を実施した。現職閣僚の中に旧統一教会と関係のある人物がぞろぞろ出てきたので、「これは危ない!」と思ったのだろう。だから、わざわざ前倒しして内閣改造に踏み切ったのだが、これが裏目に出た。本人の「自己申告」に任せて何の調査もせず、言われた通りの人事を進めた結果がこれだ。改造前よりも一段と旧統一教会関係のメンバーがずらりと並ぶことになったのである。

 

 内閣改造後の世論調査では、支持率が改造前より上昇するのが通例だ。岸田首相もそのことを期待して内閣改造を実施したのだろう。ところが、今回の内閣改造と自民党役員人事については「評価しない」68%、「評価する」19%、「関心がない」13%と、否定的評価が圧倒的だった。自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係に問題があったと思うかとの質問では、「極めて問題があったと思う」64%、「ある程度問題があったと思う」23%、「それほど問題があったとは思わない」7%、「全く問題があったとは思わない」4%と、約9割が問題視している。自民党支持層でも7割超が「問題があった」と回答したという。まさに〝総スカン〟という状況だ。

 

 なぜ、こんな状況になったのか。今回の内閣改造人事には、何事も決断しない(できない)岸田首相の本質があからさまに出ているというべきだ。野党の自滅で大勝した総選挙のお陰で「黄金の3年間」を手に入れたことに安堵したのか、それとも奢りが生じたのか、国民世論には一切目を向けず、安倍派の顔ばかりを見て派閥人事を采配したことがその原因だ。旧統一教会関係者が圧倒的に多い安倍派を排除すれば、党内基盤が崩れることを恐れるあまり、旧統一教会と根絡みの関係にある人物を要職に起用するなど、目先の党内力学ばかりに目を奪われ、国民世論の動向や民意の所在に目が向かなかったのである。こんな人物に一国の宰相が務まるわけがない。

 

 それにしても、旧統一教会と自民党の関係がこれほど根深いものであることが明らかになったきっかけは、安倍元首相の暗殺事件だった。狙撃した犯人が旧統一教会の痛ましい犠牲者であり、絶望のどん底に突き落とされた青年であったことが、国民世論を大きく動かしている。暗殺という犯罪行為は肯定できないものの、それに至った深刻な背後事情を考えるとき、その社会的影響の大きさに世論は愕然としたのである。そして、その根源となった安倍元首相の祖父岸信介氏やそれに連なる極右勢力の存在の恐ろしさに気付いたのだった。

 

 国民世論の所在は明白だろう。毎日新聞調査の政治家は旧統一教会との関係を絶つべきだと思うかとの問いに対しては、「関係を絶つべきだ」86%、「関係を絶つ必要はない」7%だった。自民党支持層でも「絶つべきだ」77%、「絶つ必要はない」12%だった。この民意に反して政治を行うことは許されないし、また不可能だというべきだ。それでも、岸田首相はまだ決断できないらしい。首相は22日夜、オンライン形式で記者団の取材に応じ、旧統一教会と自民党議員の関係について「政治家それぞれの責任で明らかにし説明をすることが基本だ」と述べ、あくまでも政府による調査を拒否した(各紙8月23日)。

 

この期に及んで、岸田首相はまだ事態の深刻さを理解できていないらしい。政府による徹底的な自民党議員の「身体検査」を実施することなく、事実をあいまいにしたままで事態を乗り切れると考えているのではないか。NHKは一貫して旧統一教会関係のニュースを取り上げないが、民放各社は連日自民党と旧統一教会の関係を掘り下げている。岸田首相はこのメディア状況を甘く見てはいけない。遠からず政府責任で調査に踏み切らざるを得ない日がやってくるだろう。

 

