野党多弱化の中で〝リベラル結集〟の道を示せない共産党、党勢の歴史的後退に歯止めがかからず、孤立と消滅の道を進むのか、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その6)

 共産党は9月3日、来年1月の第30回党大会に向けて第9回中央委員会総会(9中総)を開いた。冒頭の志位議長のあいさつは、第29回党大会(2024年1月)で決議した「党づくりの後退から前進への歴史的転換を果たす」目標をやり抜くことが、第30回党大会の成否を決める――と強調するものだった(赤旗9月4日、要旨)。

 

 志位議長のあいさつは、「共産党の値打ち」を強調する強烈な自負心(自画自賛)で貫かれており、党が直面する困難を全てスルーするところに際立った特徴がある。その論理は、第1に、前大会以降の3回連続の国政選挙における共産党の苦戦と後退の原因を党組織の問題として位置付けるのではなく、全てを外部要因に転嫁し、指導部の責任を回避(免罪)しているというものである。

 ―― 一連の選挙では、客観的な難しさもありました。国民民主党など自民党の補完勢力や、参政党など極右勢力の伸長、「クーデター的」な解散・総選挙での「高市旋風」など、わが党が伸びるうえでのさまざまな「突風」や「逆風」がつくられ、党の値打ちが国民に見えづらい政党状況がつくられるもとで、わが党は苦戦を強いられました。

 ――その大きな背景には、自民党政治が危機に陥るもとで「日本共産党だけは何としても封じ込めておきたい」という支配勢力の動きがあったことは疑いありません。

 

 第2は、世論調査の政党支持率の動向など客観的データを示すことなく、新しい政治情勢のもとで「共産党の値打ち」がクッキリと浮かび上がってきていると、一方的に主張していることである。

 ――高市政権が暴走して内閣支持率が下落する一方で、暴走をけしかけ、迎合し、協力を競い合う補完勢力や極右勢力が正体を見抜かれ、自らの存在意義を示せなくなり、政治的に失速しています。

 ――こうしたなかで、平和、暮らし、民主主義の問題で正面から高市政権に立ち向かい、希望ある国民的対案を堂々と掲げる日本共産党の値打ちが、新しい政党配置の中でクッキリと浮かび上がってきています。

 ――政党配置の見晴らしが良くなり、わが党の値打ちが見えやすくなってきました。打って出るならば、党が前進できるチャンスの情勢が生まれつつあります。

 

 第3は、中道改革連合が崩壊して野党の多弱化が進む中で〝リベラル結集〟の方向を示せず、①「要求対話・要求アンケート」、②未来社会論を語る『資本論』学習、③党中央からの「手紙」と「返事」といった、党勢拡大のための党内課題に終始していることである。

 ――「要求対話・要求アンケートで新しい結びつきを広げる」という新しい活動方法を、選挙戦と党づくりの双方を前進させる「戦略的大方針」に位置付けて取り組んできました。この活動に取り組むなかで、党の国民への働きかけの質が大きく変わりつつあります。

 ――資本主義的搾取によって奪われているのは「モノ」や「カネ」だけではなく、人間が発達するための「自由な時間」が奪われていることに光をあてたのが、『資本論』の新しい読み方です。このことが、人間の生き方を問うものとして人々の胸に響き、党員拡大運動でも大きな力を発揮しつつあります。

 ――第29回党大会決定に基づく「双方向・循環型」の活動として、党中央から支部・グループに送った「手紙」への「返事」が、現在51.5%に達していることは、党勢拡大運動をすべての支部・グループが参加する運動に発展させるうえでの大きな可能性を示しています。

 

 その一方、志位議長のあいさつに続く小池書記局長の報告「全党の支部・グループと党員のみなさんへの訴え」は、依然として党勢後退が止まらず、目標達成が遠のく深刻な事態を訴えている。クッキリと浮かび上がったのは、志位議長の言う「共産党の値打ち」ではなく、党勢の「歴史的後退」という厳しい現実だったのである。訴えの全文は、「9中総決議」(全会一致)として翌5日の赤旗に掲載された(以下、要旨)。

 ――8月3日の幹部会決議は、8月、9月を「第30回大会成功『中間目標』実現をめざす党勢拡大の飛躍期間」として全党に呼びかけましたが、8月の実績は新規入党者419人、赤旗読者(紙)は日刊紙534人減、日曜版2354人減、電子版読者は日刊紙37人増、日曜版23人増、「手紙」の「返事」を出した支部は51.5%でした。

 ――「飛躍期間」での党員拡大目標は、9月末までに世代的継承を軸に6000人を拡大することです。そのためには入党の働きかけを10万人に広げ、全国1万7000支部が1支部平均6人程度の働きかけをすれば可能です。また、1支部が党員1人を増やせば6000人の拡大目標もゆうゆうと実現できます。

 ――赤旗読者拡大は、昨年10月にスタートした日曜版電子版読者が1万人を超えるなど、電子版読者は日刊紙、日曜版とも前進していますが、紙の日刊紙、日曜版は2025年7月の参院選以降、連続後退を続けており、このままでは発行の現実的危機に直面することになります。

 ――「飛躍期間」での赤旗読者拡大目標は、9月末までに「日刊紙3900人、日曜版2万1千人の前進」です。このため、入党の働きかけの際や「要求対話・要求アンケート」に取り組む際には、必ず赤旗購読の呼びかけをしましょう。

 

 これだけを読むと、今年8月の拡大目標が達成できず、9月末までに挽回すれば何とかなるようにも受け取れるが、ことはそう簡単ではない。事態の推移は、第29回党大会(2024年1月)で決議した拡大目標が悉く破綻し、目標を下方修正しても達成できず、第30回党大会まであと4か月の段階に至っても、未だ党勢の「歴史的後退」から脱却できない――、という経過をたどっているからである。前大会以降の経過を振り返ってみよう。

 

 〇第29回党大会(2024年1月)時の党勢は、党員25万人、赤旗読者85万人だった。拡大目標として、①第30回党大会(2026年1月予定)までに、第28回党大会現勢(党員27万人、赤旗読者100万人)を必ず回復・突破する、②2028年末までに、党員35万人、赤旗読者130万人を達成する、と決議された。しかし、その後の2年間で党員は25万人から24万人へ、赤旗読者は85万人から77万人へ後退し、第30回党大会を1年延期せざるを得なくなった。

 〇大会延期後の2026年3月、第8回中央委員会総会(8中総)は、①第30回党大会までの拡大目標を第29回党大会現勢(党員25万人、赤旗読者85万人)に下方修正する、②9月末までに達成すべき「中間目標」として党大会までの拡大目標の「半分以上」をやり抜くことを決議した。具体的には、6~7月を党勢拡大のための「集中期間」に設定し、(イ)2万人に入党を働きかけ2000人の新規入党者を迎える、(ロ)すべての支部・グループが「手紙」を討議し「返事」を寄せる、というものだった。「集中期間」の実績は、新規入党者995人(5割弱)、「手紙」を討議した支部は8割超、「返事」を出した支部は4割超に止まった。赤旗読者は6月、7月とも後退した。

 〇党中央幹部会は2026年8月、9月末までの「中間目標」を党大会までの「半分以上」から「4分の1以上」に下方修正した。具体的には、①世代的継承を軸に党員6000人を拡大、②赤旗読者は日刊紙3900人、日曜版2万1千人前進(純増)、③全支部からの「返事」達成、の3点である。8月の実績は、新規入党者は419人(目標6000人の7%)、赤旗読者(紙)は日刊紙534人減(電子版37人増)、日曜版2354人減(電子版23人増)と後退だった。「返事」は51.5%だった。

 

