毎日新聞連載記事〝労組分断〟が明らかにしたもの、「女性」「中小企業」「高卒」がトレードマークの芳野友子連合会長の役割と行き着く先、岸田内閣と野党共闘(その16)

 マスメディアの注目を一身に集めた連合初の女性会長、芳野友子氏の素顔が次第に明らかになってきている。毎日新聞の大型連載記事(5月4~7日)〝労組分断〟は、大手紙では初めて本格的な調査報道に基づく政治記事であり、芳野氏が起用された背景とその後の行動を詳しく分析している。なかでも印象的なのは、連合の歴史に詳しい労働問題の専門家、高木郁郎日本女子大名誉教授の発言だろう(連載第4回)。

 

高木氏は、「昨秋、連合の会長に芳野友子氏が選出された時、どんな印象を抱きましたか」とのインタビューに答えて、こんな発言をしている。

――期待がありました。初の女性、初の中小企業を中心とした産業別組合の出身です。事務局長に選ばれた清水秀行氏も、初の官公労系。これまで大企業の労働組合が中心だった連合に、いっぷう違った存在感をもたらせると思いました。地域共闘、中小共闘、ジェンダー共闘といった弱い立場の労働者の連帯を作り出す可能性を感じました。

 

長年、労働組合との付き合いが深い高木氏でさえがこんな期待を抱いたのだから、これまで大企業経営者と公然と馴れ合う連合幹部を苦々しい思いで見つめてきた者にとっては、それ以上の期待を持ったとしても不思議ではない。連合は変わるかもしれない、変わらなければならないと思ったのは、決して私一人ではなかったのである。

 

 だが、高木氏が「ところが、まだ期待した方向には行っていません。これまでの大企業中小の視点から抜け出せていません」と続けたように、その後の芳野会長の行動は真逆の方向に走っている。今年2月の小淵優子自民党組織本部長との会食を皮切りに、3月には麻生太郎自民党副総裁とは酒食の席をともにするまでにエスカレートした。麻生氏の側近から「芳野氏は日本酒好き」と聞いた麻生副総裁が会談を呼び掛け、春闘のヤマ場の「集中回答日」だったにもかかわらず、芳野氏がそれに応じたのだという(連載第1回)。

 

 呆れるのは、芳野会長ばかりでなく清水事務局長(日教組出身)までが行動を共にしていることだ。連合内部には「参院選までは自民党幹部との会食は控えるべき」と自重を促した幹部もいるようだが、清水事務局長は芳野会長と二階幹事長(当時)との会食を計画するなど、いっこうに自重する気配がない。二階幹事長との会食は結局取りやめになったというが、事程左様に連合と自民幹部との濃厚な接触が常態化しているということだろう。

 

 なぜ、連合は芳野氏を会長に選出したのか。連合の会長にはこれまで、政治的な影響力や労使交渉をリードする力を期待される電機や鉄鋼などの大企業労組の会長経験者が就任してきた。なのに、なぜ芳野氏が抜擢されたのか。毎日新聞はこの点を次のように解説している(連載第1回)。

 ――神津前会長は「女性」「中小企業」「高卒」が芳野氏を選んだポイントだったと明かす。だが、連合会長という「火中の栗」を拾う人がいない中で、「初の女性会長という話題性で乗り切ろうとした」(関係者)という見方は根強い。

 

 この指摘は実に鋭い。「女性」「中小企業」「高卒」というトレードマークは、高木氏が言うように一見「弱い者の味方」のように映る。連合幹部の特権的イメージを象徴する「男性」「大企業」「大卒」に代わって、これとは逆のイメージを兼ね備えた芳野氏が起用されたのは、確かに話題性に富む。だが、これで世間を乗り切れるなんて思うのはいささか甘すぎるというものだ。このイメージはあくまでも〝外形標準〟的なものであって、中身をあらわすものではない。事実、芳野氏は相当な強か者で、「誰もが初の女性会長を引きずり下ろす悪者になりたくない」のをよくわかっていて、「好き勝手にやっている」と言われている(連載第1回)。

 

 連合の自民への接近は、全国的にも広がっている。日刊ゲンダイ(4月27日デジタル)は、「5.12新潟知事選で『自公国』+連合がタッグ…“同じ構図”が今後の選挙の定番に?」と次のように報じた。

――新潟県知事選(5月12日告示、29日投開票)で自民・公明両党が推す現職の花角英世知事(63)について、国民民主と連合新潟も「支持」することを決めた。新潟には世界最大規模の柏崎刈羽原発がある。知事選の大きな争点が原発再稼働問題だ。「自公国連」の枠組みは、強力に原発再稼働を推し進めていく原動力になる。これに対し、野党第1党の立憲民主党は、なんと独自候補を擁立できなかった。新潟は本来、野党系が強い地域なのに不戦敗というのだ。脱原発派では、新潟経済同友会副代表幹事で新人の片桐奈保美氏(72)も立候補を表明。共産党と社民党はすぐに推薦を決めたが、ここでも立憲は及び腰だ。

 

新潟知事選挙の構図については、私も柏崎刈羽原発の再稼働問題を審議する有識者会議のメンバーから別の場所で同じことを聞いた。現職知事は再稼働問題に関する審議が進むことには極めて消極的で、審議は実質的に休止状態にある。その一方、知事選に勝利すれば、県民の承認が得られたものと見なして「ゴーサイン」を出す魂胆だそうだ。関係者の間では、「2期目を狙う現職に自公だけでなく連合までついてしまったら勝ち目がない」ので、立憲は情けないことに自主投票になると言われている。

 

京都でも、別の形で立憲の苦戦が際立っている。5月7日の各紙は、「国民、『立憲と決別』決定的」(毎日新聞)、「京都選挙区、推薦維持で決着、参院選、維新と国民民主」(朝日新聞)など、維新と国民が中央レベルでは相互推薦を撤回したにもかかわらず、京都選挙区では国民が維新候補を推薦することが決まったと伝えている。両紙は、5月6日の日本維新の会の馬場伸幸共同代表と国民民主党の前原誠司選挙対策委員長の記者会見の模様を以下のように伝えている。

――ただ、馬場氏と前原氏はこの日の会見で「非自民・非共産」の重要性を強調するばかり。文書での政策協定は交わさないといい、「日本の課題と処方箋を議論し、問題意識もほぼ共有する」(前原氏)などと口頭での一致にとどまった(朝日新聞)。

――京都での維新候補の推薦については、前原、馬場両氏が中心となり、国会内で政策勉強会重ねてきたことを挙げ、前原氏は「維新とは共通のベースがある」と説明。馬場氏も「紙は交わさず、互いの信頼関係で国民民主の力を拝借する」と語った(毎日新聞)。

 

