井戸川双葉町長不信任決議の波紋、中間貯蔵施設の現地調査受け入れが復興計画に与える影響(1)、福島原発周辺地域・自治体の行方をめぐって(その26)、震災1周年の東北地方を訪ねて(96)

 昨年暮れに日記を休んでから、いつの間にか随分と日が経ってしまった。当初の予定では半月前後で再開できると踏んでいたのだが、予想以上に各種原稿(災害復興学会、建築学会、都市住宅学会など)に手をとられて今日に至ったのが遅れた原因だ。遅ればせながら、福島原発周辺自治体の復興計画の見通しやあり方について考えていきたい。

 この間の最大の出来事は、昨年12月20日福島県双葉町議会が井戸川町長の不信任案を議員8人の全会一致で可決したことだろう。表向きの理由は「生活再建を望む町民の声を聞く努力をしていない」などというものだが、その背景には、国が提案した除染作業に伴う放射能汚染土の中間貯蔵施設の現地調査受け入れをめぐって、井戸川町長と福島県および双葉郡町村長たちとの間の激しい対立があり、それが井戸川町長の不信任につながったといわれている。

 中間貯蔵施設の候補地が具体的に国から初めて示されたのは、2012年8月のことだ。それ以前の3月段階では福島県双葉町大熊町楢葉町の3つの町に分散して設置する基本方向は示されていたものの、地元の反対意見などもあって具体的な計画は進んでいなかった。その後、国と県との間で実質的な協議が(水面下で)精力的に進められ、8月19日になって中間貯蔵施設の建設について話し合う会議の席上、細野環境相から双葉町2カ所(福島第1原発の北西方向)、大熊町9カ所(第1原発の西〜南方向)、楢葉町1カ所(福島第2原発の西南方向)の12カ所が候補地として初めて示されたというわけだ。

中間貯蔵施設は、福島県内の除染作業で出る大量の放射性汚染土やがれきを最終処分場ができるまで約30年間保管しておく施設だ(とされている)。「中間貯蔵施設」だとはいっても地元自治体が「中間貯蔵施設=最終処分場」にならないかと懸念するほどの大型施設であり、汚染土の分別・貯蔵施設や草木の焼却施設などが備えられていて、全体の貯蔵規模は2800万立米(東京ドーム23杯分)、敷地面積は5平方キロに達するという巨大なものだ。

これを既存の原発敷地面積と比較すると、福島第1原発6基が3.5平方キロ、第2原発4基が1.5平方キロだから、両原発を合わせた規模(5平方キロ)の巨大な中間貯蔵施設が建設されることになる。つまり原発10基分の面積に相当する中間貯蔵施設が、12カ所(その後9カ所に変更)に分散されるとはいえ第1原発、第2原発の周辺に建設されるわけだ。

私は放射性廃棄物の専門知識を持ち合わせていないので友人の専門家に問い合わせたところ、彼も断定できないとの条件付きながら「想定される汚染物質(土)に対して施設規模が大き過ぎるのではないか」との返事が返ってきた。このことはいずれ明らかになってくるであろうが、中間貯蔵施設とはいいながら実は最終処分場に必要な規模の面積を想定しているとも考えられ、国の本音がどこにあるか今後注意深くウォッチングしていかなければならない。

問題は、面積規模もさることながら中間貯蔵施設の候補地が「人里離れた場所」ではないということだ。全ての候補地が第1原発から半径15キロ以内にあって、そのなかには3町の中心市街地に近接している候補地も多い。双葉町の場合は中間貯蔵施設から3キロ以内にほぼ全ての市街地や公共施設が含まれるし、大熊町の場合はほとんどが市街地と重なっている。また楢葉町の場合は第2原発のすぐ横だから、人家が散在する地域であることには間違いない。

これは国の候補地選定理由が、国道や高速道路へのアクセスが便利なこと、放射線量が高く住民が帰還するのに時間がかかることを挙げていることから当然といえば当然だが、主として第1原発に近く(放射線量が高くて帰還困難)、陸前浜街道常磐自動車道沿い(国道や高速道路へのアクセスが便利)に候補地が選定されていることは、これら既存市街地や人家の有無にかかわらず、国が土地家屋を買収して中間貯蔵施設を建設する方針を固めたことを意味する。
もっと具体的に言えば、楢葉町はともかく双葉町大熊町は全地域を「帰還困難区域」だと見なして、町域全体を中間貯蔵施設を含めた原発関連用地に転換するための土地利用計画を立て、結果として「ゴーストタウン化計画」を推進していく方針を国が固めたということであり、福島県が事実上同意したということであろう。

これに対して佐藤知事は11月28日、実質的に建設への「ゴーサイン」を出したにもかかわらず、中間貯蔵施設の候補地がある双葉郡町村長らとの会合後においては、「建設を前提としない」ことを条件に現地調査の受け入れを表明するという曖昧な態度をとった。知事は「建設受け入れは別途判断する」、「当該地域への丁寧な説明が必要」、「調査状況の適宜報告」を条件にしながらも、「安全性を証明するには現地に入らないと分からないこともある」との理由で現地調査を受け入れ、延いては建設そのものの受け入れに同意したのである。

このように候補地現地調査が開始されれば、それが既成事実になって次の段階の建設に向かうことは子どもでもわかることだ。でもそんな「出来レース」に抗議して会議に欠席した井戸川双葉町長が、逆に双葉郡町村長たちから批判され、町村会会長を辞任せざるを得ない状況に追い込まれた。またそのことが12月末の井戸川町長に対する双葉町議会の不信任決議へと波及し、議会解散はしたものの今年1月23日には突如辞任表明するということになった。井戸川町長の辞任に至るまでの経過は、原発周辺自治体の今後の行方を示して余りある。(つづく)