党組織の空洞化問題をスルーして「希望ある未來」を大いに語るのか、赤旗元旦特集記事「激動の世界 希望ある未來、志位議長が大いに語る」を読んで、共産党はいま存亡の岐路に立っている(その49)

 全国紙でも元旦の特集記事は分量が多いだけでつまらないものが多いが、今年の赤旗元旦特集記事「激動の世界 希望ある未來、志位議長が大いに語る」のインタビューは、大仰でしかも場違いな感じを抱いただけだった。国民生活に関わる記事をほとんどボツにして編集された6頁に亘る大特集は、志位議長のご高説をただ単におうかがいするというもので、政治評論としてもさして読みごたえのある内容ではなかった。そこには、国民の声よりも志位議長のご意向を忖度する赤旗編集局の体質が露骨に表れていて、読むのが辛くなったというのが率直な感想だ。

 

 そればかりではない。共産党が目下直面している深刻な党組織の空洞化問題すなわち志位氏が委員長に就任して以降の党勢後退に関しても何ひとつ言及がなかった。また、昨年10月の総選挙の結果についても枕詞として僅か数行が割かれているだけで、党中央の総選挙に対する「結果責任」を棚に上げ、素知らぬ顔でこれからの「決意」を述べただけだ。要するに、このインタビュー記事は、自分(党中央)にとって都合の悪いことは全てスルーして、志位氏が得意とする政党外交の成果を吹聴しただけのことであって、所得減と物価高に悩む国民生活や国民の気持ちなど「どこ吹く風」の扱いだったのである。以下は、そのことを証明する冒頭の1節である。

 

 ――昨年10月の総選挙は悔しい後退となりました。教訓をしっかりと明らかにし、都議選、参院選では必ず前進に転ずる決意を述べたいと思います。

 

 ――昨年を振り返っての強い実感は、一言で言いますと、情勢の大激動のなかで、党綱領と科学的社会主義、そして党大会決定の生命力が躍動しているということです。党大会決定では、「自民党政治の全体が末期的な状況に陥っている」と述べ、腐敗政治、経済無策、戦争国家づくり、人権後進国、あらゆる面で自民党政治が出口なしの政策破綻に陥っていることを暴き出しましたが、そのことは総選挙での自公過半数割れという国民の審判によって証明されました。共産党と「赤旗」の奮闘で情勢が一歩前に大きく動きました。

 

 ――党大会決定では、東アジアの平和構築をはかる党の「外交ビジョン」をさらに発展させることを決め、4月17日、「東アジア啓和宣言」を発表し、この「提言」をもって国内でもアジアでも欧州でも対話と交流を行ってきましたが、どこでも私たちの「提言」が歓迎され、響き合ったことはうれしいことです。

 

 ここでは「党大会決定」が何度も引用され、自分はそれに従って行動していることが強調されている。また党大会決定は、情勢が大激動するなかで党綱領と科学的社会主義とともに「生命力が躍動している」と認識されている。これらの一節は、自分の行動が時代の風に即したものであり、世界でも歓迎されていることを主張するための前段として位置づけられていて、図らずも志位氏の党活動に対する基本認識をあらわすものとなっている。つまり、目下の日本共産党にとっては東アジアの平和外交を推進することが第一義的に重要であり、それ以外は「その他の課題」として片付けられているということである。

 

 だが、政党外交の重要性は否定しないまでも、それが有効に働くのは当該政党がその国において国民的支持を受け、国の外交政策に対しても一定の影響力を持っていることが前提になる。国政政党としての実力がなければ海外では誰にも相手にされないし、行っても無駄足に終わることが多い。そのことを考えれば、〝党組織の空洞化問題〟(党活動の中核を担う世代が少なく、党中央が肥大化し、組織の空洞化が進んでいる状態)が深刻化している現在、事態を放置して党外交に現(うつつ)を抜かすことなど物事の順序を取り違えているとしか言いようがない。元旦特集記事が党組織の空洞化問題に焦点を当て、党内外の多様な討論のきっかけをつくるのであればまだしも、党外交の成果を志位議長に能天気に語らせるのは場違いもいいところではないか。

 

 わけてもこのインタビュー記事で不思議なのは、志位氏がこれほど頻繁に党大会決定を持ち出しながら、党勢拡大に関する党大会決定については何ひとつ触れようとしないことである。志位氏は党大会決定が「生命力が躍動している」と言っているが、もしそれが正しければ、党組織がこれほど長期にわたって後退し続けていることなどあり得ない。実態はその逆であり、党大会決定が「生命力を枯渇している」からこそ党勢後退が続いているのである。机上の空論として「共産主義と自由」や「希望ある未來」を説くのもよいが、党組織の空洞化という現実から目を背けて幾ら未来を説いても国民の耳には届かないし、党支持者や党員の心を動かすこともできないだろう。

 

 志位議長が語らなかった第29回党大会決定は、第30回党大会(2年後)までに第28回党大会現勢(党員27万人、赤旗読者100万人)を必ず回復・突破し、2028年末までに党員と赤旗読者を第28回党大会時比3割増(党員35万人、赤旗読者130万人)にすることを決定していた。

 

