共産党は9月3日、来年1月の第30回党大会に向けて第9回中央委員会総会(9中総)を開いた。冒頭の志位議長のあいさつは、第29回党大会(2024年1月)で決議した「党づくりの後退から前進への歴史的転換を果たす」目標をやり抜くことが、第30回党大会の成否を決める――と強調するものだった(赤旗9月4日、要旨)。
志位議長のあいさつは、「共産党の値打ち」を強調する強烈な自負心(自画自賛)で貫かれており、党が直面する困難を全てスルーするところに際立った特徴がある。その論理は、第1に、前大会以降の3回連続の国政選挙における共産党の苦戦と後退の原因を党組織の問題として位置付けるのではなく、全てを外部要因に転嫁し、指導部の責任を回避(免罪)しているというものである。
―― 一連の選挙では、客観的な難しさもありました。国民民主党など自民党の補完勢力や、参政党など極右勢力の伸長、「クーデター的」な解散・総選挙での「高市旋風」など、わが党が伸びるうえでのさまざまな「突風」や「逆風」がつくられ、党の値打ちが国民に見えづらい政党状況がつくられるもとで、わが党は苦戦を強いられました。
――その大きな背景には、自民党政治が危機に陥るもとで「日本共産党だけは何としても封じ込めておきたい」という支配勢力の動きがあったことは疑いありません。
第2は、世論調査の政党支持率の動向など客観的データを示すことなく、新しい政治情勢のもとで「共産党の値打ち」がクッキリと浮かび上がってきていると、一方的に主張していることである。
――高市政権が暴走して内閣支持率が下落する一方で、暴走をけしかけ、迎合し、協力を競い合う補完勢力や極右勢力が正体を見抜かれ、自らの存在意義を示せなくなり、政治的に失速しています。
――こうしたなかで、平和、暮らし、民主主義の問題で正面から高市政権に立ち向かい、希望ある国民的対案を堂々と掲げる日本共産党の値打ちが、新しい政党配置の中でクッキリと浮かび上がってきています。
――政党配置の見晴らしが良くなり、わが党の値打ちが見えやすくなってきました。打って出るならば、党が前進できるチャンスの情勢が生まれつつあります。
第3は、中道改革連合が崩壊して野党の多弱化が進む中で〝リベラル結集〟の方向を示せず、①「要求対話・要求アンケート」、②未来社会論を語る『資本論』学習、③党中央からの「手紙」と「返事」といった、党勢拡大のための党内課題に終始していることである。
――「要求対話・要求アンケートで新しい結びつきを広げる」という新しい活動方法を、選挙戦と党づくりの双方を前進させる「戦略的大方針」に位置付けて取り組んできました。この活動に取り組むなかで、党の国民への働きかけの質が大きく変わりつつあります。
――資本主義的搾取によって奪われているのは「モノ」や「カネ」だけではなく、人間が発達するための「自由な時間」が奪われていることに光をあてたのが、『資本論』の新しい読み方です。このことが、人間の生き方を問うものとして人々の胸に響き、党員拡大運動でも大きな力を発揮しつつあります。
――第29回党大会決定に基づく「双方向・循環型」の活動として、党中央から支部・グループに送った「手紙」への「返事」が、現在51.5%に達していることは、党勢拡大運動をすべての支部・グループが参加する運動に発展させるうえでの大きな可能性を示しています。
その一方、志位議長のあいさつに続く小池書記局長の報告「全党の支部・グループと党員のみなさんへの訴え」は、依然として党勢後退が止まらず、目標達成が遠のく深刻な事態を訴えている。クッキリと浮かび上がったのは、志位議長の言う「共産党の値打ち」ではなく、党勢の「歴史的後退」という厳しい現実だったのである。訴えの全文は、「9中総決議」(全会一致)として翌5日の赤旗に掲載された(以下、要旨)。
――8月3日の幹部会決議は、8月、9月を「第30回大会成功『中間目標』実現をめざす党勢拡大の飛躍期間」として全党に呼びかけましたが、8月の実績は新規入党者419人、赤旗読者(紙)は日刊紙534人減、日曜版2354人減、電子版読者は日刊紙37人増、日曜版23人増、「手紙」の「返事」を出した支部は51.5%でした。
――「飛躍期間」での党員拡大目標は、9月末までに世代的継承を軸に6000人を拡大することです。そのためには入党の働きかけを10万人に広げ、全国1万7000支部が1支部平均6人程度の働きかけをすれば可能です。また、1支部が党員1人を増やせば6000人の拡大目標もゆうゆうと実現できます。
――赤旗読者拡大は、昨年10月にスタートした日曜版電子版読者が1万人を超えるなど、電子版読者は日刊紙、日曜版とも前進していますが、紙の日刊紙、日曜版は2025年7月の参院選以降、連続後退を続けており、このままでは発行の現実的危機に直面することになります。
――「飛躍期間」での赤旗読者拡大目標は、9月末までに「日刊紙3900人、日曜版2万1千人の前進」です。このため、入党の働きかけの際や「要求対話・要求アンケート」に取り組む際には、必ず赤旗購読の呼びかけをしましょう。
これだけを読むと、今年8月の拡大目標が達成できず、9月末までに挽回すれば何とかなるようにも受け取れるが、ことはそう簡単ではない。事態の推移は、第29回党大会(2024年1月)で決議した拡大目標が悉く破綻し、目標を下方修正しても達成できず、第30回党大会まであと4か月の段階に至っても、未だ党勢の「歴史的後退」から脱却できない――、という経過をたどっているからである。前大会以降の経過を振り返ってみよう。
