志位議長が次期総選挙へ不出馬を表明したことは唐突な印象を与えたが、日が経つにつれて次第にその構図が見えてきた。各紙は、志位氏が次期総選挙に立候補せず、党議長を続投することを簡単に伝えただけで、それ以上の分析には踏み込んでいない。一方赤旗は1月17、19両日にわたって記者会見の模様を大きく伝えている。拙ブログでは、志位議長の不出馬表明の「タテマエ」と「ホンネ」の関係を読み解いてみたい。記者会見の大要は以下の通りである。
――(次期総選挙に出馬しないことは)私自身の心の中では、2024年1月の第29回党大会で新しい党の体制をつくった時に大体決めていたことでした。私は引き続き党の活動のあらゆる分野で必要とされる責任を果たす決意ですが、国政の上では、田村委員長が党を代表する役割を果たすことになります。
――こういう立場で今後の活動をやっていく以上、国会の議席もバトンタッチすることが当然のことと考えてきました。そこで候補者名簿の発表にあたってはそのことを提案し、常任幹部会で決めてもらいました。国会議員からは退くことになりますが、今後も議長として「党の活動のあらゆる分野」で責任を果たす決意です。外交の分野、理論の分野、そして国政の分野でも必要とされる責任を果たしていくつもりです(以下略、赤旗、1月17日)。
また、記者との一問一答についても詳細に掲載されている(同、1月19日、要旨)。
〇今回、立候補しないという判断は世代交代と受け止めてもいいのか。
―― 一番の理由は、24年1月の党大会で党の委員長を交代して、国政の代表者は田村智子委員長だと確認したことです。私は、党の議長として全他の責任を負っているわけですが、国政の代表者は田村委員長だと確認した以上、国会議員は次の方にバトンタッチするのが当たり前だと考えてきました。年齢のことも考えました。私は今71歳ですが、かりに今度立候補して、任期満了までやった場合は75歳になりますから。もちろん日本共産党は画一的な定年制を決めている党ではありません。出処進退はそれぞれの方の判断を尊重して対応することにしています。
〇党員の減少や高齢化、比例票の減少といった状況について。党勢の今後に向けての課題は?
※この質問については一切答えず、日本共産党の役割を抽象的に述べただけだった。
〇共産党は一貫して野党共闘を進めてきたが、現状は共闘がなかなか難しい現状だ。
――2015年に市民と野党の共闘を呼びかけて、その後、一連の国政選挙でこの路線を追求してきました。全体としては大きな意義があったと思うし、成果も出ていると思います。ただ、日本共産党も参加した共闘ということになると、風当たりも強いということを何度も経験してきました。
――今後の共闘をどうするのか。まだ先が見えない状況ですが、いま追求しているのは、「憲法を真ん中に据えた確かな共同」です。まだ国会勢力としては小さいですが、いま勇気をもって旗を立てることが必ず多くの人たちの共感を集めていく流れになりうると確信しています。
――私は、この間、ヨーロッパやアメリカの左翼・進歩勢力ともいろいろ交流してきましたが、極右・排外主義の勢力の台頭にどう立ち向かうかが問われている中で、中途半端ではなく、正面から対決する旗を左翼・進歩勢力が立てたところで、その旗に国民の信頼が集まる。日本でも極右・排外主義の流れが起こっています。高市政権もその流れとさまざまな協力関係の中にあります。右翼的潮流が広がる状況の下で、それに対抗する旗を旗幟鮮明に掲げる進歩勢力の共同が必要という立場で頑張っていきたい。
〇立民・公明両党の新党結成の動きについて、どう考えているか。
――公明党は、集団自衛権を行使する安保法制を推進した政党です。立憲民主党は安保法制は憲法違反だと正面から批判してきました。日本共産党と立憲民主党は、安保法制は憲法違反だから廃止すると基本的に合意して、国政選挙で協力してきたわけです。