国政選挙での政党間の候補推薦が、明文化された政策協定も結ばず、口約束で決まるというのは極めて異例のことだ。維新はかねがね立憲や共産などの野党共闘を「野合」だと批判してきたが、口約束だけで国民の推薦を受けるのは、そこに明文化できない何某かの「裏取り引き」があるからだろう。巷間の噂によれば、前原氏は自民との連携に走る玉木雄一郎代表との路線対立から、「第二保守党」の設立を目指す維新との連携に踏み切ったと言われている。国民民主の前原一派と維新が「第二保守党」を設立するためには、まず立憲を「野党第一党」の座から引きずり降ろさなければならない。そして、その第一歩が参院選京都選挙区での議席獲得というわけだ。

 

京都は、立憲代表の泉健太氏(衆院京都3区)、前幹事長の福山哲郎氏(参院京都選挙区)の〝牙城〟だ。これまで幾多の対立を含みながらも、連合京都の仲立ちで辛うじて分裂を免れてきた立憲と国民がここにきて遂に袂を分かつことになった。勢いのある維新と前原一派が合流すれば、選挙結果はどちらに転ぶかわからない。立憲は、連合と国民の両方から刻々と足元を崩されている。これに維新が加わるとなると、日本の政局は一気に流動化する。(つづく)

維新と国民が京都・静岡の参院選両選挙区で相互推薦、連合推薦の(共産を除く)野党共闘は崩壊に向かう、岸田内閣と野党共闘(その15)

参院選京都選挙区にある私の家には、このところ維新のビラがよく入るようになった。これに危機感を覚えたのか、立憲公認候補の福山哲郎参院議員のビラも時々入るようになった。これに対して自民と共産のビラやチラシはあまり目につかない。各政党の運動量を反映しているのだろうか。

 

このことを象徴するような選挙が最近あった。4月10日投開票の京都府知事選と府議補選(京都市北区)だ。知事選は、長年の慣行となっている「オール京都=共産を除く自民・公明・立憲・国民の相乗り選挙」から推薦された西脇隆俊知事が、前回選挙から10万票余り上乗せして50万5千票(得票率67%)で圧勝した。共産推薦の梶川憲氏(総評議長)は、府民との「草の根共闘」を旗印に戦ったが、6万6千票減らして25万1千票(得票率33%)で半分にも届かなかった。

 

しかし、京都府民の関心が集まったのは、京都市北区で行われた府議補選(被選挙数1、候補者数4)の選挙結果だった。知事選の方は選挙前から勝敗が決まっているとあって関心はそれほど高くなかったが、自民、立憲、共産、維新の4党が候補を立てた府議補選は激しい戦いとなり、注目を集めていた。結果は、維新新顔が1万1千票で当選、自民新顔が9千400票、共産新顔が8千100票、立憲元職が6千300票の順となった。

 

立憲元職候補は、福山参院議員の元秘書を務めた女性候補で最有力候補だった。選挙中は福山氏が全面支援し、衆院京都3区選出の泉衆院議員(立憲代表)や知名度の高い蓮舫参院議員、辻本元衆院議員なども応援に入った。それでいて4人中最下位に沈み、維新の半分余りしか得票できなかった。私は、維新候補がトップになり、立憲元職が最下位になったのは、前原氏が府連会長を務める国民が維新支持にまわったからだとみている。そうでなければ、これほど立憲票が減り、維新票が伸びた理由の説明がつかない。知事選と同時に行われた府議補選は、事実上参院選の前哨戦として戦われ、「維新・国民連合」が勝利を収めたのである。この模様を、産経新聞(4月12日)は次のように伝えている。

――立民は昨年の衆院選比例代表で、府内の得票が自民、維新に次ぐ3位にとどまった。今回は自民元府議が公職選挙法違反事件で辞職したことに伴う補選だったにもかかわらず後れを取った。参院選京都選挙区もこの4党による対決が予想されており、立民の危機感は強い。関係者は「維新が勢いづき、自民と共産にも負けた。党の先行きを示すような衝撃的な惨敗だ」と強調。ベテラン議員も「ショックもショック、大ショックだ。これはもう補選レベルの話ではない」と嘆いた。

 

それから10日後の4月20日、国民の前原誠司代表代行と維新の馬場伸幸共同代表が国会内で会談し、夏の参院選を巡り京都選挙区(改選数2)と静岡選挙区(改選数2)で双方の候補者を「相互推薦」することで(予定通り)合意した。維新の馬場代表は「身を切る改革にご同意いただいて一緒にやっていこうということになった。京都と静岡両方で当選することにわが党も全力を挙げる」と話し、前原氏は「(選挙協力は)基本的な価値観、基本政策が一致していないとだめ。権力は勝ち取るもの。京都と静岡の推薦は政権交代の基盤をつくるその第一歩」と話した。維新は京都選挙区を「最重点選挙区」と位置付け、4月15日には大阪ガス社員の擁立を発表。一方、静岡では独自候補を立てず、国民会派に所属する無所属現職を推薦する(京都新聞4月21日)。

 

これに対して、哀れなことに泉立憲代表はなすところを知らない。泉氏は4月15日の記者会見で、「全国的にみても国民が維新を応援するケースはどこにもない。京都だけというのはかなり考えにくい選択ではないか」と述べていたばかりだ(京都新聞4月16日)。だが、こんなノーテンキな発言で前原氏の動きを止められるはずがない(もし本気でそう思っているとしたら、これは「政治オンチ」とい言いようがない)。実際のところ、泉氏には「打つ手」もなければ事態を打開する知恵も決意もなかったのだろう。毎日新聞(4月21日)は、立憲の動揺ぶりを次のように伝えている。

――国民民主党と日本維新の会は20日、夏の参院選京都選挙区(改選数2)と静岡選挙区(同)について、候補者の相互推薦に合意した。京都では国民民主が維新新人を推薦する。京都は立憲民主党の泉健太代表の地元。福山哲郎前幹事長が守る議席の維持に向け、国民民主の支援を当て込んでいた立憲内には衝撃が走り、他の選挙区での連携にも暗雲が垂れこめた。泉氏は15日の記者会見で国民民主について「長く、京都でも中央でも連携してきた経過がある。最大限生かしたい」と話していただけにショックは大きい。20日、記者団に「長い間一緒に歩んできた。対応が分かれるのは残念だ」と戸惑いを隠さなかった。21年の静岡選挙区補選では無所属候補が立憲、国民民主両党の推薦を得たが、今夏の参院選では立憲県連が推薦見送りを決め、既に足並みは乱れている。国民民主は、21年衆院選で議席を伸ばした維新の勢いを取り込みたい考えだ。立憲は独自候補を擁立するかが焦点になる。国民民主と維新は、他の選挙区で相互に推薦することについては否定的だ。ただ、立憲内からは「国民民主からの宣戦布告だと捉えた」との声が漏れ、両党の連携に影響が広がる可能性がある。