 これら一連の経過からも分かるように、党勢拡大を前提にした方針はもはや現実性を失い、「スローガン」の一種と化している。幹部会がこの事態を事実上の「目標のない活動」と認めざるを得なかったように、拡大目標はすでに「空文化」している。目標を下方修正して「必ず達成する目標」を設定してもその目標さえ達成できず、党勢拡大は事実上の「目標のない活動」へ転化しつつある。

 

 思えば、日本の「失われた30年」は共産党の党勢後退と軌を一にしている。日本経済の失速と家計所得の低下とともに、共産党の党勢も右肩下がりで後退してきた。30年前の第20回党大会(1994年7月)から現在まで、党員は36万人から24万人(3分の2)、赤旗読者は250万人から75万人(3割)に減少している。党勢後退は、党員の量的縮小だけではなく、党員の「超高齢化」という質的変化を伴っている。2024年現在、65歳以上の高齢者が3分の2近くに達し、活動量は当時に比べて飛躍的に落ちている。

 

 なぜ、共産党は党勢後退が止まらないにもかかわらず、成果を期待できそうにもない党勢拡大運動を続けるのか。答えはただ一つ、それに代わる党活動のイメージが描けないからであり、「開かれた左翼進歩勢力」へ転換できないからである。党の影響力を大きくするには「自力強化=強くて大きい党づくり」をすることしか念頭になく、それ以外の道を構想できないからである。党首代表選挙も党役員の定年制もなく、志位議長をはじめ党指導部が長期にわたって刷新されないため、「新しい政治」に対する斬新な構想が生まれてこない。党員・支部の自由な討論や交流を禁止する「民主集中制」の規約によって党組織が閉鎖的になり、国民の政治感覚から大きく乖離しているため、下部組織からも新しい構想が生まれてこない。

 

 「市民と野党の共闘」が中道改革連合の結成によって分断され、その中道改革連合が1年足らずして崩壊するという政治情勢の激動化の中で、共産党は〝リベラル結集〟の方向を示すことができないでいる。「政党配置の見晴らしがよくなった」「日本共産党の値打ちが見えやすくなっている」「目の前に飛躍のチャンスが広がっている」(9中総「田村委員長の討論のまとめの発言」赤旗9月6日)などというだけでは、共産党の孤立を深めるだけで〝リベラル結集〟の道は拓けない。多弱化した野党の中で共産党が存在意義を示すためには、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」といった大胆な政策転換が求められる。志位議長の講演だけが大特集されるような赤旗の編集方針は、一刻も早い抜本的な刷新が求められる。

 

 山本太郎代表の引退にともない、旧れいわ新選組は党首代表選挙を行い、党名を「いのちの党」に代えるなど、「解党的出直しを進める」との改革方向を決議した。山本譲司新代表は、「山本太郎というスターの個に依存していた選挙態勢から脱却を進める」ことも強調した(毎日新聞、9月8日)。共産党にとって求められるのは「解党的出直し」であり、来年1月の第30回党大会をその契機にしなければならない。①志位議長をはじめ古参幹部が揃って引退する、②若手と中堅世代を抜擢して新指導部をつくる、③党首代表選挙を実施して清新なリーダーを選ぶ、④「民主集中制」の規約を撤廃して党員・支部間の自由で開かれた党組織に改革する、⑤党員拡大による「強くて大きな党づくり」から〝リベラル結集〟の軸になる「開かれた左翼進歩勢力」へ脱皮する、などなどである。

 

 来年1月の第30回党大会の議題が目下検討されているという。「共産党の値打ち」を強調する唯我独尊的な方針が打ち出されるのか、それとも〝リベラル結集〟の軸となる斬新な方針が打ち出されるのか、余り期待を持たないで注目していきたい(つづく)。

中立公合流協議が頓挫から分裂へ、立憲は「中道改革」を標榜する公明の本質を見誤った、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その5)

 8月末に結論を出すとしていた中道改革連合、立憲民主、公明3党の合流協議が頓挫した。8月29日の各紙は、公明の「中道離脱・撤退」による「中道分解・政界再編」の動きを一斉に伝えている。以下は見出し。

 〇朝日新聞、「伸びぬ党勢 協議行き詰まり」「合流頓挫 中道分解の危機」「立憲提案の統一会派、公明は拒否」「公明出身者 離脱検討」

 〇毎日新聞、「中公立 結集頓挫」「立憲楽観 招いた誤算」「公明の覚悟 想定外」

 〇読売新聞、「中道改革連合は分裂の公算」「公明出身議員が離脱検討」「立民は党首会談で合流しない方針伝達」

 〇日経新聞、「合流頓挫、統一会派にも難色」「公明系、中道から離脱視野」「政界再編へ3シナリオ」

 

 若干のニュアンスの違いはあるが、各紙の見出しからも分かるように、いずれも公明の「中道離脱」に触れている点が共通している。中でも日経新聞は、公明離脱後の「次の政界再編」にまで言及し、3通りのシナリオを解説している。今年1月の中道改革連合の結成から僅か7カ月余り、「中道分解」の危機が現実化していることに驚く。今まさに「政治は一寸先が闇」を地で行くような事態が展開している――というわけだ。

 

 8月31日、最終協議の後に、中道、立憲、公明の3党首は正式に「合流断念」を表明した。9月1日の各紙は、3党合流協議の破綻がもたらす今後の政治情勢の動向に注目している。以下は見出し。

 〇朝日新聞、「中道、事実上の解体、3党首会談 正式に合流断念」「政権の対抗軸 ついえた『中道』、選挙や政策の壁 阻んだ合流」「政界から野党いなくなる」「『引き続き結集』『ほっとした』、3党合流断念 地方反応様々」

 〇毎日新聞、「『どれを選んでも地獄』、割れる中道 新しい形求め」「国会機能低下の恐れも、分割方式焦点に」

 〇読売新聞、「中・立・公 合流せず、3党首が確認 中道分裂へ」「衆院 統一会派目指す 小川代表」「急ごしらえ 限界露呈、中道分裂へ」「与党『選挙互助会だった』」「野党勢力 流動化へ、衆院 乱立で『多弱』加速か」

 〇日経新聞、「中道、衆院統一会派を検討、分裂でも国会協力を維持」「『分党』の形式、協議へ」

 

一連の再編騒動の中で浮かび上がったのは、「中道改革」を標榜する公明の〝非リベラル政党〟としての本質だった。もともと自民の「下駄の雪」と蔑まれながら、そのおこぼれで党勢を伸ばしてきた公明は、長年にわたる「ぶら下がり体質」から脱却できず、支持者の離反が相次ぐようになっていた。このまま自民の「下駄の雪」で居続ければ、高市政権の下ではさらなる支持者の離反が避けられず、政党としての存在意義を失う恐れがある――、との観測が高まっていたのである。切羽詰まった公明が選択した戦略は、自公連立の手がかりを残したまま(取りあえず)連立を解消して「中道改革」を標榜し、「ポスト高市」政権になれば与党復帰も考える、というものだった。

 

 ところがこれに飛びついたのが、「中道政権」を目指す野田前立憲代表だった。公明と立憲の得票数を合算すれば、自民に代わる「政権交代」も夢ではないとの目先の打算から、総選挙では公明から言われるままに比例区では公明を上位に据え、小選挙区では公明が立候補せず立憲を支援するという政治取引を(一部幹部の独断で)決行した。基本政策の面でも、公明の与党時代の政策を中道の基本政策にする形で妥協した。総選挙の結果は、定数465(小選挙区289、比例代表176)のうち、自民は3分の2(310議席)を超える316議席を占め、中道改革連合は公示前の167議席(立憲143、公明24)から49議席(立憲21、公明28)に激減するという惨敗だった。立憲の変身に失望した支持者が離反し、立憲は143議席のうち122議席(85%)を失うという〝壊滅的敗北〟を喫したのである。

 