加えて、岸田首相にとってはもう一つの難題が浮上している。言うまでもなく、安倍元首相の国葬問題である。ある歴史学者は「国葬の日が近づいて来ると国民世論も賛成側に変化する」と書いていたが、これは的外れの予測ではないか。最近の世論調査の動きから言えば、調査が行われるたびに「国葬反対」の回答が増えてきている。旧統一教会問題と安倍元首相の国葬問題が関連して捉えられ、国民の疑問が日に日に大きくなってきているからだ。このままでは、国葬の日が近づくにつれてこの動きが小さくなることはない。国葬の当日、会場の前では「国葬反対」のデモが繰り広げられないとも限らないからである。(つづく)

選挙結果を素直に総括できない政党は真面な方針を出せない、日本共産党第6回中央委員会総会報告を読んで、岸田内閣と野党共闘(その21)

8月2日の「しんぶん赤旗」を読んだ感想を述べたい。年老いた3人の酒飲み仲間が懇親会を兼ねて集まり、参院選の結果について忌憚のない意見交換をした。大手紙数紙も互いに持ち寄っての合同会議だから、多多ますます弁ずの次第と相成った。それぞれが思い思いの感想を述べ合ったが、その中の一番口の悪い奴の言いぐさが面白かった。

 

――いわく、議席減と得票減という現実を「二重の大逆流」といった屁理屈をこねて素直に認めず、これを「全党の大奮闘によって押し返す過程での一断面」だという論法は、まるで旧日本帝国陸軍の「敗戦を転戦」と呼ぶのとそっくりそのもの。どうやら志位委員長は、不勉強にも『失敗の本質、日本軍の組織論的研究』(ダイヤモンド社、1984年)を読んでいないらしい。

――いわく、自分の会社経験からすれば、業績不振の会社の社長が経営戦略の誤りを認めず、自らの責任を棚に上げて居座ったままでは、年老いた営業マンの尻をいくら叩いても業績は絶対に上がらない。これでは組織の疲弊と衰退が進むのが目に見えている。

――いわく、参院選投開票翌日の常幹声明は、「全党のみなさんの知恵と経験に学びたい」などとしおらしいことを言っていたが、その後の赤旗には「全党の知恵と経験」の話が全く出てこない。声を出しても編集部が取り上げようとしないからか、それとも声を出しても無駄だと党員や支持者が見限っているからか、そのどっちをとってみても末期症状というほかない......などなど。

 

大手紙の論評でも政策上の問題はほとんど注目されず、関心はもっぱら組織問題に集中している。毎日新聞(8月2日)は、総会報告の内容よりも党内関係者の取材に力点を置き、「共産党、先細りの危機感」と題して次のような事態を明らかにしている(要約)。

――創立100年を迎えた共産党が、党勢維持に向け正念場を迎えている。7月の参院選で、改選6議席から2減になった。1日に党本部で開いた第6回中央委員会総会では、志位和夫委員長が参院選の総括を踏まえ、党勢回復に向けた「奮闘」を誓ったが、党関係者の高齢化などを抱える地方組織からは「このままではじり貧で、先細っていくだけだ」と悲痛な声が聞こえてくる。

――志位氏は再び共闘を目指し、自民など改憲勢力と対峙する姿勢を強調した。一方、党内では、組織の高齢化を前に「これまでのように指示を広げることができない」「活動を支えるメンバーは高齢者ばかり。世代交代ができていない」「党本部は、後援会員らが周囲に『折り入って作戦』を展開せよというが、個々の結びつき頼りでは世代が広がらない」との声が漏れる。

――党は、参院選投開票の翌日に公表した常任幹部会声明で、党員減少などを指摘し「自力をつける取り組みは、質量ともにその立ち遅れを打開できていません」と認めている。志位氏は6中総、23年に想定されていた党大会を、統一地方選前であることを理由に24年1月へ先送りすることを提案した。2日に了承されれば現在の党体制が当面維持されるとみられる。統一選を控える地方議員の一人は「党勢回復か没落か。まさに今が正念場だ」と語った。

 