 ――第30回党大会までに第28回党大会現勢27万人の党員・100万人の「しんぶん赤旗」読者を必ず回復・突破する。党員と「しんぶん赤旗」読者の第28回党大会時比「3割増」35万人の党員、130万の「赤旗」読者の実現を2028年末までに達成する。第28回党大会で掲げた青年・学生、労働者、30代~50代の党勢の倍化、この世代で10万の党をつくることを党建設の中軸にすえ、2028年までに達成する。1万人の青年・学生党員、数万の民青の建設を2028年までに実現する。そのためにすべての都道府県・地区・支部が、世代的継承の「5カ年計画」と第30回党大会までの目標を決めやりとげる。

 

 この方針を達成するため、2024年7月末までに(1)毎月2万人以上に働きかけ、2千人以上の党員を迎える、(2)毎月1200人の日刊紙読者、6000人の日曜版読者の増勢をはかる、(3)党員拡大の6割、7割を青年・学生、労働者、真ん中世代で迎える――という方針も決定されていた。だが、その後の党勢推移はどうか。赤旗各月の報告によれば、党大会から1年を経過した現段階の党勢現勢は以下のようになっている。

 

    〇1月:入党447人、日刊紙1605人減、日曜版5380人減、電子版94人増

 〇2月:入党421人、日刊紙1486人減、日曜版5029人減、電子版74人増

 〇3月:入党488人、日刊紙947人減、日曜版6388人減、電子版28人増

 〇4月:入党504人、日刊紙74人増、日曜版135人減、電子版72人増

 〇5月:入党477人、日刊紙111人減、日曜版564人減、電子版70人増

 ○6月:入党514人、日刊紙537人減、日曜版3498人減、電子版59人増

 〇7月:入党648人、日刊紙350人増、日曜版467人増、電子版67人増、

 〇8月:入党375人、日刊紙119人増、日曜版398人減、電子版58人増、

 〇9月:入党334人、日刊紙455人増、日曜版613人増、電子版11人増、

 〇10月:入党213人、日刊紙2006人減、日曜版3212人減、電子版309人増

 〇11月:入党211人、日刊紙1254人減、日曜版49162人減、電子版159人増

 〇12月:1月3日現在、未公表

 〇2024年11か月合計:入党4421人(月平均400人)、日刊紙1254人減、日曜版4万9162人減、電子版159人増

 

 この実績が示すものは、毎月2千人以上の入党者を迎えるはずの党員拡大目標が400人(5分の1)に止まり、毎月7200人の読者増勢を図る赤旗拡大目標が昨年11月末現在では5万人減になっているという厳しい現実である。つまり、党勢拡大に関する党大会決定はいまや完全に破綻しているのであって、その方針を抜本的に是正しなければ党勢の維持すらも難しくなり、共産党の「希望ある未來」はないと言ってよい。

 

第29回党大会(2024年1月)で公表された党勢現勢は、第28回党大会(2020年1月)時党員数27万人、赤旗読者100万人、4年間の入党者数1万6千人(年平均4千人)、死亡者数1万9814人(年平均5千人)、2024年時党員数25万人、赤旗読者80万人というものだった。ここから、27万人+入党者数1万6千人-死亡者数2万人-離党者数1万6千人=25万人との計算式が導ける。入党者数に匹敵する離党者数(未公表)が恒常的に発生しており、これに死亡者数が加わって党員数が4年間で2万人減少し、それとともに赤旗読者20万人が減少したのである。また、党員の年齢構成が公表されていないので詳しくは分からないが、年々死亡者数が増えていることからも党組織の高齢化が著しく進んでいることはまず間違いない。すでに死亡者数が入党者数を4千人(年平均1千人)上回っており、このままでいけば入党者数よりも死亡者数が多い「自然減」が今後も継続し、これに離党者による「社会減」が加わって恒常的な党勢後退が進むことが予測される。

 

第29回党大会以降の11か月間の入党者数は4421人、12月分を入れても恐らく5千人には届かないだろう。死亡者数を過去4年間と同じく年平均5千人、離党者数も同じく年平均4千人と考えると、この1年で党員4千人減、赤旗読者5万人減となり、このままでは1年後に予定されている第30回党大会までに党員27万人、赤旗読者100万人を回復・突破することは難しい。また若い世代の入党者が少ないことから、党組織の高齢化がますます加速し、党活動の中核を担う人材が枯渇して党勢後退の悪循環から抜け出せない。

 

 2021年衆院選の共産党比例得票数は416万6千票、得票率7.25%、2022年参院選の比例得票数は361万8千票、得票率6.82%だった。当時は党員26万人余、赤旗読者100万人近くを擁していたにもかかわらず、400万票前後しか得票できなかった。今年の参院選は、さらに高齢化した党勢(党員24万人程度、赤旗読者75万人程度)で選挙戦をたたかわなくてはならず、しかも得票数は650万票、得票率10%以上を目指すというのである。この現実は、志位議長の「共産主義と自由」の理論、党外交の成果を以てしても如何ともしがたい事態だと言わなければならない。1月10日に中央委員会総会が開かれるというが、そこでどのような方針が打ち出されるのか注目したい。(つづく)