注目すべきは、立憲の惨敗を尻目に公明が24議席から28議席へ議席を伸ばしたことである。政党は最終的に「選挙結果」で評価される以上、公明にとって「中道結成」は大成功であり、公明は「中道結成」によって自民の「下駄の雪」から脱することができた。その代わり、割を食ったのが立憲だった。立憲は、公明の本質が自公連立を基本とする〝非リベラル政党〟であるにもかかわらず、一時的な自公連立解消に目がくらんで、「中道改革」を標榜する公明の本質を見誤ったのである。公明の中道策略に乗せられて「喰いもの」にされ、解体寸前の状態にまで追い込まれたのである。

 

立憲参院議員と地方議員が、野田前代表の政治的思惑に惑わされず中道合流を留保し、最終的に拒否したことは賢明だった。公明が自公連立政権の与党時代の政治方針を堅持していることは、紛れもない事実である。集団的自衛権の一部行使を容認する安全保障法制、原発復活を推進するエネルギー政策、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設容認、皇室典範改正における女性・女系天皇の拒否などなど、いずれも高市政権が根幹に据えている政策を堅持している。今回の3党合流協議においても、西田公明幹事長は立憲側との参院統一会派結成について「根本のところの政策が一致していない現状で、統一会派を組むことは難しい」(毎日、8月29日)と拒否した。このことは、公明が「中道改革」を標榜しているものの、その本質は自民と根本政策を同じくする〝非リベラル政党〟であることを示している。目下行われている沖縄県知事選挙においても、公明は自民公認候補を推薦し、立憲はデニー候補を支援するというように、真っ向から対決している。正体不明の中道は、その名にふさわしく「自由投票」である。

 

中道の小川代表は8月31日、衆院の統一会派の結成をめざす方向を示した。中道が立憲出身者と公明出身者に分裂しても、国会運営で協力を維持する方針だという。朝日社説(9月1日)は、この動きに対して「中道勢力の結集は当面頓挫したが、政権への対抗軸の必要性には変わりはない。議会制民主主義を守るためにも、新たな連繫のかたちを模索し、対抗軸の構築に向け、ひとつひとつ協力を積み重ねていくほかあるまい」と肯定的だ。だが、読売新聞(9月1日)は「中道改革連合、立憲民主、公明3党による合流協議が頓挫し、衆院野党第1党の中道改革の分裂が決定的になったことで、野党勢力は流動化する見通しだ。中道改革を軸に巨大与党への対抗軸を作る構想は空中分解し、衆院では自民党と日本維新の会に対し、野党が乱立する『多弱』化が進む可能性がある」と否定的だ。

 

私は、公明が本質的に〝非リベラル政党〟である以上、中道分裂後の衆院統一会派結成の可能性は小さいと思う。朝日記事(9月1日)の中にも「公明関係者からは早くも『高市政権とは組めないが、次の政権になれば、自民との連立復活もあり得る』との声」が上がっているというし、読売記事(同)には「長年にわたり公明と連立を組んできた自民内では『(中道分裂は)将来的な連携復活に向けて動きやすくなる』(中堅)と期待する声が上がっている」との紹介もある。

 

8月31日発表の日本経済新聞世論調査では、高市内閣の支持率が62%で7月から4ポイント上昇し、不支持率は32%で5ポイント下がった。「内閣支持」は自民支持層89%、野党支持層37%で先月からほぼ横ばいだが、無党派層は47%で11ポイント上回ったという。食料品消費税1%減税が無党派層に支持されたとの分析もあるが、私は中道改革への無党派層の失望が高市内閣支持率を押し上げたとみている。「政界から野党がいなくなる」日がやってくるのか、それとも「新しい政治」を担う政治勢力があらわれるのか、次回は日本政治の行く末を考えてみたい(つづく)。

〝積極的無党派層〟が比重を増しつつある現在、「思い付き」の新党結成、「数合わせ」の政党合流は世論の支持を得られず、消えるしかない、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その4)

 昨年出版された投票行動研究者たちによる共同研究、田中愛治監修『無党派層の研究』(有斐閣、2025年)には、1960年代から現在に至る無党派層の推移と特質が分析されている(第1章、第2章、第5章、要旨)。

(1)旧来の無党派層は、政治に無知・無関心で余り投票に行かなかったが、最近の無党派層は政治的関心・政治意識が高く、投票に行く人が多い。1960年代後半以降増加した無党派層は、既成政党に不満を持ち、保革対立を前提とした政治のあり方に批判的で、都市居住者、高学歴、ホワイトカラー、若年層がその典型とされる。無党派層の増加は、選挙を通じて影響を与えうる独自の勢力が登場したことを意味し、旧来の投票行動に大きな変化をもたらすことになった。1970年代に入ると、保革対立を基本とした政治構造に対して、中道を標榜する若い政党が台頭し、無党派層が新党ブームの原動力となることで選挙結果を左右する事例も生まれてきた。

 (2)1993年8月、非自民・非共産8党派連立政権の細川内閣の発足により、1955年の結党以来38年間にわたって単独政権を維持してきた自民党が下野し、「55年体制」が崩壊した。1994年7月、政策的には真反対の自民党と社会党が手を組む「自社さ」連立政権が成立し、「永田町の論理」で動く既成政党への不信が強まった。無党派層が初めて5割を超え、それ以降4割台の高水準で推移するようになった。無党派層が政党支持の最大勢力になり、今日まで続く「無党派の時代」はこの時期に形成された。

 (3)「新無党派層」とは、55年体制の崩壊がきっかけで支持する政党が無くなり、行き場を失った層を指す。新無党派層の特徴は、①政治関心が高いがゆえに既成政党から距離を置く、②既成政党に不信感を持ちながらも、改革志向が強い、③固定化した層ではなく、流入と流出が繰り返される、④以前から存在していた若年層中心の無党派層に、政党離れした中高年層が加わって形成された、などである。

 (4)2005年8月、小泉首相は「郵政解散」によって地滑り的勝利を得た。自民党圧勝に貢献した要素の1つが「改革志向」の無党派層だった。しかし選挙区、比例区ともに無党派層の得票が最も多かったのは民主党であり、政権交代への道は小泉政権下ですでに準備されていた。2009年衆院選では民主党がマニフェストを前面に打ち出し、自公連立政権に不満を抱く有権者を幅広く取り込み、比例投票で無党派層の5割超の支持を得て自民党を圧倒した。

 (5)2012年12月の衆院選で消費税増税に踏み切った野田民主党政権が惨敗し、自民党が政権を奪還した。前回選挙で民主党を押し上げた無党派層の比例得票数は4分の1に落ち込み、以降、第2次安倍内閣の長期政権が継続することになる。2010年代は無党派層の支持が自民、民主に対抗する「第三極」の複数政党に分散し、低投票率が原因で与党が連勝を重ねた(以上、第1章)。

 (6)従来の政党支持概念は、第1段階で「支持政党があるかないか」を聞き、第2段階で支持の強度を聞く方法で定義されていた。この定義は、2大政党制(共和党、民主党)の下で形成されたアメリカの政治構造を反映したものであり、両党のいずれにも帰属しない「中間層」が無党派層と見なされてきた。一本線の軸上で政党支持の「右か左か」が判断され、「支持政党なし」は政党支持の残余のカテゴリーとして定義され、それ自体は積極的な意味を付与されていなかった。

 (7)その一方、「支持政党なし」は「支持政党あり」と同一線上の存在ではなく、独立した次元の存在だとする主張もあらわれてきた。この主張は、日本のように政党数が多く(多党化)、これらの政党が一直線上に並んでいる指標は想定しにくいことから当てはまる可能性が大きい。なぜなら、無党派層の中には「保革軸」上の中間層ではなく、「どの政党も支持したくない」という積極的無党派層が存在しており、「今は支持政党がない」「特にどの政党も支持しない」という消極的無党派層とは性格を異にしているからである(以上、第2章)。