 

 一方、連合の芳野友子会長は着々と自民との連携を深めている。自民は18日、党本部で開いた「人生100年時代戦略本部」に芳野会長を招き、社会保障政策に関する意見を聞いた。芳野氏は女性や非正規雇用の労働環境の改善を訴えたというが、そもそも男女賃金格差を容認し、非正規雇用を激増させてきた自民に対していったい何をお願いするというのか。聞いて呆れるほかないが、ご本人は「お呼びいただければ(今後も)意見交換していきたい」と臆面もなく語ったという。毎日新聞(4月19日)は、その背景を次のように解説する。

 ――再配分を重視する岸田政権の「新しい資本主義」と連合の基本方針は親和性が高く、賃上げなど具体的な施策実現に向け、(連合が)与党とも連携を強化する狙いがある。自民側も連合への接近を強める。芳野氏は昨年10月の会長就任後、衆院選で共産党と選挙協力した立憲の批判を続けており、自民中堅は「連合の中は既に割れている。票を引きはがすチャンスだ」と話す。麻生氏は17日、福岡市内の講演で「連合に『政策を実現するのは自民党が一番でしょう』と、正面から申し上げている」と述べ、自信をのぞかせた。連合幹部は、芳野氏の会合出席について「目的はあくまで自民に連合の政策を訴えることだ」と語り、政権交代可能な政治体制を目指す従来の方針と変わったわけではないと強調する。

 

 連合幹部がこんな子供だましの言い分をいけしゃあしゃあと述べ、芳野会長がそれに輪をかけたマンガもどきの行動を続けていることを、立憲はいったいどうみているのだろうか。泉代表は翌日19日、芳野会長と会談して意見を交わしたというが、会談後、芳野会長は記者団に例によって「立民、国民民主党と連携して戦っていく」との決まり文句を強調したという(日経新聞4月20日)。だが、維新と国民の相互支援体制が広がり、政策的な連携が深まるようになると、連合推薦の「野党共闘」は崩壊する。夏の参院選の結果は、自民圧勝、維新・国民連合の躍進、立憲・共産の惨敗で終わる公算が大きい。さて、泉代表はどうする。このまま迷走を続けて自滅するのか、それとも一念発起して路線変更に踏み切るのか――。地元京都では「愛想つかし」「期待薄」の声が強いがもう少し様子を見ることにしよう。(つづく)

自民・国民の連携が進む一方、野党共闘は依然として膠着状態、このままでは野党は参院選を戦えない、岸田内閣と野党共闘(その14)

 ロシアによるウクライナ侵攻が日々加速する中で、メディア空間はウクライナ一色に染まったままだ。連日連夜ウクライナの惨状が目の前に映し出されれば、誰もが不安にさいなまれ焦燥感に駆られるのは当然のことだ。しかし、安倍元首相のように情勢に付け込んで「核共有」を打ち上げ、「敵地攻撃力」を拡大解釈し、この際改憲と軍備拡張を一挙に実現しようとする右派勢力の動きも活発化している。注目すべきは、岸田政権がこんな緊迫した情勢の下で「新しい資本主義」など国策の基本課題について何らの具体策を示さないまま、コロナ対策とウクライナ支援を軸に高支持率を維持していることだ。この間の状況を伝える各紙記事を分析しよう。

 

日経新聞(2022年4月3日)は次のように言う。「岸田文雄政権が発足してから4月4日で半年を迎える。内閣支持率は一貫して5割超を維持してきた。新型コロナウイルスの『第6波』で緊急事態宣言を回避し、ロシアのウクライナ侵攻で危機対応に注目が向かう。感染再拡大の懸念や具体的な経済政策を示すことが夏の参院選に向けた関門になる」。主な内容は以下のようなものだ。

(1)コロナ下では感染者数の増減と政権の支持率が連動する傾向がある。菅政権は感染拡大に伴い緊急事態宣言を数多く発令したが、岸田政権では「蔓延防止等重点措置」を適用して宣言を回避した。記者団の取材に対しても丁寧に対応するスタイルを前面に出す。

(2)ロシアによるウクライナ侵攻への対応も支持率が上向く要因になった。主要7か国(G7)をみると、英国やフランス、ドイツの首脳も支持率が上昇傾向にある。ウクライナ侵攻を巡る外交や安保政策の積極姿勢に関心が集まる。有事にはリーダーの決断が前面に出て、内政への批判に矛先が向かいにくい。

(3)3カ月後には7月10日投開票を見込む参院選が控える。乗り越えれば大型国政選挙が最長で2025年までない。首相が選挙を気にせずに政権運営でまとまった時間を手にできる可能性がある。

 

言葉を選ばずに言えば、岸田政権は基本的な政策を打ち出すことなく小出しに施策を並べ、批判を受ければその都度修正を繰り返し、「その場任せ」「その場限り」の対応に終始しているだけだ。それにもかかわらず、高支持率を維持しているのは、ロシアによるウクライナ侵攻を〝漁夫の利〟として利用しているからなのである。しかしこの間、国内政治は野党共闘の分断に向かってその勢いを増しつつある。

 

毎日新聞(4月2日)は、これを裏付けるかのように「自民党が、夏の参院選山形選挙区(改選数1)で独自候補の擁立を見送る調整に入ったことで、2022年度当初予算案に賛成するなど与党への接近を図る国民民主党との事実上の選挙協力が進むことになる」と報じた。同選挙区は、2016年の前回選挙で舟山康江氏が「山形方式」といわれる非自民勢力の結集に成功し、自民候補に12万票差で大勝した選挙区だ。2021年も知事選でも野党系無所属候補が勝利した。今回、舟山氏は国民民主から現職として立候補予定だというが、自民幹部は「渡りに船」として独自候補の擁立を断念したという。「国民民主とは、共に予算に賛成し政策協議もしている関係。選挙だけは別で戦うと、と言えるのか」というのがその理由だそうだ。

 

一方、朝日新聞(4月2日)は、国民民主党の動きを次のように伝えている。「夏の参院選へ国民民主党は4月1日、小池百合子東京都知事が特別顧問の地域政党『都民ファーストの会』と候補者を『相互推薦』する覚書を交わした。国民民主は、都民ファの荒木千陽代表を参院東京選挙区で推薦する。東京で2人を擁立する立憲民主党への影響は大きいとみられる。他の選挙区でも国民民主と立憲の候補者調整は見通せず、互いに不信感を強めている」。国民民主はなぜ都民ファーストと連携するのか。その背後には連合の影が見え隠れする。

(1)国民民主は、最大の支持団体である連合の民間産別内候補4人が比例区で立候補予定だが、支持率低迷で全員当選は見通せない。玉木雄一郎代表は「小池人気」にあやかって「東京で比例100万票を目標にしたい」と意気込む。4人が都民ファーストの推薦を得れば比例票の上積みが期待できるからだ。

