日本維新の会と結いの党の合併をどうみる、私党集団の野合か、保守翼賛勢力の総結集=右翼政党の旗揚げか、大阪出直し市長選をめぐって(その17)

 渡辺8億円問題で「第3極政党=個人商店=私党」の存在感が一段と希薄化する中、日本維新の会は4月5日、執行役員会で6月22日の今国会会期末までに結いと合併する方針を確認し、その前段階として参院での統一会派を結成することを決定した。この動きを大きく報じた朝日新聞は、「野党再編、政策棚上げ」、「維新と結い合併方針、原発集団的自衛権で隔たり」、「『第1党』へ思惑一致」との見出しで、以下のような観測記事を掲載した(4月6日)。

 「ここまで政策の違いを抱えながら合併に突き進むのは、維新、結いとも数合わせで野党再編の主導権を握るしか手がないからだ。(略)維新も結いも今年の党大会で野党再編を目指す方針を明確にした。当初は、政権を担った経験がある民主党が再編の中心になるはずだった。だが、民主が最近、自主再建路線を歩み始め、維新は結との連携を先行せざるを得なくなった。さらに、維新は大阪都構想の手詰まりなどで一時期よりも支持率が低迷。結いもみんなの党を飛び出したものの、少数のまま存在感を発揮できないと言う袋小路に入り込んだ。(略)2016年に衆参ダブル選挙も想定される中、野党第1党にならないことには小選挙区での勝利の見込みもない。合併を急がざるを得なかったのが実情だ」

確かに、維新と結いの間には基本政策で超えられないほどの大きな隔たりがある。エネルギー政策に関しては「原子力は必要不可欠」(石原・維新)と「原発ゼロ」(結い)、集団的自衛権については「認める」(橋下・維新)と「解釈改憲は不可」(江田・結い)、憲法では「9条の再検討」(石原・維新)と「憲法改正は時期尚早」(江田・結い)など、国の基本にかかわる憲法、安全保障、エネルギー政策でのスタンスが大きく異なっているからだ(朝日、同上)。

基本政策がこれほど違うにもかかわらず、維新と結いが敢えて合併に踏み切るのはなぜか。ひとつの見方は、朝日が言うように「政治は数の力」だから数合わせのために政策の違いはともかく合併するという「第3極=私党集団=合従連衡」の論理である。もともと維新は「橋下私党」と「石原私党」の野合だから、そこに「江田私党」が加わっても何の不思議もない。要するに民主党に代わって維新・結い合併新党が野党第1党となり、国会運営の主導権を握りたいというものだ。

 もう一つの見方は、「第3極=翼賛勢力結集=右翼政党」の旗揚げというものだ。「みんなの党=渡辺私党」の破綻が明確になった現在、幾らなんでも二番煎じの「私党集団」の合併と言うのでは世間に通らない。このままで行けば「橋下私党」も「石原私党」もやがて破綻することは目に見えている。だから、この辺で「個人商店=私党」の枠を超えた新しい動きを起こして野党再編を進めなければならない。掲げる旗は、自民党と保守2大政党を分け合う「第3極=翼賛勢力結集=右翼政党化」であり、維新と結いの合併はその第一歩だとの見方である。

 私はこの点に関して石原維新共同代表の最近の変化(豹変)に注目する。石原氏は、結との合併に当たってかねてから「結いの党=護憲政党」だと攻撃してきた従来の見解を封印し、合流を容認する姿勢に転じた。石原氏はまた、「党を割ってもかまわない」との強硬意見を吐いていた原発輸出を可能にする原子力協定の承認案採決(衆院、4月4日)においても、維新が党として反対したにもかかわらず「欠席」することで反対票を投じる行動に出なかった。

 石原氏は「渡辺私党」の破綻を目前にして、橋下氏と同じく「私党集団」の落ち行く先(前途)を見たのであろう。そして私党集団としての「第3極政党」に見切りを付け、2015年統一地方選と2016年衆参ダブル選を前に「保守翼賛勢力」の総結集に踏み切ったのではないか。維新と結いの合併新党がどのような名称になるかは目下のところ不明だが、それがソフトなネーミングであれ、「そのものズバリ」であれ、保守2大政党の一翼を担う右翼政党に成長することは間違いない。(つづく)