 (8)党派性を避けつつも政治には積極的であるような「積極的無党派層」は、無党派という「社会的アイデンティティ」(社会的帰属に関する自己認識)が政治関心の原動力となり、アナーキーではない「新しい政治」を求める民主的な政治システムを志向している――という。先進民主主義諸国において中間集団が衰退して政党組織も弱体化し、個々の有権者が直接政治に対峙するようになってきている現在、「新・新無党派層」ともいうべき積極的無党派層の行方や役割が注目される(以上、第5章)。

 

 以上が、無党派層についての共同研究の見解だが、報道各社の現在の世論調査では(調査票の設計上)「積極的無党派層」の存在を確認できない。しかし特筆すべきは、高市内閣の登場以来、内閣支持率と与党支持率の間に格段の大きなギャップがあり、時事調査では内閣支持率60%台、与党支持率20%台、その差が30ポイントに及ぶことも珍しくないことである。この大きなギャップを埋めてきたのが50%台に達する「支持政党なし層」の存在であり、与党支持率が低いにもかかわらず内閣支持率が高かったのは、積極的無党派層が「高市支持」に動いたからだと考えられる。しかしこのことの裏を返せば、積極的無党派層が高市政権を見限ったときは、与党支持層だけでは高市内閣を支え切れなくなることを意味する。無党派層の「高市離れ」が目立つ現在、高市政権は「前途危うし」と言わなければならない。

 

 積極的無党派層の存在は、野党にも大きな影響を与える。無党派層のなかで積極的無党派層の比重が増すようになると、新党結成や政党合流で政権交代を図ろうとする野党の企ては難しくなる。既成政党に距離を置く積極的無党派層は「新しい政治」を求めてはいるが、それが必ずしも新党結成や政党合流に結びつくとは限らないからである。その典型が中道、立憲、公明の「3党合流」だろう。3党合流についてはすでに多くの世論調査で赤信号が点滅しているが、直近の共同通信調査(8月24日発表)の結果は決定的だった。

 

「立憲民主党と公明党の衆院議員が合流して中道改革連合を結成しましたが、参院議員らは立民と公明に分かれたままです。あなたは、今後の3党はどうあるべきだと思いますか」との質問に対する回答は、①「合流は全て取り止め、元の立民、公明に戻すべきだ」51.0%、②「全員が中道に合流し、一つの党になるべきだ」19.0%、③「参院議員らは合流せず、今のまま三つの党を残すべきだ」17.9%で、①「元に戻すべきだ」が過半数に達したのである。これまでも野党編成をめぐる世論調査は数多く行われてきたが、これほど明確に「合流ノー」の結果が出たことはない。8月末に「3党合流」についての結論が出されるというが、中道と公明がこの世論動向を無視して既定路線を突っ走ることはまず不可能だろう。

 

朝日新聞の政治解説(8月22日)によれば、公明は中道と公明の「2党先行合流」も辞さない姿勢だが、中道は公明との先行合流には否定的だという。党所属の衆院議員の内訳は立憲出身21人、公明出身28人。公明の参院議員21人が加われば、「公明色」が一段と強まる。中道幹部は「立憲系が『公明に乗っ取られた』と反発し、中道が荷崩れする」と指摘する。東京新聞が指摘するように、この事態は「進むも地獄、引くも地獄」といった状況だが、これを打開する道は、野田立憲前代表をはじめ「3党合流」を画策したメンバーが議員辞職して立憲の再生を図るほかはない。さもなければ、中道も公明も遠からず「消滅の道」へ向かうことになる(つづく)。

高市内閣の支持率が下落する中で「野党第1党」の中道支持率が下落する不思議、巨大な「支持政党なし=無党派層」が帰趨を決める、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その3)  

前々回の拙ブログでも言及したが、このところ高市政権の評価が急落している。報道各社の世論調査では、内閣支持率が6月から7月にかけて軒並み下落し、下落幅は最大10~12ポイントに及んだ。なかでも時事通信(49.0%)と毎日新聞(41%)は5割を割り、毎日新聞は不支持率(44%)が支持率を上回った。

 

8月に入ってからも、NHK調査(8月10日発表)は内閣支持率53%(前回5ポイント減)、不支持率33%(6ポイント増)と下落傾向が続いている。支持政党別に見ると、与党支持層は85%で横ばいだった一方、野党支持層は6ポイント減の29%、無党派層は8ポイント減の36%で、無党派層の支持離れが目立つ。男女別では、男性が6ポイント減の56%、女性が2ポイント減の48%となり、「史上初の女性首相」との売込みにもかかわらず、女性の支持率は半数を割った。

 

それより注目されるのが、政党支持率の変化だ。全体としては、与野党支持率が逆転するといった劇的な変化はなく、与党は依然として4割近い支持率(自民35.0%、維新2.6%,計37.6%)を維持し、「支持政党なし」もほぼ4割(39.0%、2.0ポイント増)を占めている。残り僅か4分の1弱(23.4%)の狭小空間に、多数の少数野党がまるで「ゴマ粒」のようにひしめき合っている――というわけだ。

 

それでも、幾ばくかの変化は見られる。野党の国民2.8、立憲2.8、参政2.8、公明2.2は「2%台」、みらい1.2、保守1.0は「1%台」、いのち(旧れいわ)0.7、社民0.2は「それ以下」と支持率はあまり変わらないが、中道が1.7%(前回3.1%、1.4ポイント減)に下落し、共産が3.4%(前回1.5%、1.9ポイント増)へ上昇した。中道支持層が「支持政党なし」に移動したのか、共産に流入したかは分からないが、中道が3%台から1%台に一気に下落したことは注目に値する。

 

中道下落の主な原因は、中道、立憲、公明の「3党合流」に対する期待がほぼ消滅したためだろう。NHK調査の「中道、立憲、公明の3党の合流に期待するか」との質問に対する回答は、「大いに期待する」4%、「ある程度期待する」16%で肯定的な回答は僅か2割しかない。これに対して否定的な回答は、「あまり期待しない」37%、「まったく期待しない」37%で4分の3(74%)に達する。正体不明の中道改革連合という存在は、いまや有権者の期待と信頼を失い、3党合流に「赤信号」が灯ったと考えてまず間違いない。

 

NHK調査に引き続き、8月13日には時事調査が発表された。内閣支持率は48.4%(前月比0.6ポイント減)で微減だが、不支持率は26.9%(同1.7ポイント増)でじりじりと増えている。高市首相は8月5日、今年2月の衆院選での自民党公約を踏まえ、食料品の消費税率を2年間限定で1%に下げ、給付と合わせて「実質0%」とする基本方針を閣議決定したが、効果なかった。男女別では、男性50.1%(同1.5ポイント増)、女性46.5%(同3.0ポイント減)となり、ここでも女性の支持率が低い。

 

時事調査が「面接調査」を採用していることもあって「支持政党なし」の比率が著しく高く、今回も56.2%に達した(前回59.5%)。これは、回答者が音声電話調査では(印象的に)答えている政党名を、面接調査ではより慎重に回答するためと考えられる。今回は、与党支持率が自民24.6%(前月比3.8ポイント増)、維新2.7%(0.4ポイント増)と若干上昇したが、野党支持率はそれほど変わらず、中道2.1%(0.4ポイント増)、共産1.5%(0.1ポイント増)だった。

 

ただ、国民1.8%(0.2ポイント増)、参政1.5%(1.0ポイント減)と「1%台」に落ち込んでいることについては、高橋正光特別解説委員が次のように分析している。

――参政党の支持率が2%に届かなかったのは、昨年5月(0.9%)以来。同党は昨年7月の参院選で「日本人ファースト」を掲げ、改選1議席から14議席に躍進。直後の8月調査で支持率を7.6%に伸ばした。選挙から1年で、勢いは完全に消えた形だ。

