志位議長の不出馬は次期総選挙の敗北を見越した〝敵前逃亡行為〟に当たるのではないか、姑息な権力延命策は却って党勢後退を加速させる、通常国会冒頭解散にあたって(2)、共産党の再生は可能か(その4)

志位議長が次期総選挙へ不出馬を表明したことは唐突な印象を与えたが、日が経つにつれて次第にその構図が見えてきた。各紙は、志位氏が次期総選挙に立候補せず、党議長を続投することを簡単に伝えただけで、それ以上の分析には踏み込んでいない。一方赤旗は1月17、19両日にわたって記者会見の模様を大きく伝えている。拙ブログでは、志位議長の不出馬表明の「タテマエ」と「ホンネ」の関係を読み解いてみたい。記者会見の大要は以下の通りである。

――(次期総選挙に出馬しないことは)私自身の心の中では、2024年1月の第29回党大会で新しい党の体制をつくった時に大体決めていたことでした。私は引き続き党の活動のあらゆる分野で必要とされる責任を果たす決意ですが、国政の上では、田村委員長が党を代表する役割を果たすことになります。

――こういう立場で今後の活動をやっていく以上、国会の議席もバトンタッチすることが当然のことと考えてきました。そこで候補者名簿の発表にあたってはそのことを提案し、常任幹部会で決めてもらいました。国会議員からは退くことになりますが、今後も議長として「党の活動のあらゆる分野」で責任を果たす決意です。外交の分野、理論の分野、そして国政の分野でも必要とされる責任を果たしていくつもりです(以下略、赤旗、1月17日)。

 

また、記者との一問一答についても詳細に掲載されている(同、1月19日、要旨)。

〇今回、立候補しないという判断は世代交代と受け止めてもいいのか。

―― 一番の理由は、24年1月の党大会で党の委員長を交代して、国政の代表者は田村智子委員長だと確認したことです。私は、党の議長として全他の責任を負っているわけですが、国政の代表者は田村委員長だと確認した以上、国会議員は次の方にバトンタッチするのが当たり前だと考えてきました。年齢のことも考えました。私は今71歳ですが、かりに今度立候補して、任期満了までやった場合は75歳になりますから。もちろん日本共産党は画一的な定年制を決めている党ではありません。出処進退はそれぞれの方の判断を尊重して対応することにしています。

〇党員の減少や高齢化、比例票の減少といった状況について。党勢の今後に向けての課題は?

※この質問については一切答えず、日本共産党の役割を抽象的に述べただけだった。

〇共産党は一貫して野党共闘を進めてきたが、現状は共闘がなかなか難しい現状だ。

――2015年に市民と野党の共闘を呼びかけて、その後、一連の国政選挙でこの路線を追求してきました。全体としては大きな意義があったと思うし、成果も出ていると思います。ただ、日本共産党も参加した共闘ということになると、風当たりも強いということを何度も経験してきました。

――今後の共闘をどうするのか。まだ先が見えない状況ですが、いま追求しているのは、「憲法を真ん中に据えた確かな共同」です。まだ国会勢力としては小さいですが、いま勇気をもって旗を立てることが必ず多くの人たちの共感を集めていく流れになりうると確信しています。

――私は、この間、ヨーロッパやアメリカの左翼・進歩勢力ともいろいろ交流してきましたが、極右・排外主義の勢力の台頭にどう立ち向かうかが問われている中で、中途半端ではなく、正面から対決する旗を左翼・進歩勢力が立てたところで、その旗に国民の信頼が集まる。日本でも極右・排外主義の流れが起こっています。高市政権もその流れとさまざまな協力関係の中にあります。右翼的潮流が広がる状況の下で、それに対抗する旗を旗幟鮮明に掲げる進歩勢力の共同が必要という立場で頑張っていきたい。

〇立民・公明両党の新党結成の動きについて、どう考えているか。

――公明党は、集団自衛権を行使する安保法制を推進した政党です。立憲民主党は安保法制は憲法違反だと正面から批判してきました。日本共産党と立憲民主党は、安保法制は憲法違反だから廃止すると基本的に合意して、国政選挙で協力してきたわけです。

――安保法制は過去の問題ではありません。今の問題です。11年前に安保法制で「戦争国家づくり」が法制的に整備され、それを実践に移してのが「安保3文書」です。軍事費の増額、敵基地攻撃能力の保有、「存立危機事態」という概念や高市首相の「台湾発言」なども安保法制の具体化です。安保法制は日本の政治の根本問題ですから、あいまいな態度をとることは許されません。この問題に(立民・公明両党が)どういう対応を取るかを注視していきたいと思います。

 

この記者会見の最大の注目点は、第1に、党員の減少や高齢化、比例票の減少についての記者質問に対しては志位議長が一切回答しなかったこと。第2に、立民・公明の新党に対する判断は、安保法制についての対応がカギになることを強調したことだろう。とりわけ第2の点に関しては、これまで田村委員長や小池書記局長が他の野党との選挙協力に当たっては、「安保法制廃止が野党共闘の一丁目一番地との立場は変わらない」としばしば強調している。志位議長も「安全保障関連法廃止」で一致することが選挙協力の条件だとしている。しかし、1月19日に発表された立民・公明の新党「中道改革連合」綱領には、政策の第4の柱「現実的な外交・防衛政策と憲法改正論議の深化」の中に、「憲法の平和主義に基づく専守防衛を基本に、日米同盟と平和外交を軸とした、国民の平和と安全を守る現実的な外交・防衛政策を進める」とあるだけで、安保法制廃止は明記されていない(日経新聞電子版、1月19日)。これで共産党と中道改革連合の選挙協力は事実上不可能になったと言っても間違いないだろう。

 

問題は、志位議長が今回答しなかった(できなかった)党勢後退と不出馬表明との関係である。志位議長が立候補取りやめを決めた1月13日の常任幹部会では、「解散・総選挙に全党が勇躍して立ち上がろう――いまこそ、時流に流されず、共同の力で政治を変える党の躍進を」との声明の中で、これまでずっと掲げてきた「比例代表650万票、得票率10%以上」の目標が取り下げられ、これを200万票も下回る「450万票、得票率7.5%以上」が新たな目標として掲げられた。ただし、この目標も「『450万票、得票率7.5%以上』は参院比例得票の1.6倍であり、達成するなら大きな躍進となる」との仮定形で語られているように、「達成する」「実現する」といった断定形では言えなくなっている。

 

過去3回の衆院選における共産党の比例得票数および南関東ブロック比例得票数は、2017年全国440万票(7.9%)、南関東ブロック55万票(8.0%、以下同じ)、2021年416万票(7.2%)、53万票(7.2%)、2024年336万票(6.1%)、43万票(6.1%)と右肩下がりで縮小してきている。南関東ブロックの定数は22人、ドント方式で振り分けられる共産党議席数は、2017年2人(志位和夫10位当選、畑野君江21位当選、斉藤和子以下6人落選)、2021年1人(志位和夫10位当選、畑野君江以下4人落選)、2024年1人(志位和夫13位当選、畑野君江以下3人落選)と選挙ごとに着実に順位が下がり人数が減ってきている。

 

2025年参院選の共産党比例得票数は286万票(4.8%)と一段と縮小し、これを衆院選比例ブロック別の得票数に換算すると、南関東ブロックは38万票(4.9%)となる(『前衛』2025年11月臨時増刊号)、この得票数では次期衆院選で志位議長が定数22人の中に入らないことも考えられ、党の最高ポストにある議長が落選すれば、その責任は誰に目にも明らかになる。その事態を予測した志位議長が、辞任に追い込まれるのを免れるため「不出馬表明」という名目で〝敵前逃亡〟した――というのが私の仮説(見立て)である。間もなく次期総選挙が始まる。私の仮説が間違いであれば、その不明を詫びなければならない。だが、共産党の比例得票数がさらに減ることにでもなれば、志位議長は「不出馬表明」の如何にかかわらず責任を問われることは間違いなしであろう(つづく)。

立憲・公明の「中道新党」は政権交代の担い手になるか、1月23日通常国会冒頭解散にあたって(1)、共産党の再生は可能か(その3)

