現職候補の3選を許した選挙結果についての神戸市長選座談会、その1、(堺市長選、神戸市長選はどうなる、その6)

A:10月25日の神戸市長選の結果が出た。現職候補は前回得票数を大きく減らしたものの、何とか逃げ切って3選を果たした。しかし無名の民間新人候補に「あわや」というところまで詰め寄られたことは、現職側にとっては大きなショックだっただろう。この背景や原因についてまず感想を聞きたい。

B:現職候補が自公民オール与党推薦で出た前回得票数は19.9万票、民主党単独推薦の今回は16.4万票だからおよそ3.5万票減らしたことになる。投票数は前回は36.7万票、今回は38.2万票で1.5万票増えたから、差し引きでは相当目減りしている。

C:やはり自民・公明の推薦を受けられなかったことが響いているのではないか。選挙中は民主党のパフォーマンスばかりが目立って、自公は「実質支持」を約束していたというものの、相当むくれていたというからね。

B:それは違うと思うよ。確かに自民・公明の票が若干減っていることは事実だが、それ以上に民主党支持の票が大幅に減っているのが注目点だ。マスメディア各社の出口調査によると、民主党支持者の4割あるいはそれ以上の票が民間新人候補に流れたらしい。

A:それだけ「実質オール与党推薦」の現職候補への風当たりが強かったということだろう。首長選挙では支持政党の組み合わせがそのまま票になるわけではないからね。事実、昨日行われた各地の首長選挙でも、民主党単独推薦候補が結構負けている。

B:もう神戸市民は心底から「オール与党体制」に飽き飽きしているからね。「市役所一家はもう御免!」というのが率直なところだ。しかし半世紀以上にわたって「うまい汁」を吸ってきた連中は、いつまでもその味が忘れられない。なかでも市当局と表裏一体になってきた市労連幹部連中の裏工作のあくどさが目に付くね。

C:共産党に独自候補の擁立を持ちかけて、市民団体との協力関係を御破算に追い込んだのも彼らの策動だ。何しろ市労連の幹部や元幹部のなかには、当局から管理職並みの待遇を受けている連中も少なくない。そんな彼らが「別働隊」となって「オール与党体制」を支え、それに対決しようとする市民団体に対してはあらゆる妨害工作を仕掛けるというわけだ。

B:この程度の裏工作にやられる政党もだらしない限りだが、でもそんな複雑な内部事情は一般市民にはわからないよ。それに選挙中に暴露合戦をやったとしても、いわゆる「泥仕合」になってしまって、有権者がかえって目をそむけてしまう可能性の方が大きい。

A:そこが首長選挙の難しいところだ。今回の新人候補がどれだけ準備したかはよくわからないが、駆け出しの市会議員の情報ぐらいで立候補しようとしたのであれば、それは「大甘」という他はない。民間会社経営とくらべると神戸市政は比較にならないほど複雑だし、権力関係も錯綜している。

C:新人候補を取り巻く参謀やスタッフにも問題があったのではないか。主観的な情勢分析が多かったというし、選挙戦術にも不慣れだった。それに勝手連をかってでた市民団体との連携も十分でなかった。市民ボランティアのなかには十分な説明もなく、ただ使い走りをさせられたという不満も大きかった。

B:最大の問題点は、新人候補陣営に神戸市政を根本から刷新するという「大義」や「志し」を感じさせる使命感が乏しかったということだろう。首長選挙に本当に勝利しようと思えば、「誰と手を組むか」といった戦術レベルの話だけではなく、過半数の市民を説得できるだけの大義と真摯な政治姿勢、それに透明性がなければならない。しかもそれは候補者はもとより、参謀やスタッフも含めての話だ。選対が「密室」めいた空気では話にならない。

A:その点で「一糸乱れず」という具合にいかなかったところが、新人候補の惜敗の原因だろう。ところで投票率はどうしてこんなに低かったの。

B:現職候補側の「投票率を上げない戦術」もあったが、基本的には民主党の単独推薦理由が市民の共感を組織できなかったことにある。なにしろ「実質オール与党候補」だということが見え見えだったし、候補者自身も最初から疲れ切っていて精彩がなかった。

C:でも民主党は大張りきりで、大臣もきたし、首相夫人も応援に来たよ。本当ならもっと雰囲気が盛り上がってもよいところだ。とりわけ首相夫人は神戸出身だというしね。

A:総選挙の後で「選挙疲れ」ということもある。しかし投票率が上がらなかった最大の理由は、民主党がいままでの「腐れ縁」からフレッシュな候補者を担げなかったということだ。また共産党が独自候補にこだわったことも「分裂選挙」のイメージを濃くして、関心を低めた。

C:共産党は支持者の基礎票だけは何とか固めたとして「ホッとしている」らしいが、しかしこんな分裂選挙を繰り返していると、最終的には市民から見放されるよ。とにかく今回の選挙で市民団体との関係は決定的に悪化した。

A:それではこの辺で第一部の座談会は終りにして、しばらく経ってから第二部の座談会を開こう。それまでに各自材料を集めておいてほしい。(続く)