――参政党と同様、国民民主党も2024年10月の前々回衆院選で「手取りを増やす」と訴え、公示前から4倍増の28議席を得て勝利。この後、支持率は上昇傾向になり、昨年3月には8.0%にまで増やしたが、前回7月調査で1.6%にまで落ち込んだ。野党は特に、有権者の支持をつなぎ留めておくことが容易でなく、選挙公約の「賞味期限」が1年超程度で切れる実態が浮き彫りになりつつあるようだ。

 

 野党各党の激しい浮沈にかかわらず、無党派層はNHK調査で4割、時事調査では6割近い圧倒的な比重を占めている。国民や参政のように一時的に政策がヒットしても、それが何時まで続くか分からない。無党派層の離反で今年2月の衆院選で大敗した中道は、それに懲りず改正皇室典範に賛成するという「致命的な誤り」を犯した。毎日7月調査では改正皇室典範を「評価する」19%、「評価しない」45%。朝日7月新聞でも、改正皇室典範は国民の理解を「得られている」24%、「得られていない」60%だった。これほど世論と乖離した政策を選択した中道が、世論の支持を取り戻すことはもはや不可能に近い。巨大な無党派層の動向を読めない政党は生き残れず、無党派層が政党の帰趨を決めるといっても過言ではない。

 

 中道、立民、公明の「3党合流」協議はその後混迷を極めている。立民東京都連は8月7日、「合流反対」を表明した。所属議員を対象にしたアンケートでは、「立民存続」を求める回答が8割に上ったという(日経、8月10日)。毎日社説(8月13日)は、この有様を次のように批判する(要旨)。

 ――求められるのは政権の暴走に歯止めを掛け、緊張感ある政治を実現する強い野党である。対立軸を作れないまま数合わせに走るばかりでは、展望は開けない。中道は、高市首相による唐突な衆院解散に対抗するため、十分な説明もないままに立憲、公明の衆院議員により結成され、総選挙で惨敗した。求心力を失ったことで参院側の合流が進まず、来年春に統一地方選を迎える地方組織でも機運は高まっていない。皇室典範改正への対応では、立憲は反対し、公明は賛成した。公明出身者が過半数を占める中道は賛成に回った。

 ――先の国会で高市内閣は国民生活に直結しない課題を強引に進めた結果、支持率が急落している。にもかかわらず、野党は政権批判の受け皿になれていない。野党の役割は、政権とは別の選択肢を示すことだ。何を目指す政党なのか。理念と基本政策を練り上げることが最優先である。

 

 高市政権が衆院では「絶対多数」の議席数を確保しているとはいえ、意のままに国会を支配できるわけではない。強引極まる国会運営で諸法案を成立させた独善的な姿勢が強い批判を浴び、来年の自民党総裁選で再選されるかについても不透明感が増している。「高市推し」の熱気に包まれて自民党に投票した支持者の間でも、高市首相の相次ぐ暴走に目が覚めたのか、次第に「パフォーマンス政治」の本質を見抜きつつある。

 

高市首相の熊本地震被災地の視察では、ピアノ伴奏が流れる動画が作成されて「災害の政治利用」「首相が主役」との批判を浴びた。広島・長崎での被爆地訪問では、歴代首相が「非核三原則を堅持しつつ」と将来の方向性を示してきたことを顧みず、非核三原則の見直しを滲ませた。「終戦の日」の靖国神社参拝は見送ったが、全国戦没者悼式会場から靖国神社に「遥拝」した。首相式辞からは「反省」の文字が消えた。

 

 無党派層の「高市離れ」が加速しつつある現在、今後、内閣支持率のさらなる急落が予想される。国民・参政はもとより高市内閣に迎合してきた野党は「対立軸」を作れず、運命をともにするしかない。中道の存続が問われるのはその時である(つづく)。

正体不明の中道改革連合はどこへ行く? 与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その2)

 最近、中道改革連合(以下、中道という)の行方に関する報道や論評が増えてきている。数えればキリがないが、代表的な論評として、①東京新聞「中道改革連合の埋もれた存在感、『進むも地獄、引くも地獄』、3党合流で浮上できるのか」(8月8日、井上真典記者)、②毎日新聞「特集ワイド、はじまりのうた」(8月7日、佐藤千矢子専門編集委員)、③同「中立公3党の現在地(上下)」(8月7、8日)を挙げたい。

 

 「鵺(ぬえ)」のような正体不明の中道は、分析が難しい。明快な論評が少ない中で、久しく同感を覚えたものに上記論評①②がある。井上記者は、中道の「全国キャラバン」の様子を紹介した上で、8月末の中道、立憲民主、公明との3党の合流協議の行方について論じ、3党合流は結論を得て果たして浮上できるか――と、強い疑問を投げかけている(以下、要旨)。

 (1)中道は、高市政権への対立軸として衆院の立憲民主、公明両党の議員らにより衆院選前に急造されたが、惨敗した。辛うじて衆院での野党第1党の座は保ったものの、落選した吉田晴美元代表代行らをはじめ、立民出身者の離党表明が相次いでいる。

 (2)7月に閉会した特別国会で、中道は、政府のインテリジェンス機能の司令塔を担う国家情報会議の創設法案や、皇族数確保のための皇室典範改正案といった重要法案に賛成した。政治ジャーナリストの丸谷才一氏は、「中道が重要法案に賛成すると、国会で争点が生まれない」「3党の駆け引きばかりで、国民の方を見ていない」「国民には相当失望感があり、国会での存在感を示せていない」と批判する。

 (3)消費税減税に関しても、中道は衆院選時に「食料品消費税ゼロ」を訴えたが、政府は(一顧もせず)来年4月から2年間の期限付きで1%に引き下げると閣議決定した。有権者からは「もうちょっと野党として力を持ってほしい」「物価高対策を期待した。強い日本も大事だけど、話し合いをもって解決できる社会にしてほしい」との声が上がる。

 (4)千葉商科大の田中信一郎教授(政治学)は、改正皇室典範に養子の子孫が男性なら皇位継承権を認める内容が含まれたことを挙げ、「政府が立法府の総意よりも踏み込んだものを出してきた。中道はきちんと異議を唱える必要があった。重大な課題に選択肢をできる限り示す必要がある」と指摘する。

 (5)共同通信の7月25、26両日の全国電話世論調査で、政党支持率は中道が4.6%(6月調査6.1%)と下落し、国民民主、みらい、参政、維新を下回った。一方で、自民党も35.9%(同38.7%)に低下した。田中氏は「(自民党の)支持率が落ちたら(衆院の)野党第1党に返ってこなければいけない。中道はもう一つの選択肢とみなされていない」「3党が合流しても支持に結び付きにくい。一方、バラバラだと選挙で戦いにくい。進むも地獄、引くも地獄だ」とみる。

 (6)田中氏は「野田前共同代表が全国の落選議員を回り、もくろみが失敗した経緯を説明し、おわび行脚するべきだ」と説く。だが、衆院選で落選した中道元議員は、「野田氏のおわびはいらない。引退してほしい」とにべもない。求めるのは、次の参院選や衆院選での旧公明議員らの比例代表の扱いに結論を出すことであり、「旧公明だけ上位にする仕組みでは(立憲の)誰がやるというのか。答えを出さないのであれば、おのずと結論は見える」と断言する。

 

 佐藤千矢子専門編集委員の論評はもっと直接的だ。表題の「はじまりのうた」は、中道の「終わりの始まりの唄」を意味するもので、中道の「解党」を予測している。以下は、その要旨である。