 今回の通常国会冒頭解散にともなう政変劇は驚くことばかりだ。なかでも「連立解消の公明 与野党両にらみ」「斉藤代表、自民含め各党と等距離」(朝日新聞、1月14日)とされてきた「どっちつかず」の公明党が、一転して立憲民主党との新党結成に踏み切ったのには驚いた。野田立憲民主党代表と斎藤公明党代表の会談後の発言要旨は以下の通り(読売新聞、1月16日)。

【新党結成】

 野田:公明党から呼びかけがあり、共に新党を作って戦っていく合意ができた。

 斉藤:政治の右傾化が見られる中で、中道勢力を結集することが重要だとの観点から立民、国民民主党、自民党の穏健派に声をかけてきた。

【合流方式】

 斉藤:公明、立民が存続したまま新党を設立する。中道改革の理念や、公明が掲げた五つの旗印に賛同する議員が参加して統一名簿を作成する。参院、地方議員は両党に引き続き所属する。

 野田:党と党の合流ではない。参院、地方議会でも段階を経てそうなる(統合する)結果を出していきたい。

【理念】

 野田:安全保障、原発も含めて綱領を来週初めまでに詰める。

 斉藤:自民と全面対決する党を作るつもりはない。第二新進党を目指すものではない。

【衆院選対応】

 斉藤:小選挙区では、今回結集する候補者を両党で応援する。比例代表名簿には、公明出身者も登載する。小選挙区には公明出身の候補者は擁立しない。

【党名・役員人事】

 野田:党名は16日あたりには決めたい。※党名は「中道改革連合」に決まった。

 斉藤:野田氏と私で共同代表でスタートする。

 

 1月16日の各紙は、いずれも数面にわたってこれまでの経緯を詳細に伝えている。膨大な内容なので「見出し」だけを挙げよう。

〇読売新聞

――「立民・公明 新党結成」「衆院選『中道改革』結集へ、野田・斉藤氏 共同代表に」(1面)

――「社説 立民・公明新党、政界再編への起爆剤になるか」「新党で党勢打開、立民・公明」「政権『保守色』対立軸目指す」「新進党時も部分合流 公明」(3面)

――「自民、公明票離れ危機感、立公が新党結成」「国民民主『加わらない』」「自民、公約作り着手、『積極財政』・安保が柱」(4面)

――「新党結成『寝耳に水』、立民・公明 選挙戦の構図一変 困惑」(25面)

〇朝日新聞

――「立憲と公明 新党結成合意、衆院議員離党し参加」「『中道勢力の結集』狙う」「『公明に接近 党の生きる道これしか』」(1面)

 ――「新党ショック 政界激震」「昨秋から交渉 解散報道で急加速」「公明、中道主義を重視 立憲、脱『民主党』狙う」「公明と断絶 消えた自民の期待」(2面)

 ――「新進党から30年 対自民の結集、立憲・公明代表 再び行動ともに」「中道勢力 政治のど真ん中に 野田氏」「包摂主義・共生社会を目指す 斉藤氏」(4面)

〇毎日新聞

 ――「立憲・公明 新党結成合意、衆院のみ 党名『中道』含む方針」「国民『参加せず』」(1面)

 ――「局面打開へ 中道の一手、立憲・公明 新党結成」「解散報道2日後 極秘会談、夏ごろから水面下で接触」「新進党がモデルか」(3面)

 ――「社説 高市首相が衆院解散へ、大儀欠いた権力の乱用だ」「立憲と公明『公明票』の行方は?」「自民 最大42議席影響、都市部中心に苦戦 党幹部警戒感」「立憲・公明代表の発言 要旨」(5面)

〇日経新聞

 ――「立・公が新党『中道結集』」「衆院選 公明は小選挙区撤退」「『反・高市』で対抗軸」(1面)

 ――「社説 立公中道新党は政策と刷新感が試される」(2面)

 ――「立・公、多党化で埋没に焦り、無党派層の受け皿へ『中道』強調」「綱領・政策とりまとめへ、原発・安保は温度差も」「自民現職 2割苦戦か、小選挙区 公明票離反なら打撃に」「新党、『新進党』に類似、連合傘下の労組支援、寄り合い所帯、3年で解党」(3面)

 

 いずれも似通った紙面だが、読売新聞社説「立民・公明新党、政界再編への起爆剤になるか」がわかりやすい(要旨)。

 ――急転直下の衆院解散によって、受け身に回ると思われていた野党側に、大きな結集軸ができる可能性が出てきた。高市首相が、狙い通りに衆院選で安定した政権基盤を築くことができるか。あるいは中道や改革を掲げる新党が有権者の期待を集めるのか。政界再編含みの短期決戦となる。

 ――立民は野党第1党でありながら、昨年7月の参院選の比例票が国民民主、参政の両党を下回る739万票にとどまった。公明も最多だった2004年862万票に比べて約6割の521万票しか獲得できなかった。新党結成の判断は、立民、公明ともに、このままではじり貧になりかねない、という危機感が背景にあるのだろう。首相が今回、唐突に解散に打って出るのは、内閣支持率が高いうちなら勝利できる、との目算に基づいていよう。

――だが、衆院選の情勢は見通せなくなってきたのではないか。新党は綱領に、現役世代の負担に配慮した社会保障政策や、現実的な外交・防衛政策を進めるといった五つの柱を盛り込む方針だ。こうした基本方針は、従来の立民、公明両党の支持者に限らず、一定の保守層からも支持される可能性がある。野田氏は「穏健な保守にもリベラルにも波及できるチャンスがきた」と強調した。

 

この社説を読んで、昨年11月25日の拙ブログで11月15日刊行の山口二郎・中北浩爾編著『日本政治、再建の条件――失われた30年を超えて』(筑摩選書)を紹介したことを思い出した。山口氏は、右派ポピュリズム政党の進出という最悪のシナリオを防ぐためには、自民党が穏健派と右派に分裂し、穏健派が現在の立憲民主党などと連携して政権を担うという「穏健連合」のシナリオを提唱している。この時点では自公連立政権の崩壊はまだ視野に入っていなかったが、今回の立民・公明両党による新党結成は、その文脈に沿っているとも考えられる。

 

穏健連合の任務は、財政制約の中でできるだけ再分配を進め、社会、経済の持続可能性を維持すること、国力相応の防衛力整備を進めつつ戦争を回避することだとある。穏健中道と右派ポピュリストという対立構図ができれば、保守層の中にも穏健連合に参加する勢力が出てくるかもしれない。野田氏は「穏健な保守にもリベラルにも波及できるチャンスがきた」と強調し、斉藤氏は「政治の右傾化が見られる中で、中道勢力を結集することが重要だとの観点から自民党穏健派にも声をかけてきた」と述べている。高市政権が維新との連立によって日々右派政権の色彩を強めつつある現在、立民・公明両党の新党結成は、政界再編あるいは政権交代の切っ掛けになるかもしれない。

 

なお、本ブログを執筆中に、志位議長が今回の衆院選には出馬しないと言うニュースが飛び込んできた。その理由は定かではないが、次回はこの点について考えてみたい(つづく)。

高市政権の不意打ちで1月23日召集の通常国会冒頭解散が急浮上、野党共闘不発を見越してか、共産党の再生は可能か(その2)

1月10日の読売新聞報道をきっかけに、1月23日召集の通常国会冒頭での解散が一気に浮上してきた。衆院選は「1月27日公示、2月8日投開票」あるいは「2月3日公示、2月15日投開票」の〝超短期決戦〟となる模様だ。総務省は1月10日、各都道府県選挙管理委員会事務局あてに「報道以上の情報はない」としながらも、最速で1月27日公示、2月8日投開票の日程を念頭に「各種スケジュールの確認や業者との調整を含めできる準備を進めておく必要がある」と事務連絡した。

 

高市首相の意図を巡っては、(1)昨年10月の高市内閣発足以降、報道各社の世論調査で6~7割台の内閣支持率を維持しており、高支持率が続くうちに解散に踏み切ることが得策、(2)台湾有事に絡む首相発言をきっかけに日中関係が悪化し、時が経てば日本経済への打撃が避けられない、(3)通常国会の予算委員会では物価高対策や日中関係についての野党追求が始まり、支持率が下がる恐れがあるなど、いろんな背景が憶測されている。