朝日新聞(8月4日)は、「議席減、志位氏への不満も」「共産党参院選総括、幹部人事1年先送り」との見出しにあるように、志位委員長の進退問題に焦点を当てて記事をまとめている。具体的にはこうだ。

――共産党は1、2両日、党本部で中央委員会総会を開き、議席を減らした参院選を総括した。党執行部は一定の責任を認めたものの、人事を決める党大会の1年先送りを決めた。地方からは不満の声も上がっている。

――16年、19年の参院選は成果を挙げた共闘だが、昨秋の衆院選以降は党勢拡大に結びつかず、委員長を20年以上務める志位氏には、地方から「異例」(党関係者)の不満も出ている。「『人心一新』し出直すため、党員による選挙をしたらどうでしょうか。誰も猫の首に鈴をつけたくないので、委員長自ら決断を」。党員でもある京都府商工団体連合会の久保田憲一会長は参院選後、SNSにこう投稿した。「周囲でも交代を求める声が多い。ちょっときついかなとも思ったが一石を投じた」と取材に語った。ただ、党幹部や関係者の間では「理論的な柱になってきたのは志位氏」との声が大勢を占める。

――共産は2~3年ごとに党大会を開いて幹部人事を決めるが、今回の総会では2023年1月とみられていた党大会を1年先延ばしにすると決めた。志位氏は「来春の統一地方選の重要性を考慮した」と説明。総会終了後の会見で、志位氏は強調した。「責任は党を強くすること、そして反転攻勢を直面する統一地方選で勝ち取ることで果たしていく」

 

この記事の中で驚いたのは、京都の党関係者(それも幹部)が公然と党首選挙を呼び掛けたことだ。京都の共産党は中央に忠実なことで知られる。前の衆院選では「野党共闘の実を上げる」と称して京都3区に候補者を立てず、泉健太氏(立憲)の勝利に貢献した。政党リーダーとしての資質に欠ける泉氏が立憲代表に選ばれたのは、偏にこの京都での大勝のお陰だと言われている。京都の共産党は野党共闘の最大の妨害者となった泉氏を支援することで、自らの首を絞めたのだ。

 

どこまで本気かどうか知らないが、とにもかくも志位氏のリーダーとしての正統性を問う声が公然と出てきたのは一歩前進だと言わなければならない。この動きが全国に広がり、党組織刷新の声が大きくなれば、さすがの志位氏も安閑としていられないだろう。統一地方選が大事だから党大会を先延ばしにするなんて口実は、もう誰もが「保身」のためのものだと見抜いている。無駄な時間稼ぎは党組織の疲弊と衰退を加速するだけだ。

 

参院選に大勝し、「黄金の3年」を手に入れた岸田内閣にも最近暗雲が垂れ込めてきた。京都新聞(8月1日)は1面トップで、共同通信社が30、31両日に実施した全国電話世論調査の結果を「安倍氏国葬『反対』53%、国会審議『必要』6割超す」「国葬『反対』政権揺さぶる、旧統一教会問題、野党追及」「内閣支持率急落51%、内閣支持率12ポイント急落」と大々的に報じた。

 

調査では、新型コロナウイルスの感染を抑えられない政府対応への不満が表れ、物価高対応への評価も低調だった。旧統一教会と国会議員のつながりの解明を求める声も大きい。自民党の閣僚経験者は支持率急落の要因を「旧統一教会を巡る問題に国葬も加わって、おどろおどろしい雰囲気を醸し出してしまっている」と分析した。毎日新聞(8月1日)も共同通信世論調査の結果について、「感染が急拡大している新型コロナへの対応、依然続く物価高への対策に加え、説明不足との批判がある政府の国葬実施決定が支持率急落につながった可能性がある」と、同様の見方をしている。

 

