トランプ抱きつき安倍政権は、世界で孤立し、国民の支持を失うだろう、「アメリカ・ファースト」(アメリカ第一主義)を叫ぶトランプ大統領に対して「日米同盟は不変の原則」を強調する安倍首相は、「ジャパン・セコンドリー」(日本は二の次)を誓う目下の同盟者だ、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(8)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その39)

 トランプ米大統領の就任式と同じ1月20日、安倍首相は通常国会冒頭の施政方針演説で、日米同盟はわが国の外交・安全保障政策の機軸であり「不変の原則」だと強調した。トランプ大統領が就任演説で同盟関係については一切触れず、自国の利益第一しか言わない姿勢にヨーロッパ各国首脳は悉く否定的反応を示したというのに、安倍首相ひとりが西側諸国のなかでトランプ大統領に同調し、「日米同盟は不変の原則」だと強調したのである。これはトランプ大統領のいう「アメリカ第一主義」を事実上認め、日本は目下の同盟国として「アメリカの二の次」に付き従うことを事実上表明したもので、見苦しいことこの上ない。日本国民の一人としても恥ずかしい限りだ。

 安倍首相は昨年11月、大統領選に勝った直後のトランプ氏の私邸を訪ねて会談し、「同盟は信頼関係がなければ機能しない。トランプ氏はまさに信頼できる指導者だと確信した」と天まで持ち上げた。その直後に安倍政権が妄信するTPPからアメリカの離脱表明を突き付けられて面目を失ったにもかかわらず、まだ性懲りもなく「日米同盟は不変の法則」と言うのだから、アメリカ大統領はいかなる人物であっても「信頼できる指導者」だと持ち上げる公式が出来上がっているのだろう。これは「鹿」を見て「馬」と言うのと同じことだ(鹿さんには申し訳ない言葉だが)。

 考えても見たい。トランプ大統領が就任演説直後にホワイトハウスのホームページで発表した基本政策は、「オバマケアの見直し」「気候行動計画の撤回」「移民規制のための国境での壁造り」「力による外交政策」など、地球環境や国際社会の平和と安定を脅かすものばかりだ。毎日新聞のワシントン特派員は、「理念なき実利追及強調」と題して次のような見解を伝えている(2017年1月22日)。
 ―米共和党ドナルド・トランプ新大統領は20日の就任演説で、持論の「米国第一主義」を政権運営の核心に据えると強調した。超大国としての崇高な理念や理想を語った歴代大統領とは違い、一切の修辞を捨て、利己的な実利だけを追求する考えを示した。米国が国際社会において「最大多数の最大幸福」を追求しないと宣言したことは、世界を揺さぶる大きな転換点となるに違いない。

 多くのアメリカ国民は、リーマンショック以来(中間階級でさえも)深刻な格差社会のなかで苦しんでいる。人種差別や移民差別の病根は深く、その傷跡は広がるばかりで癒える気配もない。国民皆保険を目指す「オバマケア」(医療保険制度改革)は、底辺層が貧困と格差から脱出するための第一歩であり、必要最小限のセーフティーネット(命綱)だった。現に2千万人もの国民がオバマケアによって初めて生活の安心を手に入れ、病気の不安から解放されたばかりだったのである。その医療保険制度の見直しを、トランプ大統領大統領令第1号として署名した。まるで寒風の下で病人の布団を無理やりに引きはがすような「血も涙もない仕打ち」ではないか。

こんな人物を安倍首相は「信頼できる指導者」だと持ち上げ、「日米同盟は不変の原則」だと強調するのである。日米同盟が「不変の原則」であるなら、安倍政権はこれからトランプ政権と歩調をそろえ、トランプ大統領の意に従うことにならざるを得ない。トランプ大統領から同盟関係を見直すと言われれば、通商貿易の2国間交渉でも、在日米軍駐留経費の負担割合でも日本は全てアメリカに譲歩を迫られることになり、その負担は全て国民のツケに回されることになる。日本の主権や国民の利益を主張できないような安倍政権の(売国的)本質が、いよいよ国民の前に仮借なく暴かれるようになるのである。

トランプ大統領の支持率は40%程度で戦後の歴代大統領の誰よりも低い。「日米同盟は不変の原則」だとして、そのトランプ政権に抱きつき運命をともにする安倍政権は、早晩トランプ政権に振り回されて世界から孤立し、国民の支持を失うだろう。ちょうど日本の株価がアメリカの株価に連動して変動するように、トランプ支持率の低下は安倍政権の支持率低下に直結し、トランプ政権の孤立と安倍政権の行き詰まりは同時並行的に進行するだろう。

安倍首相は通常国会冒頭の施政方針演説で「未来」という言葉を20回以上も連発したという。彼のいう「未来」とは安倍政権の未来のことであり、悲願とする憲法改正を実現する未来を意味するのだろう。だが安倍政権の未来は、皮肉にもトランプ政権の誕生によって断たれ、トランプ政権の衰退とともに消滅する運命にある。「日米同盟は不変の原則」は「トランプ政権と安倍政権の一蓮托生の原則」を意味し、トランプ政権による政治経済の混乱は直ちに日本の政情や市場に波及するからである。

 もはや安倍政権は国内政治向けの「アベノミクス」を売り物にして、国民を騙し続けることはできない。アベノミクスの「未来」はトランプ政権のTPP離脱表明によって命運を断たれ、さらにはNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉が始まってメキシコからの自動車輸出に関税がかけられるようになれば、日本の自動車産業は一転して恐慌に陥る。その時に安倍政権に残された政策にいったい何があるというのか。残るは非正規労働やパート労働の膨大な不安定就労と広範な国民の生活不安だけではないか。安倍政権の「終わりの始まり」が漸くいま始まり、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めたのである。(つづく)