 

朝日新聞は1月12日、「冒頭解散検討、国民生活より党利党略」との社説を掲げた(要旨)。

――通常国会が1月招集となった1992年以降、会期の冒頭で衆院が解散された例はない。歴代政権が国民生活に直結する予算案の年度内成立を優先したためだ。首相は物価高対策や経済政策の効果を早く実感してもらいたいと「目の前の課題に懸命に取り組む」と繰り返してきたが、言葉だけだった。国会が始まれば、一問一答の予算委員会の場で、経済対策の実効性や台湾有事をめぐる首相発言を引き金に悪化した日中関係への対応、官邸幹部による「核兵器保有論」への見解など、首相の答弁が問われる場面が続く。

――政策以外の問題もある。韓国で昨年末、自民党と旧統一教会との密接な関係を示す文書が報じられた。首相が代表を努める政党支部が政治資金規正法の上限を超えて企業献金を受け取っていた問題や、連立を組む日本維新の会の「国保逃れ」もある。一連の問題に対する説明責任を果たさないまま解散するなら、追求をかわすための「自己都合」と受け取られても仕方がない。

――2017年臨時国会の冒頭で、安倍首相は少子高齢化と北朝鮮の脅威に対応する「国難突破解散」と称したが、森友・加計学園問題の追求を避けるためだったことが回顧録で明かされている。首相が真に国民のためというのなら、今は予算審議と山積する内外の諸問題への対応に全力を注ぐべき時だ。

 

だが、こんな正攻法の批判は高市首相には通じないだろう。保守右派頼みの高市氏はもともと党内基盤が弱く、しかも日本維新の会との連立政権が不安定極まりないだけに、自民単独過半数の議席獲得が至上命題となっている。その「千載一遇の機会」が目の前に転がっているとなれば、これに挑まない理由はない。何が何でも権力の座に座り続けたい高市氏にとって、このチャンスを自分のものにできるかどうかが政権の分かれ目になる。早期解散に踏み切ることは早くから予想され、その引き金になったのが、野田立憲代表の「あいまい路線」による野党第一党の不振であり、野党共闘の不発だった。

 

この状況を読売新聞(1月11日)は、「国会冒頭解散検討、短期決戦 擁立急ぐ」「野党協力 道筋描けず」との見出しで、立憲民主党の醜態を次のように報じている(要旨)。

――通常国会冒頭の解散を警戒していなかった野党からは、「寝耳に水だ」との声が相次いだ。選挙準備が進んでいないところが多く、野党間の選挙協力に向けた道筋も描けていない。2026年度予算が成立した後の4月以降に衆院選があると想定していた立民は、自民党との連立から離脱した公明党を意識し、「中道路線」の野党結集に向けて安全保障やエネルギーなどの基本政策の見直しに向けた議論を始めたばかりだった。野田氏は「限りなく候補者を一本に絞っていく」と表明しているものの、残された時間は少なく、立民幹部は「野党協力はほぼ不可能だ」と厳しい表情を見せる。

――公明党でも、野党協力に向けた機運は高まっていない。比例選に注力して、24年衆院選で得た596万票を上回る「600万票以上」を確保し、党勢回復の糸口をつかもうとしているが、課題は現職の党幹部4人がいる小選挙区などの対応だ。党内では「自民との選挙協力がなければ小選挙区では勝てない」との声があり、難しい判断を迫られている。

 

国民民主党と公明党は25年度補正予算案についても賛成に回った。両党は26年度予算案についても肯定的な立場だ。立民との選挙協力に否定的な国民民主党の玉木代表は、「51議席、比例900万票を目指して、全都道府県での候補者擁立を加速したい」と表明した(読売新聞、同上)。こうした情勢から言えることは、高市政権に不意を突かれた野党各党は、それぞれの選挙態勢を整えるのが精一杯で、とても野党共闘どころの話ではないというのが実情だろう。

 

これに対して共産党の対応はどうか。赤旗は1月11日、解散報道を受けた田村委員長の記者会見(1月10日)を「攻勢的に構え準備進める」と報道したが、1面トップには依然として、アメリカの『資本論』読書会の様子が(のんびりと)掲載されている。事実、1月5日に開かれた「2026年党旗びらき」のあいさつ(赤旗、1月6日)では、「今年は、高市政権が高い支持率を背景に情勢の反動的打開を狙い、解散・総選挙に打って出る可能性があります」と一応述べられていたが、予想はあくまでも「可能性」の段階にとどまり、その5日後に解散報道が出るなど露ほども予測していなかった。志位議長もこの間、『資本論』学習会の宣伝一本槍で、通常国会の冒頭解散など全く念頭になかったのである。

 

 昨年12月25日に開かれた党幹部会は、党勢拡大の「集中期間」を4月末まで延長せざるを得なかった。志位議長は幹部会発言で「参議院選挙の結果というのは大変に厳しいものでした。286万まで得票を減らしたことはこの間にない後退でした」「党員拡大についてはまったく止まった状態から出発した。働きかけも止まってしまった状態から出発した。そういうところから出発して、運動を起こしていくというのは、並大抵の努力ではなかったと思います」と語っている(赤旗、12月27日)。

 

共産党の比例得票数は、416万票(2021年衆院選)、361万票(22年参院選)、 336万票(24年衆院選)、286万票(25年参院選)と恐ろしいほどの勢いで縮小している。昨年9月から12月までの「集中期間」の拡大実績は、入党者は目標の3割、日刊紙・日曜版の読者は増勢どころか依然として減少が止まらない有様だ。いわば党勢が「どん底」にあるところへ、「青天の霹靂(へきれき)」とも言うべき解散・総選挙の大波が襲いかかったのだから、その狼狽ぶりは推して知るべしだろう。

 

 共産党は、今回の総選挙でも相変わらず「650万票、得票率10%以上」の目標を掲げて選挙戦を展開するのだろうか。前回参院選で521万票に落ち込んだ公明党が「600万票以上」の目標を設定するのは意外ではないが、286万票しか獲得出来なかった共産党が倍以上の「650万票」を目標とするのは、「奇想天外」以外の何物でもない。党勢の「どん底」に見合うリアルな選挙戦に踏み出すのか、それとも空想的目標を掲げたバーチャルな選挙戦に固執するのか、共産党の選挙戦が注目される(つづく)。

共産党は政党から教義集団に変質したのか、志位議長の「『資本論』がいよいよ生命力を発揮する時代がやってきた」を読んで、共産党の再生は可能か(その1)

年末から年始にかけて、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」を念入りに読んだ。一言で感想を記すと、共産党が「政党=政治団体」から資本論を教義とする「教義団体=イデオロギー集団」に変質しつつあるのではないか、ということだ。赤旗は年末に「『Q&A資本論』(赤本)学習の県・地区委員会の経験交流会」の志位発言を大特集し、年始には志位議長とカナダのマルクス研究者、マルチエロ・ムスト(ヨーク大学教授)との「新春対談」を全紙5面にわたる特大紙面で報じた。資本論を読めば、まるで日本政治の矛盾を一挙に解決できるかのような扱いだ。「赤本」経験交流会での志位発言を紹介しよう(赤旗12月13、17日)。

 

 (1)日本でも『資本論』を読むムーブメントを起こすことは可能だ。『資本論』学習運動を全党の取り組みに発展させ、草の根から広げることができたら、日本は変わる。その根拠に、①「赤本」「青本」(『Q&A共産主義と自由』)の内容が若い世代や労働者に強く響き、科学的社会主義を理論的基礎とする党の「土台中の土台」である『資本論』の魅力に触れて入党する人が広がっている、②党活動全体に新鮮な活力、明るさを与え、党の質を変えつつある、③学習運動を力に労働者党員が「これこそ搾取だ」と自覚し、職場の労働条件改善の交渉に足を震わせながら立ち上がった「勇気ある闘い」が開始されている、④未来社会の魅力を受け身ではなく、共産主義の「基本原理」は「各個人の完全で自由な発展」(『資本論』)にあると、自分の言葉で攻勢的に語れるようになった、などがある。