(2)都民ファーストは、国民民主と共闘し連合の支援を受けられれば「前回参院選で立憲民主に入った票が半分以上入ってくる」ともくろむ。そうすれば、悲願の国政進出が実現するからだ。

(3)これに対して、東京選挙区で2人擁立を続ける立憲にとっては、国民民主と都民ファーストの相互推薦は「連合の支援が股裂きになり2人目の当選は厳しくなる」との観測だ。

 

連合は、表向きは立憲と国民民主の共闘を求めているが、本音は自民や都民ファーストとの連携で立憲の政治基盤を切り崩すことにある。そのためには、維新と手を組むことも十分あり得ると考えられている。国民民主の前原誠司選対委員長は、朝日新聞のインタビューに答えて次のように言う(朝日同上)。

――維新をどう評価しているのですか。

「維新も野党勢力だ。私は維新ともよく話をするが、彼らは政権交代で自民に代わるものをつくろうという意思を非常に強く持っている。より協力を密にしていきたいと思っている」

――連合内にも異論があるが。

「連合にとって大切な労働法制に対する感覚は違う部分がある。だが、それさえ議論して一致点を見出せればいい。連合は維新を敵だとは言っていない」

 

前原氏は、自らが国民民主の府連会長を務める京都選挙区においても、京都新聞のインタビューで維新との連携を匂わせている(京都3月9日)。

――参院選京都選挙区には、旧民主党や旧民進党で一緒だった立憲民主党の福山哲郎氏が立候補を予定している。

「過去は過去。繰り返すが、複数区は原則擁立するということでやっている。ただ、都民ファーストの会と協力する東京のようなこともありうる」

――京都では日本維新の会と連携するのか。

「国会では共同で法案を出し、憲法審査会では共同歩調を取るなどかなり協力関係を深めている。参院選についても意見交換しているが、何か具体的に決まったことがあるわけではない。ただ、『中道保守改革勢力』の力を合わせていくことになれば、日本維新の会は同じ範疇に入る。虚心坦懐に話し合いをしているところだ」

 

このところ、日本維新の会は意気軒昂だ。3月27日は大阪市内で党大会を開き、夏の参院選で改選6議席からの倍増以上を目指す活動方針を採択した。また政権交代に向け、次期衆院選で「野党第1党」を獲得する目標も掲げた。松井代表は党大会に先立つ常任役員会で、参院比例選の獲得議席で立憲民主党を上回る目標を確認し、馬場伸幸共同代表は記者会見で「比例票で立民を上回れば、国民の多くが『野党のリーダーに維新がなってほしい』という意思表示だ」と強調した(読売3月28日)。

 

いずれにしても、維新が国民民主や都民ファーストと組んで「野党第1党」の座を目指していることは本当だろう。維新や国民民主が「野党」を名乗り、「第1党」の座を占めるようなことになれば、立憲民主党の姿は見えなくなり事実上消滅する。野党共闘はいま、「風前の灯」となりつつある。(つづく)

〝連合の将棋のコマ、泉立憲代表〟のままでは、野党は参院選を戦えない、岸田内閣と野党共闘(その13)

 2022年度当初予算が3月22日に成立した。一般会計の歳出規模は過去最大の107兆円超、それでいてほとんど論戦らしい論戦もないままに戦後4番目の速さでの成立となった。野党第1党の立憲民主党が予算追及のイニシアチィブを取れず、しかも「盟友」の国民民主党が賛成に回ったからだ。毎日新聞(3月23日)は、「自民に近づく国民民主、もはや野党とは言えない」とする社説を掲げた。論旨は以下のようなものだ。

 (1)国民民主は立憲民主と同様に旧民主党を源流に持つ。自民に代わり政権を担える2大政党制を目指してきたはずだ。昨年の衆院選は一部選挙区で他の野党と候補者調整を行い、野党陣営の一角だった。それが半年も経たずに与党に接近するのは、投票した有権者への裏切りではないか。政権に全面的に協力しながら、野党を名乗るのは理解できない。

 (2)国民民主は衆院に続き、参院でも新年度当初予算に賛成した。当初予算は全ての施策の裏付けとなるのだから、賛成票を投じることは政権運営全体を認めたに等しい。また、政策協議という形で事前審査に加わることは国会審議の形骸化に手を貸すことになり、政権監視という野党の役割を果たせない。もはや閣外からの協力に舵を切ったと言うほかない。

 (3)自民が国民民主との協議に応じる背景に、今夏の参院選に向けて野党を分断する狙いがあるのは明白だ。玉木代表は「我々は明確に野党だ」と繰り返すが、実際の行動はその言葉からかけ離れている。

 (4)参院選は32の1人区が全体の勝敗を左右する。野党が候補者を一本化し、自民と1対1の構図をつくることが重要だ。国民民主の姿勢が変わらないのであれば、立憲は関係を見直すべきであろう。

 

 明確な論説だ。当然、泉代表をはじめ立憲幹部もこのような批判が寄せられていることは百も承知だろう。それでいて、泉代表は明確な立場をいっこうに表明しない。朝日新聞(3月23日)は、その背景を次のように解説する。

 ――2ケ月間の予算審議は与党ペースで進んだ。政権を追い込むどころか、衆院採決で賛成に回った国民民主党が与党と政策協議も始め、野党の分裂ばかりが際立つことになった。(略)ただ、予算案に賛成した国民民主を批判し、夏の参院選での連携見直しにも言及してきた立憲の泉健太代表はこの日、公の場でのあいさつで国民民主について一切触れなかった。

――泉氏は21日の報道陣の取材に「国民民主は繰り返し『自分たちは野党である』と述べている」と態度を軟化させた。国民民主との参院選1人区での候補者一本化について「実現に全力を尽くしたい」と語り、協力を継続する意向を示した。「国民民主とは協力しないといけないところもある。どちらにもできるようにということ」。立憲執行部の一人は、態度が軟化した背景を解説する。

 

その一方で泉立憲代表は3月18日、共産、れいわ、社民の3党首と国会内で個別に会談し、参院選1人区での候補者調整を申し入れている。ただし、この日の記者会見で、市民連合を介した共通政策合意について問われた泉氏は、「共通政策を作るかどうかは両方の考えがあるという状況で進めていく」と明言を避けた。こうした状況を踏まえのか、志位共産党委員長はこれまで主張してきた共通政策や政権枠組み合意についての話題は避けたという(朝日3月19日)。これではまるで、「キツネとタヌキのだまし合い」のような会談ではないか。

 