今日4日から臨時国会が始まったというが、政府・自民党はとにかく議論封じに徹して3日間で会期を閉じたい意向だ。でも、岸田内閣の閣僚でも岸信夫防衛相が旧統一教会に所属する人物から選挙の際に手伝いを受けたと明かし、二之湯智国家公安委員長が関連団体が18年に開いたイベントで「実行委員長」を務めたと説明し、末松信介文部科学相もパーティー券を購入してもらったことを認め、磯崎仁彦福官房長官が関連団体が関わる行事に来賓として出席するなど、自民党国会議員と統一教会に近いと言われる反共産主義の政治団体「国際勝共連合」との深い関係が疑われている(日本経済新聞8月2日)。

 

今後の世論状況や政局の変化は、これまでの予想を遥かに超えるものになるだろう。一切の既成概念や価値観にとらわれず、与野党の動向を客観的に見つめることが求められる。次の総選挙は案外早いのかもしれない。その時まで国民の誰もが目を凝らして事態の推移を見守るべきだ。(つづく)

〝自滅〟した野党共闘、比例票狙いの各党立候補も不発、泉健太立憲代表はその責任を取らなければならない、岸田内閣と野党共闘(その20)

 6月20日以降、拙ブログは事実上「開店休業」状態だった。連載中の原稿の締め切りが迫っていたこと、阪神淡路大震災の「新長田再開発事業」に関する検証報告のフォローに追われていたこと、〝灼熱地獄〟の京都の暑さに身体が対応できずダウンしたことなど、理由はいくらでも挙げることができるが、最大の理由は「気が進まなかった」ことだ。

 

 事実、参院選がスタートして以来、聞こえてくるのは気が滅入るニュースばかり。各紙の選挙予想を見ても、「自民大勝」「維新躍進」「立憲不調」「共産低迷」といった見出しがズラリと並んでいて、読む気もしない。これでは、最初から勝負が決まっている「田舎競馬」のレース予想みたいなもので、選挙の雰囲気がいっこうに盛り上がらないのも当然だろう。

 

 しかし、与野党が有権者の審判を受ける選挙は〝結果〟が全てである以上、その分析はあくまでも選挙結果(事実)に基づいて行わなければならない。まずは、党派別比例代表得票・得票率の結果である。前回の2019年参院選と比較すると、総得票数は5007.2万票から5302.7万票に5.9%増加した。そのことを前提に、前回からの各党の得票・得票率がどのように変化したかを見よう。

 

【2019年参院選得票(率) 2022年参院選得票(率・ポイント) 増減(率)】

 単位:万票

  総計 5007.2(100%) 5302.7(100%)      △295.5(△ 5.9%)

  自民 1771.2(35.4%) 1825.6(34.4%・▲1.0) △ 54.4(△ 3.1%)

  公明  653.6(13.1%) 618.1(11.7%・▲1.4) ▲ 35.5(▲ 5.4%)

  維新  490.7( 9.8%) 784.5(14.8%・△5.0) △293.8(△59.9%)

  国民  348.1( 7.0%) 315.9( 6.0%・▲1.0) ▲ 32.2(▲ 9.2%)

  立憲  791.7(15.8%) 677.1(12.8%・▲3.0) ▲114.6(▲14.5%)

  共産  448.3( 9.0%) 361.8( 6.8%・▲2.2) ▲ 86.5(▲19.3%)

  れいわ 228.0( 4.6%) 231.9( 4.4%・▲0.2) △  3.9(△ 1.7%)

  社民   104.6( 2.0%) 125.8( 2.4%・△0.4) △ 21.2(△20.3%)

  その他 171.0( 3.4%) 362.0( 6.8%・△3.4) △191.0(△ 3.8%)

 

(1)得票・得票率は、前回に引き続き自民が「ダントツ1位」で1825万票(34%)を獲得した。次いで、784万票(15%)を獲得した維新が、立憲677万票(13%)、公明618万票(12%)を抜いて2位に上がった。国民315万票(6%)、共産361万票(7%)は、いずれも票を減らして見る影もない。

