森友学園との交渉に当たっていた近畿財務局職員(上席国有財産管理官)が自殺、安倍政権の国政私物化がついに犠牲者を生み出した、立憲民主を軸とした新野党共闘は成立するか(17)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その104)

1週間前の3月2日、朝日新聞の1面トップに「森友文書 書き換えの疑い、財務省、問題発覚後か、交渉経過など複数個所」とのスクープ記事が掲載された。財務省森友学園との国有地取引の際に作成した決裁文書の内容と、昨年2月の問題発覚後に国会議員らに開示した文書の内容に違いがあり、森友学園との具体的な価格交渉に関する箇所や「本件の特殊性」「特例的な内容となる」といった核心的部分が削除されていたというのである。

そして今日3月9日、朝日新聞はまたもや1面トップで「森友文書 項目ごと消える、貸付契約までの経緯 売却決済調書7ページから5ページに」との新たな疑惑を報じた。2016年の売却契約時の文書では1ページあまりにわたって記されていた「貸付契約までの経緯」、すなわち財務省理財局長の承認を受けて特例的な契約を結ぶ経緯の項目がその後の文書ではすべて消されているというのである。朝日が指摘する契約当時の文書と国会に開示された文書の主な相違点は、以下の3点である。

(1)「事案の概要」を記した第1項目では、「学園から早期に本件土地を買い受けたいとの要請を受けて、価格等について協議した結果、学園が買い受けることで合意した」との内容が、「学園から早期に本件土地を買い受けたいとの申し出があり、売払申請書の提出があった」という記載に変っている。
(2)「貸付契約までの経緯」を記した第4項目では、学園から「借り受けて、その後に購入したい」との要望があり、近畿財務局が「本省理財局長に相談したところ(中略)学園の要請に応じざるを得ないとの結論になり、貸付について検討」したこと。また、10年以内の売買を約束した貸付契約が「特例的な内容となる」として、理財局長の承認を得たことなどが記されていたが、それらが項目ごとそっくり無くなっている。
(3)第5項目の「本件売払いに至る経緯について」は、前項目が無くなったので第4項目に繰り上がり、かつ「売払価格を示し、学園がその金額に納得できれば(中略)損害賠償等を行わない」との学園側の提案に触れた部分や「学園の提案に応じて鑑定評価を行い価格提示を行うこととした」の部分が無くなっている。

 契約当時の文書から削除された部分あるいは変更された内容は、全て近畿財務局と森友学園の間の国有地売却に関する協議内容や交渉過程を示す部分であり、佐川理財局長(当時)が国会答弁で「一切ない」と全面否定してきた発言を覆す証拠ばかりである。これがもし本当だとすれば(私は十中八九そうだと思う)、政府が国会に虚偽答弁したことが明々白々になる。

それだけではない。今回の財務省による決済文書(公文書)の書き換えがもし事実だとすれば、これは、これまでの虚偽答弁を正当化するために「全省挙げて」行った違法・脱法行為そのものであり、国家の統治体制の根幹を揺るがす「組織的犯罪行為」だと言わなければならない。各紙がこのことを以て、政権にとっての「計り知れない打撃」になると指摘しているのも至極当然のことといえよう。

 ここまで書いてきたとき、「森友学園国有地売却に携わっていた近畿財務局職員が自殺、問題との関連は不明」との痛ましいニュースが飛び込んできた。3月9日13時17分発の産経新聞デジタル版が伝えるところによれば、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却取引に携わっていた財務省近畿財務局の男性職員が3月7日に神戸市灘区の自宅で死亡していたことが9日、捜査関係者への取材で分かったというのである。現場の状況から自殺とみられ、遺書もあるという。

 男性職員は当時、学園側と直接売却交渉をしていた職員の部下にあたる上席国有財産管理官を務めていた。近畿財務局は取材に「現状で事実は把握していない」としているが、早晩このニュースは国会はもとより全国を揺るがす大事態に発展するだろう。安倍首相や昭恵夫人、麻生財務相をはじめ財務省当局が自らの責任を隠蔽するため白を切り通してきたそのツケが、末端機構の犠牲者を生み出すという絵に描いたような悲劇に発展したのである。

 国民は真実の解明を求めている。この声は大きくなることはあっても決して小さくなることはない。まして近畿財務局職員の自殺という悲劇は、担当者を死に追いやった安倍政権に対する怒りや政治責任追及の声としてあらわれるだろう。いまこそ安倍政権が国民の審判を受けるときがやってきたのである。(つづく)