 (1)私の個人的意見としては、中道を発展的に解党し、衆院も立憲と公明に戻し、両党が選挙協力と国会統一会派で連携する形で出直すのがベストではないかと思う。

 (2)実は、中道が再生できるチャンスは先の特別国会で何度かあった。中でも最大の機会だったと思うのが、皇室典範改正への対応だ。旧11宮家の男系男子を養子として皇族に迎え、養子の子が男子ならば皇位継承権を与えるとの内容を含む皇室典範改正について、中道は公明が養子案に賛成していた経緯から党内対立を回避するため、「苦渋」の判断として賛成した。対照的に、立憲は反対した。

 (3)本来、中道は新党として出発した以上、党内事情よりも「国民の総意」「象徴天皇制」「憲法との整合性」などを重視し、白紙から徹底議論すべきであった。世論調査でも女性天皇への賛成は7割を超えている。にもかかわらず、女性・女系天皇を封じようとする政府の改正案に衆院野党第1党の中道が賛成し、国民に寄り添い、政治を大きく動かす機会を逸した。

 (4)3党の合流問題は、立憲と公明が「分党」または両党議員が「離党」し、中道に加わる案を軸に検討されるというが、皇室典範改正という根本的問題で対応が分かれた党同士が合流しても、いばらの道は続くだろう。

 

 井上・佐藤両記者の論評に対して、3党合流問題の複雑な背景を探ったのが毎日新聞の解説記事「中公立の現在地(上下)」だ。公明の「前のめり」の姿勢に比べて立憲の「煮え切らない」事情を、主として合流方式と政治資金面から分析している(要旨)。

 (1)中道、立憲民主、公明の各党幹事長らによる「3党組織課題協議会」の話し合いがなかなか進まない。集団的自衛権の一部容認を含む安全保障関連法について、立憲はもともと「違憲部分は廃止」を掲げており、同法を合憲とする公明とは隔たりがある。中道結成時には「存立危機事態における自国防衛のための自衛権行使は合憲」との玉虫色の表現で合意したものの、3党合流に際しては依然として懸案点として残る。

 (2)公明はこの半年、立憲を支援する連合傘下の七つの産業別労働組合(産別)や自党の地方組織を回って一任を取り付けてきた。立憲の動きが鈍いのは、3月の党大会で「ボトムアップの党運営に立ち返る」とした宣言が、3党協議が進まない原因の一つになっている。その背後には、中道が衆院選の総活で自らを「急造新党」と表現し、参院や地方議員への説明不足を指摘した反省がある。

 (3)立憲の煮え切らない態度に対して、身内からも中道からも不満の声が上がる。少数野党が乱立する多党化の状況の中で、合流により自民党に代わる政権を目指す勢力を作らなければ、党の消滅につながりかねないとの危機感からだ。立憲はどの道を選ぶのか。

 (4)3党合流協議で、政策と並び重みを持つのが合流方法などの組織のあり方だ。3党は7月31日に公表した「中間整理」で、①「離党・入党」は所属する政党を離党して中道に入党する方式、②「存続合併」は政党を解散して中道に合流する方式を示した。だが、国会議員数や得票数に基づき各党に配分される政党交付金の算定は合流手法により異なる。「離党・入党」の場合は、3党の年内の政党交付金に変動がなく、中道に配分される交付金で立憲、公明からの入党議員の活動を支えなければならない。一定の財源を持つ公明に対し、党収入の多くを政党交付金でまかなう中道や立憲にとって、この方式での合流は現実的でない。「存続合併」の場合は合併する政党の交付金を合算できる。

(5)一方、中道幹部は「中道解体論」を警戒する。「中道解体論」は中道所属議員が出身の立憲、公明両党にそれぞれ再入党するケースで、「3党合流断念」を意味する。党内で合流反対論が根強い立憲だが、激減した党収入の下で中道から出戻った議員を抱える余裕はない。しかし、合流を断念すれば、3党とも支持を失うリスクを抱える。「中道解体」の場合、有権者の眼には「民主党的なものが終わった」としか映らない。成熟した政党へ脱皮するのか、それとも消滅への引き金を引くのか、3党には厳しい問いが突きつけられている。

 

 毎日の解説記事は、井上記者の「進むも地獄、引くも地獄」との見方と通底している。中道結成の道を突き進んだ野田立憲前代表の政治責任はそれほど重い。だが、野田氏は「お詫び行脚」「政界引退」をする気など毛頭ない。このまま3党合流の道を突き進み、立憲を巻き込む算段を画しているだけだ。でも、忘れてならないのは、立憲が中道に合流した場合、昨今の世論動向からみて、今年1月の衆院選と同じく来年10月の参院選でも立憲出身議員が落選する可能性が大きいことだ。毎日が解説するように,「3党合流=成熟政党への脱皮」であり、「合流断念=消滅への引き金」とは限らない。むしろ、事態の動向はその逆になる可能性を孕んでいる。佐藤記者の言うように、「中道を発展的に解党し、衆院も立憲と公明に戻し、両党が選挙協力と国会統一会派で連携する形で出直すのがベスト」なのかもしれないのである。

 

 野田氏などの影響を排除して衆参両院で立憲が復活すれば、公明との選挙協力や統一会派の結成にとどまらず、「反高市」を掲げる各党との新しい連携の可能性が生まれる。山口二郎・中北浩爾編著『日本政治、再建の条件』(筑摩選書)の中で、山口氏は右派ポピュリズム政党の進出という最悪のシナリオを防ぐために、自民党が穏健派と右派に分裂し、穏健派が現在の立憲民主党などと連携して政権を担うという「穏健連合」のシナリオを提唱している。このシナリオは、正体不明の中道の出現で崩れ去ったようにも見えるが、反高市・超党派議員連盟が成立すれば、「高市政権=右派ポピュリズム政党」に対峙する「穏健連合」への道が開けるかもしれない(つづく)。

皇室典範改正・衆議院議員定数削減・中傷動画作成疑惑を巡る〝反高市・超党派議員連盟〟の結成が急務、与党絶対多数政権におけるリベラル会派のあり方をめぐって(その1)

第221特別国会が7月25日、閉会した。報道各社の世論調査を見ると、内閣支持率は6月から7月にかけて軒並み下落し、高市政権の評価に大きな異変が生じたことを示している。読売69%→57%、日経68%→58%、産経65.3%→61.6%、朝日60%→53%、共同通信55.8%→53.7%など、下落幅は最大10~12ポイントに及んでいる。なかでも「重ね聞き」をしない時事通信と毎日は、時事54.3%→49.0%、毎日51%→41%となり、支持率が初めて5割を割った。さらに、毎日は不支持率が44%で支持率を上回った(朝日、7月28日)。

※「重ね聞き」とは、「支持する」「支持しない」について「わからない(無回答を含む)」と答えた回答者に対して「どちらかと言えば」と再度聞き、そこで得た回答を最初の回答に加算して支持率・不支持率を算出する方法。「重ね聞き」をしない場合は、最初の回答がそのまま支持率・不支持率となるが、「重ね聞き」の場合は、「どちらかと言えば支持」「どちらかと言えば不支持」をそれぞれ「支持」「不支持」に加算するので支持率・不支持率は高くなる。

※調査方法は、コンピューターで無作為に作成した固定電話と携帯電話の番号にかけるRDD(ランダム・デジット・ダイアリング)方式で、18歳以上の有権者を対象にして実施される。時事通信の場合は、全国の18歳以上の男女2000人を無作為に選び、調査員が対象者を訪問して対面で意見を聞く「面接法」によって実施される。この方法は、自動音声による電話の応答よりも正確な意見を収集することが可能となる。

 

国会閉会後の各紙社説は、ニュアンスの違いはあるとはいえ、いずれも高市首相の国会運営への厳しい批判で共通している。以下は朝日・毎日・読売各紙の社説の要旨である。

〇朝日新聞(7月26日):「説明責任からの逃走、国会をゆがめた首相の独善」

・高市首相が衆院選後初めて臨んだ国会で見えたのは、説明責任から逃げ、「数の力」で押し通そうとする首相と、それを制御できない自民党の責任政党としての劣化だった。国民の代表として政府を監視する立法府の機能は大きく歪められ、首相の責任が厳しく問われる。