 (2)特に訴えたいことは、①この運動を党内に留めず、党外の人々に広く働きかける運動として発展させること、②国内外でのマルクスと『資本論』への注目の高まりは偶然でも一過性のものでもなく、資本主義というシステムの矛盾がいよいよ深まり、「人類はこのシステムを続けていいのか」という問いが広くわき起こり、資本主義に代わる新しい社会への模索が広がっている、ことである。

 (3)今、資本主義的搾取はグローバルな規模で超富裕層の富の拡大と不平等の拡大を空前のレベルまで拡大し、この問題を根本的に解決するには『資本論』が明らかにしているように、資本主義体制そのものを変革するしかない。さらに21世紀の人類が抱える課題、自由な時間、環境、ジェンダー、教育、生産力などについて、『資本論』は驚くほど深く立ち入り、先駆的に論じている。マルクスが『資本論』に込めた革命的メッセージ、すなわち資本主義を「必然的没落」に導く原動力となるのは、資本主義による矛盾や害悪とのたたかいの中で労働者階級が成長・発展を遂げることにこそあることが、今ほど強く求められているときはない。21世紀の今こそ『資本論』の学習に取り組むべきときである。

 

気取った発言だが、これまで少しでも資本論をかじったことがある世代にとっては、このような見解はさほど目新しいものではない。この半世紀の間にマルクス研究が進み、新しい解釈が出てきたことは多くの人が知っているからだ。志位議長は自分がさも新発見したかのような口ぶりで話しているが、大方の読者はそれが各方面の研究成果を寄せ集めた簡易版にすぎないことを見抜いている。だが、問題はなぜ今、志位議長がことさらに『資本論』の学習運動を大声で叫ぶようになったのか、ということだろう。そこには昨年末までを「世代的継承を中軸に、質量ともに強大な党をつくる集中期間」としながら、党勢拡大がいっこうに進まない(逆に党勢後退が続いている)深刻な事態が横たわっている。

 

 昨年12月25日に開かれた党幹部会では、「集中期間を4月末」まで延長することが決まった。「『資本論』の内容が強く響き、入党する人が広がっている」「党活動全体に新鮮な活力を与え、党の質を変えつつある」との志位発言とはウラハラに、党員拡大は5千人の目標に対して僅か1349人(4分の1)にとどまり、赤旗読者は12月1日時点で、電子版と紙の読者数の合計は、第29回党大会時比で日刊紙93.6%、日曜版91.9%と、依然として後退が続いている(赤旗12月26日)。

 

赤旗12月31日の「12月の党勢拡大実績」によると、入党518人、日刊紙「紙」250人減、日曜版「紙」3098人減と後退が続き、電子版も日刊紙78人増、日曜版394人増と当初の勢いが失われてきている。その結果、昨年9月から12月までの4カ月間の拡大目標と実績の差は、①入党:目標5千人に対して実績1466人(3割)、②日刊紙:目標1万人増に対して実績は「紙」1835人減、電子版562人増、計1273人減、③日曜版:目標「紙」2万7千人、電子版3万人、計5万7千人に対して、実績は「紙」9234人減、電子版8781人増、計453人減となった。

 

一方、赤旗訃報欄に掲載された死亡者は4カ月で633人、掲載率を4割弱とすると死亡者は1600人前後になり、これだけで入党者を超える。つまり、党員数と「紙」の機関紙は依然として後退が止まらず、電子版は思うように増えないという状況が続いているのである。この調子では、「集中期間」を4月まで延長しても同じことで、統一地方選挙は厳しい結果を迎えることになるだろう。また、年内に予想される次期総選挙ではもっと議席が減るかもしれない。

 

それでいながら、志位議長はこのような党勢後退の現実を直視せず、またその原因を解明することもなく、『資本論』学習運動を推進すれば世の中が変わり、あたかも党勢が回復するかのような空想的発言を続けている。このことは、彼自身がもはや党再生のリアルな展望を描けなくなり、資本論の単なる「イデオローグ」に変質したことを物語っている。資本論が資本主義変革の導きの書だとはいえ、マルクス自身が「哲学者たちは世界を様々に解釈してきただけだが、大切なのはそれを変えることだ」(フォイエルバッハ・テーゼ)と論じているように、理論を社会変革に結びつけなければ志位発言は単なる空論に終わるしかない。この事態を避けるためには活発な「政治活動」の展開が不可欠であり、中核となる「政党」がその原動力にならなければならない。国民の支持を得ることができない政党では、体制変革が不可能だからである。

 

もう繰り返さないが、国政選挙のたびに得票数と議席数を減らし続けている共産党は、以前のように国民・有権者の確かな支持を得ている政党だとは言い難い。そのことを図らずも可視化したのが、12月18日の赤旗1面の写真だった。臨時国会閉会にあたって田村委員長が党国会議員団総会であいさつをした時の光景だ。2つのテーブルに座っている衆参両院議員は12名、幹部席の5人を入れても17人しかいない。周辺には取材記者や党関係者が数十人取り巻いていたが、肝心の議員席がガラガラで空きが目立った。また、幹部席では頭髪のなくなった志位議長の姿が写っているが、12月27日赤旗の「幹部会会議での志位議長発言」記事では、まだ頭髪の濃い50代の写真が掲載されている。党指導部の高齢化を覆い隠そうとする涙ぐましい演出とはいえ、そのことが却って事態の深刻さを際立たせているのは皮肉なことだ。

 

日本共産党の「宿痾」(しゅくあ)ともいうべき病根は、不破・志位「長期体制」に象徴されるように党指導部の新陳代謝が進まず、党組織の高齢化と党活動の停滞が常態化していることだろう。そのことが選挙結果に跳ね返り、国会議員が減少する根本原因となっている。拙ブログのコメントでも、党勢拡大の成果が上がらないのは、「共産党の国会での存在感がなく、国民生活の改善が図られる役割が果たされていないため、『共産党はこういう働きをしました。赤旗読んでください。入党してください』というアピールができず、対象者がいない」ことが指摘されている。

 

それでもなお、志位議長は上記の幹部会会議の中で、資本論学習がニューヨーク市長選勝利の原動力となり、ドイツ総選挙では左翼党(リンケ)躍進の背景になったことを繰り返し強調し、カナダのマルクス研究者と共産主義論・未来社会論の見解が一致したとして、「日本共産党の未来社会論の探求は国際的にも通じる力をもっている」と吹聴している。だが、ドイツ総選挙とニューヨーク市長選の躍進の原動力となったのは、資本論をアピールしたからでも、共産主義の未来を論じたからでもない。両選挙の勝利を導いたのは、現在の生活困難(物価高や住宅難など)を打開するリアルでシンプルな政策の提起であり、それを我がことと捉えた若者の昼夜を分かたない精力的な選挙活動だった。そして、この若者世代の圧倒的なエネルギーを引き出したのは、今年1月1日、ニューヨーク市長に就任したゾーラン・マムダニ(34歳)やドイツ左翼党のイネス・シュベルトナー(共同代表、36歳)などの若い指導者だったのである。

 

 大晦日の各紙は、不破哲三前議長(95歳)の死去を挙って伝えた。記事の扱いが単なる死亡記事ではなく「評伝」とあるように、ベテランの政治記者たちがその生きざまをさまざまな角度から執筆している。毎日新聞は「不破氏死去、共産党の理論的支柱、晩年まで党内影響力」、朝日新聞は「理論と茶目っ気、見つめた現実」、日経新聞は「共産党を現実路線に、理論的支柱、半世紀余り」などである。各紙はいずれも不破氏が党内切っての理論家でありながら、野党共闘を推進するために党綱領を改定し、「労働者階級の前衛政党」「社会主義革命」などの表現を無くして自衛隊、天皇制を「当面容認」することを打ち出した「現実・柔軟路線」を高く評価している。とはいえ、評伝の結びが次のような言葉で締めくくられているのは興味深い。

 

 〇毎日新聞:(不破氏は)晩年まで党内に強い影響力を残した。別の視点から見れば、党内規律を優先する「民主集中制」(党規約3条)の下で、不破氏に対する党内の批判は封じられていた。閉鎖的な党運営は不破氏が一線を退いた後も続き、2023年には党首公選を訴える本を出版した党員が除名された。不破氏の声望と裏腹の党内の硬直が、今日の党勢低迷につながっている。