片や芳野友子連合会長の方は、相変わらず「進軍ラッパ」を吹き続けている。毎日新聞のインタビュー(3月15日)では言いたい放題で、「前会長の神津里季生氏と同じことしか言っていない。そもそも連合の労働運動は、自由で民主的な労働運動を強化、拡大していくということから始まっている。その点で共産とは考え方が違い、相いれない。共産と共闘するかしないかは政党が判断すべきことであるが、共産と共闘する候補については推薦できない、あるいは支援できないということもあり得る。連合本部としては『共産との共闘はできない』ことは譲れない一線だ」と意気軒昂だ。また、与党と連合との関係については、「連合はこれまでも、共産を除く主要政党との間で政策・制度に関する意見交換や要請を行っている。政策を実現するためには、自民党、公明党を含め、政党に協力を求めることは当然だ。神津前会長と同様、私も是々非々でやっていく」と公言している。

 

「政策を実現する」ためか、芳野会長は3月16日夜、麻生自民党副総裁の招きで日教組出身の清水事務局長とともに会食の席に連なり、「今後の連携」について意見交換したという(産経3月17日)。こんな振る舞いは連合内部での批判を受けないのだろうか。日教組出身の事務局長までが同席しているのだから「構わない」というのだろうか。志位共産党委員長もまた、これまで「連合にもいろいろある」として連合への批判は一切口にしていないが、自民最高幹部と酒席をともにするような会長と事務局長が率いる連合に不信を抱かないのであろうか。

 

参院選を3か月後に控えて、野党共闘の雰囲気はいっこうに盛り上がらない。おそらく立憲民主は、国民民主との手を切ることなくこのままズルズルと関係を続けていくのだろう。〝連合の将棋のコマ〟と化した泉代表に国民民主との関係を清算する決断を求めるのは「森に入って魚を求める」のと同じことだ。その一方、内閣支持率はウクライナ情勢の影響を受けて上昇傾向にある。このままでいけば、「政策協定もアイマイ」「政権協力もアイマイ」で「アイマイづくし」の野党共闘は、有権者から見捨てられること確実だろう。誰もが馴れ合う野党共闘なんて存在しない。筋を通さない政党が必ず消えていくように、野党共闘もいまその岐路に立っている。(つづく)

〝国家レベルの労使協調路線〟が着実に加速している、連合初の女性会長起用の裏にあるもの、岸田内閣と野党共闘(その12)

 小さな記事だったが、2022年2月26日付の日経新聞に〝国家レベルの労使協調路線〟が着々と加速していることを窺わせる記事が載った。「自民、連合との協調明記、運動方針案 参院選にらみ接近」というもの。そこには「自民党と連合をめぐる最近の動き」が時系列で列挙されている。これを見ると、芳野氏の連合会長就任から僅か数カ月足らずで連合が自民党に急接近し、これまでにない〝ハイレベルの協調関係〟が形成されつつあることがわかる。

 

 連合は神津里季生前会長が2017年、小池百合子東京都知事や前原誠司民進党代表と秘密裏に画策して民進党を解体し、「希望の党」(第2保守党)への合流を企てた。しかし、この画策は小池知事の「排除発言」が災いして破綻し、枝野幸男氏らの立憲民主党結成につながった。こんな苦い経験に懲りたのか、今度は「表向き」で政界再編をやろうということで、連合初の女性会長を表に立てて次のステップに乗り出したのである。

 

 芳野氏は高卒で中小企業に入社し、連合の労組幹部になった異色の経歴の持ち主だ。神津前会長など大企業労組出身の大卒男性幹部とは一味違ったイメージを打ち出せるということでトップに抜擢されたのであろうが、その活躍ぶりは連合の「期待」以上のものがある。日経の「連合と自民党をめぐる最近の動き」でその活躍ぶりを見よう。

 

〇2021年10月、連合会長に初の女性会長、芳野友子氏が就任

〇同、衆院愛知11区でトヨタ自動車の労働組合が候補者擁立を見送り(自民党候補を支援)

〇同12月、芳野氏が自民党の茂木敏充幹事長らと会談

〇2022年1月、岸田文雄首相が連合の新年交換会に出席

〇同2月、芳野氏が自民党の小淵優子組織運動本部長らと会食

〇同、国民民主党が2022年度予算案での採決に賛成

 

なおここでは漏れているが、この他にも就任早々(2021年10月)、岸田政権肝いりの「新しい資本主義実現会議」のメンバーにも選ばれている。財界首脳や東大教授らと肩を並べる「ハレの舞台」だから、さだめし「新しい資本主義=労使協調路線による経済政策」実現のために頑張る決意を固めていることだろう。

 

 本題に戻ろう。自民党が2月25日、2022年の運動方針案をまとめたという。それによると、これまで野党の後ろ盾となってきた労働組合の中央組織、連合との関係を〝協調する〟と明記したことが目を引く。方針案は今年の参院選を「最大の政治決戦」と位置づけ、「連合ならびに友好的な労働組合との政策懇談を積極的に進める」「多くの働く人々の共感が得られるよう、わが党の雇用労働政策を引き続きアピールする」と記している。運動方針は3月13日に都内で開く党大会で採択される(日経、同)。

 

 自民党が連合との協調路線に舵を切ったのは、連合が野党共闘分断の前線部隊として動いているからだ。芳野氏はその最前線で野党分断の旗を振り、自民党の期待に応えている。連合は2月17日、夏の参院選の基本方針を発表し、共産党を念頭に「目的や基本政策が大きく異なる政党と連携・協力する候補者を推薦しないという姿勢を明確にする」と明記した(各紙2月18日)。共産党を拒絶する理由は、「連合の労働運動は自由で民主的な労働運動を強化、拡大していくというところから始まっている。その点で共産とは考え方が違い相いれない。現実的にも連合の組合と共産党系の組合は職場、労働運動の現場で日々競合ししのぎを削っている」というものだ(毎日インタビュー2月3日)。

 

芳野氏はまた17日の記者会見で、「参院選は比例代表、選挙区ともに個人名を徹底することが基本だ。人物重視、候補者本位で臨む」「参院選の政策協定について「(連合と立憲、国民の)3者で結ぶのが一番望ましい」「立憲民主党や国民民主党は支援政党として明記しないが、ただし連携はする」としたうえで、自民党と連携する可能性に関しては「ありません」と明確に否定していた。しかし、その舌の根も乾かない17日夜、芳野会長と連合幹部が、自民党で団体との窓口となる部門の責任者を務める小渕組織運動本部長らと東京都内の日本料理店で密談していたことが判明した。岸田政権発足や連合新体制発足に伴う小渕氏と芳野氏の顔合わせが目的だったいうが、「表向き」の行動と併行して「裏取引」も行われていることが明らかになったのである(JNNニュース2月18日)。

 