 (2)総得票数は前回から295万票(増減率△6%、以下同じ)増えたが、その増加分は維新293万票(△60%)にほぼ吸収された。減少したのは、公明35万票(▲5%)、国民32万票(▲9%)、立憲114万票(▲15%)、共産86万票(▲19%)である。公明は「体力低下」が原因とされるが、国民、立憲、共産3党の場合は「野党共闘の崩壊」による〝自滅〟が原因だろう。

 (3)野党のだらしなさに愛想をつかした無党派層の票が、れいわ・社民のような少数政党、そして雨後の筍のように出てきたN党や参政党などの諸派にまわった。既成政党とりわけ「ゴタゴタ」を繰り返して野党のイメージを台無しにした玉木雄一郎国民代表や泉健太立憲代表は、その事実を認めて責任を取らなければならない。

 

 玉木・泉両氏は、投開票日の翌日、選挙結果を連合の芳野会長に別々に報告に行ったというが、一体何を話したのだろうか。今回の参議院選で、連合は立憲と国民候補を合わせて55人を推薦したものの、22人しか当選しなかった。このうち、比例代表では、傘下の産業別労働組合の出身者9人が両党に分かれて立候補し、1人が落選した。連合の芳野会長は、記者会見で「非常に厳しい結果になった。推薦した全員の当選という目標を実現できなかったので、責任は重いと思っている。今後、選挙の総括をまとめるなかでしっかり議論していきたい」と述べたという。そのうえで、立憲民主・国民民主両党間の連携が限定的になったことに関連して「両党が大きな塊となり、戦いやすい形に持っていきたいという思いは今も変わらないので、両党への働きかけは続けていきたい」と語った(各紙7月12日)。

 

 「いったいどの面下げて......」と言いたいところだが、自民麻生副総裁やその他幹部としばしば酒席をともにし、自民の選挙ポスターの前の記者会見で「自民との会合は政策実現のため」といけしゃあしゃあとのたまう御仁のこと、今回の国民・立憲の惨敗は痛くも痒くもないのだろう。「共産とは手を組まない=野党共闘からの排除」という公約通り、共産を2割近い得票減(86万票)に追い込んだことで、連合として大満足なのではないか。

 

 一方、泉健太立憲代表もこれに劣らず鉄面皮ぶりだ。泉氏は12日の党執行役員会で、参院選の総括を8月中旬までにとりまとめる方針を明らかにしたものの、自らは〝続投〟することを前提に立て直しを図る考えを表明した。立憲は今回、現職が立った岩手、新潟、山梨で議席を失うなど6議席減の17議席の獲得に終わった。野党第1党の座は辛うじて維持したものの、比例票では維新を約100万票下回った。勝敗を左右する1人区で、野党は4勝28敗の惨敗だった。泉氏はこの日の会合で、敗北に終わった昨秋の衆院選を念頭に「我々にとって、非常に厳しいところからのスタートという戦いだった」と説明し、「歯を食いしばって難局を乗り越えて、もっともっと国民のために働く必要がある」と述べた。この発言に対して、出席者からは辞任要求は出なかったというが、小川淳也政調会長は「今回の敗北は執行部に責任がある。人心の一新を図るべきだ」と主張したという(朝日新聞7月13日)。

 

泉氏に野党第1党を率いる識見も器量もないことは、今回の選挙で白昼のもとに明らかになった。リーダーの識見は「引き際」に発揮されるというものである。自らの器の大きさを客観視できないようなリーダーは、もうそれだけで指導部の任に非ずというべきだろう。泉氏がこのまま立憲代表の席に居座るようでは、立憲の将来はない。8月中旬までの選挙総括をまとめる前に、泉氏がなすべきことは潔く代表の座を降りることである。

 