 〇朝日新聞:冷戦終結後、先進諸国の多くの共産党が消えていく中で、不破氏は現実路線を進めることで日本共産党を一定の存在感を持つ政党として生き残らせた。しかし、民主集中制という特異な組織や閉鎖的な体質に手をつけることはなく、退潮傾向が続く今日の大きな課題として残されている。

 

 翌日元旦に掲載された赤旗の「いまこそマルクス、志位議長×マルチェロ・ムスト教授 新春対談」も読んでみたが、私は志位議長の結論とも言うべき次の一節に強い違和感と疑問を抱いた。

 ――「各個人の完全で自由な発展を基本原理」とする社会(『資本論』)ということこそ、マルクス、エンゲルスが初期の時期から晩年まで一貫して追求し続けた未来社会の特質だと考えています。物質的な富、自由な時間、自然の富、そして人間そのものの自由で全面的な発展、そういうものの総体をマルクスは富として捉えていたのではないでしょうか。

 

 「人間そのものの自由で全面的な発展」を実現するのが共産主義の未来社会だとすれば、そのための社会変革を目指す政党・共産党は、党組織においても党活動においても「人間そのものの自由で全面的発展」を保障しなければならない。だが党生活の実態は、「党中央委員会は『決定の徹底読了=決定の鵜呑み』を求め、もっと広く自分の頭で考えることをさせない。党員もそのやり方に慣れきって自分の頭で考えない。他の支部との交流はなく、民主集中制の害悪が浸透している」(拙ブログへのコメント)というものであり、その根底には党員・党組織間の自由な意見交流や意見交換を禁ずる「民主集中制」(党規約)の厳格な運用があることが内外で指摘されている。

 

 志位議長が提起する資本論学習運動は、マルクスが生涯を懸けて追求した「各個人の完全で自由な発展を基本原理」を掲げながら、その実は、党勢後退の根本原因が党指導部への批判を封じた「民主集中制」と不破・志位長期体制にあることを覆い隠し、今後も最高ポストに居座り続けようとする「自己矛盾・自己欺瞞」の世界を露わにしている。党指導部と党組織が(超)高齢化している現実を変革しようとせず、国民の生活困難と生活矛盾を政治活動によって打開しようとせず、資本論の学習運動に逃避するような政党には「再生の道」はない、これが年末から年頭にかけての私の偽らざる感想だった(つづく)。

拙ブログに寄せられた様々なコメントについて、共産党はいま存亡の岐路に立っている(番外編)

前回の拙ブログは思いのほか反響が大きかった。通常は1日平均200前後のアクセスが一桁跳ね上がり、コメントも数多く寄せられた。本来ならば、これら全てをコメント欄に掲載すべきだと思うが、場合によっては「炎上」する恐れもあるので、私なりに整理して紹介することをお許し願いたい。まず取り上げるのは、例の投稿子の批判コメント(というよりは悪口雑言)についてである。思いの全てをぶちまけた3千字近い長文を要約するのは並大抵のことではないが、整理すると以下のようになる。

 

(1)共産に不満があるのなら、同志とともに新党を作って自由に活動すればよい。共産だけに悪口するのは政治センスがないことの証左だ。共産の現状が振るわないのは、共産だけの所為ではなく、左派・リベラル派すべてに責任があると考えるべきだ。「全ては共産党が悪い、俺たちは悪くない」などと言うのは、当事者意識が全くないことを示している。

(2)「党代表を公選制にすれば支持が増える」といった因果関係は何ら存在しない。自民、立民、維新にしても「立候補には一定数以上の推薦人(多くの場合国会議員)が必要」「党員投票で過半数取れなければ議員の決選投票」となるので、事実上「派閥ボス」しか出馬できない。れいわの党代表選挙も「山本が再選されるに決まっている」「くだらないパフォーマンス」と言うのが世間の見方だ。

(3)高齢化した党指導部のトップが四半世紀余りにわたって君臨していると言っても、不破氏(1930年生まれ)はその後名誉役員になり、志位氏(1954年生まれ)は最高ポストではない「議長」に就いている。最高ポストは田村氏の「委員長」である。他党の岸田、石破、野田、福島氏は、志位氏より「若干若い」とはいえそれほどの年齢差ではない。そもそもこんなことを抜かす本人が「1938年生まれの爺」であり、若者と交流があるわけでもないから「大笑い」だ。

(4)党組織の若返りを図るための「抜本的な党改革」はまるで具体性がない。共産より支持率が上の政党は、立民を除いて自民、維新、国民民主、参政など右翼政党ばかりであり、右翼的言説の多い高市政権が未だ支持率が高いことを考えれば、「共産の党内体質が問題」というより「日本が右傾化している」「左派的言説が支持されなくなっている」と見るべきだ。

(5)当方のコメントを「鋭い批判」と思うのなら、投稿コメントを掲載したらどうか。賛同コメントしか掲載しない狭量な野郎が何を抜かしているのか。「三流」呼ばわりされたくなかったら、どんな学問業績が世間に評価されたのか知らせるべきだ。「まともな学問業績がない」からこそ大学退職後は世間に相手にされない鬱憤を「共産への悪口」で晴らしているのではないか。そして「共産に悪口するだけの駄文」に共感を示し、激励する「変な人間」も世の中にはいるものだと思う。

 

このコメントの特徴を一言でいうと、共産の党内体質には問題がない。共産の現状が振るわないのは、共産だけの所為ではなく、左派・リベラル派すべてに責任がある。日本全体が右傾化しているのに「全ては共産党が悪い」「俺たちは悪くない」などと他人事のように言うのは、当事者責任を感じていないからだ――など、党勢後退の原因を全て外部の所為にしていることだろう。だから、党代表選挙がないのも、高齢の志位氏が党指導部に居座り続けているのも何ら問題はなく、志位氏と同様、高齢の党首は他党に幾らでもいるではないか――ということになる。

 

この主張を読んで、私は終戦直後に東久邇首相から発せられた「一億総懺悔」「一億総責任」という言葉を思い出した。東久邇首相は「この際私は、軍官民、国民全体が徹底的に反省し懺悔しなければならぬと思う。全国民総懺悔をすることがわが国再建第一歩であり、国内団結の第一歩になると信じる」と述べた。無謀な戦争を始めた天皇や為政者、軍人の責任と国民一般の責任をごちゃ混ぜにして「一億総懺悔」し、国民全体が敗戦の責任を取るべきだと言う「一億総責任」は、戦争責任を免れようとする戦争犯罪人のあくどい方便であって、それ以外の何物でもない。国民は「最後まで国民をだまして来た指導者は万死に値する」と感じていた。

 

長文コメントの投稿子は、党勢後退の原因が共産の党内体質にあるのではなく、日本全体が右傾化しているためであって、その責任は共産党だけではなく左派・リベラル派すべてに責任があると主張している。政党指導者と国民一般の責任をごちゃ混ぜにして国民に責任を転嫁し、全てが「当事者責任」を取らなければならないというのである。そして国民の正当な権利である政党批判を「悪口・鬱憤」に矮小化し、その原因を「老害」「田舎」「三流」などの個人的資質に求めている。これでは、共産は国民から批判されて成長することもなければ、党内体質の改善に取り組むこともなく、党勢後退の原因を解明することも出来なくなる。

 

この点、上述の投稿子以外のコメントは、共産の党内体質に焦点を当てた内容が多い。以下、要約して列挙しよう。

(A)共産党中央の硬直ぶりは近年特に甚だしく、中央委員会の議案がいつも満場一致で決められていくことに強い違和感を抱いている。これだけ世界の政治経済情勢が大きく変わっている中で、組織外・一般社会での経験の乏しい少数の専従幹部が、複雑な社会の諸問題を正確に認識して適切な政策・方針を創り出していくことは、そもそも不可能なことだと思う。目前の事態に対するステロタイプ化した理解を見直し、自分の頭で考え発言する人が少しでも生まれてくることを願う。

(B)当ブログの意見は観念的な思い込みによるものではなく、数値や事実を基にしているがゆえに説得力がある。このような意見をなぜ党中央は正面から受け止めないのか、理解できない。

