赤旗(日刊紙)を読まない党員が4割を超える現実をどうみるか、長文の政治方針の学習が忌避され、配達体制が崩れてきている、共産党はいま存亡の岐路に立っている(その19)、岸田内閣と野党共闘(84)

 2月6日の全国都道府県委員長会議以来、赤旗の紙面は「党大会決定の徹底、党勢拡大、世代的継承の3課題をやりぬこう」との檄文で埋め尽くされている。具体的には、志位議長が「中間発言」で解明した新しい理論的・政治的突破点を〝導きの糸〟にして、2月中に大会決定を全支部で討議し、3月中に5割が読了して党勢拡大運動に踏み出そうというのである。2月22日には「暮らしでも平和でも、希望がみえる新しい政治へ、あなたの入党を心からよびかけます」と、入党のよびかけが全紙を使って掲載された。

 

 その一方、党勢拡大(回復)の困難さを窺わせる訴えもある。2月16日の機関紙活動局長の訴えがそれだ(赤旗2月17日)。

 ――第29回党大会は、「全支部・全党員を結集する党に成長してこそ、国民多数を結集することができる」を合言葉に、政治的・思想的に強い党をつくるために、「党生活確立の3原則」(①支部会議に参加する、②日刊紙を購読する、③党費を納める)、決定の読了と一大学習運動で党の質的強化をよびかけました。

 ――いま全国で日刊紙を購読していない党員は4割をこえています。この現状は、‶夜明け前〟にある日本社会の夜明けを実現するために、多数者革命への日本共産党の役割を果たし、民主集中制にもとづいて党中央と全支部・全党員が固く結束し、かつ双方向・循環型の強く大きな党をつくるうえでの根本問題です。この抜本的打開へ二つの方向へ全党的努力をよびかけます。

 ――多くの県で「大運動」期間中の入党者のうち日刊紙を購読している3~5割にとどまっています。(略)未購読党員は、配達が郵送や業者委託になっている地域でより多くなっています。もっとも重要なことは、党員拡大と「党生活確立の3原則」など質的建設を力にした支部の配達体制の確立ですが、そのためにもいまいる党員が日刊紙を読み活動することが急務です。中央は、郵送以外に配達できない地域での経済的に困難な党員への援助措置(1カ月の郵送料1440円の半額720円)をとっています。電子版の紹介とともに積極的活用をよびかけます。

 

 日本共産党の機関紙・赤旗は、日刊紙月3497円(郵送料1410円)、日曜版月930円(郵送料239円)とそれほど安くない。全国紙も昨年夏から値上げされて朝日・毎日・産経は朝夕刊セットで月4900円、日経は5500円になった(読売は4400円で据置)。新聞購読料の値上げは販売部数の更なる減少につながるだけに各社とも随分苦心したというが、それでも値上げしなければやっていけないので踏み切ったと聞いている。赤旗は全国紙に比べて頁数が半分程度しかないのでもともと割高感が否めない。それをカバーしているのが党員による宅配だが、それが高齢化や人手不足で不可能になった地域では郵送・業者委託となり、郵送料が加算されることになる。郵送料を含めると日刊紙は月4907円、日曜版は月1169円となり、全国紙とほぼ同価格(ただし朝刊のみ)になる。これでは党員といえども相当な経済的負担になると言わなければならない。

 

 しかし、赤旗を読まない党員が増えているのはそれだけではないだろう。日刊紙を読まなくなったのは、紙面自体に魅力がなくなって‶新聞〟としての価値が減じているからだ。「長文の政治方針(たとえば大会決議)は見るだけで頭が痛くなる」「肝心のニュースが少なくて読みたい記事がない」「党活動欄は毎日同じ調子のキャンペーンで紙面の無駄」「志位さんの発言や記事がやたらに多すぎる」などなど、そこにはさまざまな原因が横たわっている。赤旗がいくらスクープを連発しても紙面が刷新されるわけではなく、毎日毎日相変わらずの調子で繰り返される主張や檄文は「新聞」というよりは「宣伝ビラ」に近い――と感じている読者が少なくないからである。

