堺市長選は、旧保守(大阪自民)が新保守(極右・橋下維新)と本格的に対決する最初の首長選挙になるかもしれない、堺市長選にみる日本の政治構造の変化、堺市長選の分析(その11)、改憲勢力に如何に立ち向かうか(41)

 今日9月15日は、全国注目の的の堺市長選の告示日である。あいにくの雨模様で出陣式は気勢を削がれるかもしれないが、その政治的意義が減じることはない。旧保守(大阪自民)が新保守(極右・橋下維新)と本格的に対決する堺市長選の結果は、日本の政治構造を変える大きな契機になるかもしれない可能性を秘めているからである。

 大方のマスメディアの論調は、堺市長選を「自民の分裂選挙」といった脈絡で捉えている。確かに、橋下氏は自民党大阪府連(以下、大阪自民という)の推薦で知事に当選しながら、その後、大阪自民を分裂させて(裏切って)地域政党大阪維新」を結成した。橋下氏は、自分の支援で堺市長に当選した竹山氏を「裏切り者」呼ばわりしているが、(それを言うのであれば)大阪自民からすれば、橋下氏こそが「最初・最大の裏切り者」だということになる。

 世俗的に言えば、「裏切り者」vs「裏切り者」の戦いは“骨肉の争い”になるのが普通だ。橋下維新と大阪自民の対決だけなら、堺市長選をそういう観点から捉えることも可能だろう。自民が圧倒的な政治力で地域を支配していた保守全盛時代には、保守勢力の内紛や分裂は日常茶飯事の出来事であり、とりわけ地域の覇権が懸かる首長選挙は、「自民vs自民」「自民vs保守系無所属」の“骨肉の争い”が通常の姿だったのである。

 だが、今回の堺市長選は違う。最大の理由は、共産が勝手連的に竹山氏の支援に踏み切り、実質的には「旧保守=大阪自民」と「革新リベラル=共産」の選挙共闘が形成されているからである。橋下氏がタウンミーティングで「竹山氏は共産に担がれている」と攻撃するのは、正確ではないものの、ある意味では実態を突いている。共産の支援がない限り、大阪自民と民主の連合だけでは竹山氏の勝利はおぼつかないからである。

 竹山氏や大阪自民が意識しているかどうかは別にして、「旧保守=大阪自民」と「革新リベラル=共産・諸派」の選挙共闘が堺市長選において実質的に成立していることの政治的意味合いは大きい。自民党が安倍政権のような「(極右的)新保守」に変質していくにつれて、これまで「国民政党」だと自負していた自民党の体質が急変し、「保守」の本流であるはずの「旧保守」が自分の居場所を失うような事態が全国各地で出現してきているからである。

 「沖縄自民」は、米軍基地問題で安倍政権と政策を同じくすることができない。同調すれば、沖縄自民が消滅するからである。「福島自民」は、安倍政権のように原発再稼働を容認するわけにはいかない。容認すれば、福島自民の存在基盤がなくなるからである。「北海道自民」がTPP問題で安倍政権と対決していることは誰もが知っている。すでに全国各地では「安倍政権=新保守」と「地元旧保守」との対立が激化しており、「革新リベラル=共産・諸派」との連携が進んでいる。それが大阪では堺市長選という形であらわれているだけのことなのである。

 安倍政権が、米軍基地問題原発再稼働問題、TPP問題などで現在の政策を取り続ける限り、おそらくそれほど遠くない時期に“自民分裂”が現実の問題になるのではないか。自民党内の「旧保守」が新党を結成して「(極右的)新保守」に対抗しない限り、米軍基地問題原発再稼働問題、TPP問題など国策に直接かかわる政治問題は絶対に解決できないからだ。今回の堺市長選はその魁(さきがけ)であり、「今日の堺」で起こっていることは「明日の日本」を予言するものでもある。堺市長選の行方を最大の関心を以て見守りたい。(つづく)