安倍退陣包囲網がますます狭まってきた、首相が弁明すればするほど国民の不信感は高まる世論構造が定着している、立憲民主を軸とした新野党共闘は成立するか(22)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その109)

 3月19日の参院予算委員会、国会審議のテレビ中継に1日中に釘付けになった。好んで見たわけではない。むしろ、苦痛に耐えて座っていたと言った方がいいかもしれない。だが、午前中の与党議員2人(メディア出身のタカ派議員)のえげつない質問で、安倍政権の姑息なシナリオがバレバレになったのは面白かった。誰も信じないだろうが、あろうことか、財務省が官邸と与党を欺いて勝手に公文書を書き換えたというのである。

 誰がこんな荒唐無稽なシナリオを考え付くのだろう。しかもそれをもっともらしく見せるために、これまでテレビでしばしば登場してきたメディア出身の議員を起用するという小細工まで用意してのことだ。だが、結果は悲惨だった。その内の一人が「消費税増勢推進派の財務省が安倍政権を貶めるために公文書を書き換えたのではないか」と詰問したことが、与党サイドからも不規則発言として議事録から削除される破目になったのだ。「贔屓(ひいき)の引き倒し」とは、まさにこんなことを言うのだろう。

 安倍政権は、いまだ事態の深刻さを理解できていないように見える。こんな小細工で国民の不信を晴らせるとでも思っているのか、佐川前理財局長を中心とした「財務省の一部」に全ての責任を押し付け、安倍首相夫妻をはじめ官邸の取り巻き連中は「無関係」だと白を切り通すつもりでいるらしい。でも、前回の拙ブログでも紹介したように、メディア各社の世論調査では国民の圧倒的多数が安倍首相の国会答弁に「納得できない」、佐川氏や昭恵夫人の「国会説明が必要」だと考えており、この事態を回避するために如何なる策謀を巡らそうとも、結局は無駄骨に終わるだけだ。

 この点で、自由党小沢代表の記者会見がことの本質を衝いていて極めてわかりやすい(朝日新聞デジタル、2018年3月20日)。
 「(森友問題は)国民財産を特定の人にほぼ無償で払い下げるという問題で、あまりにもレベルの低い権力の乱用、私物化です。(文書改ざんは)財務官僚の劣化も問題だけどね、やっぱ、都合の悪いことを役人に押しつけようという政治家の根性はもっとひどいね。(内閣支持率は)もっと下がるんじゃないですか。30%まだあるのか、っちゅう感じだな。彼(安倍晋三首相)の心理は分からないけど、このままズルズルと恥をさらしていくっちゅうのは、普通の政治家だと、ちょっと耐えられないよね。やっぱり潔くこの際、身を引く方がいいだろうとボクは思いますね。いくら頑張っても、このまま頑張り切れるとは私は思っていません。第1次(安倍政権)の時と似たような...」

 また、事件の真相に迫る発言も次第に出てきている。前川前文科事務次官は、「森友疑惑」の全体構造について次のように直言する(AERA dot.2018年3月19日)。
 「国政調査権のある国会に提出された文書が改ざんされていたとは、民主主義が崩壊する事態で犯罪的行為だ。こんな悪事を、真面目で小心な官僚が、自らの判断でできるなど、到底考えられない。文書改ざんは、官邸との間ですり合わせがあって行われたとしか思えない。官僚が、これほど危険な行為を、官邸に何の相談も報告もなしに独断で行うはずがない。文書の詳細さを見れば、現場がいかに本件を特例的な措置と捉えていたかがわかる。忖度ではなく、官邸にいる誰かから「やれ」と言われたのだろう」
 「私は、その“誰か”が総理秘書官の今井尚哉氏ではないかとにらんでいる。国有地の売買をめぐるような案件で、経済産業省出身の一職員である谷査恵子氏の独断で財務省を動かすことはまず不可能。谷氏の上司にあたる今井氏が、財務省に何らかの影響を与えたのでは。今回の問題は、財務省の凋落を象徴しているともいえる。かつての財務省といえば、官庁の中の官庁。官邸内でも、財務省出身者の力が強かった。だが今、官邸メンバーに財務省出身者がほとんどいない。経産省を筆頭に、他省庁の官僚出身の“官邸官僚”の力が増す一方で、財務省は官邸にNOが言えない状態なのだろう」
 「佐川氏は今、政治の新たな“犠牲者”になりつつある。彼は“誰か”を守り通すという選択肢以外持ち得ていないようだが、今や一民間人であり、自由人。もう誰にも忖度する必要はない。(略)佐川氏も本当のことを言えば、楽になれる」

 来る3月27日には、佐川前理財局長の国会証人喚問が決まったという。佐川氏がどのような証言をするかは全く予測がつかない。しかし大方の観測では、「目下捜査中であり、刑事訴追を受ける恐れがあるので発言は差し控える」と態度で、徹頭徹尾ノーコメントを押し通すつもりでいるらしい。しかし問題は、この対応では与党にとっても事態を打開する決め手にならず、先行きがいっこうに見通せないことだ。

 与党が佐川氏の証人喚問に踏み切ったのは、このままでは国会審議がストップして予算編成にとっても多大の支障が出ることを考えてのことであろうが、しかし彼らは一番大切なことを忘れている。それは、ここまで深刻化した国民の政治不信にどう応えるかという議会政治の根本に関する問題であり、その問題と向き合わずして事態の打開を図ることはできないということだ。

 3月19日の与党質問が国民の不信感に「火に油を注ぐ」結果になったように、27日の佐川氏の証人喚問がさらなる「火に油を注ぐ」可能性は否定できない。政府・与党が「行き着くところまで行く」のか、それとも安倍内閣総辞職に踏み切るのか、そろそろ決断しなければならない時が迫っている。3月27日はその「分水嶺」となる重大な潮目を迎えるときであり、我々国民も目が離せない。(つづく)