安保法案参院審議は、日経・読売世論調査(2015年7月24〜26日実施)の内閣支持率逆転と磯崎首相補佐官の暴言で幕を開けた、「オトモダチ発言」でますます追い詰められる安倍政権の行方、大阪都構想住民投票後の政治情勢について(12)、橋下維新の策略と手法を考える(その50)

 安保法案の参院審議が7月27日から始まった。波乱の国会幕開けにふさわしいビッグニュースが2つ、7月27日、28両日の各紙紙面を飾った。ひとつは、日経・読売新聞の世論調査内閣支持率が第2次安倍内閣発足後初めて不支持率が支持率を上回ったこと、もうひとつは、安全保障政策担当の磯崎首相補佐官が7月26日夜、「集団的自衛権もわが国を守るためのものならいいのではないか」「何を考えないといけないか、法的安定性は関係ない。わが国を守るために必要な措置であるかどうかだ」と地方講演の会場でこともなげに言い放ったことだ。

 日経・読売両紙の世論調査は、各紙が安保法案の衆院強行採決直後の7月17〜19日にかけて緊急世論調査を実施したのに対して、若干の「クーリング・ダウン」の期間を設定して行われたのが特徴だ。そこには、強行採決直後の調査では国民の反発や批判が強く出るに違いない、安倍政権を支援する立場からはこのような時期に世論調査を行うのは得策ではない、もう少し世論が沈静してから調査した方が「良い結果」が出るかもしれないーーーとの思惑が働いていたのだろう。

 だが、結果は日経・読売首脳の「期待」を十分に裏切るものだった。両紙とも第2次安倍内閣発足以降、初めて不支持率が支持率を上回る結果となったからだ。いつもは各紙に比べて内閣支持率が高めに出る読売紙でも、前回調査(7月3〜5日実施)に比べて支持率は6ポイント減の43%、不支持率は9ポイント増の49%に逆転した。読売の見出しは、「支持率逆転に衝撃」「政府・与党 安保法案理解進まず」「女性や無党派 不支持上昇」というもので、編集局幹部に与えた「衝撃」の大きさを物語っている。

 原因は明らかで、衆院での強行採決から10日経っても国民の怒りが依然として収まらず、それが内閣支持率の逆転につながっているのである。読売調査では、前回調査に比べて安保法案に対する回答者の態度はそれほど変化していない。安保法案の整備に「賛成」36%→38%、「反対」50%→51%、安保法案の今国会成立に「賛成」25%→26%、「反対」63%→64%とほぼ数字は安定している。なのに、内閣支持率(だけ)は49%→43%、不支持率は40%→49%へと激変したのである。これは偏に、衆院での採決が「適切だ」29%、「適切でない」61%との回答者の判断にもとづくもので、それほどこの強行採決は国民に「理不尽だ、けしからん!」との印象を与えたのだ。

 一方、日経調査の方はもっとクールな結果が出ている。支持率は前回調査(6月26〜28日実施)から9ポイント低下の38%、不支持率は10ポイント上昇の50%となり、文句の付けようのない数字になった。ちなみに「支持する」「支持しない」の2択方式による結果は、43%>37%から35%<46%となって支持率は8ポイント低下、不支持率は9ポイント上昇となっている。

 支持率逆転の原因もほぼ同じで、前回調査に比べて安保法案に対する回答者の態度は、集団的自衛権の行使に「賛成」26%→24%、「反対」56%→59%、安保法案の今国会成立に「賛成」25%→26%、「反対」57%→57%と時間が経つにつれてやや否定側に傾いているが、支持率は47%→38%、不支持率は40%→50%へと激変した。

 こうした状況下での磯崎発言(暴言)だ。「火に油を注ぐ」というが、これでは「火にガソリンをぶっかける」と言った方が適切だろう。それほど磯崎発言は国民の感情を逆撫でしたのである。百田氏といい、磯崎氏といい、安倍首相のオトモダチは役者揃いだ。「ここぞ!」という場面でそれに応える名セリフで大見得をきるのだから、観客には安倍首相のシナリオと演出が手に取るようにわかる。首相は表向き火消しに躍起になっているように見えるが、心中では「よくやった!」と拍手喝采しているに違いない。

 この他、注目すべき現象としては、漸く公明党批判の記事が登場し始めたことだ。7月28日の毎日新聞は、「学会員『公明離れ』続々」、「安保法案巡り 平和の教え『そぐわぬ』」、「参院選時 全員が(集団的自衛権に)『反対』、公明の当選11人『覚えていない』」との皮肉たっぷりの見出しで公明党の変節を伝えている。関西では安保法案反対のデモの中に「バイバイ公明党」のプラカードが目に付くようになり、それが創価学会のシンボルである三色旗に印刷されていたというのだから、あながち偽物とは言えないだろう。

 他紙が沈黙を守っているのは「不思議」と言う以外にないが、もうそろそろ公明党批判の季節が訪れているのではないか。安保法案の参院審議が進むに連れて、公明党の「化けの皮」を剥がしてくれる「勇気ある報道」を期待するところだ。(つづく)