・日本国憲法は、国会を国権の最高機関と定め、首相や閣僚に出席する義務を課している。国会への出席を軽視する高市首相には、立憲主義の下、立法府に対して行政府の長が果たすべき役割への理解が欠けている。また、政治への信頼にかかわる中傷動画報道に関する対応も場当たり的で、最後まで疑念を払拭する説明はなかった。

・国会最終版では、多くの国民が苦しんでいる物価高騰など国民生活に直結する課題ではなく、改正皇室典範や国旗損壊処罰法、インテリジェンス強化法や副首都法など、日本維新の会との連立合意の具体化が最優先された。連立に応じた維新への恩義に報いるためであり、国政よりも私情を優先する行為そのものだ。

・衆院で圧倒的な議席差があるとはいえ、野党の力不足も深刻だった。衆院で野党第1党の中道改革連合は、参院では立憲民主党と公明党に分かれたままで、インテリジェンス強化法や改正皇室典範では、衆院で中道は賛成、参院で立憲は反対と、重要法案をめぐる態度が分かれた。このままでは、巨大与党に対抗する軸になるのは難しい。だが、政権を監視し、国民の多様な声を政治に反映させる野党の役割は、これまで以上に重みを増している。野党の立て直しと連携強化が急がれる。

 

〇毎日新聞(7月26日):「国会閉会と高市首相、独りよがりが分断深めた」

・特別国会が閉会した。あらわになったのは、立法府の危機的状況である。巨大与党を率いる高市首相は独善的な振る舞いに終始し、審議の形骸化が進んだ。通常国会冒頭で首相は唐突に衆院解散に踏み切り、自民党が衆院の3分の2を超える圧勝を収めた国会では、「国論を二分する政策」の具体化へ突き進んだ。

・国民生活は上向かず、将来不安が増している中で、首相はそうした懸念に応えることなく肝いりの戦略17分野に巨費を投じ、経済成長を実現する構想を描く。後半国会では、日本維新の会との連立合意に固執し、皇統の男系維持に踏み込む皇室典範を改正し、衆院議員定数の「比例代表のみ削減」を主張し、不要不急の国旗損壊処罰法や副首都法を成立させた。いずれも国民感覚とはかけ離れており、政策の優先順位を見誤っている。「二分」させた国論を統合する努力を欠いたまま、独りよがりな政権運営に陥れば分断を深めるばかりだ。

・首相の露骨な国会軽視は、予算委員会の集中審議出席の異例の少なさや中傷動画問題への答弁回避にもあらわれている。自民は首相に追随し、国民政党としての自律性を欠いた。細分化した野党は対立軸を打ち出せず、監視機能も発揮できなかった。言論の府の立て直しは急務である。高市内閣の支持率は下降し、有権者の期待が剥落しつつある。数の力を振りかざす強権的な手法は通用しない。首相は猛省し、多様な声に耳を傾けるべきだ。そうでなければ人々の心はさらに離れる。

 

〇読売新聞(7月29日):「内閣支持率下落、謙虚さを備えた政権運営に」

・特別国会で成立した改正皇室典範については、問題点が多く指摘された。高市首相は謙虚に政権運営にあたらねばならない。読売新聞の7月の世論調査で内閣支持率が57%となり、昨年10月の内閣発足以降で最低となった。調査では、首相が改正皇室典範などに関して国民に十分に説明していると思わない、との回答が62%に上った。旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎えるのを可能にしたことについて「評価しない」の方が多かった。

・象徴天皇制の根幹にかかわる重大な制度変更だったが、衆参両院の質疑時間は計6時間余り、多くの国民が納得を得るに至っていない。皇室典範を再改正して、女性の天皇を認めることに「賛成」と回答した人は85%に達した。首相は衆院予算委員会で、安定的な皇位継承策を議論する新たな有識者会議の設置について「ただちに考えていない」と述べたが、改正皇室典範が抱える欠陥を放置してはならない。

・物価高への政府の対応を「評価しない」と答えた人は71%で、前回より15ポイントも増えた。首相は近く食料品の消費税率を1%に引き下げることについて判断を示す見通しだが、野党や有識者からは効果を疑問視する声が上がり、代替財源の確保などへの具体策も示されていない。首相は消費減税を撤回するのが筋だ。

・先の国会では、例年の通常国会より首相の予算委出席時間が少なかった。衆院選などで自身の陣営が他候補の中傷動画をSNSに投稿したとされる案件を巡り、野党の追及を嫌ったとされるが、首相は説明を尽くさねばならない。首相は一人で職務を抱え込む傾向が強い。党幹部や閣僚に任せるべきは任せて、政権運営の態勢を固め直す必要がある。

 

それでも、衆院で3分の2を超える絶対多数の議席を得た高市首相は、世論を無視してでも国会は「数の力」で乗り切れると思っているらしい。7月27日夜の記者会見では、公約実現をめざす方針にはこれまでと変わりないことを強調し、記者団から繰り返し説明を求められた「国民生活に直結する政策が後回しだ。支持率低下の要因は何か」「国会の反省点は」などの質問についても、「反省点というのは特にない」「支持率下落の原因は分からない」などと突っぱねた(朝日・日経、7月28日)。世論の批判を受け付けない「独りよがり」の姿勢は、生来の独善性と政治情勢を客観的に理解できない稚拙性の表れと言えるが、問題はこの状況に対応できない野党にある。

 

最大の問題は、中道改革連合が野党の役割を果たしていないことだ。衆院の立憲民主党がこれまでの安保法制や原発に対する基本政策を理由もなく投げ捨て、公明党に合流した結果、支持者に見放されて総選挙で惨敗(壊滅)した教訓が生かされていない。今国会でも、中道改革連合は公明の路線に引きずられて国民の大半が支持している「女性天皇」の実現に背を向け、あろうことか「赤の他人」に近い旧宮家の養子(男子)を容認し、あまつさえその子(男子)に皇位継承権を認めることに賛成した(参院では公明党賛成、立憲民主党反対)。これでは、中道改革連合、立憲民主、公明3党の合流など「夢のまた夢」に終わる公算が大きい。

 

中道改革連合以外の野党にしても、存在感は薄れるばかりだ。ポピュリズムの波に乗じたれいわ新選組は、山本太郎の政界引退を機に一気に消滅に向かうだろうし、社民党は内紛によるイメージ低下が深刻でこのまま沈んでいく可能性が大きい。共産党は、党の総力を挙げた「集中期間」においても党勢後退を覆すことができなかった。「左派リベラル票」の行方は浮遊しているというべきだろう(日経「れいわとポピュリズム(上下)」、7月23、25日)。

 

となると、野党再編による高市政権への対抗軸の構築に比べて、超党派(議員連盟)で取り組める「皇室典範改正」「衆議院議員定数削減」「中傷動画作成疑惑」の〝3大政治課題〟が浮かび上がってくる。これらは、いずれも自民党内でも異論が大きかった政策だけに、「超党派=政党横断的課題」になってもおかしくない。

(1)第1課題「皇室典範改正」

女性天皇の可能性を封じた時代錯誤の改正皇室典範は、早くも「再改正」が世論になりつつある。※読売世論調査(7月27日)「歴代の天皇の多くは男性ですが、女性の天皇もいました。今後、皇室典範を再び改正して、女性の天皇を認めることに、賛成ですか、反対ですか」、賛成85%、反対8%、答えない6%。