(C)党員拡大、赤旗拡大を至上命題としているが、成果は上がっていないどころか減少に歯止めがかからないのが現状だ。なぜなら、共産党の国会での存在感がなく、国民生活の改善が図られる役割が果たされていないため、「共産党はこういう働きをしました。赤旗読んでください。入党してください」というアピールができず、対象者がいない。「反動ブロック」「補完勢力」などとレッテル貼りし、頭を下げて粘り強く協力呼びかける努力もしないため、定数削減反対の一点共闘も単なる記者会見でおしまい。このように現状分析している党員は希望がもてず離党しているが、私は離党せず党改革をしたいと考える。

(D)当ブログを印刷して熟読している。ブログの要約文に私の意見を加えたものを作成し、所属する支部会議で参加者に配布して議論すると全員賛同してくれる。でも、私の支部は例外で、中央委員会は「決定の徹底読了=決定の鵜呑み」を求め、もっと広く自分の頭で考えることをさせない。党員もそのやり方に慣れきって自分の頭で考えない。他の支部との交流はなく、民主集中制の害悪が浸透している。

(E)数字を網羅した報告を参考にしている。妄信した(考えない)連中は、沈みつつある泥船にしがみついて何も考えないのだろう。25年余にわたる独裁は、健全に考えるメンバーを駆逐してきたともいえる。腐敗した幹部(患部)が巣食い、組織をさらに腐敗させている。

(F)「老害」「田舎大学の三流学者」「場違いの戯言(たわごと)」といった鋭い批判...と書かれているが、これらは「批判」でも何でもなく、沈んでいく泥船からの末期の喚きに過ぎない。「赤い貴族」と呼ばれる先達である不破氏の本『スターリン秘史』をたまたま目にしたら、独裁とそこで発生する奴隷的性質などへの着目がある。残念ながら、それが今は無きソ連だけのことではなく、現代の日本の共産党で起きているという認識がない。ここからの脱却は「解党」しかないと最近では思う。

(G)学生時代の20歳前に入党して56年になる。6年前から率直な意見を何回となく中央にメール送信しているが、2,3回、回答にもならない返信があっただけ。常任幹部会25人中15人以上が70歳以上、中央委員190人中57人以上が70歳以上、80代、90代もいるため、若い委員は意見・異見が言えない。中央委員会決定は「全会一致」という民主主義とはかけ離れた状況にある。かつての東欧の独裁と同じ状況だから、若者と無党派層の支持が得られないのも当然で、このままでは消滅しかないと悲観的にならざるを得ない。

(H)率直に言うと、共産党中央はもう救いようのない水準にあり,政党としても末期的症状を呈していると見限っている。特権的立場の幹部の公私混同・自己保身は見るも無残で,もう歴史的使命を終えたものと考えている。むしろ一刻もはやく解消し,それに代わる新たな政治的よりどころの立ち上がりに期待している。ただ党中央とは異なり,自己保身とは無縁で誠実かつ科学的な判断が可能な方々がまだ党内にはいるので、関心を放棄せず推移を見守りたい。

 

これら一連のコメントには幅があり、すでに見限っているものからまだ改革に望みをつないでいるものまで幅広く分布している。党内事情も恐らく同様の状況にあるのだろう。その意味で拙ブログへの今回のコメントは、図らずも赤旗の「党活動」頁の裏側にある幅広い意見を垣間見た思いがする。コメント欄には全てを掲載できないが、時々このような形で紹介できたらと考えている。率直なコメントを寄せていただいた諸兄に感謝し、今年の拙ブログを閉じたい。

 

※今年も押し詰まりました。京都は今日大雪だそうです。みなさまの新年のご多幸をお祈り申し上げます。広原 拝

「2025年政変」を巡って考えること、達成できない「比例代表650万票、得票率10%以上」を掲げる選挙活動は、もう限界に来ている、共産党はいま存亡の岐路に立っている(その82)

今年も暮れようとしている。21世紀も四半世紀を過ぎ、20世紀とは異なる時代の様相が垣間見えるようになってきた。メディア空間において「戦後80年」特集が組まれているのは、この時代の変貌を捉えようとする各界の動きを反映してのことであろう。その意味で、高市政権の誕生にともなって自公連立政権が崩壊し、自維連立政権が出現するという「2025年政変」は、日本政治の一つの歴史的画期を示すものであるかもしれない。

 

政変が起こると国民の関心はそこに集中し、渦中のキーパーソンの一挙手一投足に目を奪われる。高市内閣が目下のところ高支持率を維持しているのは、国民の大多数が「2025年政変」の出現に気を取られ、本格的な政策展開の変化にまだ気づいていない兆候とも言える。とはいえ、共産党の消長に焦点を当ててきた拙ブログでは、この間の共産の党勢の推移に的をしぼり、2010年代後半から顕著になった党勢後退の原因について客観的資料を基に考えてみたいと思う。

 

自公連立政権の崩壊と自維連立政権の出現をもたらしたのは、ポピュリズム政党(右派の国民民主党・参政党、左派のれいわなど)の躍進と既成政党の凋落だった。2021年衆院選得票数を基準に2025年参院選と比較すると、与党系は公明7割台、自民6割台、維新5割台に落ち込み、野党系は立憲と共産が6割台に落ち込んでいる。これに対して新興政党は、れいわ1.7倍、国民2.9倍、参政(2022年参院選=100)4.1倍の躍進ぶりだった。右派・中道・左派を問わず、旧い体質の既成政党が忌避され、新しい(かに見える)新興政党に票が集まったのである。

 

しかし、同じ野党系でも立憲と共産では得票数の動きが大きく異なる。立憲の得票数が選挙ごとに激しく乱高下するのに対して、共産の得票数は「右肩下がり」に一貫して減っていくのである。その原因は、立憲がその時々のリーダーの体質や方針によって無党派層の支持率が大きく変動するのに対して、共産はリーダーも体質もいっこうに変わらないので若年層や無党派層の支持を獲得できず、高齢者層中心の固定票しか集票できないからである。高齢者層中心の固定票は、高齢者の健康不安や死亡などによって確実に減少していくので、この事態を打開しない限り得票数の減少は避けられない。

【過去4回の衆参両院選挙における比例代表得票数の推移】

     2021年衆院選    2022年参院選     2024年衆院選     2025年参院選

〇自民  1991万4千票(100)1825万6千票(91)1458万2千票(73) 1280万8千票(64)

〇公明   711万4千票(100) 618万1千票(86) 596万4千票(83)  521万0千票(73)

〇維新   805万0千票(100) 784万5千票(97) 510万5千票(63)  437万5千票(54)

〇立憲  1149万2千票(100) 677万1千票(58)1156万5千票(100) 739万7千票(64)

〇共産   416万6千票(100) 361万8千票(86) 336万2千票(80)  286万7千票(68)

〇れいわ 221万5千票(100) 231万9千票(104)380万5千票(171) 387万9千票(175)

〇国民  259万3千票(100) 315万9千票(89) 617万1千票(238) 762万0千票(293)

〇参政           176万8千票(100)187万0千票(105) 742万5千票(419)

 

共産が国政選挙において「比例代表650万票、得票率10%以上」の目標を掲げたのは、2007年9月(5中総)のことである。その文面は「『比例を軸に』を貫き、得票は650万票に正面から挑戦します。この目標は『それを実現するまで繰り返し挑戦する目標』とします」という強気のものだった。第25回党大会当時(2010年1月)の現勢は、党員40万6千人、赤旗読者145万4千人を擁していたこともあって、この目標は「実現可能」だと見なされていたのだろう。

 

「650万票」には届かなかったが、その後の安保法制反対の世論と野党共闘の前進を受けて、2013年参院選515万4千票、9.6%、2014年衆院選606万2千票、11.3%、2016年参院選601万6千票、10.7%と、得票率は「10%以上」を一応クリアするまでになった。これを〝第3の躍進〟と位置づけた第27回党大会(2017年1月)は、①来たる総選挙においては「比例を軸に」を貫き、「全国は一つ」の立場で奮闘し、比例代表で「850万票、15%以上」を目標にたたかう。②全国11のすべての比例ブロックで議席増を実現し、比例代表で第3党を目指す。③野党共闘の努力と一体に、小選挙区での必勝区を攻勢的に設定し、議席の大幅増に挑戦する、との方針を決定した。「850万票、15%以上」という更なる目標の設定は、共産党が提唱する「安保法制廃止の国民連合政府」を実現するために必要な目標だったのである(『前衛』2019年11月臨時増刊号)。