 

 なぜ、かくも日刊紙には長文の政治方針が多くの紙面を占めるのか。なぜ、長文の政治方針をかくも徹底して「学習」させるのか。そこには、党中央が「民主集中制」の原則に基づいて党の政治方針を党組織の末端まで徹底させる――という編集方針が墨守されているからだろう。2月23日の「『2月目標をやりきる』連日の推進はかり3連休の行動に踏み出そう」には、こんな1節がある。

 ――2月中に全支部が党大会決定の討議・具体化をはじめることは、党勢拡大目標達成の根本的な力、2年後・5年後目標実現の土台。決定を全党員に届けきり、‶読みましたか〟‶読みましょう〟の声かけを。「五つの突破点」を力に、支部討議と読了推進の手だてをつくそう。

 ――‶奈落の底の自民党〟‶注目される共産党〟――情勢の大変動をつくりだした党と「赤旗」に確信をもって、見本紙を大量に活用して「赤旗」購読を呼びかけよう。機関紙活動局長「訴え」を力に日刊紙拡大の独自の努力を強めよう。

 

 支持者はもとより党員といえども政治や社会に対する関心はさまざまで、全く同じということはない。それを徹底して政治方針の一字一句まで「学習」させることなどおよそ不可能だし、また現実的でもない。大筋で納得できればあとはそれぞれの自由な判断に委ね、疑問点を解明して論点を深めるような紙面づくりの方が効果的だ。そうならないのは、党中央が一から十まで教え込まなければ党員は内容を理解できないという(思い上がった)固定観念があるからだろう。

 

 2月26日に公表された最新の日経新聞世論調査によれば、内閣支持率と自民党支持率はともに25%、いずれも自民党が2012年の政権復帰以降の最低を更新したとある。一方、これに対して支持政党なしの無党派層は36%に上昇したが、共産党支持率は依然として2%程度の底辺に低迷している。「注目される共産党」の支持率が2%程度というのでは前途は限りなく暗くなり、党員はもとより無党派層にも読まれる紙面づくりをしなければ、共産党の未来は開けない。「党大会決定の徹底、党勢拡大、世代的継承の3課題をやりぬこう」との檄文で埋め尽くされた日刊紙など、無党派層の人たちはもとより支持者といえども容易に手に取るとは到底考えられないからである。

 

 2月20日に山下副委員長(大会・幹部会決定推進本部長代理)が行った「緊急の訴え」(赤旗2月21日)では、「2月を、目標を掛け値なしにやり抜く最初の月にしよう」というものだった。具体的には「1万人以上に入党の働きかけを行い、1千人以上の新しい入党者を迎えよう。そのうち6割、7割を若い世代で迎えることも追求しよう」「入党の働きかけと赤旗購読の訴えにとりくむ支部と党員を広げるならば、どの県、どの地区も、残る期間で党員拡大でも読者拡大でも実現が可能な2月目標となっている。ならば掛け値なしにやり抜こうではありませんか」と呼びかけている。だが、この勇ましい掛け声とは裏腹に「現時点の到達点は、入党の働きかけ1500人余り、入党申し込み200人弱となっています。このままでは後退の危険があることを率直に直視したい」と言わざるを得なかった。

 

 赤旗の党員訃報欄には、2月に入ってから延べ153人(26日現在)の死亡者が掲載されている。掲載率を38%とするとすでに400人を超えるに死亡者が出ており、このままでいけば450人を超えることはほぼ確実と思われる。党員現勢=入党者-死亡者-離党者の数式で計算する(離党者数は不明)と、少なくとも数百人以上の入党者がなければ党勢は後退に転じることになる。今年1月の結果は入党者447人、日刊紙1605人減、日曜版5381人減、電子版94人増だった(赤旗2月2日)。推計死亡者数481人なので、離党者を除いても党員増減数は34人減となる。2月もまた党員減、読者減と党勢は後退するのだろうか。(つづく)