 国民民主党は2月22日、衆院本会議で野党としては異例の2022年度予算案採決の賛成に踏み切った。ガソリン価格高騰の歯止めをかけるためだというが、こんな些末な理由で100兆円を超える本予算案に賛成するというのだから前代未聞のこと。自民党の方が却って(表向き歓迎しているものの)呆れたに違いない。各党は事実上の「与党入り」だと受け止めているが、驚いたことに芳野会長は2月24日、玉木国民民主党代表と会談し、「連合は予算に反対しているわけではない。理解している」と国民民主党の行動を支持したという(日経2月25日)。要するに、連合と自民党の一連の裏取引ですべてが決定され、それに沿って国民民主党が動くという構図が出来上がっているのである。

 

 さすがに見かねたのか、朝日新聞社説(2月26日)は、「国民民主党 野党の役割捨てるのか」との見出しで厳しい警告を発している。その一部を紹介しよう。

 「先の衆院選で玉木氏は、首相の経済政策は具体性に欠けると指摘。安部・菅政権下の不祥事を念頭に、『ウソやごまかしの横行する政治』を改めようと訴えた。野党共闘とは距離をおいたが、候補者調整に応じ、他党の支援を受けて当選した議員もいる。与党へのすり寄りは、野党としての国民民主に期待して投票した有権者への背信行為というほかない」

 「今年夏の参院選の帰趨を握る1人区で、与党と1対1の構図をつくる野党共闘の行方はますます不透明になった。国民民主には、6年前に野党統一候補として議席を獲得し、今回改選を迎える現職も複数いる。玉木氏は一体、どんな立ち位置で臨むつもりなのか」

 

 国民民主党の予算案採決においてとった行動は、前原国民民主党代表代行のいる京都でも波紋を広げている。国民民主党の選挙対策委員長も兼ねる前原氏は予算本会議でも「体調不良」を理由に欠席した。立憲民主党も「対岸の火事」とは見ていられない党内事情を抱えている。政治は「一寸先は闇」なのである。(つづく)

泉健太氏を代表に選んだ立憲民主党の悲劇、数合わせ「野党第1党」の終わりの始まりか、岸田内閣と野党共闘(その11)

 昨年11月末、立憲民主党代表に選出された泉健太氏の動きがさっぱり見えない。共産党との選挙協力は「白紙」だと言いながら、その一方で参院選での「野党候補の一本化」は進めると言う。共産との選挙協力を白紙にすれば、参院選での野党候補の一本化などあり得ないにもかかわらず、それを平気で言う魂胆がわからない。泉代表の掲げる「野党候補一本化」が、共産が独自候補を降ろして立憲を支援することを意味しているのなら、交渉は絶対に成り立たない。交渉は“ギブ・アンド・テイク〟が鉄則だからだ。

 

 この間の事情について各紙がしきりに報じているが、「共産、参院選へいらだち=立民『共闘白紙』、協議見通せず」とする、最近の時事通信記事(2月7日)がわかりやすい。

 ――夏の参院選に向けて、共産党は立憲民主党へのいらだちを募らせている。立民の泉健太代表が共闘を「白紙」にすると言及、共産党が求める政党間協議にも応じないためだ。共闘態勢の構築を急ぎたい共産党には焦りの色も浮かぶ。「協議なしに一方的に白紙にするという議論は成り立たない」。共産党の志位和夫委員長は2日のツイッターで泉氏発言に不快感をあらわにした。共産党が問題にするのは先月31日の泉氏の発言。泉氏はBSフジの番組で「(共産党との)これまでの連携は白紙にする」と述べていた。昨年の衆院選で共産党は立民などと選挙協力を実施。立民、共産両党は政権獲得時の「限定的な閣外からの協力」で合意していた。このため、共産側は「泉氏発言は一方的にほごにするもので受け入れられない」(幹部)と反発。両党の話し合いでの「決着」を求めている。

 ――しかし、立民は政党間協議に慎重だ。先月27日に公表した衆院選の総括で、共産党との連携について「想定していた結果は伴わなかった」と明記。「閣外からの協力」に関しても「慎重に対応する必要がある」と記載した。支持団体の連合も「共産との関係はあり得ない」(芳野友子会長)などと決別を求めている。立民側は政党間協議を先送りしており、泉氏は同じBS番組で27日の立民党大会までは応じられないとの考えを示した。党内には「今回は党本部で決めずに、地方に任せた方がいい」(幹部)との声があり、地方組織レベルの協議にとどめたい方針とみられる。   

――これに対し、共産党は早期協議を迫る立場を堅持。同党幹部は「立民党大会まで待てない」と嘆き、別の幹部も「党本部の合意がないと地方に説明できない」といらだちを隠さない。煮え切らない立民に共産党は改選数1の1人区で独自候補擁立を進める。群馬、福井、鹿児島に加え、4日には奈良で候補擁立を発表した。ただ、共産党としては立民を揺さぶるのが狙いで共闘を崩したくないのが本音。ある幹部は協議すらままならない現状に「普通のカップルなら別れている」とこぼした。 

 

   2020年7月、立憲民主党は「野党第1党」の座を取り戻すため、国民民主党に対し、両党を解散して「新設合併方式」で新党を結成すること、新党名は「立憲民主党」とし、結成大会で代表選挙を実施することなどを申し入れた。協議は難航したが、結局、玉木雄一郎氏や前原誠司氏など旧希望の党系グループは合流せずに国民民主党に残留し、9月には枝野幸男氏を代表とする新しい立憲民主党が発足した。どういう思惑があったのか知らないが、泉健太氏はこのとき京都選挙区で長年仕えてきた前原氏とは行動を別にし、立憲民主党に参加した。ひょっとすると、泉氏は立憲民主党内の「トロイの木馬」としての役割を期待されていたのかもしれない。

 

 泉氏が立憲代表に選出されたことは意外だった。「平均点3・5」の男と評されてきた泉氏には、野党第1党のリーダーにふさわしい識見も風格もない。ただ「若い」というだけではどうにもならないのに、なぜ泉氏が代表に選ばれたのか。そこには、「枝野党」的な旧来のイメージを変え、「野党第1党」としての立憲民主党を新しく演出したいという議員共通の意識が横たわっていた。そして、「イメチエン」の材料として泉氏が起用されたのである。

 

 しかし、この選択は誤りだった。もともと「中道保守=保守第2党」を目指して前原氏とともに行動してきた泉氏には、「野党第1党」を担うだけの資質も識見もなかった。「批判だけの政党」から「提案する政党」への脱皮を掲げたものの、百戦錬磨の自民党には相手にもされず、「提案だけの政党」となって国民の失望を買うことになった。挙句の果ては、連合芳野会長の言いなりになって右往左往する始末、みっともないことこの上ない。立憲民主党の支持率は依然として低迷をきわめ、いまや維新に追い越されるまでに低落している。泉代表の存在は、まさに“風前の灯〟といっても過言ではない。

 