 

ところが、情勢は一変する。野党共闘を分断して革新勢力の前進を阻むため、2017年衆院選直前に民進が希望に合流する政治策動が進められ、民進が立憲民主と国民民主に分裂する。新しく生まれた立憲に革新票が集まった結果、共産の得票数は再び停滞するようになった。それ以降、2017年衆院選440万4千票、7.9%、2019年参院選448万3千票、8.9%、2021年衆院選416万6千票、7.2%と思うように票が伸びなくなったのである。4中総(2021年11月)は、①比例代表の目標は「850万票、15%以上」を堅持しつつも、②今回の参院選では「650万票、10%以上」を必ずやりきる目標とします、とトーンダウンした(『前衛』2022年11月臨時増刊号)。しかし、得票数・得票率はその後も回復せず、2022年参院選361万8千票、6.8%、2024年衆院選336万2千票、6.1%、2025年参院選286万4千票、4.8%と、現在まで後退一途の道をたどっている(『前衛』2025年11月臨時増刊号)。

 

共産の得票数・得票率が縮小し続けている最大の原因は、党組織の(超)高齢化にある。第29回党大会(2024年1月)に公表された党員の党歴構成は、「0~9年」17.7%、「10~19年」14.0%、「20~29年」11.0%、「30~39年」8.0%、「40~49年」19.5%、「50年以上」29.8%というものだった。党歴構成と年齢構成は同じではないが、仮に平均入党年齢を30歳前後とすると、「40代以下」32%、「50代」11%、「60代」8%、「70代以上」49%になる。志位委員長の言葉によれば、「60代以上が多数、50代以下がガクンと落ち込んでいる」のが実態だから、この推計はさほど間違っていない。60代以上が多数を占める党組織では、激しい選挙戦は戦えない。70代以上が半数を占めるような党組織は、年々死亡数が増えて党員数が確実に減っていくことが避けられない。

 

赤旗訃報欄には毎日、死亡党員の氏名、死亡年齢、入党年月、所属支部などが掲載されている。筆者は2017年1月1日以の集計を続けているが、党大会時に公表される死亡者数と比較すると掲載率は4割弱(38%)となる。最近は掲載数が2千人近くに増えてきているので、第30回党大会(2017年1年)時は1万5700人(年平均5200人)程度になると見込まれる。

      赤旗訃報欄掲載数       党大会間死亡者数

    〇2017年  1759人 

 〇2018年  1757人

 〇2019年  1741人

    計  5257人(掲載率38.0%)  1万3828人(2017年1月~19年12月、年平均4600人)

 〇2020年  1788人

 〇2021年  1749人

 〇2022年  1946人

 〇2023年  1959人

    計  7442人(掲載率37.6%)  1万9814人(2020年1月~23年12月、年平均4950人)

 〇2024年  1942人

 〇2025年  1998人(推計) 

 〇2026年  2050人(同)

    計  5980人(同)    1万5750人(推計、2024年1月~26年12月、年平均5250人)

 

赤旗訃報欄掲載(2017年1月~24年12月)の死亡者1万4641人の基本属性は、男女比7:3,死亡年齢は80~90代が3分の2(65%)、入党時期は1970年代以前4分の3(74%)と、戦後高度成長期に大量入党した人たちである。出身地方は関東と近畿で過半数(55%)、東日本・西日本・中部地方が15%ずつを占めている。以下はその概数である。

〇性別 男性1万21人(68.4%)、女性4620人(31.6%)

〇死亡年齢 60代以下1147人(7.8%)、70代3915人(26.7%)、80代5985人(40.9%)

 90代以上3594人(24.5%)

〇入党時期 1950年代以前2302人(15.7%)、1960~70年代8590人(58.7%)、1980~90年代1506人(10.3%)、2000年代以降2243人(15.3%)

〇出身地方 北海道・東北2202人(15.0%)、関東4822人(32.9%)、中部2165人(14.8%)、近畿3309人(22.6%)、中国・四国・九州2143人(14.6%)

 

次に「650万票、10%以上」の目標が設定された2010年代以降の党員現勢の推移を見よう(党大会報告)。大会ごとの離党者数の算出は、「前大会党員現勢+入党者数-死亡者数-離党者数=現大会党員現勢」というものである(概数のため、合計は必ず一致しない)。

〇第25回党大会(2010年1月)

40万4千人(2006年1月現勢)+入党者3万4千人-死亡者1万6千人-離党者1万6千人=40万6千人(2010年1月現勢)

〇第26回党大会(2014年1月)

40万6千人(2010年1月現勢)+入党者3万7千人-死亡者1万9千人-離党者11万9千人=30万5千人(2014年1月現勢)

〇第27回党大会(2017年1月)

30万5千人(2014年1月現勢)+入党者2万3千人-死亡者1万3千人-離党者1万5千人=30万人(2017年1月現勢)

〇第28回党大会(2020年1月)

30万人(2017年1月現勢)+入党者(記載なし)-死亡者1万4千人-離党者(不明)=27万人(2020年1月現勢) 

〇第29回党大会(2024年1月)

27万人(2020年1月現勢)+入党者1万6千人+死亡者2万人-離党者1万6千人=25万人(2024年1月現勢)

〇第30回党大会(2027年1月、推計)

25万人(2024年1月現勢)+入党者1万1千人(4852人+3千人×2)-死亡者1万6千人(5250人×3)-離党者1万2千人(4000人×3)=23万3千人

 

第25回から第29回大会に至る14年間の党員増減の内訳は、入党者11万人(+2020年不記載分)、死亡者8万2千人、離党者16万6千人(+2020年不明分)となる。不記載の第28回大会分を除くと、入党者11万人-死亡者6万8千人-離党者16万6千人=12万4千人減となる。離党者がこれほど多いのは、第26回党大会(2014年1月)で「実態のない党員」が組織的に整理され、11万9千人もの大量の離党者が発生したためである(党大会報告)。これ以降、入党者は大会ごとに3万人台から2万人台、2万人台から1万人台に減少することになった。党規約の厳格化による「実態のない党員」の大量整理は、共産党の閉鎖的イメージを内外に広げ、若年層の党組織への「忌避感」を強める引き金となった。

 

党組織の高齢化の原因は入党者の減少ばかりではない。公表されてはいないが、大会ごとに入党者の半数近い(最近はほぼ同数の)離党者が出ており、その大半が若年層や中堅層で占められていると推察されるからである。若年層や中堅層の中核世代が離党すれば、党組織の高齢化は否応なく進行する。加えて入党者の過半数が高齢者であり、若年層や中堅層が少ないことも党組織の新陳代謝が進まず、高齢化を加速させる原因となっている。この間、共産は「若い世代のなかでの党づくりが、わが党建設の成否を左右する死活的な課題」と再三再四強調しているが、その実、若年層や中堅層が離党していく実態や原因を明らかにしたことがない。まるで「笊(ザル)に水を注ぐ」かのような荒っぽい党員拡大が、性懲りもなく繰り返されているのである。

 

党員40万人時代に提起された「650万票、10%以上」の目標を、党員25万人弱、70代以上が半数を占める現在の党組織に課すことはおよそ過酷というものであろう。直近の参院選得票数が300万票を割り、達成率が目標の4割台に落ち込んでいるのは、活動できる党員が3分の1程度に限られているためであり、「身体が動かない」高齢党員が過半数を占めているからである。しかし、選挙総括は相変わらず「全党的には質量ともに党勢を後退から前進へと転換できておらず、党勢の後退と選挙での後退の悪循環から抜け出すに至っていない」とあるだけで、悪循環から抜け出せない最大の原因が党組織の(超)高齢化にあることには決して言及しない。

 