――安保法制は過去の問題ではありません。今の問題です。11年前に安保法制で「戦争国家づくり」が法制的に整備され、それを実践に移してのが「安保3文書」です。軍事費の増額、敵基地攻撃能力の保有、「存立危機事態」という概念や高市首相の「台湾発言」なども安保法制の具体化です。安保法制は日本の政治の根本問題ですから、あいまいな態度をとることは許されません。この問題に(立民・公明両党が)どういう対応を取るかを注視していきたいと思います。
この記者会見の最大の注目点は、第1に、党員の減少や高齢化、比例票の減少についての記者質問に対しては志位議長が一切回答しなかったこと。第2に、立民・公明の新党に対する判断は、安保法制についての対応がカギになることを強調したことだろう。とりわけ第2の点に関しては、これまで田村委員長や小池書記局長が他の野党との選挙協力に当たっては、「安保法制廃止が野党共闘の一丁目一番地との立場は変わらない」としばしば強調している。志位議長も「安全保障関連法廃止」で一致することが選挙協力の条件だとしている。しかし、1月19日に発表された立民・公明の新党「中道改革連合」綱領には、政策の第4の柱「現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化」の中に、「憲法の平和主義に基づく専守防衛を基本に、日米同盟と平和外交を軸とした、国民の平和と安全を守る現実的な外交・防衛政策を進める」とあるだけで、安保法制廃止は明記されていない(日経新聞電子版、1月19日)。これで共産党と中道改革連合の選挙協力は事実上不可能になったと言っても間違いないだろう。
問題は、志位議長が今回答しなかった(できなかった)党勢後退と不出馬表明との関係である。志位議長が立候補取りやめを決めた1月13日の常任幹部会では、「解散・総選挙に全党が勇躍して立ち上がろう――いまこそ、時流に流されず、共同の力で政治を変える党の躍進を」との声明の中で、これまでずっと掲げてきた「比例代表650万票、得票率10%以上」の目標が取り下げられ、これを200万票も下回る「450万票、得票率7.5%以上」が新たな目標として掲げられた。ただし、この目標も「『450万票、得票率7.5%以上』は参院比例得票の1.6倍であり、達成するなら大きな躍進となる」との仮定形で語られているように、「達成する」「実現する」といった断定形では言えなくなっている。
過去3回の衆院選における共産党の比例得票数および南関東ブロック比例得票数は、2017年全国440万票(7.9%)、南関東ブロック55万票(8.0%、以下同じ)、2021年416万票(7.2%)、53万票(7.2%)、2024年336万票(6.1%)、43万票(6.1%)と右肩下がりで縮小してきている。南関東ブロックの定数は22人、ドント方式で振り分けられる共産党議席数は、2017年2人(志位和夫10位当選、畑野君江21位当選、斉藤和子以下6人落選)、2021年1人(志位和夫10位当選、畑野君江以下4人落選)、2024年1人(志位和夫13位当選、畑野君江以下3人落選)と選挙ごとに着実に順位が下がり人数が減ってきている。
2025年参院選の共産党比例得票数は286万票(4.8%)と一段と縮小し、これを衆院選比例ブロック別の得票数に換算すると、南関東ブロックは38万票(4.9%)となる(『前衛』2025年11月臨時増刊号)、この得票数では次期衆院選で志位議長が定数22人の中に入らないことも考えられ、党の最高ポストにある議長が落選すれば、その責任は誰に目にも明らかになる。その事態を予測した志位議長が、辞任に追い込まれるのを免れるため「不出馬表明」という名目で〝敵前逃亡〟した――というのが私の仮説(見立て)である。間もなく次期総選挙が始まる。私の仮説が間違いであれば、その不明を詫びなければならない。だが、共産党の比例得票数がさらに減ることにでもなれば、志位議長は「不出馬表明」の如何にかかわらず責任を問われることは間違いなしであろう(つづく)。