 参院選を前に、京都では前原誠司氏の動きが活発化している。前原氏は民進党代表時代に小池都知事や神津前連合会長らと結託して希望の党を立ち上げ、民進党を解党に追い込んだ張本人である。その後不遇をかこっていたが、今では国民民主党代表代兼選対委員長の地位を利用して、ふたたび政界再編の策動に乗り出そうとしている。前原氏は今年1月、京都新聞のインタビューに答えて次のように語った(1月14日、要約)。

 ――野党は今、中道保守の改革勢力を結集させる千載一遇の好機を迎えています。昨年の衆院選では、立憲民主党と共産党の協力に対して厳しい判断が下りました。共産は自衛隊を違憲とし、日米安全保障条約の廃棄を掲げ、「天皇制」についての考え方も全く異なる政党です。その共産と立憲が政権奪取後の「限定的な閣外からの協力」で合意して選挙を戦ったことについては、国民が票目当ての協力にすぎないと見透かしていたのでしょう。

 ――これから求められる自民党に代わる政党像は、改革志向でありながらも外交・安全保障政策は現実路線でなければなりません。国民民主党は衆院選で共産とも自民とも戦い、筋を通して議席を伸ばしました。中道保守の改革勢力を結集し、その仲間とともに政権交代を目指すスタートラインに立ったと思っています。われわれは衆院選後に、立民、国民民主、共産、社民の4党が法案審議などで連携を図るための「野党国会対策委員長会議」の枠組みから離脱しました。いい出だしができているのではないでしょうか。

 ――同じく衆院選で議席を伸ばした日本維新の会とは連携できています。改革マインドは共通しており、協力関係をより深化させたいと思っています。今年は夏に参院選がありますから、維新とはさまざまな意見交換を行い、選挙協力していくべきだと考えています。立民に関しても、昨年11月の代表選で、共産との協力を進めてきた前執行部から、関係の見直しを訴える泉健太新体制に代わりました。共産を外した中道保守の改革勢力が大きな固まりをつくる上で、地合いは非常にいいと思っています。

 

 前原氏はその後さらに踏み込み、夏の参院選で京都選挙区(改選数2)から5選を目指す立憲民主党の福山哲郎前幹事長への支援を巡り、「国民京都府連としては福山さんに一本化する義理や借りは全くない」と述べ、現状では共闘する考えがないことを明らかにした。その上で、国会活動での連携を確認した日本維新の会については「政策的に最も近い政党だと思っている」との態度を表明している(京都新聞1月22日)。

 

 日本維新の会の藤田文武幹事長は2月4日、京都市内で記者会見し、夏の参院選京都選挙区(改選数2)を巡る国民民主党との連携について「共倒れにならない方がいい。何らかのすみ分け、連携の可能性はゼロではない」と述べ、状況によっては選挙協力も辞さない考えを示した。維新は昨秋の衆院選で、京都府内の比例票を自民党(約33万8千票)に次いで多い約26万6千票に伸ばした。参院選の重点区に掲げる5都府県のうち京都を最重点地区と位置付け、「2月末から3月中には候補者を選出したい」と述べた(同、2月5日)。

 

 京都新聞の取材によれば、維新は今夏の参院選比例代表候補として、国民民主党の井上一徳元衆院議員を擁立することが分かった。元防衛省幹部の井上氏は2017年衆院選で京都5区から旧希望の党公認で立候補し、比例復活して1期務めた。無所属で臨んだ昨年の衆院選は京都5区で2万1904票にとどまり落選した。井上氏は2020年秋から国民民主党の衆院会派に所属し、国民京都府連で特別幹事に就いていたが、2月7日までに辞職した(同、2月8日)。

 

 維新の参院選京都選挙区(改選数2)の候補者はまだ決まっていないが、もし国民民主党と日本維新の会が選挙協力するような事態になれば、福山哲郎前立憲幹事長の再選は極めて危うくなる。立憲にとっても泉代表の地元である京都選挙区で前幹事長の福山氏が維新・国民候補に敗れるようなことになれば、その影響は1選挙区にはとどまらない。京都での敗北が引き金となって「野党第1党」のイメージが大きく揺らぎ、立憲の“終わりの始まり〟が一気に加速するおそれが充分あるからである。(つづく)

賃上げなど労組本来の活動に取り組まず、なぜ野党分断に狂奔するのか、与党と経済団体の下僕になった連合に未来はない、岸田内閣と野党共闘(その10)

 昨年10月の衆院選を前に、各紙は一斉に日本の年収や平均賃金の現状を取り上げた。日本経済新聞(2021年10月16日)は、1面トップで「日本の年収、30年横ばい」と以下のように報じた。

 「衆院選(31日投開票)に向けた論戦が本格的に始まった。経済政策での重要な論点は成長と格差是正のどちらに軸足を置くかだ。与野党は生まれた富をいかに『分配』するかを公約で競うが、日本の平均年収は横ばいが続く。格差よりもまずは低成長を抜け出し、分配のためのパイを拡大するほうが優先度が高い」

「OECDがまとめた年間賃金データを各国別に比べると、日本は30年間ほぼ横ばいだ。購買力平価ベース(20年米ドル換算)の実質系列で30年前と比べると、日本は4%増の3.9万ドル(440万円)止まりだったのに対して、米国は48%増の6.9万ドル、OECD平均が33%増の4.9万ドルと大きく伸びた」

 

 朝日新聞(同10月20日)も「30年増えぬ賃金、日本22位、上昇率は4.4%、米47%、英44%」との見出しで、同様の指摘をしている(要約)。

 「日本経済をどう立て直すのかは、衆院選の大きな争点だ。様々な指標を外国と比べると、低成長にあえぐ日本の姿が見えてくる。安倍政権が始めたアベノミクスも流れはほとんど変えられず、1990年代初めのバブル崩壊以来の『失われた30年』とも呼ばれる低迷が続いている。賃金も上がっていない。経済協力開発機構(OECD)によると、2020年の日本の平均賃金は、加盟35国中22位で3万8514ドル(424万円)。この30年で日本は4.4%増とほぼ横ばいだが、米国47.7%増、英国44.2%増などとの差は大きい。賃金の額も隣国の韓国に15年に抜かれた」

 「賃金が上がらないのはなぜなのか。一つは、非正規労働者が増えていることだ。企業は人件費が安く、雇い止めしやすい非正規の労働者を増やしてきた。90年ごろは雇用者の2割ほどだったが、いまでは4割近くにのぼる。賃金が安い非正規の割合が増えたことで、平均賃金が押し下げられたというわけだ。(略)90年代のバブル崩壊が残した記憶も関係している。日本総研の山田久副理事長は『バブル崩壊以降、労働組合は雇用維持を優先し、賃上げを要求しなくなった』と、交渉力の低下を訴える。戦後に5割を超えていた労組の組織率は2割を切る。欧州のような産業別の労組と異なり、日本は企業ごとに組合がある『企業内組合』が一般的。『経営陣とは対等に更新しにくい』という側面もあるという」