同様のことは、立憲以上の惨敗を喫した共産にも当てはまる。日本共産党中央委員会常任幹部会は7月11日、例によって「参議院選挙の結果について」との声明を発表した(しんぶん赤旗7月12日、要約)。

「比例代表選挙で、日本共産党は『650万票、10%以上、5議席絶対確保』を目標にたたかいましたが、361万8千票、得票率6.8%にとどまり、改選5議席から3議席への後退という、たいへんに残念な結果となりました。常任幹部会として、こうした結果になったことに対して、責任を深く痛感しています」

「昨年11月の第4回中央委員会総会決定で、私たちは、党員拡大でも、前回参院選時の回復・突破を目標に掲げて奮闘しました。しかし、党勢は前回参院選時比で、党員92.5%、日刊紙読者92.0%、日曜版読者91.4%にとどまりました。私たちは、今回の参議院の最大の教訓はここにあると考えています。どうやってこの弱点を打開していくか。全党のみなさんの知恵と経験に学びたいと思います。どうか率直なご意見・ご提案をお寄せください」 

 

いつもなら、全党の議論を待つことなく常任幹部会の上からの決定を「総括」と称して学習させるのが指導部の常套手段であるが、さすがに今回の結果はそれを許さなかったのであろう。指導部がいくら叱咤激励しても党組織が動かなくなり、結果として得票数も得票率も〝過去最低〟の水準にまで落ち込んでしまったことの衝撃があまりにも大きいからである。前回の参議院選の比較だけでなく、衆院選も含めてここ数回の選挙結果の推移を辿ってみると、まるで「崖から転げ落ちる」ような勢いで共産の得票数、得票率が減少している状況が浮かび上がる(『前衛』2022年2月臨時増刊)。

 

【衆参選挙における共産党比例代表得票数、得票率の推移、2014~2022年】

(単位:万票)

  2014衆 2016参 2017衆 2019参 2021衆 2022参

  得票数  606.2  601.6   440.4  448.3  416.6   361.8

  得票率  11.3% 10.7%   7.9% 8.9%  7.2%  6.8%

 

 その根本的な原因は、常任幹部会声明がいうように〝自力不足〟にあるが、これを克服することは容易なことではない。一つは党組織が著しく高齢化していること、もう一つは若者が「共産離れ」をしていて寄り付かないことだ。共産党の機関紙「しんぶん赤旗」では、連日(1年365日)機関誌拡大、党員拡大などのキャンペーンを続いているが、どれもこれも同じ文句の繰り返しで見るのもうんざりする。疲弊した党組織をいくら𠮟咤激励しても効果がないことはわかっているのに、百年一日の如く繰り返しているのをみると、これ以外の発想や方策はもうないのかもしれない。

 

 常任幹部会が、「今回の選挙結果について深く責任を痛感している」のであれば、「全党のみなさんの知恵と経験に学びたい」などと他人事のように責任転嫁をせず、自らがそれにふさわしい責任を取ることから始めなければならない。せめても志位委員長が長年独占してきたトップの座を清新な指導者に譲り渡し、指導部を一新するぐらいのことがなければ、共産の再生は難しいだろう。また、「戦時共産主義」の残滓ともいうべき「民主集中制=上意下達」の党組織を依然として維持し、90歳を越える超高齢幹部が定年制もなく常任幹部会に居座るようでは、若者の眼には共産は「化石」同然の存在としか映らない。〝魁より始めよ〟が組織改革の鉄則であって、他人に意見を求めて時間稼ぎすることではあるまい。

 

これまでも再三再四、「選挙結果は厳しかったが、政策は間違っていなかった」との同じような口実で、志位委員長がもし責任を取らないようなことが起これば、若者の眼には共産は改革を拒否する「永遠の保守政党」としての烙印を押されるだろう。オールドリベラリストたちも志位委員長の顔は「三度まで」と引導を渡すだろう。

 