なぜ、共産は党組織の「超高齢化」という現実を直視できないのか。それは、党組織の〝若返り〟が今の組織体制では不可能だからである。他党ではすでに実施されている党代表の公選制一つでさえ進まず(最近行われた「れいわ新選組」の代表選挙では高校生が立候補して話題になった)、党組織の閉鎖的で硬直した構造を改革する気配も見られない。清新溌溂とした若いリーダーが求められているにもかかわらず、高齢化した党指導部のトップが四半世紀余りにわたって君臨し、相も変わらず赤旗紙面を独占して号令を駆け続けている。これに異を唱えようとしても、指導部を交代させるための党員・支持者による直接選挙制度もなければ、それを実現するための自由で開かれた討論の場もない。党員間・党組織間の自由な意見交換や討論が「民主集中制」の党規約の下で厳しく禁止されているからである。このような「手足を縛っておいて泳げ!」と命令されているに等しい党組織に対して、現代の若者世代が近づこうとしないのは蓋し当然だろう。

 

「650万票、10%以上」の目標はいまや〝壮大な虚構〟と化している。次期総選挙においても、この目標が取り下げられることはまずないだろう。だが、過大となった比例代表目標は、今や硬直した選挙戦術を押し付けて党組織を金縛りにする「足枷」と化している。有権者意識の多様化に対応できる柔軟な選挙戦術が求められている現在、全ての選挙活動を「数値目標」に還元する選挙戦略はもはや時代遅れになっているのである。共産が国政選挙において後退から脱するためには、まずは数値目標にこだわらない新しい選挙戦術を編み出すほかない。また中長期的には党組織の若返りを図るための〝抜本的な党内改革〟を断行し、旧態依然とした党指導部を交代させる以外に道はない。これがこの1年間、拙ブログを書き続けてきた筆者の偽らざる感想である。

 

※読者のみなさまには拙い文章を読んでいただき恐縮しています。拙ブログに対しては、毎回のように「老害」「田舎大学の三流学者」「場違いの戯言(たわごと)」といった鋭い批判が寄せられていますが、その一方で共感と激励の言葉も時折届きます。今年も師走になりました。みなさまがよきお年を迎えられることを祈念しております。広原盛明 拝

アクセルを踏んでもスピードが出ない、「世代的継承を中軸に、質量ともに強大な党をつくる集中期間」が不発、共産党はいま存亡の岐路に立っている(その81)

第6回中央委員会総会(2025年9月)は、2025年9月~12月末までを「世代的継承を中軸に、質量ともに強大な党をつくる集中期間」とし、全党の力を集めて必ず成功させることを呼びかけた。集中期間の目標は、①党員拡大では、全党の力で世代的継承にとりくみ、毎月現勢で前進し、5千人の新しい党員を迎える。②赤旗読者拡大では、「紙」と電子版の合計で日刊紙、日曜版とも第29回党大会現勢を回復・突破する。日刊紙は1万人、日曜版は「紙」で2.7万人、電子版で3万人を増やす。③党大会決定の具体化・実践としてとりくんできた二つの『Q&A』――『いま「資本論」がおもしろい』(赤本)、『共産主義と自由』(青本)をすべての党機関と支部で学習するとともに、青年・学生、労働者はじめ国民のなかに広げる、というものである。

 

 第29回党大会(2024年1月)は、党勢を今後3年間で第28回党大会現勢(党員27万人、赤旗読者100万人)に回復・突破することを決議した。しかしそれ以降、拡大が遅々として進まず、党勢が後退する一方となり、赤旗「電子版」発行を機に今回の「集中期間」が設定されたのだろう。これは過去の経験を踏襲するもので、これまでは期限を切って拡大運動に取り組むことで、それ相応の成果を挙げてきたからである。だが、「集中期間」の4分の3がすでに経過した現在、赤旗電子版の発行という画期にもかかわらず、党勢はいっこうに回復しない。いくら「アクセル」を踏んでもスピードが出ない、むしろ「スローダウン」するというのが現実の姿なのである。「老骨に鞭うつ」という言葉があるように、超高齢化した党組織に対してはいくら発破をかけても昔のような勢いで拡大することができない。「集中期間」前後の拡大目標がどのような経緯を辿っているかを見よう。

 

第29回党大会から「集中期間」が始まるまでの1年8カ月(2024年1月~2025年8月)の拡大実績は、入党6667人(月平均333人)、日刊紙1万1313人減(同565人減)、日曜版 5万7338人減(同2866人減)だった。これが「集中期間」3カ月でどう変わったかと言うと、入党948人(同316人)、日刊紙「紙」1585人減(同528人減)、日曜版「紙」6136人減(同2045人減)、日刊紙「電子版」484人増(10月以降、同242人増)、日曜版「電子版」8359人増(10月以降、同4179人増)となった。

 

集中期間前と集中期間の拡大実績を「月平均」で比較すると、入党は333人と316人、日刊紙「紙」は565人減と528人減、日曜版「紙」は2866人減と2045人減とそれほど大きく変っていない。新しく発行された「電子版」は、日刊紙242人(10月288人、11月196人)、日曜版4179人(10月7280人、11月1079人)と増えたが、入党は316人にとどまり、日刊紙「紙」は528人減、日曜版「紙」2045人減と依然として減紙が続いている。

 

しかし、小池書記局長が12月2日、オンラインで訴えた「始まった前進の流れを広げに広げ、集中期間の目標達成を」(赤旗12月3日)と題する以下の内容は、事態を正確に伝えていない(要旨)。

――11月は453人の新しい党員を迎えることができました。止まっていた党員拡大が動き始め、昨年7月以降では最高の到達点を築いたことは、11月の全国都道府県委員長会議を受けたみなさんの奮闘の結果です。読者拡大は、紙の日刊紙読者が133人減、日曜版が60人減、電子版は日刊紙が196人増、日曜版が1079人増となり、全体として参院選後からの連続後退を脱し、5カ月ぶりに日刊紙、日曜版とも前進に転じることができました。日曜版電子版の発行で8300人を超える読者が生まれたことは、今後の「しんぶん赤旗」中心の党活動と世代的継承の事業にとって重要な一歩です。

 

小池報告は、2024年1月以降の党勢拡大の推移を総括したものでもなければ、集中期間3カ月の推移を把握したものでもない。11月の「瞬間風速」的な数字を根拠もなく今後も継続するものと見なし、主観的な願望を述べているにすぎない。第29回党大会以降の1年11カ月の入党者は、2024年4852人、2025年2473人、計7325人、年間平均4千人を割ることがほぼ確実となっている。また機関紙「紙」読者は、日刊紙2024年6279人減、2025年7034人減、計1万3313人減、日曜版2024年3万1446人減、2025年2万9795人減、計6万1241人減、合計7万4554人減となり、10月以降の「電子版」読者1万数千人増を加えても2年間で6万人、年間平均3万人程度の減紙が見込まれる。

 

今回の集中期間が「日本とわが党の前途にとって文字通り命運がかかったものとなる」と位置づけられているように、日本の運命と共産党を一体に捉える〝運命共同体論〟が依然として展開され、「共産党が後退すれば日本の前途は危うい」といった時代認識が強調されている。だが、使命感だけでは党勢拡大はできない。拡大目標を具体的にどう実現するのか、その「実現可能性」について説得力のあるデータと方針が示されなければ党勢拡大は前進しない。「集中期間」を提起した6中総決議は以下の3点を強調したが、実現可能性についてはほとんど説明らしい説明がない。

(1)日本の政治の歴史的岐路を打開するためには、自民党政治を根本から変える改革を推進し、極右・排外主義とのたたかいをすすめる日本共産党が、強大な党へと前進することがどうしても必要である。

(2)自力の後退と選挙での後退の悪循環をここで断ち切り、世代的継承を中軸にすえて強く大きな党をつくり、その力で選挙に勝つという好循環に転ずることがどうしても必要である。

(3)第29回党大会(2024年1月)で決めた党建設の目標、第30回党大会までに、党勢を前進の軌道にのせ、第28回党大会現勢(27万人の党員・100万人の赤旗読者)の回復・突破をやり遂げるには、いまここで確かな前進に転ずることが不可欠である。

 

高市内閣の支持率が(なぜか)高水準を維持している状況の下で、いつ解散があってもおかしくないとの風評が飛び交っている。「集中期間」が不発に終わりつつある現在、共産党は早期の解散に備えて今度はいったいどんな方針を打ち出すのであろうか。(つづく)