(2)第2課題「衆議院議員定数削減」

 衆議院議員定数「比例のみ」45議席削減は、自民3%減、維新14%減と比較的影響が少ないのに対して、野党は参政40%減、国民29%減、みらい25%減、共産25%減、中道22%減など、壊滅的な影響を受ける(朝日、7月29日)。与党は既に、先の国会で(野党欠席のまま)比例区で45議席を削減する法案を提出しており、秋の臨時国会で採決を強行すれば、国会がマヒ状態に陥り、日本の議会制民主主義は崩壊する。

(3)第3課題「中傷動画作成疑惑」

  自民党総裁選における高市陣営の中傷動画作成疑惑は、自民党の党内問題とは言え、自民党総裁が首相に選ばれる以上、これも議会制民主主義の根幹にかかわる大問題と言える。中傷動画作成疑惑の解明は、高市政権打倒にストレートにつながるだけに、徹底的解明が必要になる。

 

秋の臨時国会を控えて、内閣改造の可能性など雑多な情報が飛び交っている。日本の議会制民主主義が危機に直面している今、党派を超えた国会正常化の努力が求められる。与野党を問わず「リベラル会派」の奮闘を期待したい(つづく)。

日本共産党創立104周年記念講演会の表題は「歴史の岐路、希望の明日を切り開く生き方を」と銘打った壮大なもの、だが、実態は党勢拡大「集中期間」のキャンペーンだった、共産党の再生は可能か(その29)

7月18日に党本部と全国をオンラインでつないで開催された日本共産党創立104周年記念講演会は、いったい何を訴えたのだろうか。田村委員長の記念講演の全文は、赤旗(7月20日)に全3頁にわたって掲載されている。(1)国連憲章を巡る岐路――平和の国際秩序をつくる道か、形骸化を許すのか、(2)日本国憲法を巡る岐路――公布80年、憲法の力を発揮するのか、根本から覆す逆流を許すのか、(3)大企業中心が行き詰まるもと、無謀で危険な道を許していいのか――「富の一極集中」に切り込み暮らしを豊かに、(4)「資本主義というシステムをこのまま続けていいのか」――「人間の自由」が豊かに花開く未来社会への展望をもつ生き方を、という4つの「歴史の岐路」が提示され、「むすび」は日本共産党への入党の訴える「希望の明日を切り開く生き方」の行動提起で終わっている。

 

記念講演を一読して感じることは、「歴史の岐路」を掲げた壮大な時代分析に比べて、「希望の明日を切り開く生き方」があまりにも小さいことである。国連憲章に基づく国際秩序の崩壊、平和憲法の改悪による軍事大国化、大企業の専制支配による富の一極集中、世界資本主義の暴走による地球環境の破壊と格差分断の拡大など、世界と日本はまさに〝人類史的危機〟に直面している。これを「歴史の岐路」というのは、まさにその通りであろう。これに対する「規模の明日を切り開く生き方」として挙げられたのは、(1)「要求対話・アンケート」で国民の中で対話し、要求に応える活動に取り組む方針、実践としての「ストリート対話」、(2)資本論解説の「赤本・青本」の学習運動、の2つである。これらは日常活動レベルのものであって、「歴史の岐路」に立ち向かう時代的戦略行動としては如何にも小さい。後房雄著が指摘する如く、共産党が国の政治に現実的影響力をもつ時代は基本的に終わり、党の「延命」を図るだけで精一杯という段階に入ったのかもしれない。

 

記念講演会を報じる赤旗は、その日から日報体制で入党成果を連日速報している。「全国で60人以上入党、熱い思い胸に今、動かないと」(7月19日)、「入党 18日は80人、2020年代最多 連休さらに」(7月20日)、「記念講演 見て聞いて、2日で123人入党」「集中期間成功へ連日飛躍を」(7月21日)、「党勢拡大 3連休でグングン」(7月22日)といった具合である。さらに後半に入った7月22日には、オンラインで小池書記局長・集中期間推進本部長の「党創立記念講演を力に『集中期間』の目標総達成を」との訴えが出された(7月23日、要旨)。

――党員拡大は、7月に5132人に働きかけ、入党の申し込みが344人、そのうち青年・学生が26人、30代~50代の真ん中世代が74人となっています。先月の同時期と比較すると、入党の働きかけは2.5倍、申し込みは2.2倍のテンポになっています。赤旗購読約束は、日刊紙479人、日曜版2841人で、読者拡大でも先月の同時期を若干上回る拡大になっています。「手紙」の「返事」を出した支部は36.4%、幹部会の時点の「返事」16.2%の2倍以上になっています。

 

「集中期間」が残る4日になった7月28日には、大幡機関紙活動局長の「残る4日間、党員拡大目標達成への大きなうねりのなかで、1年2カ月ぶりに日刊紙、日曜版ともの前進を必ず」の訴えが出された(7月29日、要旨)。

――党員拡大は、7月に約7千人に働きかけ、483人が入党を申し込みました。8中総の「手紙」の「返事」を出した支部は39.4%です。読者拡大は、日刊紙768人、日曜版4397人、前進には日刊紙であと1400人以上、日曜版であと6700人以上の拡大が必要です。読者拡大は、参院選挙後1年2カ月にわたって後退が続いています。地方議員・候補者のみなさんがこの活動の先頭に立ち、8月7日の全国地方議員・候補者決起集会に持ち寄りましょう。

 

6、7月の2カ月で2000人の新規入党者を迎え、全ての支部・グループが「手紙」を討議し「返事」を寄せる――、という「集中期間」の目標からすれば、7月28日現在、入党者数は381人(6月)+483人(7月)=864人(目標の43%)、「返事」を出した支部は39.4%にとどまり、目標を達成することはほぼ不可能となっている。また、小池書記局長によれば、7月の入党申し込み344人のうち青年・学生26人(7%)、30代~50代の真ん中世代74人(21%)、残り144人(71%)は60代以上となり、党組織の「若返り」はいっこうに進まない。加えて、昨年9月から今年3月までの入党者のうち新入党員教育未終了3分の1、党費未納4分の1(赤旗、7月16日)というのだから、これでは新入党員の成長もおぼつかない。共産党の党組織は「質量ともに」危機的状況にあり「延命」さえも難しくなってきている、というべきであろう。

 

一方、「集中期間」が党員拡大に重点が置かれているため、機関紙活動は後退を続け、日刊紙・日曜版ともに参院選後1年2カ月にわたって減紙が続いている。残る4日間で日刊紙1400人以上、日曜版6700人以上の拡大が必要だというが、これが可能だと思う地方議員や党員はおそらく誰一人いないだろう。要するに、党大会で決定した党勢拡大目標が党の実力を無視した「過大」なものであり、それが具体的な数字として表れているにすぎないのである。

 

田村委員長は7月24日夜、特別国会閉会にあたって党国会議員団総会であいさつを行い、最後に次のように述べた(7月26日、要旨)。

――行き詰まっている高市政権、しかしこの政治を変えるには、日本共産党があまりにも小さく、議席も少なすぎる。このことを今国会で私は痛感しています。なんとしても党を大きくして、次の国政選挙で勝利しようではありませんか。その可能性・条件を要求対話・ストリート対話、マルクスの『資本論』を読むムーブメントを起こそうという二つの挑戦の中で、私たちは切り開いてきました。この挑戦を党づくりに必ず実らせましょう。

 

だが、ここには行き詰まっているのは高市政権だけではなく、志位議長が主導する共産党も同じだという自覚がまったく見られない。皇室典範改正を機に高市政権に対する内閣支持率は急激な下落を見せている中で、国民・有権者の政治意識の劇的な変化に対応する清新な政治戦略が求められている今、これを的確に捉える行動提起を生み出せていないことに田村委員長は気付いていないのだろうか。「要求対話・ストリート対話」と資本論の学習ムーブメントだけでは、あまりにも寂しすぎるからである(つづく)。