赤旗の死亡告知欄には、連日高齢党員の名前が平均して数名掲載されている。年間累計数では千数百名を下ることはないと言われている。生物学的法則を党員魂の喚起で覆すことはできない。指導部はもとより党組織を一新しなければ、共産党は生物学的に〝自滅〟する以外の道が残されていない。(つづく)

「べたなぎ国会」(与野党対決なし)は「きれいな空振り」(内閣不信任案否決)で終わった、立憲民主党の〝あいまい路線〟は墓穴を掘るにちがいない、岸田内閣と野党共闘(その19)

2022年6月15分、第208回通常国会が閉会した。各紙の見出しは驚くほど似通ったものだった。

〇日本経済新聞(6月15日)、「国会、異例の与党ベース、政府提出法案 26年ぶり全て成立へ」「会期中 内閣支持は上昇、決め手欠く野党、『対決型』控える」

〇朝日新聞(6月16日)、「政府提出法案 100%成立、通常国会閉会 26年ぶり」「視点、対決構図崩れ あぐらかく首相」「社説、国会閉幕、参院選へ、言論の府 再生の道は遠く、首相の危機感どこへ、信失う文書費先送り、問われる野党の意義」

〇毎日新聞(6月16日)、「べたなぎ国会 全法案成立、参院選前 与党対決避け、旧文書費先送り 『財布』温存」「社説、通常国会が閉会、ますます議場がかすんだ」

 

原因は2つある。1つは岸田首相の中身のない答弁、もう1つは野党の分断による追及力の不足だ。首相は看板政策の「新しい資本主義」の中身を何度聞かれても、「資本主義をバージョンアップする」と繰り返すばかりで、何をやろうとしているのかさっぱりわからない。おそらく当初は、「アベノミクス」をはじめ安倍政権の経済政策の修正を考えていたのだろうが、元首相の恫喝にあって早々に引っ込めてしまった。おまけに、「敵基地攻撃力」や「防衛費の大幅増額」にも同調する始末、これでは後部座席から行く先々を指示される「お抱え運転手」と変わらない。

 

野党の分断も際立っている。国民民主党は口先では「野党」を名乗りながら、本予算と補正予算の全てに賛成した。もちろん内閣不信任案決議にも反対だった。これなどはもう、立派な「与党そのもの」だ。日本維新の会も政権に加わっていないだけで、政策では自民党右派(タカ派)の安倍元首相の代弁者としての役割を積極的に買って出ている。元首相が言いたいことに尾ひれを付けて拡散する「拡声器」の役割だ。そして、立憲民主党が国会最終盤に単独で提出した内閣不信任案は「きれいな空振り」(立憲若手議員)に終わり、野党第1党の面目は丸つぶれとなった。要するに、野党が野党としての体をなしていないのである。

 

京都新聞は6月16日、「波立ち前―国会発」と題して連載を始めた。第1回は「深まる溝、立民孤立、野党共闘崩れ」というもので、次のような内容が掲載されている。

――150日間にわたる通常国会閉会の高揚感と安堵感が交錯する国会内。「聞く力」を掲げる首相と、「批判ばかり」からの脱却を試みる野党第1党党首の登場で、国民を巻き込む論戦は繰り広げられてこなかった。(略)選挙協力を深めた昨年の衆院選後、両党(立民、共産)の溝が顕在化した。衆院選の敗北を受け党再建を託された泉氏は、支持団体の連合の意向も踏まえ共産と距離を置き続けてきた。

――国会会期末が迫った8日朝、泉氏は立民単独で内閣不信任決議案を衆院に提出する異例の方針を急きょ表明した。立民は等距離の立場を演出するため、共産だけでなく野党各党に賛同を呼びかけた。(略)9日の衆院本会議で共産は不信任案に賛成こそしたものの、提案趣旨を熱弁する泉氏への拍車はまばら。維新に加え、政府の当初予算案に賛成した国民民主党が反対に回り、240票差で否決された。険しい表情で議場を出た泉氏は「立民の姿勢を示せた」と誇ってみせたが、かえって野党第1党の孤立を印象づけた。

