伊勢志摩サミットも、オバマ大統領の広島訪問も、「舛添疑惑」と「JОC東京五輪招致疑惑」をかき消すことができなかった、東京都議会は開催都市東京の名誉をかけて徹底的な疑惑解明に乗り出すべきだ、2016年参院選(衆参ダブル選)を迎えて(その28)

ここ数日間、マスメディア空間は伊勢志摩サミットとオバマ大統領の広島訪問一色で塗りつぶされるだろうと予想していた。舛添都知事の税金の無駄遣いや政治資金流用問題も、JОCが東京五輪招致のために2.3億円もの工作資金(賄賂か?)を怪しげなコンサルタントに贈った疑惑も、全てがかき消されてしまうのではないかと思っていたからだ。

だが、そんな心配はまったく杞憂だった。「舛添疑惑」は、いまやお昼のトークショー番組の主役として定着するようになった。それに、舛添氏が毎週定例記者会見をするたびに新しいニュースが入ってくるのだから、追求には事欠かない。また報道各社の努力もあって、毎回、舛添氏の過去の行状が洗いざらい明るみに出てくるようになったので、この問題が長引けば長引くほど「舛添氏」という人物の全体像が否応なく国民の前にさらけ出されることになる。私の周辺では、朝はNHKの朝ドラをみて、お昼は民放各社の「舛添ショー」をハシゴするのが楽しみだと言っている人も多い。民放各社もこれほどの高視聴率を稼げる番組をやすやすと止めるわけがないので、舛添氏が頑張れば頑張るほど「舛添ショー」が国民の関心を集めることになるわけだ。

といって、舛添氏は今さら引くに引けない立場にあることは間違いない。誰かが言うように、事態はもはや「御免なさい」と謝れば許してもらえるような状況ではないからだ。唯一の方法は知事を即刻辞任することだが、その脱出口を彼自身が塞いでいるのだから、舛添氏はまさに「糞詰まり」の状態に陥っているのである。彼自身としては「退路を断っての戦い」に臨んでいる悲壮な決意(気分)なのだろうが、1千万都民に大迷惑をかけるようなそんな自分勝手な(「自爆テロ」にも比すべき)行為は止めてほしい。

一方、「JОC東京五輪招致疑惑」の方も着実に調査が進んでいる。朝日、毎日両紙だけをとってみても、調査報道記事が日増しに充実してきているのがわかる。伊勢志摩サミット前後の主な記事や社説、コラムなどの見出しを並べてみると、もうそれだけでこの疑惑が地球規模の大ニュースに刻々と成長していくのがよくわかるのである。
5月17日、「五輪招致2.3億円 使い道は、『確認していない』『業務正当』 JОC会長 国会説明」(朝日新聞、「時時刻刻」)
5月18日、「東京五輪招致、活動費の使途を明確に」(毎日新聞、社説)
5月20日、「五輪招致疑惑、厳正に実態の解明を」(朝日新聞、社説)
5月23日、「『電通』に聞きたいこと」(毎日新聞、コラム「風知草」)
5月24日、「2.3億円 解明は不透明、五輪招致 JОCが調査へ、聞き取り対象国内のみ、収支報告 内訳記載なし、汚職資金洗浄 仏が有無捜査」(朝日新聞、「時時刻刻」)、「五輪送金、JОC会長 矛盾次々、『知らない』から『私が決裁』」(毎日新聞
5月27日、「買収禁止条項を契約書に載せず、東京五輪招致委」(朝日新聞)、「五輪招致のコンサル料、2.3億円の使途 追求に期待」(朝日新聞、「池上彰の新聞ななめ読み」)

「舛添疑惑」も「JОC東京五輪招致疑惑」も本番はこれからだ。舛添氏は自分の説明責任は棚に上げ、「第三者」を数十回も繰り返した挙句、5月25日の福島市での記者会見で、政治資金や公用車の別荘通いなどの問題を調査する弁護士2人を決定したことを明らかにした。いずれも政治資金規正法に精通した元検事で、同日から調査を始めたというが、氏名や調査結果の公表時期は明かさなかった。またJОCが設けた調査委員会(弁護士2人、会計士1人、氏名公表)は、5月26日に第1回会合を開き、調査を始めた。

しかし国民・都民の誰もが「身内の第三者」による調査で、疑惑の全容が明らかになるとは思っていないだろう。「舛添第三者報告」では、「大山鳴動して鼠一匹」すなわち政治資金規正法に違反することがなかったという結果になるだろうし、「JОC調査委員会報告」は、森会長が牛耳る東京五輪組織委員会あたりが「JОCに傷がつかない程度」に収めることになるだろう。だから「舛添疑惑」に関しては東京都議会が然るべき責任を果たしてほしいし、「JОC東京五輪招致疑惑」に関しては(残念ながら)フランスの検察当局の捜査の進展を待つほかはない。

すでに都議会運営委員会理事会では、共産党都議団が議会に強力な調査権が与えられる「百条委員会」の設置を提案しており、一部の野党が賛同した。しかし議会の過半数を占める与党の自民、公明は、6月1日に始まる定例会での知事の説明を聞いて判断するとして結論を出さなかった。事態は予断を許さない状況で推移しているというべきだ。ただ、参院選(衆参ダブル選)を目前にして都議会自公与党が曖昧な態度をとれば、巨大な影響力を持つ東京都民の票がどこに流れるか見当がつかなくなる。私の東京の友人たちは、そんな時には「リコールをやる!」と息巻いている。

知事の解職請求(リコール)の成立要件は、3月2日現在の都内有権者1094万人のうち約147万人の署名が必要であり、解職請求が成立してから60日以内に住民投票過半数の賛成があれば知事の失職が確定する。150万人に近い署名を集めることは一見大変なことのように見えるが、私はそうは思わない。もし「リコール」ともなれば、まず若者やママが立ち上がるだろうし、オジサン、オバサンたちも負けてはいないだろう。都内は「都知事解職」「都政刷新」の空前の盛り上がりを見せ、その勢いは当然のことながら自公与党批判へと向かうだろう。たとえそれが参院選(衆参ダブル選)の後であってもである。(つづく)