〇第29回党大会(2024年1月)時の党勢は、党員25万人、赤旗読者85万人だった。拡大目標として、①第30回党大会(2026年1月予定)までに、第28回党大会現勢(党員27万人、赤旗読者100万人)を必ず回復・突破する、②2028年末までに、党員35万人、赤旗読者130万人を達成する、と決議された。しかし、その後の2年間で党員は25万人から24万人へ、赤旗読者は85万人から77万人へ後退し、第30回党大会を1年延期せざるを得なくなった。
〇大会延期後の2026年3月、第8回中央委員会総会(8中総)は、①第30回党大会までの拡大目標を第29回党大会現勢(党員25万人、赤旗読者85万人)に下方修正する、②9月末までに達成すべき「中間目標」として党大会までの拡大目標の「半分以上」をやり抜くことを決議した。具体的には、6~7月を党勢拡大のための「集中期間」に設定し、(イ)2万人に入党を働きかけ2000人の新規入党者を迎える、(ロ)すべての支部・グループが「手紙」を討議し「返事」を寄せる、というものだった。「集中期間」の実績は、新規入党者995人(5割弱)、「手紙」を討議した支部は8割超、「返事」を出した支部は4割超に止まった。赤旗読者は6月、7月とも後退した。
〇党中央幹部会は2026年8月、9月末までの「中間目標」を党大会までの「半分以上」から「4分の1以上」に下方修正した。具体的には、①世代的継承を軸に党員6000人を拡大、②赤旗読者は日刊紙3900人、日曜版2万1千人前進(純増)、③全支部からの「返事」達成、の3点である。8月の実績は、新規入党者は419人(目標6000人の7%)、赤旗読者(紙)は日刊紙534人減(電子版37人増)、日曜版2354人減(電子版23人増)と後退だった。「返事」は51.5%だった。
これら一連の経過からも分かるように、党勢拡大を前提にした方針はもはや現実性を失い、「スローガン」の一種と化している。幹部会がこの事態を事実上の「目標のない活動」と認めざるを得なかったように、拡大目標はすでに「空文化」している。目標を下方修正して「必ず達成する目標」を設定してもその目標さえ達成できず、党勢拡大は事実上の「目標のない活動」へ転化しつつある。
思えば、日本の「失われた30年」は共産党の党勢後退と軌を一にしている。日本経済の失速と家計所得の低下とともに、共産党の党勢も右肩下がりで後退してきた。30年前の第20回党大会(1994年7月)から現在まで、党員は36万人から24万人(3分の2)、赤旗読者は250万人から75万人(3割)に減少している。党勢後退は、党員の量的縮小だけではなく、党員の「超高齢化」という質的変化を伴っている。2024年現在、65歳以上の高齢者が3分の2近くに達し、活動量は当時に比べて飛躍的に落ちている。
なぜ、共産党は党勢後退が止まらないにもかかわらず、成果を期待できそうにもない党勢拡大運動を続けるのか。答えはただ一つ、それに代わる党活動のイメージが描けないからであり、「開かれた左翼進歩勢力」へ転換できないからである。党の影響力を大きくするには「自力強化=強くて大きい党づくり」をすることしか念頭になく、それ以外の道を構想できないからである。党首代表選挙も党役員の定年制もなく、志位議長をはじめ党指導部が長期にわたって刷新されないため、「新しい政治」に対する斬新な構想が生まれてこない。党員・支部の自由な討論や交流を禁止する「民主集中制」の規約によって党組織が閉鎖的になり、国民の政治感覚から大きく乖離しているため、下部組織からも新しい構想が生まれてこない。
「市民と野党の共闘」が中道改革連合の結成によって分断され、その中道改革連合が1年足らずして崩壊するという政治情勢の激動化の中で、共産党は〝リベラル結集〟の方向を示すことができないでいる。「政党配置の見晴らしがよくなった」「日本共産党の値打ちが見えやすくなっている」「目の前に飛躍のチャンスが広がっている」(9中総「田村委員長の討論のまとめの発言」赤旗9月6日)などというだけでは、共産党の孤立を深めるだけで〝リベラル結集〟の道は拓けない。多弱化した野党の中で共産党が存在意義を示すためには、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」といった大胆な政策転換が求められる。志位議長の講演だけが大特集されるような赤旗の編集方針は、一刻も早い抜本的な刷新が求められる。
山本太郎代表の引退にともない、旧れいわ新選組は党首代表選挙を行い、党名を「いのちの党」に代えるなど、「解党的出直しを進める」との改革方向を決議した。山本譲司新代表は、「山本太郎というスターの個に依存していた選挙態勢から脱却を進める」ことも強調した(毎日新聞、9月8日)。共産党にとって求められるのは「解党的出直し」であり、来年1月の第30回党大会をその契機にしなければならない。①志位議長をはじめ古参幹部が揃って引退する、②若手と中堅世代を抜擢して新指導部をつくる、③党首代表選挙を実施して清新なリーダーを選ぶ、④「民主集中制」の規約を撤廃して党員・支部間の自由で開かれた党組織に改革する、⑤党員拡大による「強くて大きな党づくり」から〝リベラル結集〟の軸になる「開かれた左翼進歩勢力」へ脱皮する、などなどである。
来年1月の第30回党大会の議題が目下検討されているという。「共産党の値打ち」を強調する唯我独尊的な方針が打ち出されるのか、それとも〝リベラル結集〟の軸となる斬新な方針が打ち出されるのか、余り期待を持たないで注目していきたい(つづく)。