 

京都新聞は同じく、「臨戦態勢2020、参院選京都」と題する連載も6月7日から10日まで4回にわたって掲載した。6月8日は「強まる逆風 問われる実績」と題して、「立民」の現状が報告された。だが、その内容は必ずしも芳しくない。

――「守り続けてきた大切な1議席、勝たせていただけないでしょうか」。4日夜、参院選京都選挙区で5選を目指す立憲民主党現職の福山哲郎氏(60)は、事実上の決起集会となった時局講演会で詰めかけた支持者約1千人に深々と頭を下げた。(略)改選数2の京都選挙区では安定した戦いを進めるとみられたが、昨年10月の衆院選で風向きが一変。立民は全国的に共産党を含む野党共闘に踏み込んだが、現有議席を減らす敗北を喫し、福山氏は幹事長を引責辞任した。自身の参院選を占う京都府内の党比例票は約15万9千票とふるわず、自民党、日本維新の会に次ぐ3番手に終わった。

――さらに追い打ちをかけるのが、共に京都の民主党を引っ張った国民民主党の前原誠司代表代行(衆院京都2区)の動きだ。「国民府連としては福山さんに一本化する義理や借りは全くない」。前原氏は立民が進めた共産党を含む野党共闘に批判的で、今年1月には早々に福山氏との決別を宣言。以前から距離を詰めていた維新の新人を推薦する結論を下した。(略)党支持率の低迷に悩む立民の泉健太代表(衆院京都3区)としても、お膝元・京都選挙区で敗れる事態になれば、自身の進退にも直結しかねない。

 

立憲民主党の選挙公約も分かりづらい。読売新聞(6月8日)は、「顔見えぬ立民の苦悩、泉氏 本音は中道志向」との見出しで、中道路線に向かってカジを切れない泉代表の右往左往ぶりを伝えている。

――「何をしたいか、どういう社会を作りたいのか分からない。このままでは参院選を戦えない」。5月17日、国会内で開かれた立憲民主党の常任幹事会で唯一の地方議員メンバーから、泉代表に対してこんな言葉が投げつけられた。

――「自立分散型の経済社会」「環境と成長は調和する定常社会」...。泉が5月20日に発表した社会像「ビジョン22」には、理念先行型の言葉が目立った。記者会見で披露されたイメージ動画では自然風景ばかりが流れ、執行部内からも「コメントのしようがない」とのため息が漏れた。

 

毎日新聞社説(6月10日)も、「『分配』のビジョンを明確に」と注文を付けている。結論的に言えば、「防衛や社会保障など国の重要政策で与党との違いはどこにあるのか。どのような社会を目指すのか。大きなビジョンが見えない」ということだ。理由は、公約に先立ち泉健太代表が主導してまとめた中長期目標は、「公平な税制と再配分で格差と貧困の少ない社会を目指す」と記していたが、公約には盛り込まれず、「分配」の言葉さえなくなったことだ。格差是正が大きな課題になっている中、「分配重視に転換するか、成長重視を続けるか」を明確にすべきだと指摘している。

 

要するに、このような立憲民主党の立ち位置や選挙公約の〝あいまいさ〟の原因は、全て泉代表による「批判型」から「政策提案型」への路線転換に行きつく。野党の本来の役割は、政権を監視するだけでなく、与党に代わる選択肢を示し、争点を明確にすることだ。それにもかかわらず、参院選の目前に控えながら立憲民主党が中途半端な印象から脱却できないことは、この路線転換が有権者の心に訴えるものがなかったことを示している。民主政治が機能するには「強い野党」の存在が欠かせないというが、その存在意義を失った野党は消えるしかない。悲しいことに、立憲民主党はいま、その道を着実に歩んでいる。(つづく)