 

 賃金が上がらなくなった「失われた30年」は、決してバブル崩壊だけが原因で形成されたのではない。連合が発足したのが1989年、それから30年余、一貫して賃金が上がらなくなったのである。非正規労働者が爆発的に増えてきたのも、連合の発足以来だ。連合は大企業の正規労働者の雇用が維持されることを条件に、日本全体の非正規労働者化を黙認した。その結果、大企業の積立金はうなぎ登りで増えているにもかかわらず、それが労働者に「分配」されなくなった。

 

連合の歴代会長は全て民間大企業出身の労働貴族ともいうべき存在で、経営陣とは「ツーカーの関係」だ。自動車、電力、繊維をはじめとする労使協調路線の民間大企業労組が主導権を握るなかで、企業内組合の「慣れ合あい路線」が連合全体に広がり、経営者の裁量の枠内に賃金がコントロールされるようになってきたのである。

 

 それだけではない。「左右の全体主義との対決」を掲げる連合は、これまで「民社党の別働部隊」と言われてきたように、革新統一戦線の分断に熱意を注いできた。歴代の連合会長は経営者と(サロンで)高級ブランデーを飲む間柄であり、政権幹部とは「政策要望」という名目で毎年会食を重ねる親しい関係だ。大企業への特権的優遇措置は経営陣とともに推進する一方、国民に負担を強いる消費税増税には賛成するという文字通りの「階級的」労組幹部なのである。

 

 図に乗った連合幹部は、最近になって政界再編にも口を出すようになった。神津前会長は、小池都知事の主導する「希望の党=保守第2党」の旗揚げを前原民進党代表とともに秘密裏に画策し、民進党内のリベラル派を「排除」する形で民進党の分裂を導いた。連合内部では立憲民主党を支持する官公労と国民民主党を支持する民間労組の対立が深まる中で、その収拾に手を焼いたのか、神津氏は遂に会長の座を退くことになった。そして、その後を託されたのが「新顔」の芳野会長である。

 

 芳野会長は、連合初の「女性会長」である。だが、その「階級的」立場は神津前会長とまったく変わらない。むしろ就任後の「力量」を試されているからか、前会長にも増して前のめりの姿勢が目に付く。政治経験が未熟で裏工作に慣れていない分だけ、表舞台での活躍に力が入るのだろう。また、「女性だから大目に見てもらえる」という思い込みがあるのかもしれない。とにもかくにも言うこと為すことが露骨でドギツイ。世の顰蹙(ひんしゅく)を買っていることが分からないらしい。

 

その極め付きが、立憲幹部を絶句させた今年1月21日の連合の参院選基本方針案だった。連合は夏の参院選に向け、連合が支援政党を明記せず、「共産党と連携する候補者を推薦しない」などとする基本方針案をまとめたのである。「人物本位・候補者本位で臨む」として支援政党が明記されていない参院選の基本方針案は21日、連合の加盟組合に示された。朝日新聞(1月22日)は、その背景を次のように解説している。

「連合は1998年に旧民主、民政、新党友愛、民主改革連合の4党が合流し新たな『民主党』が結成されて以来、民主党の流れをくむ政党を支援してきた。『希望の党』への合流をめぐり、選挙直前に民進党が分裂した2017年衆院選を除き、国政選挙では支援政党と政策協定を結んでおり、今回の方針は異例だ。神津里季生会長時代、20年に旧立憲民主、旧国民民主両党などが合流した際は、連合は新たな立憲を『総体として支援』する方針を示した。立憲が進めた『野党共闘』に不快感を示す芳野友子会長へと連合執行部が変わり、立憲を中心とした支援のあり方が白紙になった形だ」

 

 連合の激しい政治介入に対して、立憲民主党は表立った反論を表明していない。むしろ泉健太代表は、連合路線を後ろ盾にして共産党との公約を破棄し、国民民主党と連携して参院選に臨む方針を打ち出している。立憲が昨年の衆院選についてまとめた総括案(1月24日)では、共産党との連携を理由に小選挙区の投票先を変更した割合が投票全体の3%強、比例代表では約5%と分析し、「小選挙区で一定の成果はあったものの、想定していた結果は伴わなかった」として、「全体的な戦略の見直し」が必要だと総括していた(各紙1月25日)。

 

 ところが、この総括案は25日の常任幹事会では了承が見送られ、27日になって「昨年の衆院選を敗北」と位置付け、戦略を見直す方針を示した総括が発表された。毎日新聞(1月28日)は次のように伝えている。

 「立憲民主党は27日、昨年の衆院選を敗北と位置付け、戦略を見直す方針を示した総括を発表した。25日の常任幹事会では了承が見送られていた。共産党との連携が敗因の一つだと分析する原案の記述を一部削除した。夏の参院選を前に共闘への賛否が党内で割れていることに配慮したが、あいまいさが残る内容となった。 焦点となったのは、小選挙区や比例代表で、有権者が共産との連携を理由に、投票先を立憲から他党に変更したと分析した部分。原案では党の独自調査に基づき、1万票以内の接戦で負けた31小選挙区で投票全体の3%強、比例では約5%が投票先を立憲から別の党に変えたとする調査結果を示し、『接戦区の勝敗に影響』『一定層の離反への影響が読み取れる』と分析した」

 「しかし参院選を控え、共産との『1人区』での候補者の一本化調整に響くと懸念する声が相次いだため、これらを削除。『一本化の一定の成果は前提としつつ、より幅広い集票につなげることが必要』と共闘の評価があいまいな表現に修正した。2017年衆院選と比較して、一本化の成否を示す際も『(共産票との)合算通りの成果を得られなかった』と分析しつつ、『小選挙区全体で9議席増となったことは評価できる』との前向きな評価を加えた。一方、立憲が政権を獲得した場合に、共産から『限定的な閣外からの協力』を得るとした合意については、『選挙戦に影響を与える結果となった。今後はより慎重に対応する必要がある』と指摘した部分は原案のまま残した。党としての敗因は『存在感を示しきれず、期待値は維新(日本維新の会)に集まる結果となった』と明記した。修正した総括の文案は、26日の持ち回りの常任幹事会で了承された」

 

 この総括は、毎日新聞が指摘するようにまさに「曖昧模糊」とした内容だ。だが、問題は連合が突き付けた「共産党と連携する候補者を推薦しない」とする参院選基本方針に対してどう対処するかだろう。連合の言いなりになって国民民主党化するのか、それともその呪縛から離れて政治的に独立した革新政党になるのか、立憲はその分岐点に立っている。労働者の立場に立たず、労使協調路線を掲げて経営者の下僕として行動する連合との選挙協力は、立憲民主党が連合とともに国民から見放される歴史的な契機になるだろう。